魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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今話は堅い感じですが、次話はちょっとサービスするかもしれません


『古姫激怒!女の過去を探るのはタブー!』

エリスに連れられてやってきた場所では、件のリップルが、調子を悪くしている―――というだけではなかった。

 

半球状の黒いドームに包まれたリップルの様子、そして恐らくだが、こちらにも獣人種の魔石獣が現れたらしき、乱闘の様子を見てからその様子を『魔眼』で見ておく。

 

そうしてから懐から懐中時計のような『魔力針』で『計測』をしておく。

 

その最中、周りの連中のなんというか無責任な懐疑論とも学級会議レベルの議論を聞きながらも、その中から外れておく。

 

リップルに対する疑惑……というよりも天恵武姫という存在への疑念に噛みつくはラフィニアであり、理想論とは思いつつも、この現象の根本は理解できた。

 

問題は―――。

 

「ラフィニア嬢はずいぶんと剛毅だな」

 

「組織には1人ぐらい身綺麗で理想論をかます人間は必要でしょ」

 

「それは確かにそうだな。で、解決は出来そうかな?」

 

「可能ですよ。ただあまり大っぴらに見せたくはないですね」

 

別に元の世界で守ってきた神秘の秘匿というものを気にしているわけではない。ただ、あまり多くの貴族などに『自分の能力』を知られるのはイヤであるということだ。

 

そんな自分(セツナ)に対して……。

 

「だが、この場でそれなりの解決をしなければハイラル・メナスに対する貴族たちの懸念は払拭できまい。そして、私はこの場での解決をしない君に関連して―――オルファー家の取り潰しも視野に入れていると言っておこう」

 

普通ならば議論の中心にいるべきウェイン王子の脅しを含んだ説得に嘆息しつつも、答える。

 

「別に俺にとってもリップルさんは知らない人間じゃない。それを救うのに出し惜しみはしませんよ―――衆目に曝されるのはカンベンですけどね」

 

そんな風に言ってから目立つ形ではあるが、従者でしかない小僧がリップルの傍に近寄って、その枕元に短剣……柄尻に大きな宝玉を嵌められたものを突き刺してから何かをしていく。

 

「―――――」

 

イングリスが知らない言語―――共通言語(コモン)ですらない口頭言語を口にするセツナ。しかし、その言葉が導いたのかは分からなかったが、リップルを包んでいた半球状のドームは、ガラスのように砕けてそれらは何かの『チカラ』に変化して剣の宝玉に吸収されたのは理解できた。

 

(やはりこやつは魔術のような技法を利用している)

 

それが天上領やイングリスの前世にあったシルヴェール王国のようなものなのかは分からないが、ともあれそれを受けたことでリップルの不調は解消されたようだ。

 

起き上がって調子を確認したリップルは……。

 

「なんかすごくお腹すいたねー」

 

などと気楽な様子を見せたことで一同が脱力した中……。

 

「リップルさん!!!」

 

ラフィニアがリップルに抱きついて安堵している様子だった。少しだけ戸惑うリップルだったが、ラフィニアに心配させたことを『ごめんね』と謝っている様子だった。

 

そんな感動のシーンから退場をして、短剣を鞘に収めて懐に入れている男に近づく。

 

「見事な術でしたが、何をしたんですか?」

 

やってきたイングリスに対して、セツナは笑みを浮かべて……。

 

「―――ひ・み・つ♪」

 

人差し指を尖らせた唇の前に持っていきながらそう言った瞬間、キックをお見舞いしたい気分になったことは間違いではないはずだ。

 

「リップルさんを癒やしたという事実だけで収めとけよ。俺は自分の秘密を吹聴したがるタイプじゃないんだ」

 

「むぅ……」

 

「それにお前は戦闘系のスキルを覚えたいんだろ。これはいいんじゃないかな?」

 

無駄ごとだと言われては何も言えないのがイングリスである。

 

「くやしいけれど、おれに夢中か?」

「そ、そんなわけ無いじゃないですか!!」

「それは僥倖だよ」

 

そんなやり取りをしていると、それを聞きつけたのか何なのかエリスがやってきた。

 

「そんな意地悪をするもんじゃないわね。男の秘密を知りたいと思う女の子の気持ちを察せられないわけじゃないでしょ―――それに、そういう術を惜しげもなく使うアナタは他とは違うと分かっているから」

 

「……そういう意地腐れな男に弄ばれたんですか?」

 

「アンタはもうちょっと口を慎むべきね。女の過去をあまり詮索するもんじゃないわ」

 

「レオンが言っていたんですよ。『エリスは、なんつうか昔の男を引きずっている風だ』って、多分だけど俺よりもソイツは出し惜しみがすぎるというかケチな人間だったんでしょうね」

