星屑チルドレン―Protect your Eterein― 作:星の子
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既に太陽は西に降り、夕焼けが表れている頃だった。火事に巻き込まれた人たち全員を助けだした後には、記者団が待機していた。彼らのとても苦痛な質問攻めを、恥ずかしながら半べそをかきながらも、どうにか乗り越えて、自分ははようやく解放された。質問内容はまともなものならともかく、自分には一切関係ない、酷いものまであった。特に、なんだよSQAP細胞って。
そういえば、以前朝倉研を訪れたとき。「私は様々なものを開発している。例えばこの『潜在行動速化細胞』とかねこれの驚くべきところはだ(略)」なんて、朝倉が言っていたような気がする。
まさかとは思うが、それを英訳して縮めた言葉にした可能性も……ないか。いや、あるかもしれない。彼は、オイラが音速でもしっかり動ける制服を制作してくれた上に、ボードフォンとかいう近未来型らしい産物まで創り出している。おまけに別世界からこちらまでやってくるだけの知能と技術力を持っているんだ。
……彼を侮ってはいけないな。
だけど、これは単なる推量に過ぎない。だから記者団には答えなくて正解だろう。顔から上は隠すようにお願いした。嘘を言っていないとはいえ、ルイたちに危害が加わることはないだろうが、念には念を入れるのが大切だ。(※かわいい顔が全国で放映されました)
ほどなくして、消防士の青年に、「君はもう帰りなさい」と言われる。けれど、自分は調査がしたかった。何者の手によってこの事件が起きたのか。それともその想像はが杞憂であり、うっかり起きてしまった事故であるのか。それを消防士や警察に伝えても、分かってなどもらえなかった。
――ならば仕方がない。強行手段だ。
「あ、こらやめなさ、うわ!」
音速を出し、初めに焼け始めた家屋を見回すことを試みる。この時間が、体感では短いようで長いんだ。一つ一つのパーツやその焼け具合を、一つ一つ丁寧に見つめていく。どこかに手がかりはないか、どうにか見つけ出すことはできないか。
ん……?
この焦げ目、どちらかというと、家屋より、芝生があったであろう庭全面の方が大きく焦げ付いている……。つまり、火元はここから出た、ということになる。
それから数周まわって確認をするも、どうもそこ以外が発火したとは考えにくかった。
「少し遠ざかって、警察や消防に見つからないところへ行こう。そこでもう少し考えることにしよう」
そして付近の連中が見えない範囲まで遠ざかり、物陰に隠れて、考え事にふける。その中で、自分はある事実に気が付いてしまう。
「いや待て……。人工の芝生は基本的に燃えにくいとか何とか、前に図書館の本で読んだ気がする……。じゃあ何で、こんなに燃えているんだ……」
ふと、先ほどまで自分の身に起きていた、視線による圧力と熱気を思い出す。
「あれがもし、人為的な、周辺に一気に放出される熱だとしたら……?」
「あ~あ、やっぱりバレちゃったかぁ~」
どこからともなく、聞いたことのない声が聞こえてくる。前後左右をくまなく見回すも、姿形を捉えることはできない。
これは一体……。
「ははーん。どうやら姿は見えないみたいだね。んー……まあそれもそのはずかぁ。だって、ぼっくは決まった形がないんだもの」
「形がない、だって?」
形が無いということは、つまりは触れることができないということになる。戦うことができない相手……ということにだ。
……さて、どうするべきか。放っておけば、自分たちに危害が及ぶであろうことは間違いないだろう。できればこの場でカタをつけてしまいたいが……。あ。
「ふっふ~ん。わからないだろう? まあ~。仮に形を具現化しても、絶対にぼっくを殴れないと思うけどね~」
「…………。」
「どうしたの? ひょっとして、ぼっくがこわいの~?」
「……クスッ」
「んん!? な、何がおかしいのかなぁ?」
「ハッタリを言うなよ。自分の姿をよーく見てみろ」
そう、オイラはあることを仕掛けたかったのだ。これ('')が本当に、奴なのかを調べるために。そして、それにまんまとひっかかった。奴は上空にいる。
なら、軽く力を入れて……飛び上がるっ!
