アビドスの地下労働者 作:bishop
バイオトラッカーを確認する。部屋内に存在するヤツは俺以外に8つ。これなら許容範囲内だ。
息を潜める。音を立ててはならない。幸いなことにここの遺跡は構造から中に居るヤツらまで俺の知る地下と化け物にそっくりな俺が慣れたタイプの遺跡だ。目を瞑りながらだって行けるぜこれ。
しっかりとナイフを構える。位置は既に把握し、距離も許容範囲内であると結論を先程出した。目を閉じる。どうせ暗闇なのだから目を開けていようが閉じていようが関係は無い。
『シッ!!』
まずは1体。頭を粉砕したロボが立てる音に紛れてライトを点灯。近場の、それも起動して居そうなロボから優先的に、その上で確実に素早く連鎖的にロボットの頭部を破壊していく。
『侵入者発ケ――』
『インターネットへの投稿はご遠慮くだ……さいっ!』
これを繰り返すこと10回。呆気なく終わった。ラスト1体に関しては危なかったがまぁ10体も同時に相手にするんならあれくらいは許容範囲内だな。
『ったく、ファンが多くて困る。俺は1人だから1人ずつしか握手出来ねぇのによ』
ナイフを使いスクラップとなったロボットを解体し始める。こいつらはあんまり高く売れるパーツが無いんだよなぁ……まぁ、運が良いとハイエンド品積んでる時もあるから全部しっかりとバラすが。
『こいつら1体でも単価は10万とかだからなぁ……マジでボロい商売だよ。女は体を売る前にここに潜るべきだな』
男の方は闇金に行く前にここに来るべきだ。
この2ヶ月でだいぶ慣れたこの解体作業。1体につき30秒もあれば終わらせられる。もうちょっと無駄を減らせば20秒を切れる可能性があるから練習していきたいですね。
『いやぁ、
10体全部から目ぼしい物を剥ぎ取り終わり、ナイフを収納する。さて、次の部屋に行こう。ここはすでに未探査領域、今俺の作っているマップが最新にして最初のマップだ。どれだけイージーに思えても油断してはいけない。
だってほら――
『侵入者! 侵入シャ――』
破砕音。
『あー……クソカスクソカスクソカス!』
こんな風なヒントの無いクソトラップがある。だから地下は最高なんだよ死ねよクソが!!
近場の部屋に入る。中のロボがすでに起動しているがどうやら入り口は俺が入って来た所しかないようだ。つまりどん詰まり。
『よし来た最高。神は俺を見捨ててねぇってよ!』
ブルパップライフルを構えて発砲。中に居るロボの頭部を全て粉砕する。少々反撃を貰ったが許容内、戦闘服様様だ。
ブルパップライフルをリロード、残弾が残ってやがるマガジンは弾薬ポケットに突っ込む。そうすりゃ勝手に分解されて弾薬入りのマガジンに変換される。うーん無駄にハイテクだぜクソが。
『さて、予定の試運転と行こうか。上手く作用してくれよカワイ子ちゃんッ!!』
扉を破ろうとするロボがガンガン音を鳴らしている。揺らされ、歪みつつある扉に対して腰に付けていたグレネードを手に取り、投げつける。
いわゆる
『ヒュー! 俺ってば天才!』
扉に対する補強の試験は行って居なかったがぶっつけ本番で成功。あとは扉が破られる前に扉の目の前にトリップマインを仕掛けて……と。よし、後は扉に銃を向けて待機だ。
『ついでにバイオトラッカーもやっておくか……ウゲェ』
銃を持っていない方の腕で適当にバイオトラッカーを操作してスキャンする。そうすりゃバイオトラッカーとリンクした脳内チップが俺の視界内に大量の赤い三角を映し出す。数は大体40……これ一個一個が全部敵だってんだから気色が悪い。
とはいえすべてがドアの目の前に集まっている。このまま待ってりゃドアが破られた瞬間に起爆した地雷でドカン!! ってな具合でスクランブルエッグならぬスクラップエッグが完成するって寸法だ。
『っと、そろそろだな』
補強限界を迎えたC-FOAMが破裂する。ドアを叩く音が大きく鳴り響き、歪みが大きくなる。
『ごー、よん、さん、にー、いち――』
破砕音、続いて爆発音。そして残った奴へと向ける銃声が鳴り響く。
向こうは上等なサーモグラフィなんて積んでねぇから地雷と味方が発した大量の煙でこっちを撃てねぇが、こっちはバイオトラッカーのおかげで難無く鉛球を撃ち込める。
『
1マガジン、撃ち切った。視界内の赤い三角は消滅した。念のためバイオトラッカーを再度確認するが起動していないロボも含めて反応はゼロだ。
『……ヨシ。そんじゃあ物色の時間と行くか。とはいえロボのスクラップクソミンチの中に何か形ある何かががあるとは思えんけどもな』
ブルパップライフルをリロード、一応コッキングしてからナイフに持ち替え。排莢された銃弾を弾薬ポケットに突っ込むのを忘れない。
ガシャリガチャリ、1歩1歩扉だったか壁だったかロボだったのかすら分からないスクラップカーペットを歩きながらどうにか売れそうな物は無いかと探索する。せめてC-FOAMグレネード1発とトリップマイン1発、あと銃弾49発分くらいの価値がある物を拾わなきゃ文字通り損だ。
とはいえやっぱりミンチになっていて碌なもんは見つからん。見つかったものと言えばよく解らんカードが2枚。
片方は何やら未来的なデザインで何やら色々と書いている白と青って感じのカード。
んで、もう片方は黒一色にちょっと白で装飾が入ったマジでよく解らんカード。
『……とりあえず持って帰るか』
両方とも何となく持ってた方が良い気がする。こういう時の勘ほど正しいもんは無い。ソースは俺、なんとなくで持っていたPDWのおかげで1人生き残った事なんて十数回とあるんだぜ?
