魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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『呉越同舟? 旗を一つに出来ぬ愚連隊』

遂にやってきた獣人族の里、明け方に着いたことで朝日が眩しい限りだ。

 

ランディング(着地)出来る場所は……。

 

「セツナ、俺がやるぜ」

「それじゃ頼むよラティ」

 

縦列駐車が不得意とかそういうことではないが、まぁ任せた。

 

ランディングは村の中心部。大きく開けた場所は多分ではあるが、時々…獣人の人々が集まって何か話し合いをしていたのではないかと思う石畳が敷かれていた。

 

その中心部には煤けた場所があり、火を焚いていたことも見えた。

 

獣人たちの生活の跡などがそこかしこに見える。

 

「意外と朽ち果ててないんだな……」

「獣人たちが魔石獣になれば、理性を失い家を壊すなんてことはしなかったようだな」

 

リップルはそういう村の惨劇を見る前に天上領に行き天恵武姫になったようだが。

 

「恐らくアナタが見せた映像の通りならば、封印して神殿に自らを置いたのでしょう」

「魔石獣になってもそういう知性は……まぁ、あるか」

 

直近ではミュンテー。昔ではラーアル。

 

イングリスの言葉にそう考えつつ、着地をした衝撃が身体の下から上に突き抜けた。

 

「総員下船開始」

 

タラップを展開して外へと向かうことが可能となる。

 

「あら?セツナ、それを着るのね」

「まぁ流石に、今日ばかりは」

 

聖■■のコートを羽織ったことはレオーネの目を惹いたようだ。オルファー家の庭に落ちてきた際の格好である。

 

それがどういう防御兵装であるかは、エリスもとっくにご存知であった。

 

ともあれ装備の準備は万端でありながらも念の為に知られぬようにルーン文字を踏ませておくことにする。

下船の際のタラップ……昇降口に仕込んでおいたそれは。

 

「セツナ、私は『これ』いらないですよ」

「念の為だ。嫁入り前の身体に傷でも残れば、お前の両親やラファエル殿に申し訳が立たん」

 

どうやって見抜いたかは分からんが敷設しておいた隠しのルーン魔法陣だがイングリスは要らんとするも、そこは譲らずにしておいた。

 

「まぁ分かりました。その気遣いを受けておきましょう」

 

不承不承と言わんばかりの表情だが、とりあえずルーンを各員に『装備』(エンチャント)することは出来た。

 

そうして十時間以上ぶりに外に出たわけだが。

 

「身体は解れているか?」

「問題無いですね」

 

その言葉を疑うわけではないが、まぁ問題無い。食堂の人たちから持たされていた保存食糧を食べ、水分を補給してから神殿に向かう。

 

「神殿にいる獣人魔石獣を全員倒す―――殺害しちゃうんだよねセツナ君?」

「そうですね。やむを得ません」

 

魔石獣となり、もはや理性と知性を取り戻すことは不可能であっても、元は会話が可能な知性体であるだけに少々、ラフィニア及び少女たちが忌避感を覚えるのは当然だ。

 

「元・天上人であるその巨乳好きの魔石獣のような変化をできればいいんですけどね」

 

もっともセツナとて積極的にやりたいわけではない。

ただ、一つの救済案のようなものは現在進行系でやっている。

 

(ライダーを自分のサーヴァントに出来れば、それは確実なものになる)

 

とはいえ、そんな不確実なことはいまは言えないので、口を噤んでいたのだが。

 

「ふむ。それならば我々が少々手助けをしようか」

 

言葉は獣人たちの元・家屋から聞こえた。

 

声の主は――――。

 

「血鉄鎖旅団!?」

「―――先回りされていたか」

「我々の船は君たちより大型でな。停船したところから少々速くやってきたのだよ」

 

驚いたラフィニア、そしてセツナの呟きに答えたのは団長ということだ。

 

速くやってきたという言葉に少々、疑問を覚えるもとりあえず何用かを聞く。

 

「君たちと同じだ。天上人の奸策を叩き潰しに来た。それだけだ」

「寧ろ、リップルさんが天上領に戻されそうなタイミングでやって来ればよかったのでは?」

「それは少々、卑怯ではあろう。既に一人、地上に降りているというのならば、そちらに矛先を向けるだけだ」

「またセイリーン様のようなことをしようというの!?」

「そうだ。ミス・ビルフォード」

 

セイリーンという言葉でリンちゃんという巨乳好きの魔石獣が怯えたのか、イングリスの胸の中に深く入り込む。天上人であった頃に魔石獣と化した記憶が蘇ったのだろうか。

 

とりあえず赤面してあたふたするイングリスを無視しつつ会話を続ける。

 

「私の予想通りならば、神殿にいる天上人は幼い存在だ。幼稚といってもいい」

「リップルを利用して国内に混乱を巻き起こしている時点で、あのミュンテーと同じだろう?ならば、どうするべきかは分かるはずだ」

 

団長の後に出てきたのは他の旅団連中と違い、仮面を着けていない男だった。

 

「お兄様……!」

 

レオン・オルファーとの3年ぶりの再会であった。

 

「よう。レオーネ、久しぶりだな」

 