「ん~? な~んにも変わりないじゃないか~。そっちこそハッタリをか――こっちきたああああああああ」
「どぉりゃあ!」
腕には、何かがぶち当たった感触だけが伝わる。これは……多分腹だな。もっと言えば、鳩尾周辺だ。その証拠なのか、相手からは、生々しい「グえッ」の音を頂いた。
……ふう。なんだ、普通に殴れるじゃないか。
「どっおっぢで、だあああぁぁぁぁ――」
徐々に落下していくのが分かるほどに、声が遠ざかっていく。そしてついに、地面に衝突した様子。
「流石に……このぐらいなら……死なない、よな?」
あーでもアバラの二、三本は逝っていてほしいな。火災に遭った人らへの懺悔の意味で。
自分もスッと地面に着地し、その落下地点であろう煙い所へ駆け寄る。
「陽の光について、何か考えてたか?」
「い、意味がわからないよ……」
そりゃあ、負けるわけだ。敗北理由は目に見えて明らかなのにな。
「試しに、お前自身の影を見てみるといいぞ。それですべてが分かる」
「陰って……あぁ⁉ ぼっくが、み、見えないはずなのに、影ができてる!」
「そりゃあそうだ。お前は決まった形が無いなんて大ボラを吹いただけで、実は、何らかのテクノロジーってやつを使って、どうにか光を屈折させて、見えないように微調節した。そんなコートか何かを着ているだけだろう。そこで、オイラも嘘をついて、その影が動くような言葉を放って上手いこと誘導しようとした。それに引っかかってくれて助かったよ」
これがテレビを有効活用した者の知恵である。この間科学技術の番組で紹介されていたことを述べただけだ。が、これが結構効いたのか、返事ができない様子になっていた。
「確かにそうだけどさぁ。それよりも、ぼっくを殴れるはずがないよ! ぼっくに触れられた奴なんて、今まで一人たりともいなかった!」
「光は、裏切らないんだ。どんなことがあっても。何かを作り出して、オイラたちの生き方や、すべきことを指し示してくれる。だから、それを信じて行動しただけだな。どうして当たったのかは解らない。けどきっと、運命がこっちに道を指し示してくれたってことだな」
「…………。」
初めて、持論を述べてみたが、相手にとっては結構効いたらしい。
それから暫くして、その彼が倒れていたであろう場所に、じわじわと、少しずつ、自分と歳も変わらなそうな少年が姿を現した。オイラよりも濃いめの赤色の髪をしていて、ちょっとだけ短めだった。話し方の通り、愉快な表情をしそうな顔をしている。例えるなら、クラスに一人ぐらいはいるお調子者、だろうか。
「ぐぅぅ、おびき寄せるために力を使いすぎなければ、炎の力をまだ使えたのにぃ」
「炎の力?」
「キミに今日使った、熱波。そして、あの家を焦がした強大な火力のことだよぉ」
なるほど、彼こそが今日の暑さと民家の放火魔の正体だったのだ。そして、周辺が熱波に包まれていない理由もなんとなく理解ができた。単なる体力切れみたいなもののようだ。
「それとぉ……うーん。キミ、ベガくんって言ったっけ」
「……ああ、一応、そういう名前になってるな」
「そっかぁ。 ……ベガくん。解放してくれて、ありがとねぇ」
「へ、お前、何言ってるんだ」
「ぼっくの名前は「ヘリオクス」。ほんの数か月ぐらい前かなぁ。ぼっくが自由になったのは! だから、今日は挨拶しておきたかったんだ! 別に、人殺しだとか、そんなめっそうなことがしたかったわけじゃないんだよ? あはは~。ぼっくなりの、挨拶代わりってやつだ、ゴメンネ!」
「は、はぁ……」
まず第一に、解放とは一体、何のことを指しているのだろう。オイラは彼を解放した記憶も無い上に、何か手助けをしたとも思えない。どうして、会ったことがあるかのような口ぶりをするのだろうか。それに何より、今回の件を謝る相手が違う。
「まぁ~、これからも何かエンがあるだろうからね、よろしくお願いだねぇ! それじゃ~」
「……あ、おい待て!」
呼び止めるのも遅かったようだ。既に辺りに呼吸音はおろか、視線の一つも感じない。
……ヘリオクス。オイラと一体何の関係があるんだ?
口ぶり的には、オイラが記憶を失った後の話で間違いは無さそうだけれど……。
――今考えても分かることでは無さそうだ。
もうすぐ日が暮れてしまう。早いところ、ルイの家に戻らないとな。ルイもそろそろ心配しているころだろう。あいつはそういう奴だ。
クスリと笑い、体についた土埃を払う。
「さて、帰ろう!」
オイラは再び、音になった。