アビドスの地下労働者 作:bishop
「こんにちは~スメラギさ~ん☆」
『なぁ、どうしてお前らは全員入りながら挨拶をするんだ? デカガキか? デカガキの影響なのか??』
すっかり肌寒さを感じることが多くなったくらいの季節。中学生だというのに高校に入り浸るこの金髪デカ乳……十六夜ノノミはどこのデカガキとチビガキに似たのかノックもせずに倉庫の中へと入って来た。
『ったくよぉ……まぁ、いいだろう。俺は寛大だ、化け物相手にファンサもするしな? んなこたどうでも良いんだ、一体何の用だ』
「えぇっと、銃の相談をしたくて」
『なるほどな……俺はどちらかというと整備畑なんだがね。まぁ良い、要望を言いな』
「要望、ですか……具体的にはどんな感じなんでしょう?」
首を傾げるノノミ。確かにいきなり要望と言われても解り辛いか。うーん具体的に……そうだなぁ。
『そうだな……こだわりというか、好きな感じというか……何か譲れない条件をいくつかって感じだ』
「こだわりですか……威力のある弾丸を高レートでパーっと撃ちたいです☆!」
『才能あるなお前。なんのとは言わんが。それだけで良いってんなら丁度良いのがあるぞ、待ってろ』
高威力高レートの銃、それもノノミに扱えるヤツ。キヴォトス人だ、多少の扱い辛さは筋力で押さえつけることが可能だろう。レートだけで言うならばP90やグロック、Vectorの45口径の方なんかがあるが……高威力となればやっぱりコレだな。
倉庫の奥から引っ張り出してきたのは埃を被り所々損傷している巨大な多銃身の化け物。
「ほわ~……ガトリングガンですね☆」
『そうだ、M134ってヤツだな。フルパワーで運用するなら100㎏に耐える必要があるがまぁキヴォトス人なら大丈夫だろ』
「ひゃ、100㎏ですか……ダンベル買わないとですね☆」
『鍛えるのは正解だろうな。どうだ、試しに撃ってみるか?』
「はい! 撃ってみたいです☆」
『元気があってよろしい! そんじゃあ待ってなお姫様』
18㎏の化け物を作業机の上に置き、損傷個所を点検する。鹵獲品だからな、戦闘の時にちょっとばかし傷付けてしまった。とはいえ動かす分には問題無さそうだ。
試しにバッテリーを繋いで駆動させてみるが問題なく動作した。結論、試し撃ちくらいなら問題ないだろう。
『うし、そんじゃあ外に出るぞ……ノノミ、そこの弾薬箱持って来てくれ』
「はい☆」
本体とバッテリーを持ち上げて倉庫の外に出る。その後ろを弾薬箱を抱えてノノミが着いて来る。
にしてもただでさえいつもの装備にプラスしてM134とバッテリーだから流石に重いなやっぱり。
『いやぁ、作ってて良かった射撃場』
30秒と経たずに倉庫のすぐ隣に俺お手製の射撃場(無許可)へと到着。ヘルメット団の連中から大量に調達した服とヘルメットをダミー人形に着せてあるので実戦さながらの射撃訓練が出来るぞ。
やっぱり的は人型じゃないとな、実戦の為にも。
『弾薬箱をここに置いてくれ……んで、こいつを持て』
「えっと、こことここを持てば良いんですよね? うわぁっとと……思ったよりも重くてビックリです☆」
『バッテリー繋いでなきゃデカい鉄塊だからなぁこれ。相応に重いぞ』
バッテリーを本体へしっかりと繋ぐ。試しに空転させろと指示すれば景気よく銃身が回転する。この軽快な音を地下で聞けりゃァさぞ頼もしく感じただろう。
『弾薬は500発……5秒だ、5秒反動を押さえつけるだけで良い』
「5秒……って5秒で撃ち切るんですか!?」
『撃ち切るぞ』
「500発ですよ!?」
『500発だな』
このM134は毎分6000発のモードしかない正真正銘のじゃじゃ馬モデルだからな。秒間100発とか過剰戦力過ぎる。だから良い。
これ、もともとはセントリーガンに積もうと思って適当な奴から略奪してきたんだけど、重量とこの扱い辛さに断念して倉庫番にしてたんだよ。正直ノノミが持って行ってくれるとだいぶスペースが開く。
『まぁ、とりあえず引き金を引いてみな。トぶぞ』
「わ、わかりましたぁぁぁぁあああああ!?」
ブチ鳴る轟音。降り注ぐ薬莢。キッチリ5秒続いたそれらは俺の耳を破壊するには十分だった。前言を撤回するぜ、地下でこんなゲイの喘ぎ声みたいな音が聞こえてたら俺は死ぬ。
ああ、ちなみにノノミはダメだったよ。反動を抑えきれなかったんだ。
見ろよあの的。下から上に一直線にズタボロだしその後ろの校舎も下から上に一直線にズタボロだ。いやぁ、怒られるなぁこれ。
「あわわわわわ……や、やっちゃいました……!!」
『やっちまったなぁノノミ。じゃあ俺はズラかるから後は任せた』
「えぇ!?」
『スメラギ悪い大人、責任取らない!!』
脳内AIちゃんにだけ分かるハンドサインですぐそこに呼んでおいたバイクに飛び乗ってアクセルを全開まで吹かす。あーばよー、とっつぁーん!!
