宇宙帝国の令嬢は日本に興味があるようです   作:性転換大好き

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2章 地球での活動編
7話 クルシュ来訪


その日、羽田空港には大勢の人が押しかけていた。

それは上空に巨大な宇宙船が飛来したからであり、その圧倒的威容に興味を抱かぬ者などいなかったからだ。

 

「押さないで下さーい。これより先は立入禁止です。」

 

警備にあたる人が必死で群衆を押し留めようとするも、その波は止まらない。

今日は羽田空港は営業を停止しており、乗客は一人もいないはずなのに。

 

「そこをどけ!この瞬間を撮れなかったらどうするつもりだ!」

「そこのあなた、こっちへ来てください。」

 

どうやら過激な記者が誰かに連れて行かれたようだ。

 

「何をしてるんだか。」

「おい、降りてきたぞ!さっさと撮らんか!」

「おっと、分かりました。」

 

ついにカアニア大公国使節団が、羽田空港に堂々と浮遊しているとても大きな宇宙船から降りてきた。

 

「見た目はほとんど私達とは変わらないじゃないか!」

「それよりも先頭の女性は美人すぎないか?」

 

その先頭の女性とはクルシュのことである。

スラリとした長身で、どこか冷静な雰囲気を漂わせる美しい顔立ち。

銀髪よりのプラチナブロンドの長髪が、知的で洗練された印象を与えてる。

瞳の色は深い青よりの紫で、見る人を引き込むような色合いが似合う。

彼女の威厳と美しさを引き立たせるため、洗練されたドレスや装飾がアクセントとして映える。

 

「事前情報で王女が来るってあったよな。あの人じゃないか?」

「恐らくは。これは紙面に映えるとてもいい素材ですよ。」

 

他の人も降りてきたようだ。

 

「すごい!そろいもそろって美人ばっかりじゃないか!」

「そうですね。特に王女ともう一人が高級な装いをしていますね。」

 

この中で一目で高貴と分かるのはクルシュとセレスの二人だ。

セレスは長くしなやかな銀髪を持つ少女で、柔らかなウェーブがかかっている。

彼女の瞳は深いエメラルドグリーンで、見る者に神秘的な印象を与える。

彼女が纏う衣装は、教皇国の伝統的な意匠をふんだんに取り入れた純白のローブ。

その胸元には教皇国の象徴である金色のシンボルが輝いている。

 

他の人は白色のスーツのような格好をしている。

 

「みんなあんなに美人なら、注目されること間違いなしだ!」

「はい。絶対にいい画角を確保して、最高の写真を上げます。」

 

そうして、大公国の一団は日本政府の用意したトヨタのセンチュリーに乗り込んでいった。

センチュリーの数は4台で、その周りを警察の黒塗り車や自衛隊の装甲車が囲んでいる。

 

「日本でここまで仰々しい送迎は見たことがないぞ。」

「確かにそうですね。普段見かけるのはセンチュリーとそれを囲う黒塗り車くらいですよね。」

 

今回は地球上のどんな重要人物よりも手厚くもてなす必要があるため、政府の気合の入れようは過去一番だ。

どうやら会談は皇居で行うらしく、羽田空港から皇居までの道程は交通規制が敷かれている。

この期に及んで反対する人は宇宙船を見てしまった今、誰もいないだろう。

 

〜クルシュ視点〜

 

地球へ2度目の交信をしたところ、羽田空港で車に乗り換えて、皇居で天皇陛下と会談したあと、総理大臣と迎賓館で会談、最後は任意だが記者会見をすると伝えられた。

いまは長距離船で地球の近くを航行している。

 

「記者会見面倒くさいわね。」

「そう言うなよ。」

 

私の愚痴に反応したのはセレスだ。

 

「任意って言われてるけど、実質やれってことよね。」

「だろうな。」

「セレスが出て欲しいわ。」

「だめだ。」

「分かったわよ。」

 

そんな他愛もない会話をしていると、羽田空港へ着いた。

 

(懐かしいわね。旅行や出張でここを利用したのを思い出すわ。)

 

前世は福岡出身なので、東京に憧れがある。

今でも東京はカアニアに負けないほどの熱気があると信じている。

 

「着いたらセレスは私のすぐ後に出てきて、他は少し後に出てきてくれるかしら?」

「分かった。」

「承知いたしました。」

 

