オリ至高が600年前に単独転移した結果、久しぶりのモモンガに感情爆発させるやつ。

原作知識ありの主人公がオバロ世界に転生します。
モモンガと合流するまで物語へ積極的に介入しません。ご留意ください。

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怪文書書いちゃった♡


あなたに伝えたくて

 

─『YGGDRSIL(ユグドラシル)

 小説『オーバーロード』内に出てくる架空のゲーム。

 西暦2126年に日本のメーカーから満を侍して発売されたそのゲームは、プレイヤーの自由度が異様なほど広いゲームであった。

 

 基本となる職業(クラス)の数は、基本職と上級職を合わせると、ゆうに2000を超える。

 職業はどれも最大で15レベルまでしかないために、総合レベルの限界である100レベルに到達するまでに少なくとも7つ以上重ねることとなる。さらには前提条件さえ満たしていれば、『つまみ食い』も可能。やろうと思えば1レベルの職を100個積み重ねることも可能。つまりは意図的に作成しない限り、寸分違わぬキャラクターはできないように作られたシステムだった。

 外装(ビジュアル)もまた、別売りのクリエイトツールを使用することで、武器防具の外見や内包データ、自らの外装、保有する住居の詳細な設定なども変化させることが出来た。

 そんな世界に降り立ったプレイヤーを待ち構えたのは広大なマップ。アースガルズ、アルフヘイム、ヴァナヘイム、ニダヴェエリーヌ、ミズガルズ、ヨトゥンヘイム、ニヴルヘイム、ヘルヘイム、ムスペルヘイムの九つの世界。

 広大な世界、膨大な職業、幾らでも弄れそうな外装。

 そんな日本人のクリエイト魂にニトロをぶち込むような弄りがいこそ、のちに外装人気とも言われる現象を引き起こす。そうした爆発的人気を背景に、日本国内においてDMMO─RPGと言えばユグドラシルと言われる評価を得るまでになった。

 

 

─『オーバーロード』

 西暦2010年ごろ、WEBにて投稿された小説をもとに、書籍化、アニメ化、映画化など、今でも根強い人気がある作品である。

 

 主人公モモンガ(鈴木悟)*1は、ユグドラシルにてアンデット族スケルトン系の最上位種オーバロードのアバターを持つプレイヤーである。

 かつて栄光を極めた異形種ギルド、アインズ・ウール・ゴウン。モモンガがギルド長を務めるギルドであり、1500人レイド撃退、世界級(ワールド)アイテムの最多保有など、さまざまの功績を残しながらもPK(プレイヤーキル)などの悪行ロールプレイを本業としていたことによって、むしろ悪名を轟かせたギルドである。しかし時が経つにつれ、ギルドメンバーは一人、また一人と離脱していった。

 そんな中モモンガは仲間達と過ごした時間が忘れられず、ただ一人でアインズ・ウール・ゴウンのギルド拠点、ナザリック地下大墳墓の維持費を日々稼いでいた。

 ユグドラシルが終了する間際、結局最後まで残ったのはモモンガ一人であり、そのことにモモンガは寂寥感を胸に抱きながらも、そのままユグドラシル最後の時を迎えたはずだった。

 終わりを迎えたその時、何の因果か、モモンガはゲームのアバターのままナザリック地下大墳墓ごと異世界に転移したのであった。

 その異世界で、モモンガは夜空の星を眺めながら「世界征服なんて面白いかもしれないな」と零した言葉を配下のデミウルゴス*2に聞かれたことを発端に、異世界を征服していくことになる。

 また、異世界にモモンガ以外のギルドメンバーが転移した可能性を考え、仲間たちと合流するために、モモンガはアインズ・ウール・ゴウンを名乗るようになった。

 歴史に見え隠れするプレイヤーの影、100年の揺り返し、謎の世界級アイテム、八欲王、六大神、竜帝の汚物。

 ラスボスじみた主人公たちと、原地の人々が織りなすダークファンタジー。独特の設定と、悍ましくもどこか温かい雰囲気が漂っている作品。その作風が突き刺さった数多の読者に支持され、今やライトノベルを代表する一作となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──以上が私の生まれた時から知っている情報である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 私はかつて、そう、前世と言おうか。前世では比較的恵まれた生活をしていた。

 親は共働きではあったがその分お金はあったし、愛情もたくさん注いでもらった。

 小中高と公立学校を卒業し、大学は地方の私立大学に進学した。

 大人になっても連絡を取り合う友人はいたし、大学時代からの恋人とも結婚して、2人の子宝に恵まれた。

 ほんとに…言葉を発することが少ない私が良縁に恵まれたのは、運が良かったのだろうな。

 