 

セツナの言葉を受けてエリスは思い出したくないことを思い出しているのか最初はすごく思い悩みながらも、最後には怒りの表情で―――。

 

「セツナ、私はアナタに感謝しているわ。術を使って誰かを癒やしたり手助けしたり、感謝の念は絶えないわ」

「そんな大袈裟な。気にしないでください」

 

「そんな前から知っている男の子に私も年上としてあまり強い言葉はいいたくないんだけどね……」

「「はい?」」

 

何故かイングリスまで問い返したくなるタメの言葉……そして―――。

 

「お黙りっ!」

 

―――どっかの高貴な生まれを思わせる叱責の言葉がエリスから飛ぶのであった。

 

 

「見事な手際だったね」

「エリスさんからは怒られましたけど」

 

ラファエルによって連れられたことで男2人でむさ苦しい会話をするはめになった。

 

「なにか聞きたいことがあるんでラファエル卿」

「うん、君は……クリスのことが好きなのかい?」

「異性としては好きではないですね」

「異性としては?」

「戦うもの―――戦士としては信頼しています」

 

少しばかり状況を複雑にして厄介を増やす場面もあるが、結局のところ事態を解決出来ている(トラブルシュート)ならば、特に言うべきことではないだろう。

 

「まぁ、アナタとイングリスが婚約していないのは少々びっくりしましたけどね」

「色々とね。我が家とユークス家との間でのことだ」

 

口を出すなという言葉を裏に感じつつ、オレンジジュースで喉を湿らせておく。

 

「色々と手続きは必要ですが、どうやらウェインはミス・イングリスの提案通りにアカデミーの方にリップル殿を移すようです」

「国境における戦力は減ですね」

「それは聖騎士であるラファエル殿の双肩にかかっていますね」

 

やってきた新任の特使であるミスタ・セオドアに言いながら、何を言われるかを考える。朗らかな態度ではあるが、こういう相手には腹蔵を晒すのはマズイと思えるのだ。

 

「ミスタ・セツナ、リップル殿を頼むよ。君だけがこの事態に対して所見が多いんだ」

「……その願いを聞くついでですがセオドア様。どうしてそこまでカーラリア王国の肩を持つんですか?確かに天上領にも勢力争いの類があるのは分かりましたが……」

「セツナくん」

 

あまりにも突っ込んだ質問であったのか、ラファエルに窘められるも、手を挙げて構わないと言うセオドアは言ってくる。

 

「はっきり言ってしまえば―――我々、大公派の3つを合わせても既に教主連側の勢力には勝てないんです」

「――――」

「――――」

 

その言葉は重すぎた。それでは、カーラリアは既に負けが確定している勢力に肩入れしているようなものだ。同席していたラファエルも驚愕を出さないように努力してもダメであった。

 

(カーラリアはその機微を掴み取ってその2つの勢力のどちらにも肩入れしすぎず、されどどちらからも色よい返事をもらってきた)

 

地上ではカーラリアは強国の類だが、お空の上からこちらを睥睨する連中の前では大国に挟まれた地域にある小国のようなものだ。

 

「詳しい所は省きますが、天上人ないし天上領にとって肝心要のものを抑えているのが教主連だけなのです。セイリーンの敷設していた魔法陣は数少ない成長しているものだったのですけどね」

 

ラフィニアとイングリスが王都への道中で出会った地上から大地を引っ剥がして天上領の大地にするもの。それを敷設していた天上人は地上の人々に慈しみを与える存在だったが、様々な茶々入れで現在は小さな魔石獣として2人に付き添っている。

そして、その言葉で分かることは―――。

 

(天上人にとって虹の雨に打たれない大地を得るためにも、浮遊魔法陣なるものは絶対に必要。しかし、それを「新造」出来るのは教主連という勢力だけか)

 

まだまだ分からぬことは多い。

 

そんな絶対優勢な教主連の勢力が大公派が肩入れしているカーラリアを貶めるためにリップルに毒を仕込む理由。

 

確かにセオドアもウェインも腹に一物抱えている謀略家ではある。それを探り、牽制する意味でそんなことをしたというのは分かるが……。

 

(なんにせよリップルに仕込まれている同族である獣人を呼び寄せる「SOS」発信をやめさせなければ同じことが繰り返される)

 

結局のところ、自分に求められているのはそういうことであったと認識して、少しだけ息を吐くのであった。

 

(蒼のライダーの件もある。いずれにせよ逃れられないな)

 

 

―――運命からは。

 

……などと気取ったことを、キザったらしく内心で言ったと感づいたのか女子陣が大挙してやってきてディナー料理を味変しろと言って連れられてしまうのであった。

 

 

 

 

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