エストルムクロニクル-運命を紡ぐ魔法-   作:漬物好き人間

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魔法の力「エストルム」に支えられた都市アルヴァーナは、急激な発展によりエストルムの枯渇問題に直面していた。エストルムを扱えない「ヌル」として生きるシオンは、幼馴染のリーナと再会し、街の未来に不安を感じ始める。リーナはエストルムの弱まりを懸念し、上層のルミナでも混乱が広がっていることをシオンに伝える。

シオンが所属する「ニューエストルム調査隊」は、エストルムに代わる新たなエネルギーを探す任務を受けているが、成果は出ていない。そんな中、ヌルたちの間では、メイジとの対立が一層深まり、都市全体が不安定な状況に陥っている。シオンは、自分が無力であることを痛感しながらも、変わりゆく運命を感じ取っていた。

調査隊の副隊長であるガイルズと会話をしていた時、ルミナから轟音が鳴り響いた。


Ep.2 闇に潜む影

「何だ…今の音…」

 

「この街に何かあったら大変だ、とりあえず周り見に行くぞ!」

 

シオンはガイルズと共に、ノクタに被害が出ていないか調査を始めた。

 

ノクタでの調査を続けるシオンとガイルズ。先ほど聞こえたルミナからの轟音は、ノクタにも伝わり、街全体がざわついていた。しかし、ヌルである彼らがルミナへ駆けつけることは許されない。シオンはリーナの安否を気にしながらも、ただ街の状況を見守るしかなかった。

 

「ルミナで何かが起こってる……でも、俺たちは行けねぇ。メイジどもに任せるしかないか」

 

ガイルズが苛立ちを隠せずに呟く。シオンも同感だったが、今の彼らにできることは限られている。シオンとガイルズは焦る気持ちを押し殺して調査に専念するしかなかった。

 

「行くぞ、時間が無い」

 

「行くってどこに…」

 

「調査だよ。ヌルである俺たちにはコイツは解決できねぇ。だったら今すぐにでも新しいエネルギーとやらを見つけなきゃなんねぇだろ」

 

「そんなの、本当に見つかるかわからないじゃ無いですか…」

 

「見つかるかわからないじゃねぇ、見つけんだよ。俺たちにはそれしか道はねぇんだ…。俺は先に行く。支度が済んだら合流しに来い」

 

「はい…」

 

ガイルズの表情はいつも以上に殺気立っていた。その表情から、事の重大さをわからされた気がした。

 

その一方、ノクタではエストルムの枯渇が深刻化していた。街灯が次々と消え、商店街では異常にエストルムが途絶え、経済活動が停止する場所も出てきた。ヌルたちの不満が一層強まり、メイジへの不信感が膨れ上がっている。

 

 

「シオン、あんたもこのまま黙って見てるつもりか?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

シオンに声をかけたのは、ノクタで影響力を持つヌルの一人、トールだった。彼はヌルたちのリーダー格であり、メイジたちとの対立を深める動きをしている人物だ。トールは、シオンにメイジへの反抗心を煽り、何らかの行動を促そうとしていた。

 

「俺たちヌルがこのままエストルムなしで生きていけるとでも思ってるのか?上層のメイジどもは、俺たちを見捨てるつもりだ。メイジに頼るな、俺たちで街を守るんだよ」

 

トールは淡々と言葉を続ける。

 

「だいたいあんたら調査隊は何をしてるんだ。高い金もらって何の成果もないなんて許されるのか?俺たちヌルは自分の体でエストルムを吸収出来ない。もしこのままエストルムがルクス・ハートから供給されなくなれば街の動力は完全に無くなる。メイジの奴らは少しだったら自分らでエストルムを吸収できるし、それで魔法を使えるから生活は出来るだろ?でも俺たちは違う。街が動かなくなれば俺たちは生きていけないんだよ。わかってるのか?」

 

「ああ…すまない…」

 