 そんな私の趣味はサブカルチャー系統、要はゲームや漫画、アニメなどの所詮オタク文化である。

 初めてハマったのはYou○ubeのゆっくり実況で、そこから東方projectにどっぷり浸かった。

 その後も歳をとるごとに新しい作品と出会い、別れ、人生の日々を様々な作品と共に豊かに過ごしていた。

 

 そんな私の特に好きな作品が─『オーバーロード』─である。

 オーバーロードを見かけたのは、私が普通のweb小説に飽き、人外ものの小説を漁っていた時である。

 人のため、正義のためと動く人間ではなく、自分のため、効率のために動く主人公は、私に強い衝撃を与えた。

 そこからは早かった。毎日オーバーロードーを読み進め、来る日も来る日も主人公の未来に想いを馳せた。

 web版を読み終わってからは書籍版を購入した。web版とは異なるストーリーながら、web版以上に私は満足感を感じた。

 

 

 それから数年後

 

 

 私は今、聖王国編の映画を見終わり、車での帰宅中である。

 二人の子供は両方自立しており、私はこの長い老後の時間を今の時代に趣味に使える幸福を噛み締めていた。

 

 それにしても聖王国編よかったなぁ…主にレメディオスのボディ…。なんて、考えてたのがいけなかったのだろうか。

 

 私は、目の前に突っ立てる老人に気づくのが遅れて、急いでハンドルを切るも、制御できずに電柱に突っ込み──

 

 

 

 

 気がついたら、私は赤子になっていた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 生まれてから数年経った。

 どうやらここは未来の日本のようだ。

 最初はこの現象に戸惑ったが、無駄に年を重ねたおかげかすぐに夢でも現実でも今は赤子、それ相応の振る舞いをしなくてはと割り切った。

 そう、前世の転生系ライトノベルを読み漁った記憶から、私は赤子の年相応の振る舞いを行うことに決めたのだ。

 変に目立つのは要らぬ干渉を呼ぶもの。私は平和に、平穏に生きたいのだ。

 

 

 

 幼子はいい。「あー」とか「うー」とか言うだけで向こうが頑張って意図を汲み取ってくれる。

 私が元々言葉を発すのが嫌いということもあり、正直この部分だけ見ればこの生活はかなり良いと思う。

 …そう、この部分だけは、ね。

 

 今の状況を少し話そうかな。

 衣食住について

 まず衣、無地の服で同じデザインの服を着回している。少し色が違ったりするが、同じような服に変わりはない。親はほつれを無理やり繋げたような服を着ている。

 

 次に食、朝昼晩栄養食。それもサプリメントのみであり、食材は無い。味はもちろんしないし、食事を楽しむことは無い。

 

 最後に住、アパートの一室のような…いや、事実そのようなものなのだろうね。その狭い一室に家族3人で暮らしている。

 

 前世とはかけ離れた生活。ひどく貧しく、苦しい生活、でも私は嫌いではなかった。

 私には前世の知識があるし、その分いつか今世の両親を楽させてあげようとも考えていた。

 転生ものは死産の赤子に転生するというのが定番ではあるが、私が体の持ち主を塗りつぶしてしまった可能性もある。そんな私はせめて、彼らの為にあろう。

 いつか孫の顔も見せてあげよう。もし私が一人の子供を消してしまったのなら、それが私にできる、唯一の贖罪だろうから。

 

 さぁ、もう直ぐ小学生だ。テストは九割以上をキープかな?

 少しウキウキしながら頬を緩めた。きっと、楽しい未来が待っているって。

 

 私は、そんな未来を見ていたんだ。この世界がどれほど残酷かも知らずに、ね。

 

 

 七歳の春

 

 

 

 

 

 母が死んだ

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ザー  ザー

 

 

 大粒の雨が降っている。

 

 母の死因は脳卒中だった。

 火葬場から帰ってきたものは、幼い私の手のひらに収まるぶんの骨だけだった。

 

 

 泣いた。

 

 溢れ出る感情を、堰を切ったように零れる涙を、止められなかった。

 

 父も、泣いていた。

 

 その細い体で、痛いほど強く、小さな私を抱きしめてくれた。

 「大丈夫、大丈夫だよ」と、言い聞かせるように、己に誓うように、堅く優しい声で、そう言ってくれた。

 

 

