魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~ 作:無淵玄白
たどり着いたフライギア・ドックにて多くの説明をマーグース教官から受ける。
何度か見たこともある飛行機械を見つつ、いろんな質問が飛んだりする。
(天上人にとってはこんなものを渡したらば、天上領にカチコミかけられると感じないのかね)
教官いわく「空飛ぶ戦艦」なるものもあるらしいが、それを得ることは本格的に天上領に対する戦いが出来る可能性もある。『それを持てる機会はあるか?』というレオーネの質問に難しい顔をする辺り、この飛行機の戦略的優位性は理解しているようだ。
ガキの頃にテレビの7chで見た『機獣創世記』というアニメで惑星規模の大災害をお空の上でやり過ごした連中の顛末を思い出す。
なにはともあれ実戦となるわけだが……。
レオーネは女3人でよかろう。ラフィニアとイングリスという非常に目立つ人間がそばにいれば問題はないが―――。
「セツナ、俺達のギアに乗れよ」
「では失礼させてもらうよ」
ラティの誘いの言葉に乗ってラティとその『従者』たるプラムの乗るフライング・ギアに同乗させてもらうことに。
少しだけ緊張している様子のミス・プラムに対して。
「悪いね。王子サマとの
苦笑の顔を作りながらそんな風に謝罪をしておくのであった。
「い、いいえ!というかラティが言っていましたけど、セツナくんは知っているんですね……」
「極秘留学だとしても色々とそこで何かあれば面倒だからな。どこかしらにはそれとなく知られているはずだよ」
言いながらも王国中枢が知っているかどうかは微妙だとしながらも不安定極まる機甲鳥に乗り込む。
教官いわく確かに2−3人でいっぱいな
空に飛び立つ機械の鳥に―――『あの戦争』で自分と共に戦ってくれた銀色の乙女を思い出す。
『特等席ですよマスター』
満面の笑顔で言ってくる乙女だが、セツナとしては思うところはあった。
君のダンナさんに悪いなぁと言うと『ダンナって誰ですか?私、未婚の戦乙女ですよ』などと『その時』は記憶をなんかされていたと思っていた乙女を思い出す。実際は違ったわけだが
……ゆえに。
「コラー!!カップルのラブラブドライブにあおり運転なんてするんじゃねー!!」
ホイッスルを鳴らして後ろから迫りくるあの乙女とは全く違う銀髪赤目の悪魔に警告を発するも。
「うるせー!!私は負けず嫌いのイングリスちゃんだ!!そこのけそこのけ!!イングリスが通る!!」
手から放出する光圧の勢いで加速するイングリスwithラフィニア、レオーネの機甲鳥が水面ギリギリを滑空する。
あんにゃろ。と思いながら、エーテルストライクなるラーアルを抹殺した必殺技で加速した様子にこちらも少し『チート』をする。
「―――なんだ速くなった!?」
運転しているラティが驚く様子。
「ど、どういうことなんでしょうか?」
ラティの腰にしがみついて背中に抱きついているプラムも驚く。
疑問はともかくとして、速度を得たならば追い越しをした相手に追いつこうとするのは当然であった。
「ぐぬぬっ!!」
「無理無茶な飛行はよしておくべきだったな」
「まだだ!!トップは譲らない!!」
並走するイングリスは譲るつもりはないようだ。しかし、レオーネが顔面蒼白な顔をしていたりする。少し気の毒に思いながらもーーー。
魔眼が『反応』を示した。
「前に船が!!イングリス!セツナ!!ちょっとスピードを落としーーー」
「ラティ、イングリス!! ギアを上昇させろ!!水面に脅威アリ!!」
その言葉にイングリスは即断即行動、ラティは少し遅れたが、それでも並走するイングリスの行動からレバーを前に引いて仰角を上げて上昇を果たす。
そして数秒後にはボルト湖の湖面から巨大な魚類が跳び上がるのであった。
魔石獣であることは分かっていたので、後部に陣取っていたセツナは輝ける綺羅びやかな小剣を一本『作り出して』、気取られぬように魚類の背びれに深々と打ち込んでおいた。