《サイテーですね》
『だって怒られたくねーもん』
のんびりとバイクを走らせながら脳内AIちゃんの声に答える。脳内AIちゃんにある程度の操縦を任せられるようにした改造は成功だったな、おかげですぐに逃走出来た。やっぱ俺ってば天才か。
《転ばしてやりましょうかね》
『俺が死んじまったら俺の体は手に入らねぇぞ』
《ジョークというやつですよ、ご存じ無いです?》
『ハハ! こやつめ』
最近は随分と脳内AIちゃんも愉快な存在になって来た。この調子で俺に成り代わった後も俺のロールプレイできる位にはなって欲しいな。
さて、そんな俺が責任をぶん投げた後のことを考えつつもやって来ましたのはブラックマーケット。今回の目的はM134の修復と改造に使うパーツだ。これでもノノミの銃についてちゃんと考えてるんだぜ? ちょっとだけ責任ぶん投げて逃げて来ただけで。
《逃げても問題の先送りにしかならないのに……》
正論が痛い。
『まぁ、そんな痛みを知らないふりをして。どこに行くかね』
いつもの店は質こそ良いがM134のパーツは無いだろう。それはそうとセントリーガンのボルトを調達したいから寄りはするつもりだが。まぁ、寄ったついでに店長に良さげな店が無いか聞くのが無難か。
じゃあ行くか、寄るんじゃなくて目的地に設定だ。
遠くから聞こえる銃声と怒号。んなことを気にせずにバイクを走らせる。ああ、ブラックマーケット、俺の生きるべき場所。綺麗な肥溜めとでも言うべき場所。今日のショッピングも実りあるものであることを祈ろう。
「初めまして、小鳥遊ホシノさん」
異質だった。
黒いスーツに黒い炎のようなひび割れた頭。その立ち姿は明らかに生徒では無く大人のソレ。
「本来ならば少々話をしたい所ですが……ただでさえ”死”が居ぬ間の僅かな猶予。時間が惜しい、単刀直入に言わせてもらいましょう」
何を言って居るのか。どこから現れたのか。いつからそこに居たのか。疑問は尽きず、しかし恐怖で声は出ない。私がしっかりしなければならないのに。
何も言えない。何も出来ない。
「契約をしましょう、小鳥遊ホシノさん」
たすけて、スメラギ。
「よぉ、ロリコンクソ野郎。売春なら他を探しな」
「「ッ!?」」
黒い男と私が同時に同じ方向へと目を向ける。その瞬間、私達の間を銃弾が通り過ぎる。
しかし、視線の先――銃弾が向かってきた方向には誰も居ない。それどころかすぐそこに壁があり、間違えても銃弾が飛んで来るような光景ではない。
脳が理解できずに一瞬呆けてしまう。
「……クククッ。もうそこまで、ですか」
黒い男の笑い声にハッとしてすぐに向き直る。一瞬でも注意を逸らすなんて馬鹿にも程がある。
「ええ、ええ。今日の所は帰るとしましょう。では小鳥遊ホシノさん、契約についてよくお考え下さい……詳しくは後日書面でお送りいたしますので」
そう言って黒い男は解けるように消えていった。
ガクンと視線が下がる。遅れて自分が腰を抜かしていることに気が付く。手が、体が震えている。その震えは黒い男に対する恐怖からか、それとも寸分違わず自分の眉間と同じ高さを通り過ぎた銃弾に対してか。
銃弾の向かった先に目を向ける。そちらもすぐそことまでは言えないが壁があった。
壁に傷は無い。
「ひぅ」
自分が何に対して震えているのか、私は解らなくなっていた。
M134:多くの人間がミニガンと言われて真っ先に想像するモノ。制圧力に関しては他の追随を許さぬ性能を持つ。金食い虫。