気楽な様子で挨拶をするレオンだが、レオーネは硬い表情のままだ。当たり前だが……。

 

「お兄様は、セツナには言わないのね。再会の挨拶を」

 

存外、鋭いことを倒置法で言われてしまった。いや、最初から疑われていたのだが、いざ言われると少々苦しくなる。

 

「白状しちまうが、この数ヶ月でセツナとは度々会う機会があったんだよ。最初は、アカデミーに入学するとして去った実家でな」

「若君は少々、腹芸というものを覚えたほうがいい」

 

あけすけに言いすぎだと嗜めるも、時すでに遅しだ。

 

「で、どうするんだ? 俺達と組んで事態の解決を図るか。それとも、ここで俺達と敵対して貴重な時間と戦力を消費するか?」

「―――――その提案を蹴ったら旅団はどうするんだ?」

「我々、単独でやるだけだ。邪魔をするというのならば―――やむを得んな」

 

言葉の後半で従者よろしく前に出たのはシスティアである。その手には槍が握られている。

 

「リンちゃんはシスティアさんのお胸には行かないのだろうか?」

「来れば斬り捨てるだけだ。そも、あの街での標的はその天上人だったのだからな」

 

媚態を強調したその衣装にイングリスは色々と物申したいようだが、とりあえず……。

 

「アナタが本作戦の指揮官です。アナタの判断に任せますよ。ラニもいいよね?」

 

イングリスの言葉を受けたラニは首肯だけで、セツナに判断を委ねた。

 

ならば……。

 

「一時同盟だ。アンタらが首謀者たる天上人を殺そうとするのはあまり気分の良いものじゃないが……今のところはリップルさんのご同胞を安らかに眠らせてやるのが最優先だ」

「セツナ……」

「お嬢がそれでも戦うならば……申し訳ないが留守番してもらう」

「や、やらないわよ!!」

 

レオーネが考えているかもしれないことを先んじて言うことで釘を差しておく。

 

「賢明だな。返礼ではないが、こちらが掴んでいる情報を開示しよう。カーラリア王宮

は教主連側との関係改善のために地上の領土を差し出すことを決めた」

 

そこにタイミングよく情報を挟むのは団長であった。

 

「そこまでのことを……なぜアナタたちが……!?」

 

その情報はエリスが掴んでいたヴェネフィク撤退から推測されたものよりも踏み込んでいた。

 

「分かんねーかエリス。天上人に腹立たしい想いをしている人間は多いのさ。王宮に勤めている人間にもな」

「……決して想像していないことではなかったけど……」

 

レオンの言葉に、まさか王宮にまで反動勢力が浸透しているとは思っていなかったようで動揺するエリス。

 

そして―――。

 

「ど、どうしてそんなことになるんですか!?シアロトは私の故郷ですのよ!?」

 

犠牲となる土地の人間は明らかに憤る。

 

「それに関しては我々も分からぬが。アールメンはプリズマーの監視の役目を終え、それ故に天上領への譲渡になったのだろう―――だからとレオンを責めるのは筋違いだ。彼がオルファー家の当主としていようとなかろうと、王宮はそうしていたはずだ」

 

アールメンに起こるだろうことはプリズマーを国境に移した段階でその可能性は出ていたのかもしれない。

 

仮定でしかないのだが。

 

「シアロトに関しては宰相閣下がその任から降りたことも一つだが……そちらのミス・アールシアの「母君」がいないことも考慮されたのだろう」

 

詳しい事情は知らないが、宰相閣下はシアロトのアールシア家からすれば『婿養子』らしく、領主としてはリーゼロッテの母親こそが正統な血筋らしい。

 

だが、そんな母親はもはやいないらしく、取り潰すほどの失態もないが、それでも王宮は苛烈な処置として天上領に献上することにしたようだ。

 

それらを聞いたセツナとしては、元の世界では大地主の息子であっただけに。

 

「―――統治している領主家を置き去りにした一方的な判断だな。いっそのこと街に帰って領民巻き込んで反乱でも起こすかレオーネ?」

 

西郷どんよろしく『西南戦争』(士族反乱)でも起こしたくなる気持ちであった。

 

「や、やるの!?」

「勝ち目はないから止めておこう」

 

リーゼロッテの領地であるシアロトと違い、補給とかの問題がありすぎる。

 

「だが、天上人を殺したところで『領地没収』が解決するのかね?」

「ふっ、さてな。では話はもういいだろう―――そろそろ向かうとしよう。我々旅団が前に出る。何か怪しい動きをすれば容赦なく斬り捨てて構わんぞ」

 

いわゆる戦における『寝返り者』に対する処置のように、そんなことを言う団長ではある。

 

そんな潔い言葉に……。

 

「怪しい動きしてくれませんかね。あーレオンさんが頬を掻いたのが何かの合図だったりとかしないかなー」

「疑わしきを罰するなんて品のないことしないでくれ」

 

今にも戦おうとうずうずしているイングリスを抑えるために横にいながら進撃せざるをえなかった。

 

その様子に―――

 

「レオーネと結婚して義理の弟になってほしかったんだけどな……」

 

盛大な勘違いをレオンにさせながらもアカデミープラス旅団の愚連隊は神殿にたどり着くのであった。

 

 

 

 

 

 

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