 「大丈夫、大丈夫だ◼️◼️。俺が、お父さんが、お前が小学校に通えるよう、頑張って稼ぐからな…ッ!」

 

 

 血反吐を吐くように伝えられた言葉は、この世界の残酷さをこれでもかと言うほど表していた気がして、

 

 

 ──ピシリ 

 

 心に一つ、大きなヒビが入った

 

 

 

◆◆◆

 

 

 12歳になった。

 母の死に泣いてた頃が懐かしくなるよ。…身近な人の死なんて、前世でも味わってなかったからね、年甲斐もなく泣いてしまった。つくづく、前世の私は恵まれていたんだね。

 

 私は小学校を卒業し、無事企業の一端に勤めることになった。

 …いきなりこんな事を言われても理解できないよね。

 そうだね、この六年間で知ったことを語ろうか。この世界について、ね。

 

 

 まず、今は西暦2120年、私が前世で亡くなった時から1世紀近く経っているみたいだ。

 

 こんな、時代に逆行したように人の命を使い潰すような世界に様変わりしたのにも理由がある。始まりは22世紀初頭、自然環境が完全に崩壊し、一次産業が機能しなくなった。それに伴い食糧事情は悪化し、暴動、クーデターが発生。民衆は時の政治家たちを吊し上げた。

 そして政治機能が麻痺したその混乱に乗じて、巨大複合企業が司法・立法・行政を掌握、実質的な支配者になった。

 

 巨大複合企業による支配が始まってからは義務教育が撤廃された。名目上は「公的支出を抑制するため」であるが、実際は富裕層が貧民層から思考能力を奪うことが目的であり、それによって従順な社会の歯車を生み出す愚民化政策の一環だった。

 そして両親が必死に小学校に通わせようとした理由も分かった。小学校を卒業さえすれば、比較的いい企業に就職することができるようになるのだ。

 

 …ああ、富裕層と貧民層についてももう少し話そうか。

 今や世界は荒廃し、空は黒いスモッグに常に覆われ、太陽を見ることは殆ど出来ない。街は有害物質を含む濃霧に包まれるため、防毒マスク無しの外出は非常に困難である。

 そんな環境の中、生き残るため人類が作り出したの物こそが、完全環境都市──アーコロジーである。

 アーコロジー内では清涼な空気が流れ、スポーツなどの屋外娯楽があり、食事も楽しめるらしい。

 もちろん住めるのは巨大複合企業の関係者だけである。

 そしてそのアーコロジー内に住む人々を富裕層、アーコロジーを囲うようにできた都市に住まうものを貧民層と言う。

 私は、貧民層だ。

 

 

 

 …さあ、もう仕事の時間だ。

 靴を履いてガスマスクを着ける。仕事鞄を持って準備完了だ。

 

「行ってくるね。母さん、父さん」

 

 玄関に置かれた()()の箱に声をかける。

 二人に貰った命、次に繋げなければ。

 

 

 ミシ

 

 ──ヒビ割れた心が、軋んだ気がした。

 

 

◆◆◆

 

 

 死にたい

 

 

 

 …ハハッ、まずいね、私の心が保たなくなってきてる。

 今は西暦2126年、私は18歳になった。

 

 この頃、私は言葉をほとんど話せなくなっていた。何をするのも億劫で、屍のように日々を生きている。

 というのも入った企業は所詮ブラック企業というもので、来る日も来る日も残業残業…気が休まることがない。たまの休日もただ呆けるばかりで無為に過ごしてしまう。……どうせそんなものだろうと思っていたがね。

 砕けた心をすり減らしながらも、今世の両親への恩返しのため、死ぬことは許されない。…死ぬことが許されないなら、せめて心を生かす術を見つけなくては。

 

 

 ある時の休日、私は動きたくないと叫ぶ体に鞭打ち、生きる希望となる娯楽を探してインターネットの海を探し回った。

 様々な作品を試し読みしながら彷徨っていた時、ある項目が目についた。

 

 DMMO─RPG

 

 引き込まれた。何かに導かれるようにして、その項目をクリックした。そこで、見つけたんだ。

 燦然と輝いて見えた、そのタイトルを。

 

 

 《YGGDRSIL》

 

 

 …なんで、忘れていたんだろうね。いや、理由などわかりきっている。私が日々の忙しさに潰れてしまったからだ。

 兎にも角にも、購入しなくては。

 前から情報は転がっていたのに、私は、この時ようやく自覚したんだ。ここが、『オーバーロード』の世界だって。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 私は早速キャラクターメイクを行なった。

 

