その頃、ノクティアのリーダー、オズマはヌルたちを率いて新しい世界を作り出すための計画を進行していた。エストルムに代わる「ニューエストルム」の手がかりを掴んでいるというオズマは、ノクタを救うために行動を開始する。街の未来が揺らぐ中、シオンとガイルズは知らぬまま、その影の動きが少しずつ彼らに迫りつつあった。
闇に包まれ始めたノクタの街を後にして、シオンとガイルズはニューエストルムの調査を続けていた。
エストルムが急速に枯渇し、街全体がその影響を受け始めている。先日のルミナでの轟音が原因かどうかはまだわからないが、シオンの胸には不安が募っていた。
「お前、本当にあの幼馴染のこと気にしてるんだな」
ガイルズが不意に声をかける。シオンは少し驚いたが、頷いて返事をした。
「そうですね…。彼女はアルカナのメイジです。きっと大丈夫だと思ってます…でも、最近何かが変わってきている気がするんです。俺たちヌルが見えないところで、何か大きなことが動き始めているんじゃないかって…」
シオンは、ルミナでの出来事とエストルムの枯渇が無関係ではないと感じ始めていた。彼の直感は、何かが迫り来る危機を示しているようだった。
「ま、俺たちはただ調査を続けるだけさ。ニューエストルムなんてものが本当にあるなら、探し出すしかねぇだろ」
ガイルズの言葉には、いつものように冷静な決意が感じられた。彼はシオンよりもずっと現実的だったが、その中にもシオンと同じく焦りの感情が混じっていた。
その日、二人はノクタの外れにある古い倉庫へと足を運んだ。ここはかつてエストルムの流通が活発だった頃、物資を保管していた場所だが、今ではすっかり荒れ果てていた。しかし、シオンの胸には妙な感覚があった。
「何か…変です。ここ、前に来た時とは雰囲気が違います」
シオンは倉庫の中に入ると、薄暗い空間を見渡した。埃っぽい空気の中、何かが動いているような気がする。ガイルズもそれに気付いたのか、ゆっくりと辺りを警戒し始めた。
「確かに静かすぎるな。魔法か?」
二人は慎重に進み、奥へと進んでいくと、そこに見覚えのない装置が設置されていることに気付いた。異様なエネルギーが漂っているその装置は、明らかに何かを放出していた。
「この装置から出ているエネルギー…まさかニューエストルムか?」
ガイルズが呟いたが、シオンはすぐにそれを否定する。
「いや、それは違います。何か…すごく不穏です」
シオンは装置に触れることなく、慎重にその周囲を調べ始めた。その時、背後で小さな物音がした。二人は一斉に振り返り、そこには黒いローブを纏った男が立っていた。彼の目には強い決意の光が宿っている。
「お前たちは誰だ?ここで何をしている?」
その男は冷たい声で問いかける。シオンとガイルズは一瞬身構えたが、男が敵意を示しているわけではなさそうだと察し、ゆっくりと応じた。
「俺たちはニューエストルム調査隊の一員だ。ここで調査をしている。あんたこそ誰だ?」
男はしばらく二人を見つめた後、口を開いた。
「俺はノクティアの者だ。だが、安心しろ。お前たちに危害を加えるつもりはない。俺たちも、この街を守るために動いているんだ」
「ノクティア…か」
ガイルズが呟く。その名前は聞き覚えがあった。ノクタで噂される謎の組織だが、彼らが何を目的としているのかは今ひとつ分かっていなかった。
「俺たちはエストルムに頼らない新しいエネルギーを見つけ、この街を救おうとしている。お前たちと目的は同じだ」
男の言葉に、シオンは少し驚きを覚えた。ノクティアがただの反乱者ではなく、街を救うために動いているというのは意外だった。彼らもまた、エストルムに縛られた現状を変えたいと思っているのだ。
「我々の目的は、正義だ。エストルムに依存しない新しい世界を作り上げるために、共に動く時が来たのかもしれないな」
男はそう言い残し、静かに倉庫を去って行った。シオンとガイルズはその場に立ち尽くし、彼らの言葉が示す意味を考える。
「ガイルズさん、どう思いますか?」
シオンが慎重に問いかけると、ガイルズは少し間をおいてから答えた。
「正直なところ、俺にはまだ信用できねぇな。ノクティアが街を救うために動いてるってのは、言葉だけじゃ判断できない。でも、奴らが本当に新しいエネルギーを探しているのは確かだ」
「そうですね…」
シオンも頷いた。ノクティアの目的が正義であろうと、まだ彼らの行動を完全に信じることはできなかった。しかし、この街を救うためには、もしかしたら彼らの協力が必要になるかもしれないという思いもよぎる。
「ただ、油断はするなよ。彼らの計画が俺たちの望む未来と一致するとは限らねぇ」
ガイルズの言葉には鋭さがあった。シオンはその言葉に重みを感じながら、内心でリーナの顔を思い浮かべていた。もし、彼女がこの状況を知ったら、どう思うのだろうか。そして、自分は何をすべきなのか。
「とりあえず、ここでの調査は一旦中止だ。ノクティアの動きがわかるまで慎重に行動しよう」
「承知しました。先へ進みましょう」
二人は倉庫を後にし、さらに奥地へと進んで行った。
夜の空には再び冷たい静寂が広がっていたが、シオンの胸中には、今まで以上に不安と期待が入り混じった感情が渦巻いていた。
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ルミナの街は、その日も光で溢れていた。上層に住むメイジたちは、まるでエストルムが尽きることを心配しないかのように、少しづつ弱まっているノクタの光には目も向けず優雅な生活を続けている。だが、リーナは変わりゆくノクタの異変を見逃していなかった。
「今朝からエストルムの流れが不安定だわ…」
リーナは、ルミナに漂うエネルギーの微妙な変化を感じ取っていた。それが何に繋がるのか、まだはっきりとはわからないが、胸騒ぎが止まらない。そして、その予感が現実のものとなる。
「――!」
突然、街全体を震わせる轟音が響き渡った。まるで空そのものが崩れ落ちるような音に、リーナは反射的に身を屈め、耳を塞ぐ。光り輝いていた街の一部が揺れ、エストルムの流れが一瞬で乱れた。
「何が起きたの…?」
リーナはすぐに周囲を確認するが、近くにいるメイジたちはただ驚き、ざわつくばかりで、誰も原因を掴んでいない様子だった。彼女は、すぐに頭を整理しようとする。何かが壊れたわけではない。だが、この異常なエネルギーの乱れは、今まで経験したことがないものだ。
「シオン…無事でいて…」
胸に浮かんだのは、下層に住む幼馴染の姿だった。彼が無事であるかどうかもわからない。だが、今はまず、目の前で起きている事態を把握しなければならないと、リーナは自らを奮い立たせる。
「確認しに行かなくちゃ…」
リーナはルミナの中枢、ルクス・ハートへ向かう決意を固め、足早に動き始めた。