魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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『表裏比興の果てに見える企み それは愛ゆえか』

 

「魔石獣を討ち取れ!!」

「少年少女たちだけに働かせるな!!」

 

原因の究明は二の次として現れた魔石獣に挑みかかる騎士たち。

 

もしかしたら拘束しすぎて、フラストレーションが溜まっていたのかも知れないが、その心構えに感心しつつ、状況があまりにも変化しすぎて目眩でもしていそうな宰相閣下に判断を仰ぐ。

 

ちなみにレオーネとラフィニアも動き出していた。

 

「さて、この状況どうしたものかな」

「この魔石獣が船内あちこちに溢れているならば代理の副官殿もどれだけ無事でいられるか分かりませんね。とりあえず退避した方がよろしいかと」

「日を改めるしかないか」

「先方の都合で取り引きは出来ませんでしたとも言えますがね」

 

煮えきらないわけではないが、それでも最後にはフライギアポートを目指すと宣言した宰相閣下にさらなる不幸が襲う。

 

ミュンテーの代理として目していた人間、あの白ローブの役人がボロボロの様子で血相を変えてこの部屋に飛び込んできて―――。

 

「ミュンテー様、大変です!!ランバー商会の積み荷から魔石獣が溢れてぇえええ!!」

 

その無防備な背中に爪が食い込み絶命する。

ラーアルやミュンテーのように『魔術』を使える人間であれば、もしかしたらば……使えてもあまりの異常事態にそれらを冷静に使用できなかったかもしれない。

 

しかし、死人からの言葉(ダイイングメッセージ)を受けて室内にいる全員の目がランバー商会の代表に向かう。

 

向けられたファルス・ファーゴは……もはや隠す必要も無いと悟ったのかイヤな笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

 

「まさかファルスさんが血鉄鎖旅団……!?」

 

ラフィニア曰く、ノーヴァの街では天上人の領主の『従順なる従者』が、彼らと繋がっており、領主に『毒』を与え続けていたとのこと。

 

つまり……誰がいつそういうテロ組織に繋がるか分からんということ。

 

しかし、ファルスはラフィニアの出した答えに物覚えの悪い生徒を諭す教師のように訂正をしてくる。

 

「確かにこの魔石獣は俺が用意した刺客だが、俺は血鉄鎖じゃあない」

 

そしてバンダナを剥ぎ取りその額を晒す。

そこには地上の人間ではありえぬものが刻まれていた。

 

「天上人!?」

「なぜ聖痕持ちが……」

 

周囲の驚きを受けながらも余裕綽々のままに、ファルス・ファーゴは言う。

 

「アナタ方が色々と『心』や『思想』も分かれているというのに、我々天上領にも『派閥争い』があると分かりませんかね?」

 

まるで『本当の商人』のように天上人の下手人は、叛逆を行おうとしていた領地持ちの騎士たちに語る。

 

その言葉に少しだけ苦しい顔をした騎士たちを助けるべく、セツナは口を開く。

 

「つまり、アンタの目的はミュンテーの殺害だったのか?」

 

「そう。『キョウシュレン』側のミュンテーを殺害するには地上で繋がりを持っていたランバー商会の人間に成り済ますのが良かったんでな。案外、あのミュンテーはやり手だったのさ。決して危険な相手の懐に入らず、かなり用心深かった……特に宰相閣下の側にあんな数の騎士たちがいれば同数の奴隷兵を帯同させていたさ……あの魔素食いの怪人がいたとしてもな」

 

そんなミュンテーの気が緩み、目算が狂った原因とは……直前の出来事が原因なのだろう。そうとんでもない見目だけのバトルマニアの女は――――。

 

「魔性の女……」

「誰を評しているんだーい?」

「傾国の美女と呼ぶにゃまだまだだろ」

 

横目で見ながら言うと、(コワイ)笑顔でこちらを威圧してくるイングリス。

 

だが、それを見計らったように、ファルスはこちらを指さしてくる。

 

「そしてもう一つの目的は、お前ら仲良しこよしな男女2人の殺害だ。

ラーアル殺害の主犯……イングリス・ユークス、セツナ・トオサカ。お前たちが目的なんだよ。ミュンテーの件はともかくとして、ラーアルの仇は取らせてもらうぜ」

 

そんな風に言われるとは……仇討ちの斬奸となると、どういうことなのかと高速思考を働かせる―――導き出した答えは。

 

「ファルス・ファーゴの姿に成り済まし、本人は元々ランバー商会と繋がりがあり……」

「なおかつ、ラーアルの仇討ちを狙う天上人―――あなた、ラーアル殿の父親のランバーさんなのか?」

 

