宇宙帝国の令嬢は日本に興味があるようです 作:性転換大好き
地球へ訪れて1月経った。
今日はYouTubeでの配信を行う初めての日だ。
あの会談の後、外交や通商、交流に関しての条約が締結された。
特徴的なのは通商で、カアニアが無制限に日本のものを買うと商品が品薄になって値段が上がる。
だから、カアニアが商品を買うことによって生じる物価高を抑制するために、10%以上値上がりしたら購入を一時的に制限する。
日本側がカアニアから購入するのは私の名義を使った店限定という、不平等条約も真っ青なものになった。
ひどいのは為替レートで、カアニア大公国とルナスタ教皇国が共同で発行し、ラルトラル超銀河団での共通通貨となっているスーオリム電貨と日本円では、
1スーオリム電貨(1SDC)=一千万日本円(10,000,000JPY)
の固定相場制というとんでもないものになった。
前世の記憶から考えるととんでもないけど、実はこれは真っ当なものだ。
通貨は国力を示す指標の一つのため、通貨の価値が高いほど付加価値が高いと認識されている。
なので、セレスたちがこの条件で進めたのも常識的といえる。
「ランドリュー配信の準備はできたかしら。」
「できました!始める時は教えてください!」
私は今、東京にあるカアニア大使館にいる。
現地の法人が所有しているオフィスを借りたのだ。
機材も現地のものを使っている。
「それにしても全てが物理的な仕組みでできているのは好感が持てますね!」
「そうよね。物理法則に反する技術を使っていないのは見どころよね。」
クノイス文明は物質至上主義なので、こういう人が大半だ。
「そろそろ始めるわよ。」
「分かりました!」
〜とあるニコ生主の配信〜
「実はタバコを吸ってたよ。うん。」
◯禁煙どこいったんだよw
◯トイレが長すぎた
◯さすがに気づくよ
「トイレに行くふりしてヤニ吸ってたから。」
◯草
◯何してんだよw
◯宇宙人配信やってるぞ
◯吸いながら話して
「お。宇宙人配信してんのか。ミラーリングして見てみようぜ。」
『日本人の皆さん、私はカアニア大公国の長女、クルシュ・カアニアよ。今後、私達と関わりが深くなっていくから、聞きたいことがあったら聞いてほしいわ。』
「お前らなんか質問しろよ笑」
◯様子見
◯してるけど勢いが凄すぎて無理
◯開始1分で同接三千万人
『【◯何で地球に来たんですか?】これを書き込んだ人は会見見てないわね。』
「興味あって配信見てんだろ笑。何でこんな質問する奴がいんだよ笑」
◯日本国籍を持ったチンパンジー
◯まじで色んな人が見てるな
◯さすがに場違い
『【◯何で日本を選んだんですか】これは会見で言ってなかったわね。国家規模と治安で選んだからよ。』
「へえ、そうなんだ。治安はめっちゃ良いもんな。」
◯確かに
◯治安はいい
◯経済は落ち目だけど規模で言われると納得
『【◯あの船は買えるんですか?】カアニアの商品を欲しがる人もいるわよね。買えるわよ。売買の詳細は条約を見てほしいのだけど、私は日本に店を作る計画を立ててるのよ。興味があるなら来てほしいわ。』
「まじか。行くしかねえじゃん。ってかあの船を持ってたら交通バグるだろ笑」
◯スターシップ欲しい
◯みんなの憧れ
◯高そう
『ちなみに、今回取り扱う予定で1番安い船は〈 AKBシリーズ〉で5万電貨よ。私達の商品を安売りするつもりはないけど、これはカアニア製やルナスタ製ではなくアルキス製だから、交渉次第ね。』
「くそ高えーじゃねえか笑」
◯高すぎて草
◯大富豪でもきつくね?
