エネイブルーアーカイブ   作:イチカの開眼好き好き侍

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遠山キンジは出会う

 はぁ、と朝からため息をつく。朝から辛気臭いからやめろ?ごもっともだ。だがな、昨日トリニティでもそれなりの値段がするスイーツのバイキングに連れてかれて搾り取られたばかりなんだからこれくらいはな。

 

 いや、それに関しては俺が奢るっつったから別にいい。口座から10000クレジット札が何枚か消し飛んだがそれもいい。なぜかイチカの分も俺が奢ることになったがまあそれも多めに見てやろう。

 

 百鬼夜行連合学院あたりでよくみられる平屋の自宅に帰ってきた俺はヒスって疲れていたのもありシャワーもそこそこに制服を脱ぎ捨てて眠った。元を取ろうと詰め込んだスイーツで気持ち悪くなったしな。

 

 で、今日だ。まず朝飯を食おうと戸棚を開けたら、何もなかった。食パンどころかカップラーメンの一つもなかった。まあそれは補充を忘れた俺が悪い、次に行こう。じゃあコーヒーでもとお湯を沸かしティーパーティーとかいうわが校のお茶会なのか生徒会なのかよくわからん奴らからもらったコーヒー豆が入っている缶を開けたら空っぽだった。

 

 奴ら全員紅茶好きでコーヒーを飲まないから押し付けられただけとはいえお嬢様が飲むコーヒーはそりゃ旨かったさ。だが、俺が手を出せる値段じゃないのが痛手だな。一缶で俺が一月稼ぐ額が飛ぶ。最後の一缶だったんだがな……。

 

 まあ、平たく言えば家に食うものも飲むものもなかった。ついでにトリニティは水道をのむことはできないので今俺の家には何もない。ついでに昨日使った銃弾、計9パラが48発、マグナム弾が15発を補充しようとしたけどそれもない。なんもないじゃないの俺の家。トリニティは何でもかんでも高いんだよなあ。

 

「買いに行くかぁ……ん?」

 

 トリニティじゃほとんど見られないがタイムセールの情報がないかスマホを立ち上げる。ニュースサイトにはまあ、当然何もない。こういう場合は他自治区に買いに走るのがちょうどいい。そう思ってスクロールすると賞金首の情報が更新されていた。

 

 災厄の狐、高いが高いのにはそれなりの理由がある。金欠なのに総力戦をするつもりはない、却下。カイテンジャー……ゲテモノが過ぎる。ほかにはまあ……あるか。よし、今日はアビドスまで足を延ばして賞金首を狩るか。ご先祖様も文句は言わんだろ。

 

 俺は正義実現委員会の真っ黒な制服をそのままにクローゼットに入っていたトリニティの男子制服に着替え、ホルスターに拳銃を突っ込みポケットに財布とナイフを放り込んでそのまま外へ出た。休暇くらいは自由にしてもいいだろ。

 

 ぐぅ、となった腹の虫の音に苦笑いして、俺は歩を進める。今日もどこかでなっている銃声がまたうるさいなと顔をしかめながら。

 

 

 アビドス自治区、かつては俺が通うトリニティに匹敵するほどのマンモス校が管理する自治区だったんだが目の前に広がるのは砂漠だ。そう、砂漠。もともと砂漠化が進行していたらしいのだがある時期から砂嵐とともに急速に砂漠化が進み、今じゃ見る影もない。

 

 人が居なきゃ学校も寂れる。砂漠化するってことは住みにくくなるってことだからな。そりゃあ、学生じゃなくても一般的な市民は引っ越しを選ぶよ。もうすでに、アビドスの半分以上は砂に呑まれてしまったんだからな。

 

 一応、まだ人はいないこともないので俺は電車から降りまだ人通りがある郊外から散策することにした。何も好き好んで砂漠ど真ん中に突っ込むことはない。探せば手配されているヘルメット団の一つや二つすぐ見つかるだろ。なにせ、あいつらは目を離すとすぐいつくからな。まあ、ドロップアウトしちまったつーのは同情しないでもないがそれでひと様に迷惑かけるなら話は別だ。

 

 アビドスの周りはネフティスっつー多角化した企業が牛耳ってたんだがそれが撤退しちまえば今は見る影もない。ただ、俺に取っちゃいいことがある。それは、物価が安いっつーことだ。まあ、店を見わたしゃ半分は閉店セールやってるような場所だからな。

 

 銃弾の補充は帰りでいいか、と俺は視界の先に映るヘルメット団のヘイローを見つめてそのまま後をつける。たしかあいつらはカタカタヘルメット団、その一派だろう。ヘルメット団には分派が存在するのだが見分けづらくて困る。

 

 路地裏に入ってしばらくついていくと大型のトラックが停まっている。怪しいな、こんな朝っぱらに軍用のトラックがあることといい、それを使っているのがヘルメット団ということといい。厄日の匂いがする、が見逃がすっていうのはねぇな。何企んでるか知らんが反省してもらおう。

