魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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『怒髪天男!乱れ揺れる男心、その行方は?』

乗合馬車にようやくやってきたお嬢さん方の衣装は艶やかななものだが、それをジロジロと見ないのは紳士として当たり前だったはずだが。

 

『『『似合ってますか?』』』

「ちょう似合っております!!」

 

3人の女子は全員して自分に見せつけてくるのだから、どうしようも無かった。

『若いですねー♪』などと言うミリエラ校長の言葉を聞きながらも、不満を持つものが一人いた。

 

「なんで赤なの?」

「色々、事情があるとしか言えない」

「昼間から情事に耽っていたから?」

「語弊と誤解は多分にあるが、分かってるじゃないか」

 

主人であるレオーネからジト目でそんなことを言われつつも、黒系統のスーツにしておけば良かったと少しだけ後悔。しかしディープパープルのドレスに合わせることは無理だろう。

 

だが、赤はあまりにも贔屓がすぎたか―――選んだイングリスは、何故か『威張っている』。

 

『多分だけどいつも私がクリスのドレスの仕立てをしていたから、自分にも見る目があるのだと嬉しいんだよ』

 

ラフィニアの小声に、なんだそりゃと思いながらも今回のパーティーでのことをミリエラ校長は馬車の中で話す。それは先程、セツナと話していたことも含まれているが……それとは別のこともあったりする。

 

「団長を名乗る仮面か……仮面で顔を隠すということは、その素顔は何かの事故で焼け爛れたおぞましく醜悪なものであり、『我が妻になるものはもっと悍ましいものを見ることになるぞ』とかあるかも」

『『怖いこと言わないで―――!!!!』』

 

血鉄鎖旅団の鉄仮面……団長を名乗る男の話になった際に口出ししたが、どうやらレオーネとラフィニアは、『スケキヨ』はお気に召さなかったようだ。

 

「あるいはどっかの亡国の王族など高貴なお家柄でその素顔を隠さなければならないとかかな」

『『えっ!?王子さまなの!?』』

 

百面相な変化を見せる2人に、苦笑していると……。

 

「あるいは制御不可能な邪眼や魔眼を封じるために仮面をしているとか。その顔にはいくつもの目が存在している!!!」

 

なぜに話題をホラーからロマンスに変えたというのに、ふたたびそちらに戻すのか……。怖がる2人にしたイングリスに呆れた顔を見せてから深く考える。

 

(俺の世界では、仮面の男は何か……『本心』を隠しているというのがセオリーだからな)

 

機動兵器のエースパイロットが父を亡き者にした国家指導者たちへの復讐を誓ったり。

 

これまた亡国の王族が機動兵器のエースとしてなんか敵味方があっちこっちと変遷しながらも、結局のところ……妹想いのいい兄ちゃんでしたというオチが着いたりするのだが。

 

(兄ちゃんねぇ……)

 

連想したことから少しだけ想像を巡らす。

 

今から向かう王城で会う馬車の中にいる2人にとっての兄貴からは、おそらく嫌悪を抱かれることは間違いないだろう。

 

その予感を持ちながらも馬車は中の喧騒とは別に恙無く城へと到着するのであった。

 

特に出迎えの人間がいるわけではないが、ともあれまずはハイヒールに慣れている風ではないラフィニアに手を貸しつつ馬車から出て、その後に全員をエスコートする。

 

「慣れていますね」

「そりゃ従者ですから、イングリス・ユークス姫君」

 

如何に連れ回すのが、レオンとはいえそういうのは学んでいたのだ―――元の世界で、遠縁のフ■ン■■ドの貴族から……。

 

などと内心でのみ言いながらイングリスに手を貸して降りさせると―――。

 

「ラファ兄様!!」

 

バッドタイミング過ぎる相手の登場に冷や汗が流れてしまう。

 

このタイミングでラファエル殿は―――。

 

「それじゃ俺はレオーネに就くようだからあとは大丈夫だろ」

 

イングリスから離れることで逃げることにしたのだった。逃げたかったというのに……。

 

「知らなかったのかい? 聖騎士からは逃げられない」

 

あんたはどこの大魔王だと言いたくなるような言動で近づいてきたラファエル。

 

「エリス様とリップル様から聞いているよ。城下では随分と大活躍だったそうだね」

 

告げ口をした天恵武姫に、あのBBAどもと内心でのみ悪態を突きながら、鬼の顔をしているラファエルに弁明をしておこうとした時に。

 

「待ってくださいラファ兄様。兄様が怒っていらっしゃるのは、私の胸をセツナが揉んだことですよね。だとしたらば、その原因は拘束術を使った私にありますから、怒るのならば私を怒ってください―――ふしだらな従妹(いもうと)と怒ってください」

「ク、クリス……」

 

セツナの窮地を救ったのはイングリスであった。それに感謝をしつつも、まぁ元凶ではあるよな。と感謝を打ち消しておくのであった。『およよ…』などと泣き真似をしてラファエルを狼狽させているイングリスに魔性の女というイメージは持ってしまうのだ。