名前:ガーデア

 属性(アライメント):中立───[カルマ値:0]

 種族レベル:金属人の盾使い(メタルマンガードナー) ─1lv

 職業レベル:──

 

[種族レベル]+[職業レベル]───計1レベル

 

能力表   0─────50─────100

 HP         

 MP    

 物理攻撃   

 物理防御    

 素早さ  

 魔法攻撃 

 魔法防御   

 総合耐性    

 特殊   

 

 

 身長約3m。メタルマンガードナーを主軸に、近距離系統のスキルを積んで行って、目指すところは肉壁だ。

 そう、肉壁。まだ見ぬ『ぶくぶく茶釜』さんのような、ヘイト管理を行う盾職ではなく、ただ遮蔽物として使われるような肉壁を目指す。

 理由は簡単。私の精神状態の酷さだ。今の私はおそらく、このゲームを始めたところでろくに言葉を喋れない。それどころか動くことさえ儘ならないといった事態が起こるだろう。

 だから、たとえそんな状態になっても貢献できるように、肉壁を目指さなくてはいけない。

 

 …自分で言っててあれだが、心配だな…。私これ、仲間に入れてもらえるのだろうか…?

 ……いや、今さら考えていても仕方ない。まだ見ぬモモンガさんの優しさを信じろ。

 

 震える手で、スタートボタンを押す。

 今世初めてのゲーム。…そう考えたら少しワクワクしてきたね。

 

 

 私ガーデア、行きます!!

 

 

 

 

 ──そして降り立った世界は、あまりにも綺麗で。

 

 自然と流れる涙に、乾くまで気づかぬほど長い間見惚れてしまっていた。

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ゲーム開始後、まず私は一人でPS(プレイヤースキル)を磨き続けた。

 ある程度の手応えを感じ、いつも通り異形種狩りのプレイヤー*3と戦闘していた時、ついに『たっち・みー』さんと『モモンガ』さんに出会った。

 

 彼らはこんな私に優しく接してくれ、仲間にも誘ってくれた。私は今の状況を拙いながらも必死に伝えた「こんな私でもいいのか」と。

 二人はそれでも良いと言ってくれた。彼らを利用していることにチクリと胸が痛んだが、それ以上に嬉しかった。…あまりに嬉しくって実はこの時、思わずスクショを撮ってしまっていた。まさかこれ以降もバシャバシャスクショ撮って、こっそり保存することになるとはね。

 

 

 そこからはまさに、激動の日々だった。

 様々な仲間と巡り合い、たくさんの冒険を過ごしていった。

 

 動けない私に、専用の台車を作ってくれた。

 

 私の装備とスタイルの完成も手伝ってくれた。

 赤褐色の全身鎧、首から下がすっぽり隠れる大楯。

 クラス構成は防御とカウンター主体で組み、能力値はHP、防御特化型にした。まさか私に戦闘の才があったとはね。おかげで肉壁でありつつも、調子によってはカウンター主体の前衛として動けるビルドに路線変更できた。…動ける時でも何もできないのは退屈だからね、ほんとによかった。

 

 

 そしてもちろんアインズ・ウール・ゴウン結成の時も現場にいた。

 モモンガさんがギルド長に推薦された時、私も同意しておいた。

 

 

「っ…!ガーデアさんっ!ガーデアさんはどう思ってるんですか?俺が…ギルド長って…」

 

「…いい………喜ば、しい…ことだ、ぁ」

 

「あぁ…神は死んだ」

 

 

 その後のモモンガさんが提案した、ギルド・アインズ・ウール・ゴウンによる、ギルドダンジョン・ナザリック地下大墳墓初見攻略*4も全力で同意しておいた。この時の私の精神はめちゃくちゃ絶好調だったため、今が好機と言わんばかりに全力前進しておいた。…ほんとに調子が良い日は貴重なんだ。たぶんこの日がユグドラシル史上1番調子が良かった日だね。

 

 

「……私は、同意する‥よ‥…今は…絶好調…。…この機、会…逃す、手は……ない……」

 

 

 ついに決定したナザリック地下大墳墓初見攻略、その道程は困難を極めた。

 まずこのダンジョンは複数グループに分かれて別の階層を同時に攻略するものだった。そのため、私たちは五人一組のチームに分かれ、それぞれの攻略を開始した。私?もちろんモモンガパーティーだよ。

 

 やがて始まったボス戦では、苦戦を強いられた。

 ユグドラシルのボスは大まかに二種類のボスに分けられる。高体力、高威力、広範囲、少パターンの大味なボス、低体力、高威力、低範囲、多パターンのテクニカルなボス。この時戦ったボスは前者だった。

