宇宙帝国の令嬢は日本に興味があるようです 作:性転換大好き
ティファとの遊びが終わって、お父様に地球との外交を国家事業と認めてもらった翌週。
「ウィルズ、対地球外交部へ行くわよ。」
「承知致しました。船を準備しております。」
「ありがとう。」
今日はできたばかりの部署「対地球外交部」への初出勤の日だ。
この部署の部長はもちろん私。
「みんなそろってるわね。私は対地球外交部の部長、クルシュ・カアニアよ。よろしく。」
「「「よろしくおねがいします」」」
この部署には8人いる。
私と外務省組1人、技術省組3人、電財省組1人、内務省組1人、貴族省組1人だ。
外務省組の役割は外交に関する補助、技術省組は船の手配と技術支援、電財省組は情報と予算の管理、内務省組は諸手続きの補助、貴族省組は私付きの護衛という感じに思っていてほしい。
ウィルズは貴族省組である。
「それにしても、こんなにいい設備を揃えられてよかったわ。」
「素晴らしいことだと思います。」
「立地も良いし、ポケットマネーを注ぎ込んだ甲斐があったわね。」
「これにより最大限のパフォーマンスを発揮出来るかと思います。」
私自身、今回の事業には気合が入っていると思う。
今回の予算は1億電貨で、私は2億電貨を出した。
合計3億電貨となる。
この電貨の価値は1電貨で現代日本の感覚で平均時給と考えたら良いと思う。
ちなみに、大公国は星々によって物価が大きく違っており平均時給が50電貨の星や0.1電貨の星もある。
電貨は少数まで計算され、切り捨てされることは無い。
また、商売において売買を監視するのが経済省、残高の移動を管理するのが電財省である。
「この量子通信機を使ってみましょう。」
「その装置を導入されるとは、さすがの慧眼をお持ちですね。」
「そうよね?」
私の言葉に反応したのは技術省組の人だ。
「そうですとも。今では刻紋(入れ墨のような通信システム)で事足りるところを、あえて筐体の通信機を使うことで肉声を伝えられます。」
「いいところはそこよね。少々高価だけど処理能力が段違いに高いから送受信も軽々なのよね。」
量子通信機は宇宙文明の情報通信網に頼らず通信ができるため、圏外の現場と通信するとき重宝される。
刻紋は宇宙文明の情報通信網でしか機能しないことがほとんどなのだ。
地球に行く時は中継基地を作れば動作するので、その機能を持った長距離船を用意するのが必須と言える。
「早速だけどこの量子通信機を使って地球と交信するわよ。」
「承知しました。では、座標を地球に設定し自動追尾機能を動作させます。」
「ありがとう。」
「読み込みが完了しました。どうやら地球には独自の通信網がありますね。」
「そうなの。」
「割り込んで通信しますか?」
「その方がいいわね。応える相手が明確な方が分かりやすくていいわ。」
「承知しました。」
技術省組は機械を弄ることに1日の長がある。
初期設定などは詳しい人に投げるのが吉なのだ。
「地球の通信網と接続できました。どうやら大まかに音声通信専用の回線と大量のデータを音声含め通信している回線、衛星を介した通信回線の3種類ありますね。」
「どれでもいいわ。とりあえず、通信相手の精査をお願いするわ。」
「承知しました。」
「目標は外務省か宇宙機関よ。」
「見つけ次第報告します。」
地球の通信システムはこちらの規格と全く違うが、こちらから合わせることはできたみたいで一安心だ。
誰と通信するかは今は考えてなく、宇宙文明と交信するだけの度量がある機関を探している。
「精査した結果、NASA*1、JAXA*2、ESA *3、NSA *4、Roscosmos *5等の主要な宇宙機関に加え、すべての国の外務省を把握しました。」
「見事ね。ではJAXAに接続してほしいわ。」
「承知しました。」
技術省組の人が国際機関を提示しなかったのには文化的な理由がある。
我々の宇宙文明は国際機関を必要としていないのだ。
国毎に技術的や軍事的、人口的優劣によって序列のようなものは存在するが、覇権国家は存在せず国際機関を設立する立役者が生まれなかったのだ。
何より、数百の国家の代表が集まるなど経済的負担がかかりすぎ、その見返りも負担より少ないため設立する利点がない。
「カアニア部長、接続が完了しました。呼び出しますか?」
「呼び出してちょうだい。」
「承知しました。」
そうして2回なった後、遂に地球との初の通信がなされた。
「JAXAの川越です。どういったご用件でしょうか?」
「はじめまして。カアニア大公国のクルシュよ。」
「はあ、、、何かの間違いでしょうか?」
「間違いではないわ。我が大公国はあなた方の国家と外交したく思っているの。」
「本当かどうかは置いておいて、何か証明できるものはあるのですか?」
「あるわ。今からJAXAの天文台を準備して。」
「何を仰っているんですか?」
「私達は宇宙文明なの。座標をあなた宛のメールに送るから、確認して。」
「分かりました。天文台に伝えます。」
未知の文明と接触する時の反応としては妥当だと思う。
私も外宇宙からの交信とか言われたらそういう反応になる自信がある。
「今から1時間後にその座標からモールス信号を送るわ。その銀河が私達の本拠地よ。」