◯船の最低価格5千億円かよ
『カアニアの下流階級は年収10万電貨程度だから、割とアルキス製の船は見かけるわよ。』
「向こうのバイト、日本に来たら年収1兆って夢ありすぎだろ。」
◯物価の違いを海外で感じる事はあったけど、レベルが違う
◯向こうでバイトしたらエグそう
◯時給1,000電貨
「そもそもカアニアに行けねーだろ笑」
◯草
◯確かに
◯それはそう
『中古は取り扱わないわよ。』
「じゃーきびしいや。」
◯希望が絶たれた
◯おれらの中古はどこ
◯そんなあ
『【◯通貨レートもっと円高にできませんか?】無理よ。カアニアの経済規模ってパン一斤1電貨で、総生産五千兆電貨よ。パンは少し高級品だから単純比較はできないけど、雰囲気は分かるわよね。身の程をわきまえて欲しいわ。』
「めちゃくちゃ辛辣だな笑。まあ銀河規模で経済が違うから分かるか。」
◯すげー
◯桁が違うわ笑
◯パンでレートを見ると、パン一斤1000円として500京円の経済規模か。単純にであるが、国力一万倍は違うのかよ笑
『【◯日本以外の国とはどう関わるのですか?】関わる予定も興味もないわ。』
「この王女日本にしか興味ないのかよ笑」
◯そういえば外国語のコメばっかなのに、日本語のコメしか拾わないな
◯え、日本としか為替取引しないって事?
◯地球の経済がおかしくなっちゃう
『日本人以外が私の店に来る事は拒まないけど、日本円以外を換金するつもりはないわよ。』
「おれが日本人でよかった。」
◯日本円の勝利確定演出
◯外国人涙目
◯資産を外貨で持ってる人もだいぶやばいな
『【◯その店の経営ってどうなるの?】私が日本で法人を作り社長になるわ。稼いだ日本円はこの法人に集約するつもりよ。』
「そらそうよ。宇宙で日本円なんて使えねえよな笑」
◯ふむ
◯円は日本に置いとくのか
◯なるへそ
『詳しくは話さないけど、一部以外は現地の従業員を雇うつもりよ。』
「まじかよ。めっちゃ気になる。」
◯それな
◯ニートの出番
◯↑まず家から出よう
『【◯雇用体系や給与を教えてください】この手のコメントが多いわね。まだ正確に決めてないから私のイメージで話すわ。でもその前に、視聴者に予想してもらいたいわ。』
「いくらだ。月に1億とか貰えんじゃね?」
◯求人倍率の分かれ目
◯電貨の可能性
◯コメントしてきた
『【◯1電貨】電貨で払うつもりはないわよ。』
「そんくらいケチケチすんなよ。」
◯なんで電貨はだめなん?
◯そんなもんなんか
『【◯1億円】何の仕事をするつもりなのよ。』
「言われてら笑」
◯1億円は無理じゃった
◯1億円稼ぐ一般従業員笑
◯チーン
『正解は仕事内容でまちまちだけど、取り扱う物の価値で4段階に分かれてて、上が六千万円で下が八百万円くらいを考えているわ。』
「上のランクのやつ何をすんだよ笑」
◯めっちゃ責任重そう
◯六千万円に見合うのか分からんね
◯最先端のを扱えて六千万円は夢あるな
『次で最後の質問にするわね。【◯カアニアへ行くにはどうしたら良いですか?】ふむ。』
「やっぱカアニアに行ってみてーよな。」
◯禿同
◯行けるのか!?
◯王女も悩んでるじゃん
『カアニアへの招待はいい案ね。定期便はまだ作らないけど、年に何回かはカアニアへ行けるようにしたいわ。』
「え?この質問でカアニアに行けるようになったじゃん。」
◯質問者有能
◯王女も誰か連れていきたかったのか
◯いいしゃん
『これで終わりよ。次はいつになるかしらね。』
配信終了
ニコ生主がパソコンを操作してクルシュの配信画面を消す。
「へえ、面白そうじゃん。」
◯それな
◯店も国も行ってみたいよな
◯話題性ありすぎ
◯王女が可愛すぎてこっちみてなかった
「王女は可愛かったけどよ、その感じ2窓じゃねえか笑」
◯草
◯声はこっちのも聞こえてるだろw
◯可愛いというより美しい
「そうだな。」
◯また見たい
◯普通に癒し
◯カプコンが新作出すらしいぞ
「カプコンか!」
雑談は進んでいく…
〜クルシュ視点〜
YouTubeの配信が終わり、ほっと一息ついた。
「ランドリュー、配信の準備ありがとう。これを直したら私からの依頼は終了よ。」
「分かりました!また用事がある時は呼んでください!」
さて、スーパーチャットしてみよう。誰が配信しているのかな。
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この子、白髪に赤目のビジュアルがいい。しかも、最近フォローした絵師の娘なのだ。
『こんにちは。人吉神宮よ。ぜひ見ていってね。』
お姉さん系のようだ。Baldur’s Gate 3をプレイしている。
『今日も私のお気に入りのゲーム、bg3をするよ。』
『昨日はムーンライズタワーでミンサラを助けたから、今日は―…』
ミンサラを助けた?
