魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

98 / 106
九十七話

 

 ティグルは二千の騎兵で進軍しているエリオット軍に夜襲を仕掛けた。その成果は上々である。少なくともエリオット軍の六千の兵と海賊を殺し、あるいは負傷させる被害を与えたのだから……。

 

 とはいえ、長弓部隊がいたのもあってティグルにも損害は出ている。

 

 百騎は数を減らしているし、二百騎の負傷者が出ている。そうして、夜の森に潜みながらルクス城砦へ帰還した頃には東の空が白み始めていた。

 

「ご苦労様です、ティグルヴルムド卿」

 

「ありがとう、ルドラー卿。夜襲は成功と言えば成功だ」

 

「それは良かったです」

 

 森に面した裏門でルドラーはティグル達を出迎えた。そして、負傷者たちを部屋へ運ばせ、残りの者には空いている部屋を使って休むよう命じたのだ。

 

 ティグル達が城砦に入ると裏門の内側に土砂を詰めた麻袋を積み上げる。

 

「オルガとマトヴェイも今のうちに休んでくれ」

 

 マトヴェイは一礼して歩き去ったが、オルガはティグルの側にいると視線と態度で伝えた。

 

 オルガのしたいままにさせる事にするとルドラーと並んで歩き始める。

 

「俺の手紙は読んだか?」

 

「はい、手紙を読んですぐに作業を始めました。食糧や予備の武器、その他の物資についてはすでに半分ほど外へ運ばせました」

 

「速い対応で助かる」

 

「私も納得している事ですから」

 

 ティグルは今後の展開においてルドラーに指示を出していた。そもそも、ルクス城砦でエリオット軍と籠城戦をするつもりは無い。

 

 全ての物資を運び出し、城砦を放棄するのだ。無論、いきなりでは無い。

 

 ある程度、抵抗の様子を見せながら地下水路を使って脱出しながら逃げるのだ。脱出した後は地下水路に毒を放ってである。

 

 無論、そのまま逃げるつもりは無い。だが、数で勝るエリオット軍には野戦でしか対抗できないのでそうするだけだ。

 

 ともかく、脱出のタイミングを判断するためにも休息を取れる時にはとらなければならないので、ルドラーと今後の予定を決めた後、眠る事にする。

 

 

 

「おやすみ、オルガ」

 

「うん、おやすみ」

 

 そうしてティグルは自分に割り当てられた部屋で寝台の上にてオルガを抱き締めながら、眠った。

 

 その後、エリオット軍が二万を超えた大軍でルクス城砦の北側にティグル達が城砦に帰還した日の翌朝に姿を見せた。

 

 エリオット軍は城砦を囲むが直ぐに異変に気付く。城砦の城壁に敵の姿も軍旗も無いからだ。

 

 エリオットは罠の可能性もあるために特別報酬を用意すると言って、海賊の中から志願者を募って突撃させる。

 

 それぞれの門に触れてみると簡単に開いたので突撃した海賊たちだが、仕掛けられた落とし穴によって落ちると穴の底に縄が張り巡らされており、体重をかける事で丸太が引っ張られる仕組みによって何十本もの丸太が落ちてきて潰された。

 

 弱弱しくも穴から出た海賊たちも隠れていた兵に殺される。

 

 

 

 外で成り行きを見守っていた海賊に仲間を助けさせないため、タラード軍の兵は素早く城門を閉めたのであった。

 

 こうして、ティグルはエリオット軍と本格的な戦いに入る前に五十人以上の海賊を罠に嵌め、殺してみせたのであった……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。