アビドスの地下労働者   作:bishop

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初投稿やね


第十二話

『ここのパーツとここのパーツ一体化させたら上手い事コストを下げられる気がするんだが……どうだ?』

《コストは3%ほど削減されますが7%耐久性が低下するかと》

『うへ……じゃあこのままだな。こんな環境で使うんだ、耐久性は何にも代えられん』

 

 シコシコとセントリーガン量産計画を進める今日この頃。無論、スナイパーセントリー以外にもバーストセントリーとショットガンセントリーも製作を進めているゾ。ショットガンセントリーはまだしもバーストセントリーの方は連射する関係上ちょっと反動制御とかで詰まってるけどな。

 

 ちなみにヘルオートセントリーは高貫通弾を安定して供給できる状態じゃないから諦めた。ぶっちゃけこの世界だと使い道があんまり無いし。

 

『それにしてもあれだよな。あんなポンコツチップの中に居るってのに随分と計算が早いな脳内AIちゃんよ』

《それはそうでしょう。私は王女の付き人。ありとあらゆる状況で王女の補佐が出来る性能があります。これでもコピーですから少しは性能が落ちてるんですよ》

『そりゃあすげぇ。本体様には喧嘩売らんようにしなきゃな』

 

 自慢げに言う脳内AIちゃん。実際ハードに依存せずに一定の性能を担保できるソフトウェアなんてすごいとしか言えねぇんだよな。地下だとカスみたいなハードそこそこ良いソフトウェアだったから本当にクソッタレだった。経年劣化にファックされてたから尚更な。

 

 そんな脳内AIちゃんが仕えてるって言う王女様も気になる所だ。いつか探しに行っても良いかもしれねぇ。生憎あのDivi:Sionとか書いてたカードはあの1回コッキリで砂になっちまったから次は自力で探し出さなきゃいけないんだけどな。

 

『……このパーツって必要なのか?』

《反動制御に必要なパーツです。無ければ一度の発射に耐えきれば運の良い方と言えるようになりますよ》

『俺は運を信用したくないタチだからこのパーツは外さないようにしなきゃな』

《……運に身を投げ出すのは好みだと前に言って居ませんでしたか?》

『なんのことやら』

 

 幾度とない分解組み立てて覚えてしまったセントリーガンの構造。その記憶から再現した俺版セントリーガン。しかし当然構造を全て覚えていてもどのパーツがどういう役割を果たしているのかは知らない。だからこうして脳内AIちゃんに頼りながらどのパーツがどう作用するかを調べてる訳ですね(説明口調)。

 

 銃だったらどのパーツがどう作用するとかペラペラ喋れるんだけど人生って勉強が終わらな――足音? 軽いな、チビガキかシロコのどっちかか?

 

 コンコンと扉を叩く音がする。

 

「ん、お邪魔」

『うーんノックまでは良かったんだがな。どうして返事を待たないんだ……はい、いらっしゃいませオジョウサマ』

 

 正解はシロコだった。コイツも随分とアビドスに馴染んだ、多分俺以上に馴染んでるぜマジで。

 

 そんなシロコだが割と俺のところに遊びに来る。何が面白いのか解らんが本当にすっごい俺の所に来る。まぁ賑やかなのは悪い事じゃねぇから別に良いんだが……絶対教育に悪いと思うんだよな。俺口悪いし。

 

『それで? どうしたんだ今日は』

「今日こそ勝負しに来た」

『あぁ、うん……そうかよ』

 

 勝負、勝負かぁ。

 

 この砂狼シロコという少女。ヤケに勝負……というか強さにこだわる。自分より強い存在にしか従わないとか言う野生味溢れる価値観はこの都市でも珍しいようでチビガキとデカガキ、あとノノミが困惑してたのを覚えている。

 

 そういやつい最近知ったんだがノノミは不登校らしい。なんか実家も嫌いとかそういう話を聞いた気がしたから、言ってくれたらいつでも実家と学校を地下にしてやるからなって言っておいた。

 

「だからスメラギは早く勝負をするべき」

『ん? ああ……』

 

 さて、俺は今までシロコとの勝負を毎回断って来た。なんせ頭に輪っか付いてねぇ俺はマジですぐ死ぬからな。スペランカーだぜスペランカー……スペランカーってなんだ?