このメンツで目立つ格好をしてるのは私とセレスだ。

偉い人は誰かを印象づけるには出る順番も重要だと思う。

 

(すごく人が集まってるわね。)

 

私達の文明は物理的な接触を好むとはいえ、これはこれでありだと思う。

 

「カアニア大公国御一行様。私は日本であなた方の警護を任されております、佐東と申します。」

「佐東ね。よろしく。」

「よろしくおねがいいたします。」

 

センチュリーか。この車は日本において特別な意味を持つ。

前世では乗ったことなかったな。

 

「皇居へ向かうのよね?到着までどのくらいかかるかしら?」

「おおよそ25分です。」

「分かったわ。」

 

周りに装甲車がいるのはびっくりだ。

ここまで厳重にしなくても、交通規制を敷いているんだから大丈夫だろうに。

 

「セレス、この景色を見てどう思うかしら?」

「みんなスーオリム人と変わらない見た目をしてるな。」

「そこもだけど、建築物の方よ。」

「背の低い建物ばっかりだな。私らの施設を作るなら、L-KRUの照射建築を使おうぜ。」

「まあ、そんな意見になるわよね。」

 

照射建築は確かにありだと思う。

見た目のインパクトがあるし、何より早く竣工できる。

ただ、日本の建築技術に頼って作る施設も捨てがたいし、悩むところだ。

 

「皇居へと到着いたしました。足元に気をつけてお降りくださいませ。」

「ありがとう。」

 

降りてみると、天皇陛下が玄関でお出迎えしてくれていた。

国の頂点の人がこういうことをしてくれるなんて感激だ。

贔屓目もあるが、おもてなしの精神はどこの国と比べても日本が一番だろう。

 

「クルシュ、ここはいいな。前時代的だが格調高い雰囲気を見事に作れている。」

「セレスもそう思う?天皇は日本古来の宗教の最高司祭みたいな立場の人よ。もっと壮大でもいいくらいだと思うわ。」

 

セレスが日本の文化に興味を持ってくれる兆しを見せてくれた。

サブカルに浸らせて日本の沼から出られないようにしてあげようかな。

 

「カアニア様、そしてカアニア大公国御一行様ようこそ日本にお越しくださいました。私は後天武と申します。皆様のご来日を心よりお待ちしておりました。」

 

そう言うと、天皇陛下は深々とお辞儀をした。

 

「こちらこそ、私達の訪問に最大限の敬意を払ってくれてありがとう。私はクルシュ・カアニア。カアニア大公国の大公位継承権第一位で、現在は外務大臣を務めながら地球と友好関係を結ぶために来日したわ。」

「私はセレス・ルナスタ。ルナスタ教皇の四女で、教皇位継承権第六位。この使節団では副リーダー的立場だから覚えてもらえると嬉しい。」

 

この際、私とセレスが敬語を使っていないのは日本とカアニア大公国の序列が定まっていないからだ。

ラルトラル超銀河団では、この序列を決めるために醜い争いをした歴史があるため、序列が定まらないのに相手にへりくだるのは非常識とされている。

その点、日本の顔である天皇陛下は文化の違いを加味してもとても評価できる。

日本への愛郷心が刺激されてしまう。

 

「セレス以外は別室で待機してもらえるかしら?」

「「「承知いたしました。」」」

「後天武陛下、会談するのは私とセレスよ。いいかしら?」

「いいですよ。ではこちらへどうぞ。」

「ありがとう。」

 

今回の会談は国の代表同士のものだから、リーダー格の私とセレス以外は参加しない方が自然だろう。

 

「今回は日本との友好を築くためにお越しになられたと聞きました。」

「その通りよ。」

「不躾な事ですが、なぜ日本に興味を持っていただけたのですか?」

「地球を我が国の経済圏へ取り入れる、その第一歩を日本に決めた理由は、治安と経済規模で国々を評価したからよ。興味を持っていたから日本を選んだわけではないわ。」

「そうなのですか。日本には様々な文化があります。ぜひご覧になって興味を持っていただきたいと思っています。」

「そうなのね。ぜひ見てみたいわ。」

 

言われなくとも日本の文化をどっぷりと浴びる予定だ。

個人のチャンネルを持って配信してみたいし。

 

