魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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『疾風神風! 駆けていくは鳥と過去?』

 

 

「獣人族の里と神殿の位置はここです。周囲に村や街はありません。野盗がいる可能性もありますが、今は考えなくても良いかと」

 

校長先生にカーラリアの国家機密である全土地図を見せられて、位置が分かった。

簡単な計算をした上で、概算の行軍日数を出す。

 

「フライギアないしフライギアポートを利用できれば―――まぁ全速で駆ければ一日で着くか。夜に出陣すれば日を越して昼前には……かな」

「けど、魔印持ちが戦えない状況にもなるかもしれないわよ?」

「その辺は俺が何とかする。ちょっとした改造を施したフライギアならば消耗少なくいけるはずだ」

 

レオーネの言葉に、セツナは断言する。彼女(・・)の弓を利用したエンジンを利用できれば―――間違いなく可能だ。

 

「随分と……」

「この件に関して俺が積極的(前のめり)だと言いたいのならば―――まぁ言い出しっぺですからね。俺の責任で出来る範囲はこなしておきますよ」

 

シルヴァの言い淀んだ言葉に答えながら、こういうことに血が滾るのは……遠坂家が武士の家だった証左なのかもしれない。

 

「だが、三年や二年も行かなくていいのか?」

「あなたの兄貴にこれ以上、余計な心配させたくない。それにこっちにリップルさんを置いていく以上、決してここだって安全じゃないんですから」

 

最速で決着を着けなければ、被害は広がってしまう。

 

荷物は最小限。そして神速での戦いが肝要だ。

 

「セツナ! 用意されたものは準備出来ましたよ!!」

(驚異的なハラヘリを2人も乗せての行軍ならば、本当に最速で始末せねばならない)

 

心の中で決意しながら決戦準備をしてくれたイングリスに感謝と心配をしながら、情報を全て頭に入れてウォープランを立てた。

 

「地図はよろしいんですか?」

「流石に国家機密を渡しちゃマズイでしょ先生」

 

手ぶらで出ていくセツナと後を追うレオーネ。向かった先はフライギアの格納庫である。

 

「数日前まで水に濡れていたフライギアポートだが……これを使うのか?」

「行きと帰りだけ十分に動けば問題ないですよ」

 

王城の水路に落ちていた飛行船に格納されていた機甲親鳥の一つ。ヴェネフィクが動く前から「もしも」の時のために回収しておいたものをアカデミーには預けられていた。

 

ミリエラ校長の権限で出せる飛行手段は、これだけだった。

 

不安そうな顔をするマーグース教官に、これで飛行戦闘なんてする気はないとだけ言いながら、その船体に触れて解析をする―――特に飛行するのに支障あるところは無い。

 

問題点は、大きな衝撃を受けたことが原因なのか、エネルギー効率が悪くなっているぐらいだ。

要は、大食いになってしまったようだ。

 

故障箇所に『魔力』を流すことで修復。そして……ブースターは後付けで大丈夫のはずだ。

 

集まったメンバーは、とりあえず気心の知れた連中ばかり、しかし……。

 

「無茶をすると思っていたらば、やっぱりこんなことをするのね。アナタは」

「エリスさん」

 

本来ならば、ラファエルの傍にいるべき天恵武姫である女性が、何故かやってきたのだった。

 

「見送りに来たわけではなさそうですね」

「そうよ。魔石獣人の討伐―――私も同行するわ」

 

集まっていた一同、見送りに来ていた2,3年などもざわつく。

 

「メンバーの中に特級印の人間はいませんが」

「そういう意地悪言うもんじゃないわよ」

 

だが、国境の守備は大丈夫なのだろうか?こちらの首を絞めながら言ってくるエリスにそう思うも……。

 

「ヴェネフィクは退きつつあるわ。流石に教主連の意向だけで軍隊を動かしていける日数はあるのだから」

「―――いやなニュースだ」

「そうね。つまり教主連がカーラリアに対する要求を呑ませたということでもあるからね」

 

帝国側としても流石にこんな軍事的茶番劇で、兵の命を散らせたくはなかった。

世話になっている大家……教主連の意向で軍を動かしたが、カーラリアとの交渉が妥結すれば、とっとと退かせるのは当然だ。

 

国家にとって軍隊ほど金食い虫なものはない。だからといってケチればろくでもないことになるのも事実。

 

そしてヴェネフィクの金庫は、いつでも「満たされている」わけではないのだ。

 

「ラファエル殿は大丈夫なので?」

「そうね……イングリス辺りが慰労するために行けば、問題ないかもしれないわ」

「私は行きませんよ!戦の匂いがあるところに私は行くのみ!!」

 

なんて従兄思いのない女だ。こちらの会話を耳聡く聞いていたイングリスの言葉にそう思いながらも。

 

