魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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『追憶廻戦!試練の中で垣間見る誰かの過去?』

 

 

翌日、朝食を終えて講義の時間まで読書でもしようかと思っていたところに――――。

 

「セツナ、食後の運動でもしませんか?」

 

先ほど、食堂で同席していた銀髪の少女が剣を携えながら挑戦的な笑みを浮かべて立っていた。その言葉に今日の放課後のことを考えて申し出を受けることにした。

 

「ふむ。まぁ俺も最近、実戦から遠ざかっていたからな。いいだろう」

 

ただあれだけ(大皿20枚分)食べたというのに、今から運動してもいいのだろうかと思う。

 

人体の不思議を感じつつも、やっぱり変な魂の色をした女だと感じるも―――それ以上に従騎士科の人間たちから感じるやっかみの視線に辟易するのであった。

 

 

「イングリスちゃんってすごくキレイですよね。それにとっても強くて……ラティってば昨日からその話ばっかりで」

 

「ウチのクリスだからねぇ〜。本当、ある意味、ユミルが田舎で良かったと思うよ。中央に近ければ、我が従姉どのは今頃輿入りの話ばかり来ていただろうし」

 

プラムの嘆くような言葉と声になぜかドヤるラフィニアである。そして武勇伝を語るわけだが……。

 

「まぁイングリスは男子に興味が無いんだけど……ちょっとねぇ。ウチの従者と妙に近いからなんか心配だわ」

 

「レオーネちゃんは、セツナくんを?」

 

「そ、それはまだ分からないけど……小さい頃から我が家に仕えていた人間だけに寂しさはあるわよ……」

 

プラムの疑問の言葉に、言葉だけならば少しだけ誤魔化すレオーネだが表情が全然ごまかしきれていない。

 

「ユミルでの事は色々とクリスにとっても衝撃だったからかな?それにクリスはアールメンで再会するまでセツナくんをルーン持ちの存在だと思っていたから尚の事……まぁそういうことじゃないかな?」

 

バトルマニアとしてセツナと戦いたい。同じ無印者として培ってきたものを武技を学びたいという心であるというラフィニアの言葉だが、そんな状況は言っているラフィニア当人としても歓迎出来ない。

 

従姉―――イングリス・ユークスが自分の兄であるラファエルといっしょになることで義理の姉になることを所望し、ラフィニアにとっても、少しだけ気になる男子がセツナであるからだ。

 

そんなこんなで従騎士科で行われている闘争など知らぬままに悶々としたものを持った騎士科の少女3人は次の講義に向かうのであった。

 

 

最後の剣の打ち合いを終えて走り抜けた2人は、息を吐いて終了をしておくのであった。

 

「これ以上はいいだろ。試験内容に関しては聞いていない以上、体力を温存しておくべきだ」

「同感ですね。しかし……」

 

もっと打ち合いたかった。体が疼く思いだ。

3年前のユミルにてイングリスは、特級印を持つレオンや天恵武姫たるエリスにばかり視線を向けていて、この少年の深奥を見ていなかった。

 

確かに美少女に転生した自分(イングリス)に下卑た視線を向けてこない懈怠な少年とは思っていた。まぁエロい視線で見られたいわけではないが。

 

その時は、それだけであって……そしてあの怪物となったラーアルとの戦いでのこと。戦いの後の鍛冶師としての顔―――3年後にアールメンにて見た姿……。

 

イングリスの狂った眼では追いきれぬほどに様々な姿がその後にも見えてきたことに、新鮮な心を覚えるのであった―――。

 

ラティからタオルを受け取る姿。汗を拭き取って竹水筒から水を飲む姿など……。

 

イングリスも従騎士科の同輩からタオルを受け取りながらも、その姿に眼を奪われる……。

そんなイングリスの様子は従騎士科の女子たちを色めき立たせるものがあったりしたのだが……ともあれ時間は流れて放課後になり、ミリエラ校長の特別課外学習の(てい)をとった護衛任務への選抜テストが行われる。

 

集められたのは入学式の後に校長によって集められた闘場であった。

石畳の上にあがった4人を見た校長は言う。

 

