宇宙帝国の令嬢は日本に興味があるようです   作:性転換大好き

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1章 地球への訪問編
1話 普段のお仕事


「おはようウィルズ」

「おはようございますカアニア大臣」

 

久しぶり。私は現在、カアニア大公国の外務省で働いている。

 

「ウィルズ、今日の予定はなにかしら?」

「本日予定はルナスタ教皇国のルタベルタ外相との会談でございます。主な内容は、国境問題、対アルキス共和国政策のすり合わせでございます。」

 

こんな感じの仕事を日々して4年、仕事の要領を掴めてきた。

そろそろ日本へ行くことを提案してもいいのではないだろうか。

 

「そう。ありがとう。」

「恐縮です。」

「そういえば明日、外務省で打ち合わせがあったわよね?」

「ございます。」

「そこで第1,542,657超銀河団、第25,498銀河、第105,979,396,043恒星の第3惑星にある国家と国交を結ぶ提案をしたいの。」

「急なご提案で驚いてしまいました。その国家のことは寡聞にして存じ上げません。」

「知らなくて当たり前よ。データベースに名前すら載ってない国家だもの。」

「恐れ入ります。」

 

この国の人は誰一人として地球のことを知らない。

ティファは大規模演算室で私が案内したから位置と名前は知っているが、この国の人ではない。

しかし、ティファの実家の公爵家が属している教皇国には大公国もかつて属していた歴史があり、貴族学院に大公国の貴族が通うのはその名残なのだ。

 

「恐れながら、名すら知られていない国家と国交を結ぶ価値はあるのでしょうか?」

「秘密よ。」

「左様でございますか。」

「あなたも明日知りなさい。」

「承知致しました。」

 

このタイミングで秘密にする理由は、単純に1から説明してると長くなるからだ。

もうすぐ教皇国へ移動するので、いまこの話をすると今日の会談に集中できなくなる。

 

「そろそろライツ宇宙港へ向かうわよ。」

「承知致しました。外務省の駐船場に船を停めてあります。」

「ありがとう。」

 

ここでの船は浮かぶ乗り物全般のことであり、空中や宇宙、海上の乗り物はほとんど同じ呼び方だ。

 

「大臣、お乗りください。」

「ありがとう。相変わらずこの船は乗り心地いいわね。」

「私もそう思います。」

 

そうして窓から街の様子を見ながら目的地へ向かっている。

首都惑星はとても発展している。

地表を覆う人工プレートが三層重なっていて、現在いるのは最上層。

惑星全体が機能性を最大限求められた開発をされて、建設物や交通、エネルギー供給網などが無駄なく張り巡らされている。

 

この光景は何度見ても飽きないものだ。

 

「大臣、ライツ宇宙港へ到着いたしました。中距離船に乗り込みます。」

「分かったわ。」

 

今から教皇国の首都へ向かう。

教皇国とは仲が良く、何度も行ったことがある。

ここでいう乗り込むとは、船*1ごと中距離船*2へ乗り込むということだ。

あと長距離船もあり、区分として、大きさ、巡航速度、ワープ機能の有無がある。

 

「それにしても、銀河内をワープで移動することはできないのかしら?」

「銀河内は天体の密度が高いため難しいかと思われます。」

「でも、銀河の端から端まで3日かかるのは若干不便なのよね。」

「現在、法律上銀河内移動でのワープは禁止されてますので諦めるしかございません。」

 

そうなのだ、法律上銀河内ワープが禁止されているのだ。

過去に銀河内ワープで事故が起きてから銀河には高速ができ、そこを通るように制限されている。

ワープしてよい場所は銀河間、超空洞など、天体の密度が低いところだけだ。

 

「最近の共和国はきな臭いわね。」

「ええ。与党の支持率が下がっていることもあり、他国に強気に出る傾向にあります。」

「毎度のことだけど、強気に出てこられる立場を考えてほしいわ。」

「全くその通りです。」

 