渡りセリフよろしく導き出した答えがイングリスと重なる。

 

それに対して当然ながら驚愕の声は周囲から上がるのだった。

 

「えええっ!? クリスもセツナくんも何を言っているのよ!?ランバーさんは私達が5才の時点でも30は超えたおじさんだったし、体型だってこんな風じゃなかったわ!!」

「まぁ幻術的なもので、ミスター・ファルスになりすましている可能性もありますし、ハイランドには地上にはない変装・変身の技術があるかもしれないしな」

 

ダイエットしてのビフォア・アフターにしては変わり過ぎなランバーの現在はラフィニアには、おどろ木ももの木さんしょの木のようだ。想像力が足りないとするかどうかは微妙なところだ。

 

「ただ術士として達者であったミュンテーが見抜けなかったということは幻術による変装じゃなさそうだな」

「敏いな。天上領にはそういう技術があるのさ。地上ではありえぬ医療技術……異常ある臓器を正常なものに取り替えたり……古い身体を捨てて新しい身体を得ることもな」

 

その言葉に全員がおぞましいものを見るかのようにしている一方で……。

 

「……アナタがあのランバーおじさんなのか?」

「ラーアル君と一緒に天上人になったとは聞いていたが、そんなことを……」

 

恰幅の良かった頃のランバーを思い出せる騎士たちもいるわけで、ランバー商会の顔の広さが知れる。

 

「そのように親しげにしなくてもいいんじゃないかな?どうせ娼婦や奴隷を天上領に売り飛ばしている下種な商人でしかなかったんだ。貴方がた貴族のように清廉潔白に生きれる人種ではないのでな……軽蔑し侮蔑して構いませんよ」

 

しかし、ファルス=ランバーは、その懐かしさを持った言葉を切り捨てる。ラーアルもそうだったが、親子揃って自分を卑下するというクセがあるのだろうか。

 

(違うな。この王国の政治体制がそれを生み出しているんだろう)

 

それを感じつつも、どうしたものかと思う。

 

「恨みを晴らすってんならば、俺とイングリスだけでいいだろ?ほかは勘弁してもらおうか。アンタの目的にこちらの宰相閣下と騎士団たちは含まれてはいまい」

 

「確かにそれは正論だ。だが……だからといって目撃者はすべて消すということも一つの考えなのでな」

 

腐ってやがる。と想いながらも、構えを取りながら最後の懸念事項を聞くことに。

 

「最後に聞いとくが……本物のファルス=ファーゴはどうした?」

 

「―――生きているさ。流石に『私』でも長く苦楽をともにしてきた同業者……同じ商人を無体に扱えるような人間ではない。この顔は今回に限っての偽装なのさ」

 

その寂寥を込めた顔に人間臭さを感じながらも、やはり切らざるを得ないかと感じる。

 

「しかし、如何に魔石獣がいるとはいえこれだけの数に勝てるとお思いか?ミスター・ランバー?」

「さて、あなたのように武を、戦を知らぬものには分からぬ道理もあるのかもしれませんよ。自慢ではないが『天上人』になり、『身体を交換』したことで騎士としての兵役義務も着いたのでね―――」

 

宰相閣下の言葉に勝算はあると語るランバー。

 

そして……。

 

「さて、コレ以上の話に意味はないだろう―――」

「だから、やらせてもらうだけだ!!」

 

先制攻撃として放ったのはセツナである。

 

「コラー!!セツナこの網糸を外せ!!このヘンタイ!!」

 

ここに至るまで今にも鉄砲玉よろしく飛び出しそうなイングリスを抑えていたセツナは、その網糸を変化させて周りにいる魔石獣をひっ捕らえて20匹前後のそれを団子にまとめるようにしてから―――

 

砲弾よろしく次から次へとランバーに投げつけていく。

 

高速で飛び交う硬質の身体を持った節足動物を前にして。

 

「――――」

 

残光一閃。

 

両断された団子が左右の壁にぶち当たり肉塊と体液を撒き散らしたあとには消滅していく。

 

「初撃で相手の性能を測ったつもりか。最初はマナが反応しない異空間で魔石獣に殺させようとしたが、やはり仇は自分の手で取ったほうがいいな!!」

 

そんなことを言うランバーの手には二刀の剣が握られていた。

 

剣といっても、長剣というよりもショートソード(小剣)の長さの得物が2振り。達人でなくても決して扱いに窮しないだろうサイズの選択である。

 