「ではテストを始めましょう。テストの内容自体は簡単です。私がこのアーティファクトで作り上げた異空間とでも言うべき場所に皆さんを送ります。そこから制限時間内に『こちら』に戻ってきてもらいます」

 

「どんな空間でもその戻るための地点というのは分かるものなんですか?」

 

「そうですね。私は『これ』を使用する側なので見たことは無いのですが、入った人間いわく「灯台の光」のように奥の方に光が見えるそうなので、それを目指してください。基本は『一本道』のようですが入った人間次第なので―――それを見つけるのも試練ということで」

 

質問を発したセツナの言葉に、アーティファクトである杖を見せる校長先生。使用者も分かっていないゴール条件。

それこそが『試練の迷宮』というものの妙味であるとしたミリエラ校長に少しだけ考え込むセツナ。

 

そうして空中に浮いていたいくつもの扉が地上に降りようとする前に乱入者がやってきた。

 

「お待ち下さい!!そのテスト!!私も希望します!!」

 

リーゼロッテ・アールシアが斧槍を持ちながらそのテストを受けると言ってきたのであった。

 

彼女いわく優秀生徒の証たる特別課外学習のテストを受けるのが4人だけでは不公平だとしてきた。その言葉にミリエラ校長も一理あると思ったのか、許可が出た。

 

そして―――。

 

「じゃ、じゃあ私も受けます!!」

 

プラムが必死な様子で決意したのか言ってきたのだ。その様子と彼女のアーティファクトの特性や彼女の性格を知るラティが止めるがやると言って聞かぬ様子。

 

また一人、試験希望者が出たことでミリエラ校長も面倒くさくなったのか、他にも希望者は募るが……。

 

「ラティ、お前はいいのか?」

 

レイとバンの立候補を断る様子のミリエラ校長。しかし、希望・自薦すらないラティをセツナは気にかける。

 

「正直言えば俺も受けたい……だが、まだだ。いまは……セツナの教えてくれたことを十二分にやらなきゃならない」

「耐えることも一つの戦いだ。蛮勇を奮うだけが戦士の道じゃない」

 

今も静かに強化を練り上げているラティに『宿題』を用意してからセツナも扉の前に陣取る。

 

宰相の依頼を断ったからなのか娘であるリーゼロッテが時々、セツナに視線を向けてきていることにレオーネは気づき、それでも扉を開け放つ時は各々でやって来るのであった。

 

 

試練の迷宮……入り込んだセツナは成る程と思う。まず踏みしめた大地は水を満たした水面のようであった。不思議な空間にいながら解析しつつ、進む。

 

(亜空間……似たようなものは『元の世界』では、いくらでもあったが、果たして)

 

「鬼が出るか、蛇が出るか……」

 

イングリスと違ってあまり強敵との戦いに胸が踊らないセツナは、あまり変な敵とか出てほしくないと思っていると……。

 

「そういうことか」

 

父が、母が、恩師が、同輩が……もう一つの故郷での人々が見えてきた。

 

その郷愁の限りが自分の慙愧を呼び起こして、

そして……。

 

「マスター、さぁ『戦争』をいや『大戦』をしよう……私達こそが最強である証明をするためにも」

「―――そういうことなのか?」

 

眼の前に現れた戦乙女……銀色の弓を持ち、大型の狼犬を従者として連れている少女の笑顔での言葉に従い……『蒼の勢力』にセツナは入り込むのであった。

 

これはあの大戦の再現。しかし、それを振り払い―――進むべきなのだから。

 

 

『若君を止められなかった俺に、レオーネお嬢様に向けるべき刃はない』

「あっ!待て!!せめて私と戦え!!いや戦ってくださーい!!」

 

幻のレオーネとレオンがハルバードで消滅した後に最後まで残っていたセツナの幼少期の姿が自動で消滅したのを悔しげに見るイングリスだが。

 

あの幻のアールメン騎士団とオルファー家の従僕たちの中でもセツナはうまくイングリスの攻撃から逃れていたのだ。

 

(幻でもあれだけの実力を発揮するとは!!)

