ティグルは自分が率いる事の出来るサイモンが隊長である三百の傭兵部隊と共にルドラーが率いるアスヴァール軍とルクス城砦を攻め、そうして見事にティグルはサイモンたち傭兵部隊と砦の中に侵入する事が出来た。
そうしてレスターがいる最上階の部屋を目指して砦内を進んでいく。ティグル達が砦を攻める前にオルガがマトヴェイと共にこの砦内に入っていた。オルガはレスターを暗殺しようとしたのだ。
しかして、これまでの状況を考えると暗殺は失敗した可能性がある。ティグルは後から追ってきた守備兵の相手をサイモンたちに頼むと最上階の部屋へと入る。
そうしてとんでもない咆哮と衝撃が発生した。
「嫌な予感がする」
黒弓も疼いたので嫌な予感がし、速度を上げると……。
轟音が発生し、城砦を揺るがすと奥の壁が吹き飛ぶ。そして、オルガが床へと転がり出た。
「ちっ……やっぱりか」
ティグルは黒弓を構えると矢を番え、弦を引き絞ると鏃から黒い光を収束していく。そして深呼吸して精神を集中していった。
「ほう、弓の使い手までいるか……何者だ?」
ティグルの前にねじれた角と赤い目、白すぎる肌に不気味な巨躯の怪物が現れ、問いかける。
「人に名を訪ねる時は自分からってのを知らないのか?」
言いつつもティグルは鏃に黒い光を収束していきながら、精神をさらに深く集中していく。無論、怪物を洞察しつつ更に……。
「(ムマ、オルガを守るためにも力を貸してくれ)」
ティグルはオルガの竜具に自分の意思を伝えるとそれに応えるようにムマは両斧の先端に三日月の形をした光を形成。空間に螺旋を描きながら、ティグルの矢の鏃へと向かっていく。これと共に床に散らばる細かな灰色の砂塵と石礫も矢に収束し始めていた。
「そこまで弓を使いこなすとはな……良いだろう、私はトルバランだ」
「おとぎ話で聞いた怪物と同じ名だな。実在するとは驚きだ」
「死んでもらうぞ、弓よ」
「来るなら来いよ」
そうして、トルバランはティグルへと突撃し……。
「(ここだっ!!)」
ティグルはトルバランの意識の間隙を見抜き、矢を放った。
その矢に纏わりついていた砂塵が一頭の竜を形作り、床を砕いて瓦礫を吸収しながらその姿を巨大化させ、トルバランへと突撃し……。
「ぬっ、うぐおおおおおおおっ!!」
トルバランは竜に呑み込まれる。そして、竜は砦内の天井を突き破りつつ、空高く突き進んでいったのであった。
「……ティグル、今のは……」
「俺の弓は竜具の力を借り受ける事が出来るようでな……それより、オルガ……俺の言いつけを守らなかったな」
オルガは立ち上がりながら、驚愕した表情ながらもティグルに近づいて質問する。
彼女はレスターの誘いに応じていると見せかけるため、上着を脱いで裸体を晒した。
油断したところでムマを振るったがレスターは怪物化し、そうして吹っ飛ばされたのである。一時的に視界が歪んだ中でティグルがレスターことトルバランを吹っ飛ばしたのを目にしたのだ。
そして、ティグルがオルガにきつい言葉で言うと……。
「私は貴方の役に立ちたかった」
「気持ちは嬉しいが、もっと自分を大事にしてくれ……もし、自分の身が大事じゃないというなら、お前の身を俺に捧げてもらう」
「……分かった、ティグルなら良い」
オルガはティグルの言葉に頷いてみせたのであった……。