bg3をプレイしたとき、まったく同じ選択をした記憶がある。
まあ、それくらいなら偶然もあるか。
でも、話し方や語彙の使い方に妙な既視感があるのんだよな。
しばらく見ていると、ゲームが終わり雑談の時間になった。
『私、また豚骨ラーメンにハマり出したの。』
……え?
『そこのお店にはちゃんぽんや変わり種のラーメンもあるんだけど、1番はシンプルなラーメンに煮卵をのせて、サイドで焼き飯をいただくことよ。』
本当に?
それ、前世の私が通っていた店の定番の頼み方と完全に一致している。
試しに赤スパを投げてみた。
『クルシュさん赤スパありがとうございます!え!?あのクルシュ王女!?えーと、【◯ あなた今広島に住んでるわよね?】』
少しの間を置いて、返事が返ってきた。
『これは一本取られたね。』
やっぱり。
これは、偶然の一致じゃない。
この子、私の前世と似すぎている。
【◯ 会いに行ってもいい?】
「ぷっ。話飛びすぎ。でも、王女が軽々しくそんな事言わないよね。配信終わったら個チャに来て。」
〜個チャ〜
クルシュ:「どうも」
神宮:「はじめまして」
クルシュ「私、あなたが他人な気がしないのよ」
神宮「どうしてそう思うんですか?」
クルシュ「雑談を見てたら、私が見てきた事ばかり言うからよ」
神宮「偶然じゃないですか?」
クルシュ「偶然かも知れないけど、それだけでは片付けられない要因があるわ。」
神宮「例えば?」
クルシュ「福岡の◯◯ラーメン屋には行ったことあるかしら?」
神宮「あそこはいいですよね。焼き飯とラーメンのセットが最高で。」
……やっぱりね。
クルシュ「福岡に住んでたわよね?」
神宮「ええ。今は広島だけど、昔は福岡でしたよ。」
私が前世でたどったルートと一致してる。
神宮「面倒だから会いませんか?」
クルシュ「いいわよ。どこで落ち合う?」
神宮「東京の大使館に行ってもいいですか?」
クルシュ「どうやって入るつもりよ。」
クルシュ「福岡の海の中道海浜公園なら、人気もないし傍目に気づかれないと思うわ。」
神宮「大使館入れませんか?」
クルシュ「明日の13時にシーサイドヒルシオヤでお願いね。」
神宮「分かりました。」
〜個チャ終了〜
翌日、私は変装してシーサイドヒルシオヤへ向かう。
秋の涼しさが心地いい。
クリーム色のジャケットにボトムを合わせ、インナーには白い丸首シャツ。
全体的にシュッとしていて、綺麗めな印象になっている。
現在は12時半で、園内に入ったところだ。
もしかしたらもういるかも知れない。
早速散歩がてら向かうとしよう。
シーサイドヒルシオヤへ歩いていくと、今日が平日なのもあり人がまばらなのが見て取れる。
この自然豊かで、でも人の手の入った清潔な林を抜けていくと、海の見える丘にたどり着いた。
もうあの人は着いているのかな。
少し探していると、すでに待っている人影が見えた。
黒革のジャケット、ミニスカート、赤いニット。黒髪を腰まで伸ばした女性が手すりに肘をついて黄昏れている。
足を見せる今どきのファッションだ。
「そこの方、人吉神宮かしら?」
ゆっくり振り返る。
「そうです。ということは、あなたがクルシュ王女ですか?」
「そうよ。それと、王女って呼ぶのはやめてほしいわ。」
「皆そう呼んでたけど、大公国の令嬢ですよね。」
「あら。よく知ってるわね。」
「でも、なんて言えばいいか難しいです。」
「向こうではクルシュ大公令嬢とか殿下、様付けで呼ぶ人もいたわね。」
納得顔をしている。
「では、クルシュ様と呼ばせてください。」
「受け入れてくれて感謝するわ。」
小さく笑う。