 

「セツナを私に近づけさせたくないなら……ラファ兄様、エスコートお願いします」

 

笑みを浮かべて手を差し出したイングリスに対して真正の姫君よろしく跪いてから手を取るラファエルの姿。

 

「―――ああ、もちろんだよ。こんな綺麗なドレス姿のクリスをエスコート出来るだなんて騎士冥利、いや男冥利に尽きるよ」

「あはは……大袈裟ですね兄様」

 

少しだけ呆けていたラファエルだが、イングリスの誘いを受けて多弁を尽くして礼賛するのだが、それに対して若干引き気味のイングリスに怪訝な思いを受ける。

 

必然的に聖騎士ラファエルの妹たるラフィニアとレオーネの手を取りながらパーティー会場に入り込んでいくのだが、2人の背中を少しだけ遠くに見ながら少しの疑問を解消することに。

 

「ラフィニア、あの2人って婚約しているんじゃないの?」

 

意外なことにその手の事に興味津々であったレオーネが聞くことになった。それはセツナの疑問とも合致している。

 

「ううん、確かに私のお父様とお母様もそれを狙っていたんだけど……クリスのご両親。リュータ叔父様とセレーナ叔母様は恋愛結婚だったから」

 

その事実に意外な想いを抱く。

 

「貴族の婚姻は縁戚のつながり……他家(いえ)他家(いえ)の関係を強化するものだと理解していましたが」

「まさか、そんな進歩的なことをやっているとはね……」

「結果として、自分たち(両 親)がそうだったからこそ娘であるクリスにも、そういう結婚相手の自由を、人生を縛り付けたくないというのがあったんだね」

 

ふふん!と何故かエラそうにふんぞり返るとまでは言わんが自慢げなラフィニアに、苦笑しておくが……。

 

「だからこそラファ兄様は、クリスと何かと近しくて明け透けに言い合えるセツナ君を警戒しているんだね……」

「我が国が誇る聖騎士殿でアナタの兄君の心を乱して申し訳ありません―――が、俺個人は別にイングリス・ユークスに何か異性として惹かれるものは無いんですよ」

「そうなの?」

「そうなんですよ。まぁ見目は麗しいのかもしれませんけどね」

 

レオーネの疑問の言葉に思うところを言っておく。

 

「逆に女子陣に聞きたいんですけど、イングリスは俺のことをどう思っているとか聞いているんですか?」

「そ、それは……」

「ノーコメントでおねがい!」

 

言い淀むレオーネとは反対に絶対に言わないという態度のラフィニアで、なんとなく知れることがあったが……ともあれ先導する2人に付かず離れずの距離でいながらも、パーティー会場に入り込む。

 

こちらは特使と来賓の貴族、王族とがいるわけではなくどちらかといえばそれらの子女・子息たちが飲食するスペースのようだ。

 

セオドアの姿が、この大広間には見えないこと、自分たちと同じかそれ以下の歳の少年少女の姿の数からそう推測する。

 

「特使殿に目通りするのは、他の方々の後が良さそうですね」

「そうだね。今は王族や有力貴族の方々との話が優先だから、申し訳ないけどしばらくはここで食べていて、その時になれば呼ぶから」

 

流石に怒気を抑えたらしきラファエルにスケジュールの確認をしておくことで待機の目安を知っておく。

まぁ、ハラヘリウムな2人の妹がいたのでラファエルとしては、ここはそれで良かったようだ。

 

「僕は特使殿と殿下の護衛を―――」

「ラファエル殿、警戒を」

 

次の言葉を放って妹から離れようとしたところに、不意の危険を知らせるような感覚がセツナの中に走り抜ける。

 

空間の『歪み』としか言えないようなものが現れたあとには、そこから白銀の獣人が現れた。明らかに少し前に王都でセツナと立ち回りを演じた獣人であるのは間違いない。

 

『そっくりさん』であるならば、後ろから本人が出てくるはずだが、まぁそれは余談としても、その手には剣呑な得物が握られており、どう考えても狼藉者であるのは間違いない。

 

「彼女が君と戦った獣人か?」

「そっくりさんである可能性を除けばそうだろうと思います」

 

己や他人を『複製』『濫造』する術が無いとは限らないが、現れた獣人は自分が戦った『大戦』の中で蒼のライダーとして共に戦ってくれた英雄のはずだ。

 

そんな自分の値踏みを知ってか知らずか、駆け出してきた獣人に対して。

 

「ラニやクリス達!アカデミーの後輩をやらせるものか!!」

 

無理にセツナやレオーネを含めなくてもいいですよと言いたくなる前口上とともに駆け出したラファエルが、英霊とぶつかり合う。

 

異世界の騎士と異世界の闘士との本来ならありえざるはずの闘劇が繰り広げられる。

 

 

 

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