魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~ 作:無淵玄白
次は早いと思います。
イングリスとルーンイーターとの戦い。
その華麗繚乱な動きが、ルーンイーターにクリーンヒットを生み出さない。
『クカカッガアッ!!!』
当然、ルーンイーターもイングリスを殺そうと様々な魔印から『奇蹟』を発動させる。
(
これらが全て本人の資質というよりも、『食べる』ことでの『補完』でなっているということだ。つまりは……啜った命の多さでなっている強さなのだ。
(死徒も同然か。となれば……)
ヤツから『刻印』として『保管』することも可能か。と思いながらも奇蹟を『真似た』……fakeとして氷の刃を作り上げたイングリスだが。
「ッ!!!」
『ククッバカなオンナだ!!』
「傷つけるでないぞ!!イングリスちゃんはワシの愛妾にするんじゃ!」
食欲にだけ頭が占められているかとおもいきや中々に頭が良い。
イングリスが氷の刃を作るも相手の方は炎を手に宿して無効化した。
溶け落ちて水滴と化した刃に対してイングリスは『ニヤリ』と笑っていた。
「氷塊を刃として己の手刀を強化し、炎を手に宿すか」
「普通ならば火傷しているわよね?」
「あの身体も何か強化されているんだろうが」
ギャラリーの言いように構わずイングリスの対応は早かった。
手にした武器……サムライブレードを手にルーンイーターに立ち向かうイングリス。
『アサイな!!』
「―――そちらが、だ!!!」
実体ある鉄の武器ならば、問題ないだろうとするイングリスをあざ笑うルーンイーターだが、冷気の利器で武器ごと貫こうと氷塊の手刀を向けるルーンイーターだが……。
その剣が手刀を受け止めると同時に……。
剣は、刀はルーンイーターの腕を切り飛ばしていた。
『ネツノヤイバだと!?』
傍目には分かりにくいがイングリスの刃は火を上げることなく熱を宿した刃と化していた。
それゆえに氷塊はそれを受け入れざるを得ず、素のままにルーンイーターの腕は刃の鋭さを受け入れたのだ。
『キサマァア!!!』
痛みを堪えて返す刀で、もう片方の手刀を向けるルーンイーター。左腕を切り上げた形で右手で剣を振るったイングリス。
(左半身が無防備だな)
ルーンイーターの攻撃は速く重い。攻撃が入ろうとした時に。
その攻撃は無為に終わる。
「むぅ、なんと変幻自在な……二度目の衝撃だよ」
宰相閣下が唸るのも当然、イングリスは、左半身の攻撃を柄から伸ばした氷の棒で延伸させて防いでいた。
しかも先になればなるほどに広く氷の盾を形成していた。
非常識な限りである。
ガツン!!叩かれた衝撃と勢いは殺せず、しかしその勢いを利用して不格好ながらも両剣と化した武器を一回転。
「どっせええええい!!!」
『ブゴオオオ!!!!』
鞘に刃を収めてから柄の方の氷の棒で思いっきり引っ叩いたイングリス。
ふっ飛ばされたルーンイーターは、ミュンテーの足元に飛ばされた。
「お、おのれえ!!!こうなれば限界までマナの代謝をあげてくれる!!! そうすればキサマの体は最強になるわい!!!さぁ、いますぐ!!」
『ハラがヘッタァアアア!!!マナをヨコセェエエエ!!!!』
やはり魔素を元に活動する怪人だったようで、代謝をあげるということは、それだけエネルギー切れは早まり……。
目の前の『餌』にかぶり付くのは当然であった。
「普通、強化改造する前にまずは脳改造からするべきじゃないかな?」
「ば、ばかな。キサマを作り出したのは」
断末魔の叫びなどなく、信じられない想いのままにミュンテーは死に絶えて、聖痕を刻まれていた頭部……主に脳髄を食らうのだった。
その様子に青褪めているレオーネに言う。
「レオーネ、君が向かうのはこんな修羅巷だ。こんな地獄にいるのがイヤなら、降りるならば今の内だ……」
「セツナ……」
「家の再興ならば俺が代行する。オルファー家の名代として俺が―――レオーネお嬢の代わりにオルファー家を再興させる」
大旦那様が願ったのは、もう自分の子を失いたくないということだった。
それを考えればレオーネはただの貴族の姫として在っても良かったのに、セツナの煮えきらない態度が、若君に刃を向けられないということが、レオーネにこんな惨状を見せることになった。
恥じ入りながら、そう言っておき―――。
「こんなのは―――もう沢山なんだよ」
イングリスを押しのけて神速でやってきたルーンイーターを迎え撃つ。
次の餌として、魔術回路を解き放っていたセツナを定めたようだ。
予想通りの展開。すでに鞘から抜き放っていた村正を使った
その身体を細切れにして焼き払った九つの同時『大』斬撃が、戦いの終焉になる。
走り抜ける形で放った大斬撃。正面に立つイングリスに言う。
「―――悪いな。大トリを奪っちまって」
「いやぁ全然気にしていない。本当に気にしていないから!!」
嘘つけと言わんばかりの大声と迫る(コワイ)笑顔に辟易しながらも、騎士たちの拘束を解く。
彼らも、事態の推移の速さと展開の重さについていけないで呆然としている。
同じく拘束していた天上領側の奴隷兵たちは下知を受けていた主人の喪失を受けて何も動かなくなっていた。
「さて、結果として特使殿はいなくなってしまいましたね。どうしましょうか閣下」
「あの場合は仕方ないが―――まぁ副官のようなものがいるのだし、そちらに事情説明をして受け入れてくれるかどうかだな」
あの乗船した際に会った白ローブの男だな。と思い直しながら、呼んでこようかと思ったのだが……。
「またもや君に守られてしまったな。ありがとうセツナ・トオサカ君」
「いや、殆ど戦っていたのはこっちの銀髪のオーガー女ですし、礼はいいですよ」
「だが、君が騎士たちを拘束した上で守護の陣を貼ってくれなければ……無惨なことになっただろうしな」
その言葉に嘆息しながら、セツナの背中を叩くイングリスを無視していると、事態が動き出す。
何かが蠢いている……そう表現するしか無い様子にざわつきが生じる。
瞬間、この広い船室に多くの闖入者が現れた。招かれざる客……。
クモかサソリのような節足動物を巨大化したものがあちこちから這い出していた。
魔石獣の大群があちらこちらから溢れるように出現しているのだった。