『っと、他にはなんかあるかね……お、こいつはそこそこ高いな確か。ああ、こっちも――』
当然の事ではあるが地雷から離れた場所のスクラップは幾分か形が残ってる。これなら元は取れる何かしらがあるだろう。とはいえグチャグチャになってるからな、色々と気を付けて漁るとしよう。
バイクを走らせる。結局あの後もう2階層下まで探索し、流石にこれ以上まで潜ると地下労働10日目とか言うキチガイコースになる可能性があったから撤退した。
とはいえ戦利品を売り払い帰路についている現時点で学校を出てから8日が経過している。今回は長めに行ってくると伝えていたとはいえこれじゃあまた泣かれるかもしれん。ガキのお守は嫌いだからそんな事にはならんことを祈る。勿論祈るのは神以外にだぜ?
『それにしてもいい子だな』
俺のケツに一定の振動を加え続ける愛車を撫でながらそんなことを呟く。今も贔屓にしてるクズ鉄屋のジジイに金の代わりに貰ったコイツ。ちょっとの整備しかしてないっつーのにかなり良い。
『良い貰い物したよ』
それにいい出会いもした。そんなことをバイクの後ろに積まれたアタッシュケースを見ながら考える。8日分の戦利品は大体2000万くらいで売れた。1日当りの稼ぎは初回の3割ほどだがそれでも大金だ。
『それでも借金はクソほど増えてるんだからカスだよなぁ』
利子だけで月数百万。借金の大本自体は9億とかその辺。いや、俺がもう1億行かないくらい稼いだから……8億とかそのくらいか? この調子で行けば1年もすれば完済できそうだ。
とはいえ、最近は俺の地下労働にあんまりガキ2人が良い顔をしなくなってきたからしばらくは控えるべきだろうな。やっぱりこの前帰って来てすぐに血を吐いたのはマズかったかねぇ。
でもケチャップと変わらねぇだろアレくらいと思うんだよな。
『ったく、
だがそれでいい。この世界じゃ処女と童貞くらいが丁度いいんだ。まぁ真の意味での処女と童貞ならいくらでも卒業して良いがな? 性欲ってのは青春と結びついて離れねぇもんだ、具体的には政治家と金の関係くらい離れない。
『っと、とうちゃーく』
てな風にガチでクソカスなことを考えて時間を潰していれば、我が住処であるアビドス高等学校へと到着した。見た感じガラス割れたり壁に新しい傷が増えてたりしねぇから俺が不在の間に襲撃等が無かったことが見て取れる。
サプライズが効いてるようで何よりだ。
バイクを倉庫の隣へ停め、アタッシュケースに入った現金を持って校舎へと向かう。装備の整備と休息は上納金を姐御に収めた後だ。
これが俺に許された遅れて来た青春って奴なんだろう。シンガポールの地下鉄かってくらい遅れて来やがったが中々どうして悪くねぇ。
『っ……!? 気のせい、か……?』
そんな俺の考えを咎めるようにカード2枚を収納したポケットが一瞬震え、それと同時に僅かな痛みを感じた。だが目を向けても震えてる様子も無ければ何か負傷した様子も無い。
こりゃぁ多分疲れてんだろな、幻肢痛も久々にキてやがる。
さっさと上納して休憩するぞこの野郎。質の悪いアルコール飲んでぶっ倒れるんだ。
青いカード:Divi:Sionと記されている。テクスチャの混同によりポップしてしまった。
黒いカード:利用方法は不明。然るべき時に自ずと解る。