「あなた方が式典をするときは呼んでほしいわ。」

「ぜひご参加ください。」

 

天皇陛下の式典で貴賓席に座らせてもらえるなら、とても光栄なことだ。

 

「後天武陛下がカアニア大公国に来るなら、長距離船をあげるわ。」

「それは大変喜ばしくおもいます。」

「時間をつくって来てほしいわ。私が出来得る限りの歓迎を約束するわよ。」

「ますます期待してしまいます。」

 

これは誰にも言えないけど、めっちゃ依怙贔屓するつもりだ。

 

「ところで、序列は決めないのか?」

 

セレスがぶっこんできたな。

 

「セレスさん、序列とは国どうしのという事ですか?」

「ああ、そうだ。」

「大変お恥ずかしい話ですが、私は国の中枢を担っておりませんので、この後に首相と決めていただきたいです。」

「天皇はほとんど権限を持ってないんだな。そこまでしても排さないのは、国民に大事にされてる証拠だと思うよ。」

「国民には感謝の念でいっぱいです。」

「大事にしな。」

 

後天武天皇陛下とはこの後も少し話し、迎賓館へと向かうタイミングとなった。

 

「また話したいわ。次はもっと気軽に話せたらいいわね。」

「状況次第ではルナスタにも来てほしい。」

「お二方、本日はありがとうございました。」

 

さて、迎賓館へ向かおうか。

いつまでも道路を封鎖していたら絶対に邪魔と思われるだろうし。

 

「お次は迎賓館でございます。」

「そう。ありがとう。」

「滅相もない事でございます。」

 

「セレス、政府との会談では強気に出ていいわよ。」

「相手が萎縮するんじゃないか?」

「国どうしの利益に関する事なら遠慮しなくていいわ。」

「分かったよ。」

 

私も日本に援助したいがために来たわけではないのだ。

1番の目的は日本を満喫すること。

その上で影響力を増す様々な施策をしたい。

 

「迎賓館へ到着いたしました。」

「ありがとう。」

 

迎賓館の会談予定場所へ行くと、首相がこちらへ深々とお辞儀をした。

 

「ご来訪並びにご来日、誠にありがとうございます。私は日本国における首席の宰相の龍造寺忠彦です。本日の会談を心待ちにしておりました。どうぞよろしくお願いします。」

「ご丁寧にどうも。私はクルシュ・カアニアよ。地球に対する外交の全権限を本国より委譲されているわ。」

「私はセレス・ルナスタ。この使節団の次席だ。」

 

各々自己紹介をした。

 

「早速ですが、国家間の条約についてお話しさせていただきたく思います。」

「セレス、条約については任せてもいいかしら?」

「分かった。龍造寺首相、条約については後ほど私を含めた関係者と話し合いをしよう。」

「承知しました。」

「この場ではお互いの要求と重要な取り決めの確認をしていきたいわ。」

「どのような内容でありますか?」

「第一に国家序列の明確化、第二に大使館設置に際する権利の確認、第三にカアニア大公国人の日本における活動の認可、いわゆるビザね。」

「では、日本としては貴国との交流に関して、未知の文明に対する情報を求める次第です。」

「日本はまだカアニアに対して大使館を設置したり、来訪できるほどの力はないものね。そこは追々決めるとするわ。ただし、何も無しにそれらの整備をすると思わないことよ。」

「十分に承知しています。」

 

日本に対するスタンスは理解してもらえたかな。

 

「さて、日本からの要求は信頼関係を築いてからと言いたいところだけど、交流だけは即座に認めるわ。」

「ご配慮に感謝します。」

「詳細はセレスに任せるわ。」

「考慮する。」

「そして、大使館の設置と活動の認可はどうかしら?」

「問題ないと思われますが、即座には判断いたしかねます。」

「煮え切らないわね。」

「国内法の範囲内であり、お時間を取らせずともどちらも許可できます。ただし、カアニア大公国は国家の承認が無く手続きが煩雑になるため、結果は後日にしていただきたく思います。」

「分かったわ。でも、使節団の行動許可は今日中に出すのは絶対条件よ。」

「抜かりなく、許可はこの場でサインすれば国内の移動の自由を認めます。」

「分かったわ。」

 

サイン書きおわり。

 

