魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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『力戦奮闘!! 闘いの場に現れるは謀略の影?』

再びのリップルの不調と共に出現する獣人型の魔石獣。

 

そして―――。

 

「――――」

 

言葉を発せずにその威容で周囲を圧倒する蒼のライダー。それと同時に現れたる獣人型の魔石獣はカラフルと言ってもいいぐらいに五色に染められていた。

 

魔石獣は全部で8体。

 

一番の強敵は―――。

 

「セツナ! あのドエロイニャ・エロチッチな獣人は私が相手しますからね!!」

 

「……分かったよ」

 

お前だってエロチッチじゃないかとか言ってやろうかと思ったが、とりあえずイングリス(ウォーモンガー)に任せることにした。

ここまで何の意図があるのか、ニキチッチはこちらとの戦いを最後まで終えていない。

 

(あの仮面を叩き壊せば、自意識を取り戻すかもしれない)

 

それをするにはワクワクを100倍にしているイングリス・ユークスのハチャメチャを押しよさせて、ヤンチャをさせてトラブルを発生させることが肝要かもしれない。

 

その際に2人の戦いでおっぱいがイッパイな状態になってラフィニアがぐぬぬ顔をするかもしれないが。

 

「「なんか失礼なことを考えていない!?」」

「気の所為、キノセイですよー。んじゃあっちの魔石獣は俺がやっておこう」

 

ユミルの貴族令嬢2人の抗議を切り捨ててから未だに動かないでいる魔石獣に立ち向かう。

 

「セツナ―――」

「午前に1戦やったんだから休んでいてくれ」

 

レオーネが戦おうとしたのを制して、セツナは動き出す。

 

こちらの動きが契機となったのか、あちらも動き出す。

 

やはり、ニキチッチはセツナに掛かろうとするが。

 

「アナタの相手は私だ!!」

 

剣を手に割り込むイングリスが、ニキチッチと組み合う。

その戦闘の様子を全て見れるわけではないが、様子を察しながら五色の獣人にして魔石獣。

最初に組み合うのは―――。

 

「予想通りすぎるな」

 

火噴きの魔獣ガルムを連想させる赤色の鉱石を生やした獣人が盛大なまでのファイアブレスを放ってくるのを受けて村正に水流を纏わせる。

吐かれる炎熱を全て水は封殺して水蒸気を発生させる。この中では眼鏡のシルヴァ先輩は戦えないだろうなと思いながらも水は次から次へと供給されて冷水となる。

 

そして。

 

『ガァアア!!』

「悪いな!」

 

超高圧水が循環する刃が獣人を真横に両断。次にやってきたのは雷を発生させるらしき黄色の鉱石を持つ獣人。サンダーブレスが来る。

 

バチバチッ!!!口から放たれるそれは人を感電させるにたる威力。レオンの雷獣を思い出させるが―――。

 

「トレース・オン」

 

村正への付与では受けきれないと見ると大英雄の岩石剣を取り出して、それを遮蔽として避雷しながら接近。その後に陰陽の双剣で真正面から切り裂く。

 

怪異殺しの双剣は過たず獣を殺した。

 

『ゴアアアア!!!』

 

こちらの脅威を理解したのか爪と牙に風、炎、水を纏わせて向かってくる獣人たちに対して岩石剣を放る。

 

炎が岩石を熱し、そこに水が低温をもたらし―――風の爪が風化させて砕いた。いわゆる物質……岩石に対する熱疲労の末の結末……とはいえ『神殿の柱』を基材にしたそれを砕くとは。

 

「シュート、ソードバレット」

 

戦闘の際に待機しておいた『魔力の剣』―――五つの属性を表した綺羅びやかな光剣二十振りほどは、真正面から飛来して彼らを直撃。

 

同時に四肢を拘束して、そこに虹色の輝きを見せる村正で斬りかかる。

 

殆ど抵抗なく魔石獣の体を切り裂きながら。

 

『ゴアアア!!』

 

最後の獣人が、氷の体と氷の爪を用いてこちらにかかってくる。

 

(イングリスだったらば、相手の強さとやらを全て引き出して受けて立つなんて『横綱相撲』をやるんだろうけど)

 

自分(切那)は違う。

 

しかし、その体の使い方などを検分するぐらいはある。要するに相手を知ることで何かを見出すということだ。

 

敵を知り、自分を知れば百戦危うからず。である。

 

(成程、この膂力に対抗するのは通常の人間では無理だろうな)

 

特にCOLORS(属性)を付けずに通常の村正でそのチカラを知り、彼らの全てを探り出す。

 

攻め、受け、回避、奇襲、強襲……。

 

この獣人の全てを知り尽くした上で―――。

 

(獣性魔術に利用できるな)

 

それを知った上で、渾身の一撃は獣人を絶命させた。

 

現れた獣人全てを倒した後は、ニキチッチとイングリスの戦いを見る。

 

その戦いは―――凄まじいものだ。

 

(サーヴァントとガチンコで戦いあうか)

 

一撃でも受けそこなえば人体など簡単に砕ける一撃一撃の応酬と煌めくオーラとエーテルの飛礫が、二人の戦いを彩る。

 

旗色は……まぁちょっとばかりイングリスに悪いが、それでもその状況を楽しんでいるから別にいいか。

 

「助けないの?」

「彼女、ああいう気合いの入った戦いが好きなので」

 

自分が受け持った以外の獣人を倒したユア―――手刀で獣人を両断したらしき、彼女が聞いてくる。

 

とりあえずこの場での戦闘はイングリスとニキチッチとの戦いだけとなっている。

ほか全員が観戦モードになっているのだから。

 

