ティグルはマトヴェイとオルガと共にジャーメインに対して反乱して殺して、バルベルデの新しい城主になったタラードと手を組み、エリオットを倒す事で彼に捕らわれたソフィーヤを助け出さなければならなくなった。
そうして、バルベルデから二日の距離にいて、エリオット側に寝返ったルクス城砦を守るレスターを倒し、ルクス城砦を落とすようにタラードに頼まれたのである。
彼の部下の一人であるルドラーとタラードの兵三千人でルクス城砦のレスターと彼が率いる三千の兵と戦わなければならないので中々、難しい要望であった。
ともかく、皆でルクス城砦へと向かう中でタラードの兵の総指揮官についてはルドラーに任せる事とし、ティグルとマトヴェイにオルガはタラードの親しい友人とし、ルドラ―の副官という事にしたのである。
そうした方が指揮は上手くいくし、自然だ。なにせいくらタラードに共闘を頼まれたとはいえ、タラードの兵の中にいる傭兵部隊はともかく、それ以外のタラードの兵でアスヴァール人からすればティグル達は異国の者なので従いにくし、不満や反発心も生まれてしまう可能性が高いからだ。
指揮権などが決まったティグル達はバルベルデとルクス城砦を結ぶ街道を通って、城砦へ向かっているがレスターによる待ち伏せとかそういう物は無かった。
タラードからルクス城砦の詳細な見取り図を数枚渡されていて、ティグルはそれをよく目に焼き付けている。
ルクス城砦は濠は無いが、城壁は高く、厚い。井戸は無く、地下水路から水を得ているという物だ。地図にはその地下水路の位置まで克明に描かれていた。
「(だからこそ、地下水路周りは固められているだろうな)」
ルクス城砦を落とすなら、地下水路から侵入するのが有効だとは考えるが、守る者からすれば警戒すべき点である。だからこそ、固められているか、あるいは罠を用意しているだろうと予測した。
「なにか良い策でも思いつきましたかな?」
「実際に砦の様子を見ないとなんとも言えないな。それより、すまないなマトヴェイ、オルガ。ただ、会ってジスタート王の意思を伝えるだけだったのが内戦に思いっきり関わる事になって」
マトヴェイの言葉に応じ、ティグルは答え、そうして次にはオルガとマトヴェイへと戦に加わる事になった事に対して謝った。
「何を言います……貴方と一緒に旅をしていますが、中々刺激的な旅になって楽しく思っていますよ。貴方と交流したり、共に戦うのも楽しいですしね」
マトヴェイは笑みを浮かべてティグルに応じる。
「私も問題無い。それに同じ戦姫の危機を知りながら、見過ごす事は出来ない」
「オルガはソフィーに会った事があるのか?」
「王都に行った時に一度だけ。悪い印象は無かった」
「だろうな」
オルガの返答にティグルは頷いた。
「ソフィーというのは彼女の愛称だろう。ティグルは彼女と親しいのか?」
「まあ、それなりにな。ブリューヌの戦いでは色々世話にもなったし、恩人でもある」
「……ティグル。私は私なりに貴方を信頼している。この度に同行し、貴方に力を貸しているのもその証だと思ってくれていい、だから私の名を呼ぶときは、もう少し親愛の情を込めてくれていい」
ティグルの返答にオルガは照れながら、軽い要求をした。
「そう言ってくれて嬉しいよ。勿論、愛しく思っているぞ。オルガ」
「っ……そ、そうか……」
ティグルはオルガに馬を近づけ、優しい声でオルガに対し、囁くとオルガは身を軽く振るわせつつ、顔を赤らめたのである。
「ふふ、ティグルヴルムド卿は中々の色男ですな」
ティグルとオルガの様子を見てマトヴェイは苦笑しながら呟くのであった……。