的がデカいと当てやすいと思いながらも、その巨大な魚類はセツナと同じく的がデカいからか湖面に浮かぶ船に体当たりを仕掛ける。舷側に横っ腹を当てるだけでも被害は大きい。
(今更ながら外洋船の類だからボルト湖は海につながっているんだろうな)
王都に物資を大量輸送する上でこの水運は重要なのだろう。何処かの港町に荷下ろしをしてから陸上輸送よりも画期的だ。
ここを首都としたカーライル王国が一大強国になるのも分かる。水源多く、肥沃な土地を多く持つのは緑多く平地が多いからだ。
(まぁベネフィクは緑……緑地がほとんど無い荒野の国だからな)
ある意味、この近辺での国家の均衡が保たれていない原因はそこだ。
などと考えながらも、魔石獣の狼藉を止めるべくアーティファクト持ちが奮闘する。流石に脅威を悟ったのか魚類は、商船への攻撃を止めて水中に潜り込んだ。
レオーネが剣を巨大化させて刺そうとするが……。
「如何にボルト湖が透明度の高い湖とはいえ、あれだけの巨体が暴れ回ればな」
濁った水が魚の姿を隠す。湖底から巻き上げられた泥や砂が広がっていく。
おそらく意図的に体を動かすことでそれらを巻き上げたのだろう。
姿を見失ったことで手詰まりを感じるがーーー左手の刻■を人知れず発動させることで、『目印』を輝かせた。
「レオーネ! あの輝きに向けて剣を下ろして!!」
「分かったわ!!」
イングリスの言葉を受けて行動が開始される。
マッディウォーターの中だからこそ目立つその輝きは、レオーネの剣を突き刺す目印となりーーーちょいと違うが
レオーネの剣から逃れて再び湖底に潜ろうとしたのだが。
「非常識な……水上歩行に蹴り足による突き上げなど」
「……色々とおかしいですよね。何がおかしいのか曖昧になりますが」
「「「「現実がおかしいんだ」」」」
プラムの嘆くような感想に対して、セツナ、レオーネ、ラニ、ラティの声が揃うのであった。
イングリスの
「ラティ、商船の被害を聞こう。けが人がいるかもしれないからな」
「ああ、そうだな」
先程までイングリスが操縦していたフライングギアはラフィニアが操縦桿を握っている。慣れていない彼女よりは自分たちが向かった方がいいだろう。
「アカデミーの候補生です!!けが人や浸水の被害はないですかー!?」
「ああ、擦り傷程度の人間ならばいるが問題なーい。船のダメージもないからなー」
少し遠くから呼びかけるとそんな応答の声が聞こえた。バンダナを巻いた男……精悍な姿のその人間に……。
その姿に少しだけ怪訝な思いを抱きながらも、その御仁の応答に満足して自分たちも陸地に帰還するのであった。
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「はい。これキミのでしょ?」
「ああ、どうも」
消そうと思っていた『複製品』の小剣をイングリスから渡された。
「しかし、あの展開を読んでいたのか?」
「マーカーぐらいは打っておくべきだろ。魚類の速度は水中では追随出来るものじゃないからな」
泥を巻き上げて姿を隠すまで読んでいたというのはあまりにも先読みが過ぎるかもしれないから言わないでおく。リーゼロッテとその従者たちが魚類の魔石獣を消滅させたのを見てから、何用かと思っておく。
「いや、別に。ただ手持ち無沙汰だからね。一緒にいようかと思って」
「仲良しこよしみたいに見られるからヤ・メ・テ♪」
「なおさら、ヤ・メ・ナ・イ(怒)」
笑顔で言葉の
「さっきは船の上から安否確認をしてくれてありがとう少年」
「お構いなく」
「先程の勇戦に感謝して、個人的に礼をしたいんだ。少年少女をディナーに呼んでも構いませんかね校長先生?」
「ええ、その際は外出許可を生徒たちに取らせますので」
会話をしながら、自己紹介がされていないことを思い出したのか、男……商船の船長かオーナーとでも言うべき人間が自己紹介をする。
「ランバー商会の商会長 ファルス・ファーゴってもんだ」
自己紹介の言葉に不穏なものが混ざっていたことで、2人して少しだけ緊張をするのであった。