「謝ってる暇があったら調査に行ってくれ。早く、この街を支えられる新しいエネルギーを探し出してくれよ」

 

シオンはトールの言葉を聞きながらも、リーナのことが頭から離れなかった。彼女は無事なのか、何がルミナで起こったのか――シオンは次第に、今日のルミナでの出来事とエストルム枯渇の問題が繋がっているのではないかと考え始める。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

遡る事一週間前、ノクタの地下にある秘密の集会所「ヴェイル」では、「ノクティア」の会合が静かに進行していた。謎の組織と噂されるノクティアだが、彼らの目的は、ただの破壊や混乱ではなかった。彼らはエストルム枯渇によって追い詰められたヌルたちを守り、メイジたちの支配から解放することを志していた。

 

ノクティアのリーダー、オズマは、集まった仲間たちを見回しながら、冷静に言葉を紡ぐ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「アルヴァーナはもはや限界に達している。上層のメイジどもはエストルムを独占し、俺たちヌルは苦しみ続けるだけだ。このまま奴らに従っていれば、我々の未来はない。だが、我々にはまだ希望がある。」

 

オズマの言葉に、集会所に集まったヌルたちは静かに耳を傾けていた。彼らは、エストルムの力に依存せずに生きることを強く望んでいた。オズマはそれを知り、彼らに新しい未来を与えるための計画を進めていた。

 

「今のエストルムに頼らない新たな力、『ニューエストルム』を利用すれば、我々はメイジたちに頼ることなく、自分たちの力でこの街を守ることができる。ノクタを救い、アルヴァーナを変えるためには、我々が行動を起こす必要があるのだ。」

 

オズマの言葉に、集会所に集まったヌルたちは深く頷いた。彼らはただの反乱者ではなく、自分たちの家族やコミュニティを守るために立ち上がっていた。ノクティアは、決して暴力的な組織ではなかった。彼らはヌルたちにとっての希望の象徴であり、エストルムを独占するメイジたちに対抗するための最後の砦だった。

 

「しかしオズマ様、調査隊が探していてもほんの少しの情報すら手に入ってない物が本当に見つかるのでしょうか…」

 

一人が呟いた言葉にオズマはニヤリと口角を上げる。

 

「心配するな、俺は既にそいつの在処に心当たりがある」

 

オズマから放たれた言葉に衝撃を受ける面々。そんな者たちなど目に入ってないかのようにオズマは続ける。

 

「我々は正義のために動いている。今のエストルムに依存しない世界を作り出すことで、全ての人々が平等に暮らせる社会を実現するのだ。」

 

オズマはそう言い切ると、彼らの目には希望の光や感動の涙が溢れていた。そんな静かな熱気に包まれて集会は終わった。直後から彼らの計画は着々と進行しており、エストルムに代わる新しいエネルギー「ニューエストルム」を活用することで、ノクタを救うという使命に向けて動き始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから数日が経ち、ある朝のこと、ノクタの街には変わらぬ静寂が漂っていたが、密かにノクティアはどこかへと動き始める。シオンやガイルズ、そして街の住民たちは、もちろんこの影の動きをまだ知らない。

 

そしてその日、ルミナに轟音が轟くのだった。




今回出てきた用語
・秘密の集会所「無魔区域ヴェイル(Veil)」
 下層街ノクタの地下に広がっており、魔法の影響を受けにくい場所。ここではオズマ率いるノクティアの集会が行われている。
・謎の組織「ノクティア(Noctia)」
 オズマが率いるヌルたちの集まり。ノクティアの目的は、メイジたちに頼らず自分たちの力でノクタを守る事のようだが全てはまだ謎に包まれている。
・ニューエストルム(New Esturm)
 エストルムに替わる新たな魔力エネルギー。しかし、あくまでもそんなものがあればいいという願いから調査隊が発足された為本当にエストルムに替わる力が存在しているのかは不明。オズマは必ず存在すると確証を得ているようだが…
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