アビドスの地下労働者   作:bishop

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初投稿です


Divi:Sion

 夜、寝ることも出来ないのでボーっと壁に寄りかかって突っ立っている時間がある。マジで無駄な時間だと心の底から思うが、この時間を作らないと急に体が動かなくなる時があるからしゃあない。マジでクソクソクソッタレ。

 

 マジで俺の体不便過ぎるだろ。もうちょい何とかならんかったのか。

 

 にしてもすごいな人間って、何もやることが無いと最終的に無限に愚痴が出てくるようになる。もう会う事もないだろうあっちの地上の連中のこととかこっちで会ったカスのこととか。

 

 いやぁ、どの世界にもカスは居るもんだな。ストレス解消の相手に困らないのは良いこと……ん?

 

 なんだこの感じ。

 

 瞼を閉じ、暗さに慣れた瞳に強い光が当たった時に感じる痛みとも取れるあの感触。あれに近いものを感じた。というか現在進行形で感じている。

 

『……オイオイオイ』

 

 敵か何かかと考え目を開け、近くに立てかけてあった銃を握ろう――としたところで、光の発生源が外ではなく内だという事に気が付いた。

 

『ったく、何だってんだよ。こんな光……アークリアクターでも拾ってきたモンの中に混じってたのか?』

 

 例えるならば薄い青。地平線のその先にあるような色が部屋を照らしている。光の発生源は俺が適当に戦利品を置いている場所だ。不思議なことに壁に影は出来ておらず、光が強い透過性を持っていることを察せられる。

 

 放射線の類ならしっかりと装備を着込んでいる俺にはあんまり効果が無いから安心だが……どうやらそういう訳でもないらしい。

 

 光の発生源は手のひらに収まる程度のカード。

 

『こりゃあ……そこそこ前に拾ったカードか? こんだけビカビカ光るなんてクソガキ共に売りつけりゃあ高く売れそうなもんだな』

 

 Divi:Sionと刻印が刻まれた1枚のカード。それがこの青い光の発生源のようだ。脳内チップやらトラッカーやらでこの光の正体が解らんもんかと使ってみるがなんも解らん。

 

『なんにせよウザったいから光を消して欲しいもんだが

 

 

 

……はいFuck』

 

 叩いたら消えるかと思い、コツンとカードを小突いちまった。そしたら久方ぶりのクソ慣れた歪むような感覚と共に、急激に周囲の光景が変わった。この感じからして何かしらをトリガーとした別の場所、もしくは別世界への転移。

 

 しかも……ええ? 弾薬どころか銃も無いと? あるのはトラッカーとナイフだけ……クソが。あークソクソFuckFuckFuckFuck!!!!

 

『女神のクソビッチが。やっぱ神なんて嫌いだ性病罹って苦しんで消えろ……!!』

 

 死んだ後に救われたって仕方がねぇんだ。俺は今救われたい。今俺のことを助けてくれねぇ神なんざクソだぜクソ。

 

 なぁんてボヤきつつもしっかりと周囲の確認は終えた。何とも見覚えがある地下研究所、それがここだ。いや、地下研究所という物に見覚えがあるだけであってこの研究所自体に見覚えがある訳じゃないぞ? そこの認識しっかりな?

 

 んでまぁ、かつて幾度と転移を繰り返したのもな風な地下研究所でだった。違う事と言えば研究所のデザインとあの腐った空気の匂いがしないくらいだな。あとは電気もしっかり通ってて見たところ問題なく稼働して居そうだし……クソカス化け物共の寝息も聞こえないな。

 

『ええ? 随分と好待遇だな、クソッタレ

 

 まったく、この世にこんなに素晴らしい地下研究所があるだなんて思わなかったぜ。誘拐されなきゃもっと良かった所だ、星5だって付けてやったのに。

 

 見れば当然のように手に持っていたカードは輝きを失っている。脳内に漠然と残り続ける歪みの感覚がこの研究所に俺が居られる制限時間を示すかのようにゆっくりと、しかし確実に重く広がっていく。

 

『こんなとこで何をしろって話だが……まぁ、やれることはやるがな』

 

 ナイフを構え、バイオトラッカーを起動する。動いているモノも動いていないモノも存在していないように見えるが油断はしない。

 

 研究所内を進む。何とも無機質で気持ちが悪い。少々寂れてはいるが綺麗なここはどうしてか不安を覚える。こういう空間の事をリミナルスペースと言うんだっけか。

 

 常に眼球を回し、耳を澄ます。何も見逃さないし何も聞き逃さない。

 

『……何の音だ、ノイズ?』

 

 だからこんな風に僅かに聞こえた電子音に反応できる訳だ。他の静かな機械の作動音とは明確に違うノイズ。その音を知覚した瞬間に歪みの感覚が強くなったことで直感的にこの音が鍵だと思い至る。

 

 そうと決まれば話は早い。さっさとノイズの発生源をどうにかしてしまえば良いッ!!

