宇宙帝国の令嬢は日本に興味があるようです 作:性転換大好き
眩しい──。
光が差し込み、視界がぼやける。全身が何かに包まれ、異様なまでに体が小さく、動かない。
耳元で甲高い声が響いた。
「おぎゃ〜おぎゃ〜」
って何だ?今の声、おれか?
いや、待て。
何かがおかしい。体が動かない、手を伸ばそうとしても短すぎる。そして、やけに高い声。
まさか赤ちゃんになってるのか?
しかも、見下ろしてくる女性たちは明らかに異国風いや、近未来風だ。
「奥様、長女は無事お産まれになりましたよ」
「そう、良かったわ。ありがとう」
長女? おれは女になったのか!?
混乱する頭で、ようやく状況を理解する。これは転生の上、性転換!?
脳内がパニックを起こしていたが、生き延びるしかない。
幸い、転生したこの家は裕福そうだし、下手に動くより、まずはこの世界の情報を集めよう。
(……とりあえず様子見しよう)
俺の異世界転生、というか”宇宙文明の大公令嬢”としての人生が、ここから始まる──。
「では、ご当主様にもお伝えしておきます」
「ええ、よろしく」
そんな感じで月日が過ぎていき、ある程度に自主性が認められ、作法や帝王学、国際情勢が日常的に叩き込まれるようになった5歳くらいの時、
「クルシュ、一緒に遊ぼー」
「何して遊ぶ?」
「フルダイブの『星の創造』をしようよ」
「良いわよ」
今は幼馴染のティファニー・ヴァルティアとお話してる。
「星の創造」とはマインクラフトをリアルにして自由度を更に上げたみたいなゲームで、この世界ではかなりの人気だ。
「クルシュ、今日は貴族学院よりも大きな建物を作ろうよ」
「それなら張り切ってみようかしら?」
「いいね!その調子で作っちゃおう」
この貴族学院とは、文字通り貴族の子女が通う学校であり、初等部と高等部に分かれていて、それぞれ六年通う。
大学は貴族向けのものはなく、大体の貴族は卒業後、実家で就業訓練を行い社会に出る。
この国では、大学は庶民や下級貴族の長子以下が通う所として知られており、より良い職に就くという目的は日本と同じ。
「できたわね」
「うん、できたね」
「かなり大きな学園ができたから、私達の町もだいぶ賑やかになってきたんじゃない?」
「うん……」
「どうしたの?」
「明日から初等部に入学って考えると緊張しない?」
「するかもしれないけど、一緒の上級貴族組で頑張ろう」
「うん、ありがと。今日は楽しかった!また明日ね!」
「また明日ね」
銀河間国家であるこの国は、統治に封建制を使っており、爵位は上から、大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵までが領地持ち。
この爵位は人口と経済の規模によって序列が決まるが、侯爵以上は一度も変動がなく、上級貴族と呼ぶ。
ちなみに、ティファの家は公爵、私の家は大公だ。
「おはようございますお嬢様」
「ええ、おはよう」
朝は専属のメイドが控えており、部屋から出ると一緒に行動する。
プライベート空間は寝室のみということだ。
「クレア、今日から私は首都にある学院の寮に泊まるから、戸締りをお願いね」
「かしこまりました」
学院にはメイドを一人連れて行けるため、メイドのクレアを連れて行くことにした。
「お父様、お母様行って参ります。」
「その分だと、クルシュに礼儀作法は身についた様だな」
「そのようね」
「では、出発致します。」
今日は初等部への入学式、幼馴染のティファと一緒のクラスになるのは分かってるけど、他の人とは初対面だから少し緊張する。
「おはようティファ」
「おはようございますクルシュ様」
「ねえティファ……」
「びっくりした?」
「急に敬語を使うんだから少しびっくりしたわよ」
「許して許して」
ティファはご近所さんでとても仲が良いから、普段から一緒に遊んでる。
この感じだとそこまで気負ってないみたい。
「それじゃ席についてー、出欠をとるわよー」
「「「はい」」」
「って言うけど4人だから見ただけでわかるんだけどね」
「あなた達はこれからの未来を本当の意味で左右する立場だから、こちらからも最大限の注意を払うけど、自分の身は自分で守ることも心掛けること。いいですか?」
「「「はい」」」
この上級貴族組は今年は4人いる。