 

 そっと視線の隙間を縫って身をかがめ、トラックの車体の下に潜り込んで張り付く。ヴァルキューレ警察学校あたりだとできる奴が多いコバンザメって手法だ。ちなみにトリニティだとはしたないということでやらない。俺はやれた方が便利なのでやる。

 

 そうして少しすると結構荒い運転でトラックが発車した。慣れてねえなこれ、やっぱり慣れない装備品をいきなり手に入れたって感じか。ますます怪しいな、こういうのってたいてい事件につながるからやめてほしい。

 

 カースタントばりの発進を耐え抜いてしばらくすると運転手が慣れてきたのか多少ましになった。とりあえずそこで横を見てみると流れていくのは砂漠の風景。どうやら砂漠の方にでちまったらしい。あと、併走しているのは装甲車と戦車。戦車だぁ?まじでなんなんだこのヘルメット団。

 

「敵襲ーー!!!」

 

「早く早くこっち!」

 

 ヘルメット団のやつらの声が響いてとんでもねえとまり方でトラックが停止する。おい後ろちょっと浮いたぞ。免許持ってんのか?持ってるわけねえよな。

 

 周りを見ながらトラックから這い出る。前の様子を伺っていると襲撃者はどうやらほかのヘルメット団、というわけではなさそうだ。近くにいたヘルメット団を後ろからチョークスリーパーで意識を奪ってから優しく寝かせてやる。

 

 さて、とトラックの後ろで施錠された荷台の扉を運転席のボタンで開け、向こうでドンパチやってるのを尻目に中に入る。何か連邦生徒会の法に引っかかっているものがないかと見聞することにした、のだが。

 

「冗談だろ……」

 

「んん!?んっんんむむむー!!」

 

 言葉を翻訳するとあんただれよ、か?俺の目の前に転がってるのは物資が乱雑に積まれた中にひときわ目立つ黒のツインテールと猫耳が特徴的な女子生徒だった。制服を見るとどうやらアビドスのものだ。なんだ人攫いか……はああ?

 

「おい、お前大丈夫か」

 

「ぷ、ぷはっ!?な、なんなのよもう!あんた誰よ!私を攫ってどうするつもり!?」

 

「あのなあ……俺がヘルメット団に見えるか。縄斬るから手むけろ。小遣い稼ぎがとんだ厄ネタころがしやがって」

 

「えっ……どうして」

 

 どうしてなんざ俺が知りたいね。まあ人攫いへの対処なんざ慣れっこでな。トリニティのお嬢様に対する身代金の要求なんざごまんと聞いてきた。このまま逃がしてやろう、この状況でも金を優先するほど腐っちゃいないさ。

 

 手首足首を縛ってた荒縄を斬って、そこらへんに転がっていたこいつのらしいアサルトライフルを手渡す。手首を擦りつつこちらを警戒していたネコミミ女子はそれを素直に受け取りきつめの視線で俺を見る。

 

「なんだ」

 

「なんでも……その、あり……がと」

 

「出てから言え。良く知らんがヘルメット団のやつらは襲撃受けてるらしい。それで、おわっ!?」

 

「きゃ、きゃっ!?」

 

 突如至近距離で爆発音が響き、トラックが横転した。後ろに倒れこんだ俺の上にさらに倒れこんだネコミミ女子がのしかかってくる。二転三転、して……俺は後悔する間もなく自分がヒステリアモードに突入してることを察した。

 

 まず油断したところの接触でワンアウト、顔面に感じた柔らかい感触でツーアウト、そしていま、真っ暗になった目の前にあるボーダーの布地……これでもう、役満だ。慌てて顔の上に座っていたネコミミ女子が退く、俺にとっちゃもう遅いけど。

 

「だ、大丈夫、かしら……?」

 

「……ああ、問題ないよ。それよりも君は平気かい」

 

 よかった、今のパターンだとたとえ不可抗力でも俺に向かって発砲されるパターンだったのだがどうやら彼女には今の緊急事態に対応するだけの冷静さが備わってたらしい。俺に取っては幸も不幸も両方ってところだな。

 

「ん、あなた誰?敵?」

 

「し、シロコ先輩!?違うの!この人私を助けてくれて」

 

「そう、セリカ。助けに来た」

 

 横転したトラックに入ってきたのは銀髪の獣耳の女子だった。警戒してアサルトライフルを向ける女子に俺は手を挙げ戦意なしアピール。セリカと呼ばれた女子の説明のおかげで一応俺の警戒も解けてはいるらしい。

 

”セリカ、大丈夫?”

 

「先生……あぶないっ!」

 

「おっと。行儀が悪いなヘルメット団は」

 

 抜き打ちでデザートイーグルから発射された弾丸は先生と呼ばれた優しそうな女性に発砲された弾丸を斜めにとらえ空中で弾き飛ばした。見間違いじゃなかったらこの人……やっぱり。ヘイローが浮いてない。まあ、そこらへんはどうでもいいか。

 

「今、弾丸を撃った……?」

 

”えっと、君は?”

