魔法使い、一身上の都合により世界移動す ~そして、世界全ての破壊者へ~   作:無淵玄白

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プロローグ7

 

 

翌日……。

 

ラーアルの一件でゴタゴタしていたが、そこに首をツッコむのはユミルの主権を害することなので控えていた。ただし、それでもどうしてもやりたいことはあったのだ。

 

「セツナくん。多分だけどコレかな?」

「恐らくコレですね。感謝しますミス・ラフィニア」

「そんなに畏まらないでよ……ラニって呼んでもらえないかな?」

「ラフィニアさんで勘弁してください」

 

何せ照れくさそうにしていたラフィニア嬢を見たイングリスの目線が、こちらに対してキツくなったのだから。

 

「それにしても、この箱が……ラーアルの依頼なんですか?」

「恐らく。ヤツの部屋に忍び込んだ際のことを覚えていてくれたラフィニアさんのお手柄ですね」

「これでも弓兵(アーチャー)だから」

 

エヘンと偉そうにナイムネを張るラフィニア嬢。ラーアルの部屋に忍び込んだ際、彼女はラーアルの様子以上に机に置かれていた『豪奢な箱』……貴族の女性などが用いる化粧箱よりも豪奢な小箱に眼を惹かれていたそうだ。

 

流石に部外者であるセツナが再びビルフォード家の資産である別邸に無遠慮に入り込むわけにもいかない。例え砕けたとはいえ、廃材利用は普通なのだから。

 

そもそもどういう被害状況なのかの実況見分などなどビルフォード侯爵家の人々にこれ以上の仕事は増やせないのだが、それでもやってほしいことがあったりしたのだ。

 

よってビルフォード侯の娘たるラフィニア嬢と騎士団の娘であるイングリスに任せたわけだが……。

 

『まじない』が掛けられたその小箱の『錠前』を外して中身を開帳する。

 

そこにあったのは予想通りに『柄』であった。

 

「剣の柄ですか?」

 

その剣は銀色の柄に朱色の豪奢な鍔が付けられたものであった。

これだけでも魔印武具として通じそうだが……。

 

それにセツナが依頼を受けていた刀身を付ける。紫檀の長木箱に収められた刀身を取り出してビロードで包まれていた刀身を慎重に持ち上げてラーアルが天上領で作ったのかもしれない柄と合わせる。

 

空洞に収まった刀身は自然と合致を果たして自動接続される。差し詰め、自分の世界で言うならば、パソコン端末が外部記録メディアを同一媒体として認識して自然と再生するかのごとく……それは成った。

 

「持ってみろ。君の剣だ」

「―――」

 

両手で持っていた剣。それを恭しく取ったイングリス・ユークス。

 

「これは……不自然な程に自分の手に、体にフィットしている……セツナ君、アナタは私のことを知らなかったはず……」

 

「そうだな。俺がラーアルから伺ったのはどれぐらいの長さの刀身なのかというだけ。君がそう思っている原因は恐らくその柄の方だろうな。天上領にいる連中の技術がどれぐらいかは分からないが、ルーン持ちの連中に即座にそれに適した武器を与えられるってことは、自動的に個々人に適した調整が成されるんだろうさ」

 

でなければ、地上に技術者の一人でも常駐させとかない道理が合わない。

彼らにとっても魔石獣が脅威である以上、アフターサービスは無ければどうなるかわからないのだから。

 

「鞘はこの中から選べ。どんな色でどんな装飾の柄を作るのかなんて知らなかったし、多めに作っておいた」

 

机にセツナが作っておいた鞘を並べてどれがいいかを選ばせることに。

 

「私も貰っていいかな?」

「何に使うのさ。いいけど」

 

ラフィニア嬢に言いながら、見るとやはりイングリス・ユークスが選んだのは、赤鞘に白線入りのものであった。

 

「何故……ラーアル殿は、こんなものを作っておきながら、あんな風な言いようだったんだろう?」

 

「さぁね。女の心と同様に男の心も摩訶不思議でしかないものだが、俺に依頼をしてきた際の彼は『とある女の子に合った剣を贈りたい』というものだった。その頃の彼はまだランバー商会の跡取りでしかなかったと記憶しているが……まぁその後のことは良くわからないな」

 

「―――」

 

「ただ、その時の彼の様子は『どうせ高価な宝飾品なんて受け取ってくれないから、一振りの剣身を鍛えてくれ』と恥ずかしそうに言ってきたよ―――まぁその子のことが好きなんだろうなとは考えたさ」

 

その後の時の移ろい、そしてお空の上の住人になったことで何かしらの心情・心境の変化もあったのだろう。あるいは、天上人になったことの動機も父親に付いていったからというだけでないのかもしれない。

 

「私が……天上人になったラーアルを少しでも『認めていれば』……あんなことにはならなかったのかな?レオンさんの凶行も」

 

彼が天上人になった原因。それはもしかしたらば、好いた女の子に少しでも自分を認めて欲しかった悲しき男心なのかもしれない。平民の商人だからこそ彼女は『ああ』だったのだと。

それが的外れに終わった時に、彼の心は千々に乱れた……とも解釈出来るが。

 