雑談しながら中船*3に乗ること3時間、ようやく教皇国外務省のある惑星に到着した。

これでもかなり近い方なのだからゲンナリしてしまう。

 

「大臣、教皇国外相との会談は1時間後です。すぐに移動するため、昼食は船内でよろしくおねがいします。」

「わかったわ。」

 

ということで、今から食事にしようと思う。

都市部での食事は肉料理が基本だ。

都会の惑星には自然環境がないことが多く、大量の水を必要とする水産資源は無いに等しい。

外務省のある惑星も例に漏れず肉料理が基本である。

 

「それで、今日の食事は何かしら?」

「はい。キャベツとハムのサンドイッチ、ナゲットを用意しております。」

「あら、キャベツがあったのね。嬉しいわ。ありがとう。」

「滅相もないことでございます。」

 

野菜は高級品であるものの、富裕層向けの食品として取り扱いのある店はあるのだ。

買い物に行って野菜を見かけるとつい買ってしまう。

 

「ごちそうさま。美味しかったわ。」

「喜ばしい限りです。」

「では、会談会場へ向かいましょう。」

「承知致しました。」

 

ついに会談が始まる。

相手は何度か顔を合わせたことがあるので緊張はない。

しかし、国の代表として会談する以上、何らかの成果を持って帰らないといけない責任感は重い。

 

「ルタベルタ外相、久しぶり。」

「これはこれはカアニア外相。お久しぶりですな。」

「それで、どの問題から話し合う?」

「まずは国境問題からとしましょうや。」

 

ルタベルタは平民上がりの外相であり、かなりの情勢通である。

外交で彼の右に出る者はいないとまで言われるほどだ。

 

「国境問題ね。大公国と教皇国との国境には未だに帰属の決まってない空白地帯があるわ。領有権を主張しだした例の伯爵はどうしてるのかしら?」

「それが悩ましいところでしてな。子爵や男爵であれば黙らせられたものですがね。」

「教皇国の政治の話は今はいいわ。それより、経緯を教えてくれる?」

「いいでしょう。」

 

教皇国は貴族による影響が強い国なのだ。

それを嫌って、当時教皇国の序列1位だったカアニア公爵家は独立し大公国となった。

まだ教皇国に属していれば政治の力でどうとでもなった問題である。

 

「大公国が独立した際、その国境付近は何もない辺鄙な地域だったのですよ。しかし、最近大公国と教皇国を結ぶ新たな高速がそこを通ると聞いて、例の伯爵は色めき立ってしまいました。」

「続けて。」

「はい。それからというもの、貴族会に出てはその事ばかり話すものですから、大公国との問題を抱えたくない貴族は見て見ぬ振りをする始末で、政府としても対応に困ってたんですな。」

「そうだったのね。それで、着地点は考えてるのかしら?」

「その地域を教皇国領直轄地としたいと考えてますな。」

「それは強情ではなくて?」

「いやいやそんな事はございませんよ。何せ高速は教皇国主導の計画でしょう?」

「それは間違いないわ。」

 

ここが弱い点なのだ。

まず、この銀河には教皇国と大公国が存在している。

銀河外領地は置いておくとして、この銀河の高速は独立当時よりあるものなのだ。

なので、現在の大公国が高速事業で関わっているのは大公国領内のみ。

協定にも明記されており、迂闊なことが言えない部分である。

 

「では、その空白地は教皇国へ編入してよろしいですかな?」

「待ってちょうだい。」

 

しかし、ただで教皇国に渡したんじゃ面白くない。

大公国は迷惑を被っているのだ。

 

「その事を問題化させたのは教皇国よね。通行料を半額にするくらいの誠意を見せて欲しいのだけど。」

「それこそ強情というものですな。伯爵が騒いだ程度では大公国は小揺るぎもしないでしょうよ。」

「どの程度動揺したかは関係ないわ。大公国としては誠意を見せて欲しいのよ。」

「では、誠意を見せれば件の領域を教皇国へ編入してもよろしいのですかな?」

「いいわよ。」

 

