アビドスの地下労働者 作:bishop
つまり初投稿
『バイオトラッカーとの連携機能ってどうやって作ればいいんだろうな』
《そんなこと私に聞かれても困ります》
いつもの倉庫の中で俺は頭を抱えている。その原因は完成一歩手前まで辿り着くことが出来たセントリーガンの機能についてだ。
コイツはバイオトラッカーと連動してウォールハックしてる状態が一番強いんだ。だがそのバイオトラッカーと連動させる方法が解らん。如何に天才な俺と言えども流石に知らない構造のモノを作るのは不可能に近い。
『どうすっかねぇ……』
まぁ、バイオトラッカーでのウォールハックが無くても強力な設置兵器であることは確かだし、妥協しても良いかもしれない。今のところ想定してるのもバイオトラッカー無しの運用だからな。
必要ないものを削る判断、やっぱり俺は天才だ。
《はぁ……バカみたいな自己肯定感ですね》
『男なんて皆こんなもんさ』
男の子だからな、バカだし夢とロマンは捨てられんよ。俺みたいな死刑囚のクソッタレも希望は捨ててたが夢とロマンは捨てれなかったし。他の連中もそうだったな、全員死んだけど。
『イテ』
バチリと指先に衝撃が走り脊髄反射で痛いと口から飛び出る。
『ったく、静電気かよ』
危ない危ない。セントリーガンの基盤を弄ってる時にバチリと来なくて良かった。十中八九ぶっ壊れちまうからな、基盤の部分だと流石に。
それにしてもストーブを付けることになる位には冷え込んできた。地下に居た頃は季節なんざ感じた事が無かったからなんとなく懐かしい気持ちになる。ふと思ったが、砂漠化してるってのに四季があるなんてこの都市はやっぱり変じゃないか? 気候区分とかそういうの無いのだろうか。
『あー、ダメだダメだ。難しいこと考えると頭が痛くなる』
気候区分とか大して覚えてないのに考えようとした俺がバカだったな。話を変えるか……もう秋も終わりに近づき、そろそろ冬が来る。結局ノノミはこの学校に来るのだろうかとか梔子の卒業についてとか……まぁ、色々考えることはある訳だ。
ノノミ来るんなら嬉しいもんだ、賑やかで悪いことは無い……ファッキンクソスリーパーが少しの音に反応してファンサを求めて飛び掛かって来る訳でも無いし。
梔子の卒業に関しては……アイツらの問題だな。引継ぎとか、色んな諸々を解決するのは何を間違えたとしても俺ではない。若人の領域だ、あればかりはやっぱり。
なんにせよ、チビガキには頑張って貰う必要がある。少なくともアイツが頑張るのが俺が梔子との約束を守る最低条件になってる。主体はあくまで生徒、俺みたいな部外者じゃないってこったな。
《今日は随分と考え事が多いですね。それにコロコロと内容が変わる》
『そうか? ああいや……そうかもな』
脳内AIちゃんに言われて確かになと自覚する。今日の俺は随分と考えてる。らしくない。
いや、どちらかというと俺は考える側の人間だが……にしたって内容がカスにも程がある。考えても無駄なことを考えすぎだ。
『まぁ、不安なんだよ。俺自身も解らんくらい心の奥底じゃァ、俺も不安なんだろうよ』
《……理解できません。何故スメラギが不安に思うのですか?》
いつの間にやら俺のことを名前呼びするようになった脳内AIちゃん。いやぁ、可愛いね。ちゅっちゅ。
《むぅ……私は何故不安になるか聞いているのであって――》
『誤魔化されないか……はいはい、分かりましたよ分かりました』
はぁ、自分語りはあんまりやりたくないんだがねぇ。だがまぁ、ここまでおねだりされちゃ仕方が無いか。
セントリーガンを弄っていた手を止めて脳内AIちゃんに教えてやることにしよう。
『俺は卒業ってもんを知らないんだよ。ああいや、実際に体験したことが無いって言った方が解り易いか』
《それはどういう――》
「「「スメラギ(くん/さん)!!」」」
『はい邪魔が入った』
バタンと扉が開け放たれる。いつもの調子に笑えて来るぜ。
救世主様の方に目をやればデカガキにチビガキにノノミ……君達3人そろって仲が良いね、という感想が口から飛び出そうになったところでもう1人居ることに気付く。
ボロボロの服とも言えないような布切れを着て、ホシノのマフラーを巻いた獣の耳が着いた少女。その格好を見たことで今しがた叫びながら入って来たチビガキの意図を察した。
『ほらよ、ブランケットだ。ストーブの温度も上げてやるよ』
俺には必要のないストーブとブランケット。寒いと3人にグチグチと文句を言われて半ギレで導入したこの2つだがまさか役に立つとは思わなかった。
とはいえブランケットとストーブだけじゃ冷え切った体を温めるのには足りないのも事実。なにせこの服とも言えねぇような布切れには保温性のホの字もねぇ。
『悪いがここに暖かい服なんて無いぞ。制服の予備が校舎にあるとか前に言ってただろ、誰か取って来い』
「あ、それは私が行ってくる!」
『あとは……そうだな、チビガキとノノミは脱げ』
「うへ!?」
「えぇ!?」
『何顔赤くしてやがるマセガキ共が。さっさとお前らのそのぬくぬくとした上着を羽織らせてやれっつってんだよ。なんならその上で抱きしめてやれ、人肌ってのも馬鹿にならん』
相当気が動転してたらしい。自分達が着ている上着を貸すという考えが2人……というか3人には無かったようだ。どこでこの貧民街のガキみたいな奴を拾って来たのかは知らんがさっさと思いついていればこいつの体温はもう少しましだったろう。
ああクソ、こういう時の仮定の話は考えるだけ無駄だ。今はこのガキの体調の確認をするべきだ。2人分の上着でモコモコになりその上で2人に抱き着かれている貧民街のガキ(仮称)に視線を合わせる。
『おい、自分の名前は言えるか?』
「……ん、砂狼シロコ」
『OK、シロコな。じゃあシロコ、自分が何処から来たか言えるか?』
「…………覚えてない」
『なるほどな。じゃあちょっと俺の目を見てくれ』
記憶喪失なようだが目を見る感じ特段異常はない。焦点も合っているし瞳孔だって正常だ。頭を打って記憶がぶっ飛んだ訳じゃなさそうか?