貴族に限らず、国の文化的に一夫一婦制が基本であり、子供は6人ほどで、10家ある上級貴族からは数年ごとに2〜5人の生徒が入学することから、今年は若干多い感じである。
「クルシュ、ついに学校生活が始まったけどなにかしたいこととかないの?」
「そうねえ、学校では座学しか習わないけど、貴族の交流の場でもあるのよね」
「じゃあ他の人に話しかけてみる?」
「どうしようかしら、もう少しこの新生活を楽しんでからにしない?」
「ならこの学院を探検してみよう!」
「いいじゃない、他の場所を見てみましょう」
この学院は施設こそ立派なものの、通う生徒の母数が多くないため、全校生徒は初等部と高等部を合わせて二千人程だ。
毎年、一般組は百五十人程採用しており、国の規模で考えると相当少ない。
最高位で最高権威の学院ということを考えると、警備の面もあり内部から見たら妥当と思えるが、受験者数は毎回一千万人を超え、かなり狭き門となっている。
しかし、ここに通っているのは大半が推薦組であり、身一つで受けるのはさらに厳しい。
「一回この大規模演算室を覗いてみたかったのよね」
「家庭用よりも性能がすごく高いから、PCとかNPCとかを相当増やしても処理落ちしないって聞いたよ」
「そうなのよね、国家経営や宇宙戦争を繰り返ししても、問題なく動くみたいね」
「それじゃ今度貸し切って、宇宙探索してみない?」
「なら明後日にできるか交渉してみるわ」
「ありがとう!」
大規模演算機は宇宙の広さまで再現すると流石に各惑星ごとの事象を詳細に再現はできないものの、惑星を観測する毎に惑星の情報を更新しているのもあり、遥か彼方にある地球を見に行くのを密かに楽みにしてる。
「貴族学院総合事務所でございます。どのようなご用件でしょうか?」
「上級貴族組一年のクルシュよ。大規模演算室の予約はとれないかしら?」
「クルシュ様ですね。予約状況を確認しますので少々お待ちくださいませ」
「何日のご予約をご希望でしょうか?」
「明後日は空いてる?」
「空いていましたので、貸切の予約を取りますがよろしいでしょうか?」
「いいわよ、それでお願いね」
「かしこまりました」
通話をしたのは貴族学院の事務室で、上級貴族は優先して話を通してもらえる。
首の後ろ付近に生体チップか電子チップを入れることができ、身体機能を拡張できるから、その機能の一つにスマホのようなものがある。
さっき使ったのもこれ。
「ティファ、明後日で予約取れたわよ」
「ありがとー!それなら他のとこも見てみよう!」
「どこか他に見てみたいところはある?」
「データベースは?」
「なら、見に行ってもいいかしら?」
「いいよ」
データベースは図書館のようなもので、学園生であれば様々な情報を見れる。
各方面の情報がこの学園を経由してから世に流れるため、最新の情報を見るならここなのだ。
「クルシュは何の情報を探してるの?」
「地球の情報よ」
「地球って?」
「私達と同じ人間が治めてる惑星よ」
「ふーん、そうなんだ」
「将来、地球に行ってみたいわ」
「行けるといいね」
「そうね」
小さい頃から地球に行きたいという夢を持っていた。
前世では日本に住んでいたこともあり、愛郷心が年々強くなっているのだ。
将来は外相を目指しており、ポストが空き次第そこに座る予定だ。
大公国は教皇国内の独立国家であり、独自の政策を行っている。
外相には大公家の血筋が必須とされてるが、あまり人気がないため現在は空席となっている。
高等部を卒業したらそこに就くつもりだ。
そんなこんなで月日は流れてついに外相に就任することができた。
「クルシュ、外務大臣への就任、おめでとう。」
父の声には、いつもの冷静さの中に、わずかな期待がにじんでいた。
「君はまだ若い。世間は大公家の娘とはいえ、本当に務まるのかと疑う者もいるだろう。だが……それを跳ね除ける自信はあるか?」
クルシュは一瞬、息をのんだ。
だが、すぐに背筋を伸ばし、落ち着いた声で答えた。
「ええ、お父様。私が大公国の顔として、外交を担う覚悟はできています。」
その言葉に、父はわずかに微笑むと、厳かに言った。
「ならば任せよう。大公国の名に恥じぬ働きを見せよ、クルシュ・カアニア。」
これで地球へ行くための大義名分はできた。
あとは、地球へと行くだけだ。
さて、何から始めよう?