 

「君が気に病むことじゃないと思うよ。あの様子じゃ遅かれ早かれだ。若君の絶望は天上人の醜悪さ・傲慢さだけじゃなくてそれを是認してしまっていたこの国の在り方だったからな。ラーアルのことはよく分からん。俺が見た彼と君が見た彼は違うのだし」

 

レオンに関しては、ここでなくてもどこかで、そうなっていたのだろう。

ラーアルに関しては……考えるだけ無駄だった。死人の心は推し量れない。

 

そんな言葉で締めとしていたセツナにエリスが苦笑しているのを見るに、どうやら『そろそろ』のようだ。

 

「少しだけ慌ただしいけどそろそろ行かせてもらうとするわ。王都への報告もあるし、セツナはオルファー家に事情説明しなければならないのだしね」

 

その言葉に、少しだけ悲しそうな顔をする2人の少女。その心もまたセツナには推し量れないものだ。

 

「また会えるよね!?」

「無条件に頷けないが―――善処はするよ。ラフィニアさん」

「また()えるよね!?」

「君はどこまでいってもそれかいイングリス・ユークス」

 

とんでもない当て字を使っている疑惑をもちながらも今度こそエリスの導きでユミルを後にすることにした。

 

その道中、エリスは尋ねてきた。

 

「良かったの?」

「良いも悪いもないと思います。けれど……まぁもう少し滞在すべきところはあったんでしょうね」

 

結局のところ、武器に関しては手落ちが発生する可能性はあった。

しかし、これ以上はオルファー家への不義になりかねない。

 

大旦那様にお伝えして―――其の上でレオーネに対する説明も……。

 

エリスの不安げな言葉に返しながら、今後のことを考えて少しだけ憂鬱になりながらも、それこそが従者としてやるべきことだとして気持ちを切り替えるのだった。

 

「オルファー家の汚辱を雪ぐのならば私もそれとなく手伝うわ。アナタはもう少し周りを頼りなさい」

 

そんな年上らしい言葉を聞きながらも、考えることは色々と複雑なのだ……。

 

 

そして3年後……。

 

家禽である鶏が魔石獣と化してアールメンの街を闊歩しているという情報が入ると同時に。

 

「いくわよ!セツナ!!」

「イエス・レディ」

 

アールメンの領主の娘……もはや領主としての体裁すら存在しているか怪しい家の娘だが、それでもアールメンは自分の故郷だとして動く彼女についていくのは当然だった。

 

「二手に分かれよう。どうやら走鳥類(あるき)だけでなく翼鳥類(そらとぶ)のもあるようなので」

 

「ええ、広場向かいは私が受け持つわ!!」

 

「ご武運を」

 

分かれてセツナは、二振りのカタナを振るってダチョウかドードー鳥の群れのような走鳥類の群れを切り裂いていくのであった。

 

(肉体が若返った頃からようやく戻りつつある……のだが、まぁあの頃のスキルツリーを開放することは不可能か)

 

故郷(ニホン)で流行っていた転生小説のような言いようを心中でのみ呟いてから、魔石獣から宝石を採取する。

 

(お袋は船の決闘で、キメラから『麻痺毒』を採取したとか言っていたな。更に言えば海賊を組織したとも言っていたか)

 

ともあれ、この3年間でオルファー家の財政建て直しのために魔石獣から様々なマテリアルを採取してきた。彼らの体表に埋まっている宝石のような鉱石は魔石獣の絶命と共に消滅してしまうものだが―――。

 

(こういうのもチート能力と言えるのかね)

 

言ってから、レオーネの援護と魔石採取の為に広場に赴くことに……。

 

そこで―――。

 

今にも特大の空圧ブレスを吐こうとしているコカトリスのような魔石獣を前にして突撃かまそうとしている『バカ』を見たので……。

 

「Wind Zersteuen」

 

簡単な呪文で口中の風を散らしたりした。その事に驚く『バカ』だが、過たずそのパンチングはコカトリスを殴り飛ばした上で矢の一撃が、コカトリスを絶命させる―――寸前で石を採取する。

 

ガキの頃にハマったモンスターを狩るゲームでのパーティープレイでの採取だけをしているメンツを思い出しつつ……。

 

「久しぶりに見えたと思えば、早速ごたごたやってらっしゃる…… ──ま、君らしいと言えば君らしいか。イングリス・ユークスさん」

 

「戦いこそが我が人生!!敗色濃厚な相手とも全力で戦うが私の道だ!! それは褒め言葉だぞセツナ!!」

 

「久しぶりだね――セツナ君!! そっか。そう言えばここからやって来たとか言っていたね!!」

 

「ちょっ!2人ともウチの従者とどういう関係なのよ!?セツナ、説明して!!」

 

最後のレオーネの焦ったような言葉を聞いて、ここで2人に絡むのは失策だったなと思いつつ、ここから全ては始まるのであった――――。

 

転生した英雄王と転移してきた魔法使い

 

決して交わらぬはずだった2人が交差した時に、物語は開幕を告げるのであった…。

 

 

 

 




次話ぐらいからちょっとタイトルにひねりをつけていこうかと思います。
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