そんな中での雑談は人によっては弛んでいると思われるかもしれないが、

 

「イケメンサムライくんとおっぱいちゃん付き合ってるの?」

「ジョーダンきついですね」

 

ユアの疑問に苦笑いを浮かべながら言う。

 

まぁそういう疑問を浮かべるぐらいには、色々と一緒にいることは多いわけだが……。

 

「けど昨日の夜、男子寮の前のベンチで逢い引きしていたようだけど」

「―――」

 

見られていたのか。と驚愕を顔に出さずに済ますのは遅かったわけで。

 

「しかも何故か男子寮から2人連れ立って出てきたよね?」

 

更に衝撃的な場面を見られていたようだ。眠そうな眼をしたユアの文春砲(爆)を受けていると、どうやらその事が耳に入ったらしく、イングリスが狼狽して、こちらの会話を盗み聞きしていた連中が様々な表情をする。

 

そうしていると、状況に変化が現れる。

 

「ひ、引っ張られる!? これは!!」

「校長先生!城で奪ったメイスを白銀の獣人へ!!」

 

彼女が『ブルーク』を取り戻すことは予想通り。

 

アーティファクトで異空間に放り込まれていたそれを無理やり取り戻そうと『呼び戻そう』としていたのだ。

 

「そいやっ!!」

 

相手の有利になると分かっていても、もはや状況はのっぴきならないわけでたまらずミリエラ校長は、異空間から武器を解放した。

 

自分の意思でも持つかのように飛んでいく武器を掴もうとするニキチッチとタイミングを合わせる形で、セツナは魔弾を放った。

 

狙いはニキチッチが武器を持つタイミングと交錯する形での―――石仮面への攻撃であった。

 

ツラを覆うそれが砕けた。細片となった石仮面の奥に―――赤い幾何学的な紋様が浮かびニキチッチの顔を包んでいた。そしてそこから身体を包もうとしている。

 

『アア、マスター……オレを―――』

 

セツナに対して手を伸ばすライダーを助けるべく破戒すべき全ての符を投影しようとしたのだが。

 

『少々、早すぎるな』

 

ライダーの後ろに現れた空間の割れ目から黒外套に身を包んだ……少年だろうかと思われる短躯の存在が現れた。

 

深くフードを被り目元を隠して容貌を知らせぬ存在に眼をきつくする。

 

『まさかここまで簡単にチカラを取り戻そうとするとはね。予定より早いのでね。『彼』は回収させてもらうよ』

『ぐぅっっ!!』

 

戒めを強くしてニキチッチを拘束しようとする少年に誰もが驚く中……。

 

「ライダーを離せ。でなければお前の首と胴が離れることになるぞ」

 

セツナだけは疑問よりも先に動こうとする。自分の周囲に剣を浮かべて相手を威圧する。

 

『怖い怖い。だが、キミの経験してきた『戦争』を考えれば、そういうのもあるのかもね―――けど、逃げさせてもらうよ』

「増援!?」

「いいや、魔石獣じゃない。天上領の改造兵士だ」

 

現れたのはイングリスがラフィニアに言った通り魔石獣ではなくて、あの飛行艦でファルスが放ったものと同じくものだ。それらが6体ほどである。

 

空間の割れ目からやってきたそれと入れ替わるように、蒼のライダーと黒外套が消えた。

 

全くもってやられたことに、少しだけ忸怩たる思いを持って、改造兵士たちに剣弾を打ち出そうとしたのだが。

 

「セツナ!悪いけどここは私が戦うから!!」

「休んでいてくださいね!!」

 

レオーネとリーゼロッテが動き出し、率先して戦いに向かう。

 

どうやら戦士としての本能を刺激したようだが……。

 

「で、セツナくん、あるいはクリス―――ユア先輩が言う逢い引きってどういうこと? まさかハンブルグの合い挽き肉なんてオチは付けないよね?」

 

2人の戦いを援護するように弓から光の矢を放つラフィニアがこわ~いスマイルでこちらを問いただす。

 

「ええと、なんというか……ど、どうしますかね?」

 

腹芸がそこまで上手くない、というか自分のやったことがだいそれたことであるのをいまさらにして思い知る様子……。

 

縋るようにして赤い顔でこちらを見てくるイングリスに内心でのみ呆れつつ答える。

 

「簡単に言えば、俺がセオドア特使から渡された合金を鍛えることを知っていたこやつが、工房から男子寮に突撃してきて、まぁそういうことです」

 

「な、なるほど。クリスがご迷惑をお掛けしました」

 

従姉の(常識外の)行動力を理解していたラフィニアはそれで納得したようだ。

イングリスもその説明に反応せずとも『感謝します』などと風の振動で器用にもセツナにだけ声を届けてきたことで、とりあえずはまぁ良かった。

 

そうしていると結局のところ、戦闘は終結した……。

 

そして、この戦闘の意味は大きい。大きすぎた。

 

今までは天上領による何かしらの謀略や政治闘争の延長からの『撹乱行動』というのは疑念や仮定程度のものであったのだが……。

 

明朗な言葉を放つ明確な下手人が表に出てきたことで、もはや事態は真っ黒になった。

 

「とはいえ、倒すべき敵が明確な形で見えたのは僥倖だ」

「そうですね。見えない敵に拳も剣も向けられませんから、やはり敵は直接倒すに限る」

 

このウォーモンガーめ。と毒を吐きながらも、全くもって同意であるのでそれ以上は思わずに、今後どうするかを考えることになるのだった……。

 

 

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