と、前置きはこのぐらいにして、いってらっしゃーい。
~ヘリコプター内~
『皆さん怪我もなく無事みたいで良かったです』
「いやー、峯井くんが助けに来てくれたおかげだねー」
「たまたま仕事が早くに終わったからな、場所だけ聞いて基地から直行で来た」
操縦をしながら峯井は受け答えをする。
「...そういやシロコ先輩、ずっとそれ被ったまんまだけど邪魔じゃない?」
「ん、全然」
「天職なんだろうな、そのまま着けてたらいつか覆面と同化しそうだ」
「シロコ先輩はアビドスに来て正解だわ...他の学校だったら、すごいことやらかしてるかも」
「そ、そうかな...?」
セリカからそう言われて覆面を脱ぐシロコ。
「シロコちゃんやらかしそうなオーラしてるもんねー」
「...守、お前もこの部隊じゃなかったら何やらかしてるだろうな?」
「そう?」
「自覚無いのは重症だ」
『...それにしても、本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて...ふう...』
「アヤネ、いろいろお疲れ様」
『いえいえ、先生...それに虎隊の皆さんも、本当にお疲れ様でした』
「ああ、お疲れ様」「良いってことよー」「おう、お疲れ様」「お疲れ...様です」
虎隊のメンバーが口々に言う。
「ところで、その様子だったら集金の記録とやらは回収出来たみたいだな」
「うん、それはできたよー。シロコちゃん、集金記録の書類持ってるよね?」
「う、うん...バッグの中に」
シロコはバッグの中に入っている集金記録の紙を取り出そうと、ファスナーを開ける。
「...へ?なんじゃこりゃ!?中に...札束が...!?」
「うえええええええ!?シロコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」
「いや、シロコは盗んでない。その現金は銀行の奴が勝手に入れただけだ」
「そう、だから目当ての書類はちゃんとある」
「へえ...うへ、軽く1億はあるね。5分で1億稼いじゃったよー」
バッグの中身を見て驚くホシノ。一方でセリカは嬉しそうにしていた。
「やったあ!!何ぼーっとしてるのよ!こんな時ぐらい喜ばないと!!」
「...」
『せ、セリカちゃん?もしかして、そのお金使うつもりですか!?』
「アヤネちゃん、なんで?借金を返さなきゃ!」
『そんなことしたら...本当に犯罪だよ、セリカちゃん!!』
「...まあ、アヤネの言う通りだな。さっきの銀行強盗だけでも犯罪に半身浴してるってのに、それで得たそのお金まで使っちまったら肩までたっぷり犯罪に浸かっちまうからな」
「だ、だから何!?このお金はそもそも私たちが汗水たらして稼いだお金なんだよ!それがあの闇銀行に流れてったんだよ!それにそのままにしておいたら犯罪者の武器や兵器に変えられていたかもしれない!悪人のお金を盗んで、何が悪いの!?」
「「「「...」」」」
ヒフミや虎隊は必死にそう語るセリカを静かにじっと見ている。
「私はセリカちゃんの意見に賛成です。犯罪者の資金ですし、私たちが正しい使い方をした方が良いと思います」
「ほらね!これさえあれば、学校の借金をかなり減らせるんだよ!?」
「んむ...それはそうなんだけど...峯井くんはどう思う?」
ホシノから話を振られた峯井。しかし、特に考える様子もなくスラっと答える。
「そのお金をどう使おうが、今回自衛隊は“知らない”でつき通す。だが、俺から一つ言わせてもらうとすると、今のアビドスはそんな汚いお金を使う程、金に困ってる組織だったか?」
「そ、それは...」
「分かった?セリカちゃん。私たちに必要なのは、お金じゃなくて書類だけ。今回のは悪人の犯罪資金だから良いとして、次はどうする?その次は?」
「...」
セリカは、ホシノのごもっともな意見に反論できずにいる。
「こんな方法に慣れちゃうと...ゆくゆくは、平気で同じことをするようになるよ」
「...今後、ピンチになるたびに、“仕方ないから”“これしか方法がないから”、そんな言葉を並べながらやってはいけないことに手を出すような集団にアビドスが成り下がるようなら、自衛隊としても看過できない」
「うへ~、このおじさんとしては、カワイイ後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー。そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ。そもそも、こんな方法を使うぐらいなら、最初からノノミちゃんが持ってるゴールドカードに頼ってるはずー」
「...私もそう提案しましたが、ホシノ先輩が反対されて...。先輩の気持ち、わかります。いくら頑張ったって、きちんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスではなくなってしまう...」
「そういうことー。だから、このバッグは置いてくよ。頂くのは書類だけね。これは委員長としての命令だよー」
「っ!!…もうっ!訳わかんない!こんな時だけ変に真面目になっちゃって!!」
「まあまあセリカ、落ち着け」
「うん、委員長の命令なら」
「私はアビドスの皆さんの事情はよく分かりませんが...このお金を持っていたら、また別のトラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。災いの種みたいなものでしょうから...」
「じゃあ、処分するってことで良いな?」
「うん、そうだねー」
「ヘリの外に落としちゃいましょうか!」
「そうしておけ、誰かが拾ってくれるだろ」
「あはは...生活に困ってる人が拾ってくれたらいいですね」
そうして、ヘリの外へと投棄されるお金が入ったバッグ。
「うう...せっかく苦労して手に入れたお金なのに...」
「苦労の方向性を間違えてる気がするんだが」
「そっ、それは...そうだけど...」
「あと、言い忘れてたけど虎隊全員」
「うん?なにー?」
「どうしたんですか峯井二等陸佐」
「お前らブラックマーケット内で散々暴れまわったらしいじゃないか」
「...」
「いや、良いんだ。ブラックマーケット内での出来事だしな?多少は暴れても咎めはしない...だが」
峯井は操縦をしているので、虎隊のメンバーから顔は見えないが、その声から非常にお怒りなことは察せる。
「榴弾をポンポン使うのはやりすぎじゃないかなあ...?」
「...」
「お前ら帰ったら全員説教だ」
「「「「...はい」」」」
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~便利屋68事務所~
「ふふーん♪ただいまー!!」
非常に上機嫌な様子で帰ってきたアル。
「あ、おかえりなさい!アル様!!」
「あ、アルちゃん帰ってきたの?」
「はあ...一人でどっか行っちゃうから心配した」
「そんな心配しなくても、私なら大丈夫よ!!」
「...アルちゃんやけに上機嫌だね、何かあった?」
「ええ!!今日はとっても良いことが二つもあったのよ!!」
「へえ...二つも」
「まずはこれよ!!」
アルは手に持っているバッチを見せつける。
「これは...何でしょうか?」
「虎隊って人達からもらったバッチよ!最高にカッコいいでしょ!!」
「はいっ!!そうですねっ!!」
「...あともう一つは?」
「ちょっと待ってて!外に置いてあるから取ってくるわ!」
そう言って何かを取りに行くアル。
「外に...?」
カヨコが疑問を抱いていると、すぐにアルは戻ってきた。その手には先ほどまではなかったバッグを持っている。
「このバッグよ!」
「アルちゃん、開けてみても良いかな?」
「うん!!良いわよ!!見たら驚くこと間違いなしだから!!」
「へー、どんなものが入ってるのかな?」
ムツキは少しだけ期待をしながらバッグを開ける。
「...!!ひょえええ!!」
「こ、これって...」
「どう?驚いたでしょ!!」
「...軽く億はあるね、どこでこれを?」
「空から落ちてきたの!」
「空から?」
「...まー、細かいことはいいんじゃない?」
「...そうしようか」