魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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というわけで新話アップです。




『喋喋喃喃? 宴前の恐るべき刺客参上!?』

 

結局のところ、仕立て屋でイブニングスーツぐらいは買えという主命を貰い、結局のところ街中に出ることになってしまった。

 

別にソレはいいのだが……。

 

「なんでキミらまで着いてきてんの?」

 

おじゃま虫というわけではないが、1人で行こうとしたところに、ユミルの貴族の姫2人が着いてきたのだ。

 

「いや、私達も仕立てなきゃならないからさ。特にクリスなんてどんだけ成長しているか分かったもんじゃないし!!」

「ラニ!!」

 

自分の(慎ましやかな)成長はいいのかよ。とでもいうべきラフィニアの言葉を聞きながら思う。

 

「…それと、レオーネから本当にイブニングを買うのかどうかの監視も兼ねているんです」

 

咳払いしながら言われたことにやれやれと苦笑しつつ、肝心のレオーネはリーゼロッテによって王都の馴染の仕立て屋で用立ててもらうとのこと。

 

「まぁお嬢は同年代と比較しても「ご立派さま」すぎるボディの持ち主だからな」

 

自然と、下着もそういう場所(ビッグ専門店)を案内されなければいずれは困るかもしれない。

 

そういう意味ではリーゼロッテのように王都に馴染み多い女子に案内されてもいいはずだが。

 

「キミはいいのかよ?」

「確かにクリスの胸は、そういう所に行った方がいいかもしれないけど、まぁ今はドレスの仕立てだけだから」

「そういうことか」

 

ラフィニアの言葉に再度納得する。

 

「両手に花で嬉しいですか?」

「花……?」

 

往来を女子2人と連れ立って歩くのは確かに目立つことこの上ないのだが。

その言葉には少しだけ疑義を覚えて花というには疑惑ありすぎる『銀色の造花』を見る。

 

「花だろうが」

 

こちらの疑問に対して笑顔で怒るという器用な真似をしながら自分の左腕を掴み絡んでくる銀色の造花(イングリス)の行動を真似たのか右腕に絡んでくるラフィニア。

 

確かに胸囲の格差社会は存在しているのであった。

 

そんな風に王都の人々からやっかみの視線が5割増状態で目的の仕立て屋まで歩いていたところにて……。

 

「やれやれレオンもそんな感じだったけど……」

「主と従者は似るならぬ、兄と弟は似るのかもね♪」

 

とんだ評価を聞きながらも……その声の持ち主は気楽に挨拶してきた。

「エリスさん!」「リップルさん!」

 

セツナの左右から声を出したユミルの姫たち。カーラリアのハイラル・メナス2人がやってきたのだ。

 

「どうもお二人共、ご息災そうで」

「あなたもね。とはいえ、少し前のことで随分と大活躍だったそうね……大丈夫?」

「問題ないですよ」

 

国境にてプリズマーの監視業務を行っている2人のハイラル・メナスの言葉に苦笑しながら答える。

 

今回のことは随分と生臭さが漂う事案であった。

 

「船内で特使ミュンテーに斬り掛かったのは主にシェイザー近辺に領地を持った騎士たちだったわ」

「そういう裏事情、聞きたくありませんでしたね」

「そして、アールシア宰相の護衛のメンバー選定は王国の軍事顧問も務めているウェインだったりするのだー」

 

だからそういう事、言うんじゃないよ。ともあれその言葉で王子殿下に淡いものを秘めているラフィニアは少しだけショックを覚えたようだ。

 

「まぁウェインとしては、今回の取り引きを台無しにしてしまえれば、ぐらいだったかもしれないから。あんまり深刻にならないでよラフィニアちゃん」

 

失言だったことを自覚したのかリップルがラフィニアを慰めるように声を掛ける。どちらにせよそういう恣意的な人事をしたことが、どういう結果をもたらすかを『予測』していたウェイン王子は、策略家ではあろう。

 

(そのストッパーとしてセオドアさんは、俺にアレを寄越したんだろうな)

 

特使ミュンテーに秘密裏に運び込まれていた荷をレオンに渡すように言ってきたのとは別に『出来るだけ人死を出さないように』という言葉だった。その一方で天上人の方は構わないとしていたのは、次のカーラリアとの窓口となるセオドア様の派閥が滑り込むには、余計な生き残りを出すなということだ。

 

薄氷の上を滑る……とまではいかずとも、中々に嫌なオーダーだと思いながらも……なんとかこなせたわけだが。

 

「というかお二人がここにいるということは……?」

「今度の特使就任パーティーには私達も出席するのよ。まぁドレスを仕立てるわけじゃないけどね。ラファエルが、ユミルの妹2人に会うには多忙すぎて……」

 

イングリスの疑問に答えつつ、何故か自分の方を見て苦笑するエリス。

その意味は何となく分かってしまった。

 