(などと定型どおりの考えを持ったらば恐ろしくスキを突かれるだろう)

 

天上領の騎士に与えられた武器なのだから魔印武器のように超常能力があると考えるべき。

 

故に―――。

 

「私が行かせてもらいますよ!!」

 

鉄砲玉を向かわせることにした。

糸の拘束から解き放ったイングリスは剣を抜き放ち、ランバーに風神の如く向かう。

 

それを受けたランバーは、イングリスを迎え撃つ姿勢を取りながらも。

 

「やれ、ミアゾン!ガルマイン!!ロディアン!!フドラ!!」

 

下知なのか召喚の呪文だったのか、それは分からぬがランバーの言葉を受けてこの室内に四体の異形が勢いよく入り込んできた。

 

(手勢を用意していたか)

 

かろうじて人型(じんけい)を取れているものが多い中で、一番異様なのは―――。

 

「ひぃい!な、なんなのよ!?あれは!?」

 

ラフィニアが悲鳴を挙げてしまうほどに、おぞましさを覚えているのは恐らく『イソギンチャク』のような身体(?)に真ん中から生首を生やしているものだろう。その生首とて生きてはいないのか死んでいるように虚ろな目をしている……。

 

ちょっとしたホラーである。ここまでのフリークス・イマジンをセツナも元の世界では見たことがない。

 

「魔石獣が元の生物の特徴をそれなりに有しているというのに、これらが一様に元の生物の特徴を有していないのは―――」

「人間をそういう風に作り変えたっての!?」

「ファルスの言うことが正しければ、そういう人体をあからさまに弄る連中がいるんだろ。天上領には」

 

本当にオーバーテクノロジーすぎる。怪物創造・合獣作成などの領域以上だ。

 

「そいつらは地上から送られてきた奴隷や娼婦を改造した魔人だ!知能こそ幼児並みだが、能力そのものはそこいらにいる奴隷兵以上、ミュンテーのルーンイーターと同等だと思いな!!」

 

三流の悪役よろしく勝利を確信したようなランバーの言葉、剣戟の間に聞こえてきたそれに気を引き締めながらも何かのターゲット優先の道理があるのか……。

 

「セツナ!!」

 

警告が聞こえる前から、セツナは動き出しその攻撃を躱していた。

 

(大砲のようなものを担いだ鎧兵か)

 

不意打ちの攻撃は左右の肩口にある二門ずつの砲からである。

鎧の機構なのか、それとも本人の性質なのかは判別出来ない。

しかし、威力はかなり高く、まともに喰らえば痛いどころでは済まされないのは木っ端微塵になった調度品から分かる。

 

そして粉塵吹き上がる砲撃跡を見聞する。

 

(火傷の後が見えない。放たれたものは魔力光(ビーム)ではなく、かつ飛来したものに砲弾のようなものも見当たらない)

 

となれば自ずと理解する。

 

「空気を砲弾として打ち出しているのか」

「ォオオオ!!!」

 

見えない弾丸となれば脅威ではあるが―――。

 

(対策はいくらでもある)

 

肩にある砲という射角が限定的な上に、何よりその巨体である。それは砲の反動を抑えるための足場であり台座の役目だったようだ。

 

ゆえに……。

 

「あんな身を低くしての接近を出来るなんて!?」

「ニンジャというものか!?」

 

違います。とクモ魔石獣を主に相手している騎士たちに内心でのみ言ってから、射角を下……足元に向けられずに難儀する巨漢砲兵に接近する。

 

塹壕でも掘って身を屈めれば別。あるいはもっと距離があればだったが、この狭い船室であるということが彼を戸惑わせる。

 

更に言えば、クモ魔石獣は敵味方の識別など無いようで巨漢に向かっていき、それにも難儀している。ついでに言えばセツナはそれを蹴飛ばしてぶつけたりしているのだが……。

 

『ゔぉおおお!!』

 

もはや狂乱状態の相手はその巨体を武器にセツナに向かってくるが―――。

 

「決断が遅いんだよ」

 

既に足元にまで接近。跳び上がるようにして切り上げの一撃。肉を切り裂き、骨ごとの割断。そして、飛び上がりからの切り下ろし―――。

 

確実に命脈を断つ絶対の殺人術を前に巨漢は―――。

 

「ありが―――トウ……」

 

聞こえてきた言葉にセツナは。

 

「感謝なんかしないでくれ」

 

追い剥ぎよろしく巨漢から砲をガメてから、彼の身体を火葬することでコレ以上の死体弄りをさせないようにすることしか出来なかった。

 

 

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