「まぁ今はこちらが問題だからね。妹たちを助けてきて下さいって言われたわ」

 

聖騎士の判断ならばコレ以上はごにゃごにゃ言わなくてもいいだろう。

ラファエルとて聖騎士であり、男なのだ。男が決意をして送り出したならば、これ以上は無粋というものだ。

 

一名の追加があったが、問題はない。

 

「総員乗船開始」

 

とりあえず今回の作戦の責任者として号令を掛けて出撃メンバーをフライギアポートに乗せていく。

 

「それでは行ってまいります」

 

カーラリア式の敬礼を校長先生に行って出発する。

 

「ええ、みなさんに武運を」

「気を付けて帰ってくるんだよ!」

 

ミリエラ校長とリップルの言葉を受けて最後にセツナが搭乗すると、夕焼けに染まる朱の空に機械の魔鳥が飛び立つ。

 

その姿が見えなくなるまで見送るアカデミーの人間たち、そして……彼らが帰ってくるまでの間にリップルを介した魔石獣の召喚はなかった。

 

 

「ひゃー!この分ならば昼どころか明け方には着いちゃうんじゃないかな?」

「そうですね!けど、それだけ戦いが早く始まっちゃうんですね……」

 

ラフィニアの言葉に少しだけ不安そうに答えるプラム。事実、フライギアポートは途中までは輸送艦らしい速度で飛行をしていた。

 

別にフライギアを積んでいるわけでも積載量ギリギリの荷を積んでいたわけでもないが、まぁ制限速度いっぱいで飛行していたのだが、途中からセツナが何かをしたらしく、大きな白銀の翼……機械的とも翼を有した白鳥をも想わせる、優美の曲線を描く銀の琴。

 

そうとしか表現できないものがフライギアポートに外付けされたうえで必要以上の推力を確保されていた。

 

それは、大空の何処へでも自在に翔けるための外付けの翼であるのだと―――セツナは蒼のアーチャーに教えられていた……。

 

「何言ってるんだよプラム。早めに決着しないといけないんだから目的地に早く着くのはいいことじゃないか」

「そうですよね……弱気になっていました」

「安心しろ。強気になるわけじゃないが…俺も守られてばかりじゃない。守ってやるからよ」

「―――はい!!」

 

プラムの内心を読み取ったラティの言葉。そのやり取りに船の中にいる年頃の乙女たちが色めき立つのは仕方ない。

 

その輪に入らないオールドガール(OG)であるエリスは、舵輪を握るセツナに近づいてきて問う。

 

「セツナ、分かっている?」

「―――先程まで我々の後ろに即けていたフライギアらしき飛行物ですか?」

「ええ、振り切ったわけだけど……」

「恐らく旅団でしょうよ。あちらとしても色々と目的はありますからね」

 

アカデミーの中に団員とも内通者、シンパサイザー(支持者)とも言えるものがいて、この数時間での決定事項を外部に伝えたようだ。

 

(ここまで動きが速いとなると、カーラリアの王都に潜伏しているのだろうな)

 

当然だ。リップルを天上領に送り返して、新たな天恵武姫を迎え入れるということは、彼らにとってのテロの標的が降りてくるということなのだから、そこにて待機しておくのは当然とも言える。

 

「まぁあちらの出方次第ですね。彼らとて無差別な民衆を巻き込んだテロなんかやれば、協力者なんか現れませんから」

 

だからこそ全ての国家で旅団を狩り出そうとか、協力者を炙り出そうと徹底的な尋問をしていない。そのようにやっていけば、自ずと旅団に傾倒するものは多くなる。

 

痛し痒しである。

 

「―――……そうね。私は天上領にむやみに歯向かうことで、無用な被害を増やす迷惑な連中だと思っていたけど、そういう見方も出来るのね」

 

「何か思うところでも?」

 

「―――私は、チカラに屈してしまった女だから。戦っても勝てない相手に立ち向かえば、それだけ犠牲が大きくなる。多くの人を守るためにベストではなくベターな選択をしていたから」

 

その言葉に女の過去を必要以上に探ろうとはしない。

 

片腕を抑えるポーズを取りながら外の景色を見るエリスに、探ろうとは思えない。このポーズは心理学で言うところの自己防衛なものが多分にあるのだから。

 

ただ、それが重い決断であったことはエリスの表情から察してあまるものはあったのだ。

 

「まぁその考えもありでしょうよ。ただアナタが下した決断とその自己犠牲に理解を示す人だけじゃない―――――時には頭の悪いバカな決断の方が後々の為になったといえるものもあるかもしれませんし」

 

お互いの脳裏に旅団に走った雷獣の聖騎士の姿が映し出されるのだった。

 

苦笑する2人に『なんかオトナ!』などと他の面子が無言で思っていたりする船内……。

 