「様子を見てきてくれと言われて、こんな衝撃的な場面に遭ってしまって!ああ、ラファエルくんには、どう伝えてもシュラバ!!」

「見たままのことをそのままに伝えなくてもいいんじゃないですかね?真実とも限りませんし」

 

リップルの劇役者のような大げさな嘆きのポーズと、言葉にそう返しつつ。

 

「とりあえずこの2人が先ですけど、何か軽食でも食べますか?」

 

2人の要求を何となく察して言ったあとに、殺気に対して瞬時に対応する。最初に対応したのは、イングリスであった。

 

「あれ?ラファ兄様じゃない?」

「クリス!いくらラファ兄様でもいきなり斬りかかる―――とも限らないよね……あんな衝撃的な場面を見たらば……」

 

巨大な鉈のような剣を振るう異形の―――魔石獣だろう存在の一撃を受け止めたイングリス。そんなイングリスの言動に対して、先程まで自分がやっていたことを自覚したラフィニアがそう納得するが。

 

「そういう場合、俺に対して斬りかかると思いますけどね」

 

どう考えても獣人が魔石獣と化した存在を見ながら対応をするが……。

 

「リップルさん。調子悪いなら下がっていてもいいですよ」

「簡単に見抜いてくるなぁキミは」

「同族殺しをしたくないというだけではないように思えましてね」

 

この『突如』出現をした獣人型の魔石獣が現れたことによる苦衷なのかと思っていたのだが、そうではない肉体的な変調をリップルに見たのだ。

 

「最近、リップルは魔石獣と相対した時にこうなるのよ。プリズムフロウの影響かもしれないけど原因はいまだ不明」

「これを倒せばリップルさんは回復するんですね。ならば全力で相手します!!」

 

単純明快な作戦目標ができたことでイングリスは動き出す。その動きとパワーはとんでもない。とはいえ、元々の肉体的スペックが人間より高い獣人に対しては他の魔石獣ほど優位を取れていない。

何より徒手空拳ではなく武器を使うという知性を持っているのだから、必定素手ではない。

 

しかしながらイングリスはそれでも段々と優位を取っていく。

 

「クリス!相手は氷とか水の属性だから氷の剣では中々ダメージが通らないよ!」

 

この世界にも『木火土金水』『火水土風』などのような『属性』というものはあるらしい。それは人々の間で普通の考えではないが、魔石獣ないし魔印武器などを用いる『敵』との戦いではそれなりに知られている原理ではある。

 

単純に考えれば火を扱う相手に風の属性を持った武器なんて火を煽る結果にしかなり得ない。コンビネーションで相手にダメージを与えるならばともかく。ともかくとして―――イングリスはセツナの研ぎ直した剣に氷の刃を付与しての剣戟を行う。

 

「分かってるよ!けれどね!!」

 

ラフィニアのアドバイスをどこ吹く風で氷の剣を連続で叩きつけて獣人型の魔石獣は消え去った。

 

削岩機のような音で魔石獣を倒したイングリスの剣戟は一点集中で魔石獣の胸を貫いていたのだ。倒された魔石獣から消滅する間際に魔石をガメるのを忘れず―――。

 

(もはや盗賊みたいだな……)

 

とはいえ、神秘に携わるものはすべからく『盗賊』みたいなものだ。そうして我が身の所業に納得させながら、何となく死体を検分していたところに。

 

―――甲高い咆哮が響く。

獣人型が生き返ったわけではない。

 

空から響くそれは―――。

 

「竜!?」

 

いきなり現れたそれに王都の人々も天を見上げて驚いている。決して巨大というわけではないが、伝説上の存在と知られていて空想の存在とも思われている白き竜が現れて、それに跨っていたらしき1人の美女が王都の路地に降り立つ。

 

それは白銀の髪―――氷雪を思わせる髪を伸ばして白い獣の耳を持っており、媚態を強調するような衣装に尻尾を出していた。

 

(まさか……!)

 

その衣装と雰囲気、そして白竜に跨るという事実……幾何学的な模様の仮面で顔の上半分を隠していても分かる異様な圧力に間違いないと気づく。

 

(だが、なぜここに!?)

 

疑問を解決するには、言葉を交わさなければならないのだが、それをする間もなく。

 

「新手か!ならば私が―――」

 

イングリスが突っかかるように向かうが、そんなイングリスに対して……仮面の女獣人は―――。

 

「わ、私を踏み台に!?―――どむっ!!」

 

それよりも素早く機敏に対応してイングリスの頭を足蹴にしてからセツナに向かってくる獣人。

 

それを受けて覚悟を決める。どういう因果かはわからないが、それでも。

 

(ここでやられるわけにはいかない!)

「トレース・オン」

 

胸中の言葉とは別に唱えた呪文に従って陰陽の双剣がセツナの手の中に現れて、その重みを獣人女に振るったのだった。

 

 

 

 

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