「これで良いかしら。」

「まさか日本語の筆記ができるとは、御見逸れいたしました。」

「そうね。最後に国の序列を決めたいわ。」

「分かりました。説明いただけますか。」

「まず、カアニアが属するクノイス文明には序列を決める伝統があるのよ。その訳は領土問題等に起因する戦争が絶えなかったからね。」

「はい。」

「現在は10位階に分かれていて、領土問題は上の位階の国に仲裁してもらうことで、軍事的な衝突を避けられる仕組みになっているわ。」

「そうなんですね。」

「貴賓の席順についてもこの序列を元にしているから、クノイス文明と外交するのに序列に入らないのは文明全体を軽視していると捉えられるわね。」

「それほど重要なことならば早急に決めなければ貴国に対し失礼ですね。」

「その通りよ。」

「しかし、日本は技術的にも経済的にも序列最下位になるしかないのではないですか。」

「その2つの指標でいけばそうね。でも、日本にはクノイス文明圏からかなりの距離がある事と、カアニア大公国と友好を結んだという2つの条件があるわ。」

「つまりそれは。」

「そう、日本をクノイス文明圏外の保護国にすれば並大抵の国からは舐められる事は無いわね。」

「そうですか。」

「ちなみに、これはかなり破格の条件よ。」

「それで、序列は何位になるのですか。」

「第三位よ。そこにねじ込むからじっくりと国を発展させなさい。」

「軋轢が心配ですが。」

「私が黙らせるわ。」

「分かりました。では、そのようにお願いいたします。」

「もちろんよ。序列は私が抜かりなくしておくわ。」

「感謝いたします。」

 

序列一位は概念として【文明の支配者】、二位は【文明の先駆者】、三位は【文明の貢献者】、それ以下は、【文明の追随者】、【文明の漂流者】、【発展国】、【精進国】、【期待国】、【参列国】、【名簿国】となる。

 

ちなみに、カアニアとルナスタは第一位で、スーオリム銀河の近くの銀河にあるなんかゴタゴタしているアルキス共和国は三位だ。

 

「これで話は終わりよ。以後、実務的な事はセレスに聞いてね。」

「まあ、私もそこまで暇では無いから、内務省のコセに回すよ。」

「そう。」

「今回の会談、誠にありがとうございました。」

「分かったわ。」

 

これで、国家間の決め事は部下がやってくれる。

 

「次は、会見でございます。本日はこれが最後の職務となります。」

「分かったわ。」

 

そうして例の車で羽田空港まで移動し、そこで会見をすることにした。

すぐに船に帰りたいしね。

 

「只今より会見を行います。早速ですがクルシュ・カアニア様よりお願いします。」

 

司会の女性が粛々と司会進行している。

 

「私は遠い宇宙の巨大な銀河に存在する大公国から来たクルシュ・カアニアよ。日本の皆さんに会えて嬉しいわ。」

「来た目的は地球と我々の国の人種が遺伝子レベルで一緒だから、その謎を解明するためなのよ。」

「別に喧嘩したいわけではないけど、舐めた態度をとったら容赦はしないわ。」

 

最初は私の容貌に見惚れている者が多かったが、話が進むにつれ冷や汗をかいているかのような人が増えていた。

 

「クルシュ・カアニア様ありがとうございました。ここからは質問とさせていただきます。挙手でお願いします。」

 

私が1人を指差す。

 

「日本経済新聞の巻田です。本日は貴重な時間をありがとうございます。質問といたしましては、今後世界とどのような関わりを持っていくかをお聞きしたいです。」

「そうね。案はあるけどまだ言える事は無いわね。ただ、日本の土地をいくつか購入する事は考えているわ。」

「ありがとうございました。」

 

また1人を指差す。

 

「朝日新聞の森繁です。地球を侵略する意思はありますか。」

「はあ。無いわ。」

「絶対にそうと言い切れるのですか。」

「言い切れるわよ。」

「分かりました。」

 

また1人を指差す。

 

「ウォール・ストリート・ジャーナルのジョンソンです。日本以外の国とはどう関わっていくのかをお聞きしたいです。」

「直接関わるつもりは無いわ。でも、誰かを遣すかもしれないわね。」

「分かりました。ありがとうございます。」

 

「以上で会見は終了となります。」

 

そうして足早に退場した私は長距離船へと帰るのだった。




次回はクルシュの生放送です!
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