 

地団駄踏みたくなる結末だが、レオーネもリーゼロッテもセツナに対しては刃を向けられなかったのだから……。

 

「……セツナさんは本当にオルファー家の家臣として忠節を全うするのですね」

「本当は私も分かっているの……けれど―――」

「分かりました。私のお父様が節操のないことをしたのと、先日のアナタへの中傷申し訳ありませんでした―――私も肉親が刃を交えるべき敵として出てきたらば出来るとは思えませんから」

 

そんな言葉のやり取りで少女2人のわだかまりは少しだけ解消されるのであった。そうしてから試験合格のためのゴールを改めて目指すことに。

 

「向かうべき場所はあそこだね」

 

上空という表現が正しいのかどうかは分からないが、イングリスがぶち抜いた階層の一番上に太陽のような光があったのだ。

 

おそらくそこが3人のうちの誰かのゴールなのだろう。

 

そして羽根の奇蹟で御遣いか、戦乙女のようになったリーゼロッテに連れられる形で向かうことになったのだが。

 

「―――アレは!?」

「「??」」

 

リーゼロッテの手を取っていたレオーネが気づく。おそらくリーゼロッテとイングリスは上方の光にだけ眼を向けていたから気付けなかった。

 

レオーネの言う『アレ』とは……セツナの『過去の記憶』とでも言うべきものが違う階層の『壁』に映り込んでいるのだった。鏡か水晶のようなその壁に映り出された少年の顔は、間違いなくセツナであった。

 

「近づきますよ!!」

 

流石にリーゼロッテもそれに気付いて違う階層に羽根を進めて壁に近づく。

そこに映っていたものは色んな意味で3人を驚愕させた。

 

(巨大な建物……画一的な四角形ですが、王城並みかそれ以上のものが幾つも建っている街……しかも夜だというのに、昼のように明るい……あちこちに街灯以上の灯りが灯されている)

(あちこちに騎馬よりも早くて、おまけにフライングギアよりも小さい車輪付きの機械が、いや一方でそれよりも大きいものがあちこちで走っている……なんなのこの街……天上領にもこんな場所あるのかしら?)

 

アールメンに落ちる前にセツナがいたと思しき故郷の映像に気圧される。

色んな意味で規格外すぎる違いがありすぎる『国』の様子に少女2人が慄いている中……。

 

(こんな巨大な塔か城のようなものの上でスゴイ戦いが繰り広げられている!!アーティファクトにも劣らない武器や奇蹟、そして魔術らしきものの打ち合い!!)

 

自分の前世……神騎士(ディヴァインナイト)や魔術師などが戦うジルヴェール王国の時代でもここまでの戦いは無かった。世界の違いよりも、セツナの戦いの方に注目が向かうのであった。

 

しかし……。

 

(スゴイ!!私も戦いたい―――……が……なんというか変な気持ちになるな)

 

イングリスがそう感じるのは、セツナのパートナーと思しき特徴的なティアラともサークレットともいえるものを被った銀髪の少女の姿だ。

 

リーゼロッテのように羽根を生やさずに空中を浮遊し飛び回り、ラニのように光の矢を弓から放ち、その弓がレオーネの持つ大剣の如きものに変わったかと思えば、多くの光り輝く小剣に変わったり、はたまた大槍になったりと得物が変幻自在な少女の戦いはイングリスの目を縫い付ける。

 

蒼銀の乙女……とでもいうべき彼女に対して。

 

『マスター!!』

『思う存分使え!!!』

『ダンケシェーン!!愛していますよ!!』

『やめて!!』

 

支援をしているのか何かを乙女に渡しているセツナ。戦いがいっそう激しくなりながらも、その様子に何故かイングリスの心が変になる。

 

有り体に言えば……心が乱されてしまう……。

 

(なんなのだ。この気持ちは……)

 

場面はいくつにも変わりながら、その全てで蒼銀の乙女はセツナのパートナーとして戦い抜いていたのだ。

 

まだまだ見ていたいところだが制限時間もあるのだ。

 

寧ろイングリスとしては……このようにセツナと蒼銀の乙女の仲睦まじい姿などこれ以上見たくなかったのだ。

 

「そろそろ行こう。テストを合格しないと意味がないよ」

「そ、そうねイングリス」

「ええ、そうしましょう……」

 

気持ちの方向性は3人でそれぞれ違えど、コレ以上見たくないという気持ちは一致していた乙女たちは光に向けて飛び立つのであった。

 

 

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