 

 また話が変に逸れた。とにかく今の今まで俺は逃げ続けてきた訳だ。そう、”今までは”だ。

 

『いいぞ、受けてやる』

「ん、腰抜……勝負するの!?」

『ああ、やってやるよ。今日だけ特別だ、教育してやる』

 

 最近地下労働もしていなかったために久方ぶりにマスクを手に取り、顔を包む。

 

 マスクで包まれ絶対に見えないというのに、自分でも分かるくらい俺は良い笑顔を浮かべていた。

 

 

 


 

 

 

『さて、先に生きる者として今日はちょっとした授業をしてやろう』

 

 俺の声にシロコは答えない。ハハッ! ありゃあもう本気の目だな、俺の口プなんぞにゃ乗らないって意思が見える。

 

 まぁ、それでも良い。この世界じゃァ、俺の勝ち筋はこれくらいしかないんだから。

 

『Lesson1、罠に注意しろ』

「ッ!?」

 

 こちらに走り込むシロコを光が包む。

 

 ってのも、アビドスのグラウンドには襲撃に備えた遮蔽物が点在しててな。これはその遮蔽と市販品のフラッシュバンを利用したブービートラップ、これで視界と聴覚は奪えた。

 

『聞こえないだろうがLesson2、相手からは奪えるものを全て奪え』

 

 シロコに駆け寄り銃(俺が用意してやった)を蹴りつけマガジンを外し、パンチでチェンバーに残っている弾薬を排出。そして直感に従い後ろに下が――っぶねぇ!!

 

 コイツ見えてねぇのにハイキックして来やがった!? なんちゅー戦闘センスだよオイ。こりゃいつかチビガキを越えるんじゃないのか?

 

『だが、まだ甘い』

 

 ガチの戦闘ならここでスナイパーライフル辺りでぶちのめしてやる所だが……今日は教育だ。既に視覚と聴覚はある程度戻ってそうだし、もう少し痛い目を見せてやろう。

 

 腰に下げられた改造ナイフホルダーのボタンを押し、ナイフを抜く。抜き身となった黒い刃が強い日差しを乱反射しているのが解る。

 

『そらよ、プレゼントだ』

 

 こっちに来てからこさえた対輪っか付きの加害武器、それがこの特製ナイフ。そんなナイフを思いっきりシロコに投げつける。

 

 流石に予想外であったのか、それとも単純に視力が不十分だったか。まぁなんにしろシロコは回避ではなく防御を選んだ。

 

『――Lesson3、敵から目を離すな』

 

 シロコのヘッドラインに投擲されたナイフは、腕で防御された。つまり、一瞬視界が腕で遮られたことになる。

 

「ンぅッ!?」

 

 その一瞬を逃さないから俺は地下で生き残れたと自負している。なんせこうしてシロコの顎に一撃入れている。

 

 しかしまぁ、脊髄反射というのか本能というのか。脳が揺れてるってのにシロコは既に拳を俺へと向けている。こりゃあスゲェ、磨けばチビガキよりも輝くんじゃァねぇか、おい。

 

『経験と技術はこれから積んで行けばいいか。さて、最後はLesson4――』

 

 シロコの体が傾く。結構な濃度だったと思うんだが……脳が揺れている上にこの濃度のクスリにもこれだけの時間耐えられるんだから輪っか付きは怖いよなぁ。

 

『――戦いを避ける奴が戦いを望む時。既に勝敗は決まってる』

 

 地面に落ちた人間なら致死濃度であろう睡眠薬がたっぷりと塗られた黒曜石で作られたナイフを回収し、ナイフホルダーへと戻す。

 

 銃弾すら通さぬキチガイ染みた乙女の柔肌(笑)だが、細胞単位で引き裂くコイツならやっぱり効くみたいだな。

 

『ま、次からはしっかりと自分の土俵に相手をいきなり立たせた上で戦うんだな。特に俺みたいな奴相手だと……まぁ、寝てるからこんだけ喋っても意味ないだろうがな』

 

 スヤスヤと気持ちよさそうに寝てやがるシロコを抱え上げて校舎へと向かう。

 

《黒曜石のナイフは有効……覚えておきましょう》

『おう、後で推定だが掠っただけで致死量に至るであろう毒もいくつか教えてやるよ』

 

 取れる手段は多い方が良いだろうしな。




黒曜石のナイフ:表面に皮膚からでも効くタイプの薬品を塗って使用する。細胞間を縫うように切り裂くため傷は残り辛い。
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