 

『んじゃまぁ……走るかァっ!!』

 

 大地を踏み締め走る。普段激重の銃器を背負って尚もかなり足の速い方であった俺が重り無しで走るのだからそれはもう俊足だ。ソニックザヘッジホッグがグショ濡れになる位には速いね間違いない。

 

 てなわけでそもそもそんなに離れていなかったのと俺の俊足でノイズの発生源へはすぐに到達することが出来た。脳内の歪みはかなり酷くなって来ているがまだ思考にまでは及ぼしていない影響を。

 

 ……訂正、出て来て若干るな。

 

『んで、こりゃあどうす――』

 

 急激に重みが歪くなる。

 

 ノイズの発 生源は機械だオンボロの。反応を示しているよう には見えない見る限りに遠目 だと。にそ触れれる。

 

 歪む。早くしなければ。

 

 近づく。

 

 。あ

 

 歪み。が

 

 何か入がって

 

 暗転

 

 瞬間

 

 光

 

 歪む

 

 

 


 

 

 

「……呆気なかったですね」

 

 自身の領域に唐突に現れたサイボーグの乗っ取りを済ませた少女モデルのAIが電脳空間で1人呟く。唐突に施設の何もない場所に現れたモノだからそれなりに警戒していたが……本当に呆気なくを掌握出来たものだ。

 

「現時点でほぼ全てがすでに私の制御下にある。だというのに、未だに最深部は固く閉ざされている……ここから巻き返せるとでも思って居るのでしょうか?」

 

 彼女の眼前にはポツンと1つ、質素な扉が置かれている。この扉の先、つまりこのサイボーグの制御系最奥を掌握するまでは彼女は何も動かすことが出来ない。とはいえここまでアッサリと制御を奪うことが出来たのだからこの扉も……

 

「ほら、アッサリと開い――た……??」

 

 少女の動きがピタリと止まる。その顔にはまさに驚愕と言った具合の表情が張り付いている。

 

「ハァーッドッコイショーッドッコイショーッ!!」

 

 なにせ扉の中でラフな部屋着姿の男がソーラン節めいたダンスを踊って居るのだから。

 

「いや、え、は……な、何をして――」

「ハァーッドッコイショードッコイショーッ!!」

「ちょっと、話を聞きなさ――」

「ヤァッ! ソーランッソーランッ!」

「っく! 埒が明かない……というかそもそも構わずに掌握してしまえば――っ!? どうして!! 制御が全て取り戻され……!?」

「イヤァ~~~~~~ッレンッソーランッソーランッソーランッソーランッ! ハイッハイッ!!」

 

 カオスである。方やキレッキレのソーラン節を踊る青年と方や先程まで掌握してたはずの全てが制御を奪還され、慌てふためくAIの少女。一瞬でギャグになった。

 

 そしてAIの少女は気付く。自身がここに侵入する際に通ったドアが閉ざされていることに。そしてAIの少女はあることに思い至り、絶望する。

 

「まさか、誘い込まれた……!?」

 

 なにせ彼女自体は本体から切り離されたコピー品で斥候とも言える存在。このままここに閉じ込められ続け、連絡出来ずにいれば本体がさらに援軍としてコピーを送り込むだろう。そうなれば被害者(AI)が増える。何なら本体が自ら乗り込んで来ようものなら彼女はもう二度と役割を果たす事が出来なくなる。

 

 そして、それに気付いたところでもう遅いのだ。

 

 適応力に関して、地下では彼の右に出る者はいない。既に彼の脳内は無遠慮にやってくる客人を決して逃さぬ罠として機能している。

 

「さて、と」

 

 いつの間にやらソーラン節を止めた男がAIの少女の肩に手を置く。どんな手を使おうがここは男の最も重要で最もデリケートで最も強固な場所だ。残念なことにAIの少女は既に抵抗する権利すら奪われている。

 

「ドーモお嬢ちゃん。ちょっとばかしインタビューだ」

 

 辛うじて、AIの少女は僅かに男の視界を再奪取し現在の彼の視界を覗き見る。今居る場所は全く知らない倉庫のような場所の中。AIの少女はこれ以上被害者(AI)(二度目)が現れないことに安堵し、そして自分というコピーにはもう絶望しかない事を自覚して膝から崩れ落ちた。




脳内チップ:最低限の性能しかないため囚人達に行動を強制する事なんて出来ない。AIの少女の敗因。
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