件の領域を教皇国へ渡しても良いと大公国で既に決まっていた。

後は伯爵が騒いだ件でどれだけの譲歩を貰えるかだ。

 

「では、誠意の内容に移りましょうや。」

「お願いするわ。」

「まず、通行料を半額にするのは要求が大きすぎではないかと思いますな。」

「あら、どうしてそう思うのかしら?」

「おたくも高速は使ってましょう。高速を運営しているのは教皇国なのに大公国に半額で使われたら整備がままならなくなりますな。」

 

「確かに高速の整備が覚束なくなるのでは本末転倒ね。」

「そうでしょうや。そこで、新たに大公国に外環道を整備するのではどうですかな?」

「高速が発端の問題を高速で解決するのはいい考えだと思うわ。」

「では決まりで良いですかな?」

「ただし、通行料3割引きをつけてほしいわ。今後迷惑をかけないという禊込でね。」

「通行料1割引きならいいでしょうや。どうですかな?」

「ではそれで決まりね。」

 

こうして国境問題の件は協定を結んで幕を閉じた。

こちらの利益として、外環道建設、通行料1割引きが手に入った。

決して悪い成果ではないと思う。

 

「最後は対共和国政策のすり合わせね。あの国は結局何がしたいのかしら?」

「民主主義という時代にそぐわない政治をしておりますからな。それは不安定にもなりましょうよ。」

「その不安定さを他国へぶつけないで欲しいわ。」

「まったくですな。」

 

この国の民主主義に対する認識はこんなものだ。

民主主義はとにかく金がかかるのに、得られる対価は民衆が政治に参加したという納得感だけ。

国を発展させるために民主主義は足かせとなるにも関わらず、ズルズルと続けているのは時代遅れだと思われている。

 

しかし、民主主義にもいい面はあって、選挙がとても盛り上がるのだ。

そのおかげで国民意識が高まり、たとえ政権が変わっても国体としては小揺るぎもせず、その国の人間というだけで連帯感が生まれる。

他国をダシにするのだけは止めてほしいけども。

 

「しかしどうするのですかな?またダシにされてる件で非難声明を出すに留めますかな?」

「あまり共和国とは関わりたくないのよね。非難声明を出してもまたダシにされるだけじゃない。」

「そうですな。共和国政府に申し入れても無反応なので打つ手なしですな。」

「共和国を占領しても旨味がないのよね。民衆がすぐに抵抗運動するのが目に見えてるわ。」

「でば今回も無反応ということにしますかな?」

「ええ。そのようにお願いするわ。」

 

このように、まだ動かないほうがいいと判断される問題も定期的に話し合われる。

何もしないのと何もしないことを決定するのでは、相手に対する関心と言う意味で大きく変わるのだ。

 

「ルタベルタ外相、今日は実りある会談をありがとう。」

「こちらこそ感謝するべきでしょうよ。カアニア外相のおかげで伯爵の件が大問題にならなくて済みましたな。」

「そう。それは良かったわね。」

「今日はありがとうございました。大公国のますますの発展を祈っておりますよ。」

 

そうして教皇国外務大臣ルタベルタ氏との対談は幕を閉じた。

今日の仕事は比較的楽な方だったので、すんなりと終わった。

今までで1番大変と感じたのは超銀河団連合会議だ。

数百の国家との話し合いは今考えても疲れがぶり返す。

 

「ウィルズ、早く帰りましょう。」

「承知致しました。」

 

今から今日の会談内容をまとめる作業があるのだ。

それが終わったら終業。

残った時間で明日の打ち合わせで提案する、地球へ行くためのプレゼンの最終調整をする。

私の願いが叶うかどうかの分水嶺となるここで躓くわけにはいかない。

 

「さあ、明日も頑張りましょう!」

*1
自家用車の立ち位置

*2
フェリーの立ち位置

*3
中距離船の俗称

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