そうしながらも目的地であるカーラリアとアルカードに隣接する山脈が聳えるリップルの言う獣人族の里は近づいていく。

 

 

「レオン、体調が悪いのか?」

「いいえ、何かのホコリが鼻に入ったのでしょうよ」

「だから言っている。他の団員と同じく仮面をつけていろと」

 

二人から言われながらもレオンは一度は聖騎士に叙された人間であり、アーティファクトも持ち逃げした身である。

 

攻撃手段からあっさりと正体を看破されるならば、着けても着けなくても同じである。

 

「フッ、レオンは有名人だからな。国内外であろうと敏いものならば簡単に雷獣の聖騎士レオン・オルファーであると分かってしまうだろう」

 

旅団の個人個人を特定させない顔を隠す仮面(ペルソナ)は、彼には無意味なのだ。

 

「しかし、まさかフライギアポートで振り切られるとは思いませんでしたな」

「セツナ・トオサカは、地上に在りし恐るべき魔導武具の鍛造鍛冶師(マイスター)。彼の作る武器、あるいは魔具の中には高速移動を果たすものもあるのだろう」

 

つくづく、こちら側に引き入れること出来ていれば、「こと」は決着していたかもしれないほどに脅威的なものだ。

 

「目的及び向かっている場所は、既にアカデミーにいる『協力者』によってこちらも存じている。別に彼らに先んじてとまでは言わないが―――」

 

先行されすぎて、こちらの目的が果たせなくなるのは非常にマズイ。

 

「ならば、少々こちらも移動速度を早めるとしよう」

 

旅団が保有する飛行戦艦の移動が速くなった。というよりも――――。

 

一瞬にして彼我の距離が詰まった。としか言えないものが起こった。ここにセツナがいれば、それは『ワープ』とでも言うべきものだと思っただろうが……。

 

(団長が何かをやったのか?)

 

明確には見えなかったが、レオンも何かを感じて怪訝に思う。システィアの方は―――

 

「あまり無茶をなさらないでください」

 

団長を気遣っている様子だ。彼にとってもこれは負担なのだろう。レオンはこの仮面がナニモノなのかを弟以上に疑問に思う。

 

「無茶をせずに進んでいてはパーティーに遅れそうなのでな」

 

パーティー……その言葉から、察することはある。

 

集結地点は確実に戦場になる、と。それも敵味方の区別がどうなるか分からない乱痴気場になると

 

 

―――あちらさんも何かの速度増加を果たしたな―――

 

後ろにいた血鉄鎖旅団の船がこちらとの距離を詰めたように感じる。

どのような術であるかは分からないが、固有時制御やある種の転移術にも似ているだろうと思えた。

 

その術の強い鳴動とでも言うべきものに気付いたらしきイングリスが仮眠から目覚めていた。

 

「まだ目的地まではかかるぞ」

「いや目が覚めてしまいましたよ」

 

ソレ以上は特に何も言わずに、航法装置にズレはなく、目的地に向かっていることを理解しておく。

 

「それにしてもセツナは色々なことを出来ますね。もうちょっとそれを前面に出そうとは思わないんですか?」

「無いな。俺の技術は君のような己の身から出される技法というべきものではない。どちらかといえば……スキルではなくテクノロジーと言えるものだ」

 

ここではどうしようもないほどに自分は異物でしかない。

王に、覇者に、支配者になろうとすれば多分、出来なくはないだろう。

 

しかし、その気持ちが出てこない。

 

よくある転生者主人公によるチートスキルを使っての王道覇道を目指す小説のような気持ちが出てこない。

 

別に元の世界で満たされていたわけではない。けども、自分のインチキでこの世界のコトワリを破壊するのは、どうなんだという気持ちが出てくる。

 

「操舵代わりましょうか?」

「いや、いい。俺だけが頭の中に地図を入れているからな」

 

魔術回路による計算などをしながら向かっているのだから、任せるわけにはいかない。

 

「ならば、こうしてあげましょう」

「―――」

 

後ろから抱きついて胸を押し付けながら、身を寄せてくるイングリス。

 

「おい」

「私のエーテルを渡せばセツナの負担は少ないのでは?」

「戦場でガッツリ働いてもらう予定だから、別にいいよ」

 

言うが、どう考えても離れてくれないのでとりあえず好きなようにさせながら、舵輪を操る。

 

そして朝日が登ろうとする中、リップルの言う獣人族の里が眼下に見えてきた。

 

戦いの時は近い。木々に侵食されつつもそれでもまだ人が住んでいたらしき痕跡を見せるその場所を見ながら決戦の予感に血をたぎらせるのだった。

 

「ところでなんでクリスはセツナくんの背中に抱きつきながら寝てるの?」

 

起き上がったラフィニアの指摘で、いつのまにかイングリスが自分を抱き枕状態で寝ていたことにいまさら気づくのであった。

 

 

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