「なら私も、人吉神宮ではなく、田代優月と呼んでください。」
「それがあなたの本名なのね。」
「そういうことです。」
「ならこれからそう呼ばせてもらうわ。」
ふたりで砂浜へ降り、静かに歩く。
「優月、あなたこの間例のラーメン屋に行ったって言ってたわよね?」
「ええ。」
「前世よ。」
空気が変わる。
「……え?」
「私はあなたが前世の私と睨んでいるのよ。」
沈黙。
「私が、ですか?」
「優月は普通に歩いてるとき、稀に大股になる事があるわよね。」
「そうですか?」
「あるわよね?私も幼少期に作法の指導をされて初めて気づいたのよ。ほら今もしているわ。」
「本当ですね。言われてみればしてました。」
優月は確信めいた表情で聞いてきた。
「なら、私の記憶で1番古い迷子した場所は覚えていますか?」
「鹿児島のダイエーよ。」
「完全に同じです。私の記憶を持ってるのは間違いなさそうですね。」
「そんな事ってあり得るんですか?」
「事実そうなっているわね。」
「でも、前世というなら私は死んでなくてはおかしくないですか?」
「日本語的にはおかしいけれど、私が前世で死んだ記憶がないから、無理筋ではないわよ。」
「そうなんですか。」
そこからはお互いの好みやローカルネタの話で盛り上がり、先ほどまでのピリついた雰囲気は無くなっていた。
「これだけ身内ネタを知ってたら、ますます確信づいていくわ。」
「私もずいぶん毒気を抜かれたけど、ここまで話が合うなら信じます。」
「今日はこれで解散するけど、また会いたい
わ。」
「私もです。また会いたいです。」
「それと、これからは敬語を使わなくていいわ。名前も様付けしないでほしいわね。」
そう言うと優月は驚いたあと、とても穏やかな顔になった。
「じゃあね。クルシュまた会おう。」
「ええ。そうね。」
人吉神宮改め田代優月と出会えて良かった。
もし私の前世じゃなくても大切にするつもりだ。
だが、謎は深まった。
優月が前世として、私は男だったのだ。
超常現象を司るンカラサ文明のでかぶつが絡んでるならしばきに行かないと。
しばらくして日本での家である大使館へ戻ると、ティファから連絡が入った。
「クルシュ、久しぶりー。」
「久しぶりね。どうしたのかしら?」
「なんか最近あまり遊べてないと思ってる。」
「日本に長期滞在する予定だから仕方ないわ。」
「私が行くわけにもいかないし、当面は会えないね。」
「そうなってしまうわね。」
「悲しくないの?」
「急に来たわね。」
「どうなの?」
「普通よ。」
「クルシュならそう言うよね。私、セレスから聞いたよ。最近懇意にしてる人がいるって。」
「いるわね。」
「付き合いは程々にしなさい。」
「なんでティファがそういうことを言うのかしら。」
「何でも良いし。じゃあまたね。」
最近のティファは様子がおかしくなっている。
カアニアにいた頃は、私に向かう矢印こそ大きめだったが独占欲のようなものは無かった。
私が日本に来てから少しずつ嫉妬の感情を出すようになったのだ。
セレスとティファは知り合いだけど、私と2人(爵位持ち)で行くとなると表に出さないまでも難色を示していた。
ティファとは社交界や政治、経済、経営等、幅広い分野で関わりがあり、切ろうにも切れない関係なのだ。
何より、私もティファはお気に入りなので、最近の変化には戸惑うばかりだ。
優月とティファ、どっちも好きだけど、今は優月とたくさん関わろう。
そういえば、来月末は大規模商業施設[クルシュ・コンプレックス]の草案を提出するのだ。
今からじっくりと考えよう。
感想ありがとうございます!