「今から1時間で地球まで届く信号を送れるんですか?!にわかには信じられませんね。」
「そう?私の国では普通のことよ。」
「そうですか。」
「では、モールス信号を送った後にこちらから連絡を入れるわ。よろしくお願いするわね。」
「分かりました。そちらからの連絡は未知の番号ということもありますし、少しは信じてみます。」
「ありがとう。」
これでJAXAがスーオリム銀河からの信号を受け取ることができればスムーズに事を運べるだろう。
この第一歩までが長かった。
いくら願っても叶わないなら自分から行動するしかないのだ。
転生してから日本に帰りたいとずっと思っていた。
「さて、最初の通信が終わったわよ。1時間後に地球に光によるモールス信号が届くように準備して。」
「承知しました。指向性の緊急用花火を用意します。」
技術省のスタッフが用意したものは緊急用の指向性花火装置だ。これは通常、星間救助信号や探査用に使われるものだが、今回のように遠距離通信としても利用できる。この花火は量子エネルギーを使用しており、信号を光速を超えて送り出すことが可能だ。
「ありがとう。その準備が終わったら待機しててね。」
「承知しました。」
〈JAXAの川越視点〉
謎の通信が入った。
通信してきた人はカアニア大公国のクルシュというらしい。
全くもって何が起きているか分からない。
とりあえず上に報告しないと。
「峰里部長、先程謎の通信が入りまして、カアニア大公国のクルシュという方からです。」
「誰だねその人は。わざわざ報告してくるんだから、引っかかることがあったのだろう?」
「はい。まず電話番号が非通知出ないにも関わらず表示されていませんでした。いや、正確に言うと全く見たことのない記号の羅列でした。」
「それは気にするのも当然だな。で、向こうさんの要求は?」
「要求は2つありまして、宇宙文明ということを証明するために母星からモールス信号を送るので、天文台で観測してくれというのが1つ目です。2つ目はその後に外交を結びたいとの事で、こちらに関しては追って連絡をいただけるとのことです。」
「分かった。天文台には川越君が連絡を入れてくれ。外交に関しては連絡が来てからの対応で問題ないだろう。」
「承知いたしました。」
後は天文台へ座標のメールを送って、天文台へ電話を入れればこちらの態勢はバッチリだ。
こんなことが起こるとは思わなかった。
今からを思うとまるで夢みたいだ。
〜しばらくして〜
天文台と繋いだオンライン会議で状況を確認している。
「天文台さんそろそろモールス信号が届く時間ですよ。」
「まだ何も観測されてませんね。JAXAさん焦らないで下さい。」
「そうはいってもな。」
「お、来ました!例の座標からとても眩い光が発せられています。」
本当にモールス信号が届いた。
これで信じざるを得ない。
「天文台側で信号パターンを解読できますか?」
「ただいま観測を終了しました。この光り方をモールス信号で考えると、『ワレラ カアニア キコク トノ ユウコウ ヲ モトム』となりますね。」
「ありがとうございます。」
「いえいえ、今後の展開に期待しています。」
『我らカアニア貴国との友好を求む』ってことだよな。
対話する以上、相手が日本より高度な文明を持っていると念頭に置いて置かないと。
これでいよいよ本格的に未知の国家との交流が始まるかもしれない。
おっと、例の人物から連絡が来たぞ。
〈クルシュ視点〉
「もしもし川越さん、どうだった?」
「どうもこうもありませんでした。あなたを、いや貴国の存在を認めます。」
「それは良かったわ。」
「それに伴い外交の話を詰めましょう。」
「私の要望では、1週間後に東京都での会談をしたいわ。」
「1週間後ですか。せめて2週間お時間をいただけないでしょうか。」
「それでいいわよ。」
「どのような移動手段でお越しになるのですか?」
「簡単に言うと宇宙船ね。太陽系外と銀河系外に駐船するのは許可が必要かしら。」
「いえ、必要ありません。」
「地球までは小型の船で行くから、相応の敷地をお願いできるかしら?」
「宇宙船はどの程度の大きさでしょうか。」
「まあ、人の8〜12倍の大きさと思ってたらそう遠くはないわよ。移動に伴う周囲への影響は殆どないから安心して。」
「承知しました。」
「地球の大気圏まで来たら連絡入れるから、そのとき誘導をお願いね。」
「承知しました。」
「では、2週間後を楽しみにしてるわ。」
これで地球、いや日本に行くことができる。
ホームシックのように日本が恋しいと思っていたが、いざ帰れるとなると興奮が収まらない。
またティファと通話しよう。
「長距離船1隻、中距離戦2隻、船は人数分手配して。」
「承知しました。長距離船に刻紋中継機を搭載して手配を進めます。」
「その通りね。ではよろしく。」
地球へ行くと、一時ナイーダを見ることができない。
このとても機能的で美しい星も故郷としての思い入れがある。
食事や洗濯、入浴など思いつく限りの日常生活が自動化されているのだ。
いざ出発前になるとナイーダにホームシックを感じるのはわがままだな。
「いざ2週間後、待ってろ地球!」