「ん、そんなに見られると恥ずかしい」
『いっちょ前に恥ずかしがれるんならまぁ頭打ったとかじゃねぇな。こりゃあとんでもない拾い物だぜ』
どう考えても厄ネタだ。地下なら絶対に深くは関わろうとしないタイプ。地下で意味も無く記憶が無い奴なんて厄ネタでしかないからなマジで。
ああいや、最近は仕事が終わる度に記憶を消してる奴等も居るって話だった気がする……ってそういう話をしてる訳じゃないんだよな今は。
『ま、とりあえずコイツの処遇はお前達で決めてくれや。俺は特段何かを言う気は無い』
「ま、そうでしょうね」
「スメラギさんらしいですね」
「ん?」
『俺へのイメージが固まっているようで何よりだ、と。デカガキが戻って来たみたいだぞ』
駆け足気味の足音に続いて扉が開き、制服と何やら色々な服を持ったデカガキが入ってくる。
「おまたせー! 制服とあと下着とか持ってきたよ!!」
『あーー……言われる前に俺は外に出ておくことにするよ』
なにやらワチャワチャとし始めた4人を尻目に開いていた倉庫の扉から外に出る。勿論しっかり扉は閉めるぞ、流石にこの状況で開きっぱなしにするほど馬鹿じゃない。
「入って来ても良いですよ」
『ア~イア~イマ~ム』
チビガキの声に従って倉庫の中に入る。外は多分寒かった……肌が強張ってる気がするし間違いない。
『おお、似合ってるじゃねぇの』
中に入って真っ先に目に入るのはアビドスの制服を着たシロコの姿。まだ髪とかは荒れてるがさっきよりは断然マシになっている。これには脳内AIちゃんもニッコリ――
《はぁ……》
――ニッコリして無さそうだな。
『そんで、コイツをどうする気なんだお嬢さん方よ』
「アビドスで引き取るよ!」
『OKデカガキ、ゆっくりチビガキの顔を見てみろ。初耳って顔してるから』
さて、チビガキがガミガミ言い出したのを横目に俺は俺で考え事をしなきゃならん。
個人的にはシロコをアビドスで面倒を見るのは最善とまでは言わねぇが次善辺りにはなるだろう。
なんせこの季節にアビドスとか言うド田舎にガキ1人放置してるような奴の場所にシロコを返すのはカスもカスの選択肢。そんなのデカガキどころかチビガキも絶対に選ばないだろう。
とはいえどうにもシロコが厄ネタ臭いのも事実だ。このまま置いておけば何かに巻き込まれそうな感じはする。
「はぁ……今回に関しては反対する訳が無いんですから、しっかりと話し合いはしましょうよユメ先輩」
「ひぃん……ごめんねホシノちゃん」
『お、ひと段落したか』
面倒過ぎて話聞いてなかったがどうやら在校生2人の話し合いは終わったらしい。あんまり長く話すなよ、ノノミとシロコが暇そうだ。
手遊びをしているノノミとシロコを横目に、在校生2人にはしっかりと確認を取る。
『んじゃまぁ、シロコはアビドスで預かろう。とすれば、シロコはどこで暮らすんだ? 生活必需品も買ってこなきゃな。ああ、アビドスで預かるんなら学籍も作ってやらなきゃいけないんじゃないか? そもそも学生ってなら勉強も教える必要がある』
「そうですね……家に関してはしばらくは私が一緒に暮らします。生活必需品に関してはスメラギに買って来て貰うとして」
『は?』
「学籍に関しては連邦生徒会にでも書類を出せば受理されるでしょう……受理されなかったら襲撃をかけます。ただでさえ救援要請無視されてますし」
「襲撃はやめてねホシノちゃん……勉強に関しても、私とホシノちゃんで見れば問題ないんじゃないかな? 私も流石に中学校レベルなら教えられるし」
『……なるほどな? なるほどなるほど』
途中俺への理不尽なぶん投げがあった気がするが……まぁ、及第点レベルか。ガキ1人預かるにしては甘い気はするがガキを預かるのもガキだからしゃあない。甘い部分はある程度俺がどうにかすれば問題無いだろ。
『んじゃまァ、色々と決まったし俺は生活必需品をパシられて来てやるよ。ほら、買うもんメモして渡しな、俺に女のガキに必要なもんは解らんからな』
冷静に考えりゃ
『あー……下着のデザインってどういうのが良いと思う?』
《知りませんが????》
『あークソ。そう言わずに頼むぜオイ……』
メモじゃなくてチビガキとか持ってきた方が良かったと後悔したのは言うまでも無いだろう。どないすりゃ良いんだ、マジで。とりあえずチビガキのと似たようなの買って帰れば良いんか??
下着売り場の近くで頭を抱える。視線を感じるぜキッツ! 誰だよ生活必需品を買うくらいなら大して労力もかからないとか言ってた奴。
『俺なんだよなぁ……俺なんだよォ……』
口は禍の元。皆は、気を付けようね(白目)。
チビガキの下着:クジラのおパンツ。スメラギが前に一度言及したがその件に関してスメラギは覚えてない。