 

「話は後だ。今の先決はこの状況を切り抜けることだろう?だから小鳥遊ホシノ、銃を下ろしてくれないか」

 

「おじさんを知ってるなんておかしいなあ~。そんな有名になったのかな~?ねえ、トリニティの生徒?男の子なのに」

 

「そうだな、ある意味じゃ有名人だよ。きみは」

 

 俺の背中にショットガンをごりっと押し込むピンク色のちっこいのに軽口をたたく……俺みたいに治安維持に類する部活あるいは委員会に長く在籍してるやつで小鳥遊ホシノの名前を知らないのはモグリだろう。俺なんかよりよっぽど有名人だ。

 

「そうかもね~。いや~、大変だあ。先生、どうするの?」

 

”とりあえず目的は果たしたからあとは迎撃するよ!みんな気を付けて。あれ?”

 

「俺は気にしなくて構わない。自衛をするくらいなら問題ないさ」

 

「そ。じゃあ行こうかみんな。反撃だ」

 

 背中からショットガンが離れる。先生がタブレット端末を構えた途端に感覚的に俺以外の全員がつながったような雰囲気を出した。先生がどうやら俺がつながらないことをいぶかしんでいるらしいが、たぶんそれは俺にヘイローがないからだろうな。

 

 俺は俺で自由にやることにしよう。どうやら頭数は少ないながらもアビドスの生徒たちは腕がたちそうだ。さて、年下相手だったから正直ヒスることに罪悪感はあるものの、血流自体は絶好調だ。飛んでくる銃弾を掴むことだってできる、こんな風に。

 

「キャッチボールにしては弾が速いな」

 

「えぇ……おじさんドン引きだぁ」

 

「君は人のことを言っちゃいけないと思うよ、ホシノ」

 

「ゾワッってきた。その呼び方はなしで」

 

 つれない子だ、という言葉を口に出す前に銃弾が襲ってきた。銃弾の速度と腕を振る速度を合わせてつまんで止める銃弾掴み(ゼロ)で止めた弾を腕を振って捨て鷹潜で回避。ああもう、装備だけは達者だな。

 

 シャリン、と背中に背負っていた日本刀を抜刀。一剣一銃(ガン・エッジ)と呼ばれる構えをとった俺は盾で銃弾を防ぎ続けるホシノとは対極に銃弾を銃弾で迎撃もしくは刀で切り捨てる。

 

”君、あぶない!……へ?”

 

 先生が血相を変えて俺に警告する。右手から、戦車の主砲が発射されて俺に向かってくる。砲手はかなり上手みたいだけど、俺に撃ったのはミスだったかな。そっと発射された砲弾に、刀の切っ先を添えて力の方向を変えて逸らす。発する衝撃波は同じ速度で体を下げてやり過ごす。

 

「えーとあの……セリカちゃん、ノノミ先輩。いま私が見たのが正しければなんですけど」

 

「はい☆刀の切っ先で砲弾を逸らしましたね~。すごーい☆」

 

「冗談じゃないわよ!なんなのあいつ!」

 

 あいにく何かを逸らすってことにかけては一流の自負があるんでね。まあ砲弾でやったのは初めてだけど、ミサイルと難易度はどっこいどっこいだな。そのまま戦車の懐に飛び込んだ俺は、履帯に向かって刀を振るう。

 

 きわめて精緻に体重を乗せる『秋水』と呼ばれる家に伝わる技だ。全体重を余すところなく乗せる打撃技の応用で、斬撃に重さを乗せる。するとどうだ、まるでバターに包丁を入れるように車輪含めて履帯が真っ二つってわけさ。

 

「ひっっひぃぃ~~~!」

 

「こ、この!うわっ!?」

 

「そんな危ないものはしまっておいてくれるとうれしいね」

 

 左手に持ったデザートイーグルがホールドオープンする。発射された7発の弾丸は機関銃、スナイパーライフル、アサルトライフルの銃口にホールインワン。銃を取り落としたヘルメット団は我先にと撤退していく。

 

「これにて一件落着、だな」

 

「いやー、すごいねえ。おじさんびっくりだあ」

 

 にへら、とほにゃほにゃの笑顔を見せてこちらにやってくるホシノ……うまく隠しているみたいだが臨戦態勢が解けてない。困った、俺がここにいるのは偶然なんだがな……。




 弊キヴォトスの認識だと学校の部活単位として別の自治区にいってなんかやらかすのは完全アウトですが個人として他自治区に行ってヘルメット団やスケバン、もしくは別の指名手配犯を捕まえてお小遣い稼ぎするのはセーフです。ですがやらかしによっては学校間の問題になるのでグレーよりということになります。

 あとここの先生は女先生です。なんで?そりゃもちろんキンちゃん様のせいです。あと私が好きな概念があるのですがそれには女先生が必要だったからです。仕方ないね。
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