 私はステ振りの関係で移動が遅いため、広範囲の技を避けきれず被弾することが多々あった。それでもHPの高さから役に立ててはいたと思う。

 状況が少し変わったのは、戦闘が始まってからそこそこ時間が経った時である。

 

 モモンガに他の階層を攻略していたメンバーから伝言(メッセージ)が届いたのだ。

 

 

 「っ!『ぷにっと萌え』さん!今、戦闘中でっ!…‥…えぇ!?わ、わかりました。

 

 皆さん!動きながら聞いてください!!現在、他のメンバーはボスを倒し、無限湧きのモンスターと戦っているらしく、その無限湧きは俺たちがボスを倒すまで続くっぽいです!!

 彼らに楽をさせるためにも、もう一踏ん張り、頑張りましょう!!」

 

「おう!」「はい!」「うん!」「ああ」

 

 

 そこからもう一度戦意を昂らせた私たちは、アイテムMPその他諸々を駆使して程なくボスを瀕死に追い込むことができた。

 だけど私は知っている。これまではただの前座に過ぎないことを。

 

 仲間たちの歓喜の声が響き、皆が声を掛け合う中、それは唐突に起こった。

 巨大なボスが突如現れた光に包まれ、やがて光が収まると、先ほどとは打って変わった小柄な姿に変身したボスが現れ、ボスのHPゲージが全回復した。

 そのあまりにあんまりな事象を前に、絶望的な雰囲気が漂う中、私は声を出した。

 

 

「……私が、出よう…」

 

「なっ、何言ってるんですかガーデアさん!あなた、もうHPが一割切ってるんですよ!!」

 

「…問題…ないよ…、このボスは、たぶん…テクニカルタイプのボスだ……。私が、そちらの方が…得意、なのは…知ってるだろう…?

 ……それにね、モモンガさん……これは、要するに…ノーダメ縛り、ってとこだろう…?………面白いじゃないか……。

 ……安心してよ………今日の…いや、今の、私は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──最強なんだから」

 

 

 キンッ

 

 

 パリィの成功エフェクトともに、私はそう宣言した。

 

 そこからの流れは簡単だ。弾き、受け流し、移動は体捌きと突き飛ばしで妨害し、貫通攻撃はタイミングを予測して予め避ける。

 最後まで、ただの一度も被弾は無く、宣言通り私はボスを完封してみせた。我ながら化け物じみた集中力だったね。しかも途中からは後衛職からの援護も復活したから、私たちは想像以上に早くボスを倒せたんだ。

 

 かくして、ナザリック地下大墳墓初見攻略は完了した。

 初見攻略ボーナスに驚いたり、たっちさんや建御雷さんとPvP*5を行ったり、NPCを作成したりと、この時の幸福を存分に仲間たちと分かち合った。私も自腹で課金アイテムを用いて100lvNPCを作らせてもらった。…手伝ってくれたみんなには感謝しないとね。

 何はともあれこれでアインズ・ウール・ゴウンは拠点を確保し、役者は揃った。彼らはこれから伝説を作るのだろう。

 私もその輪に加われると思うと、年甲斐もなく胸が躍った。

 

 でも、現実はそう甘くはなかったんだ。 

 現実の私に移動命令が出た。…私の勤務態度が問題だったんだろう。いくら仕事ができても、コミュニケーションに難がある私を置いておけなかったのだろうね。移動先は元の場所よりはるかに過酷な労働環境で、私の心は日に日に死んでいった。

…仕事があるだけ感謝するべきなのかな………そんなわけないって、言いたいんだけどね…。

 

 この時から次第に、私がユグドラシルで活動する時間は減っていった。たとえログインできても、六階層のジャングルで夜空をただぼうっと眺めて、ログアウトする。そんな生活を送っていた。

 今回ばかりは流石にまずいと思った。このまま行けば、私は遠からず引退してしまうだろう。だからせめて、最後まで残るであろうモモンガさんにプレゼントを用意しようと思い至った。

 プレゼントの中身自体はあっさり決まった。ただその外装がなかったから、私は素材集めにこっそりと外出した。

 

 四苦八苦しながらあらかた素材を集め終え、残すところが最後の一つとなった時、ギリギリで保っていた私の心はとうとう限界を迎えた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 あれから私はユグドラシルにログインしていない。

 あの日私は発狂し、物に、自分に、ひどく当たり続けた。数年経った今でも自傷行為に走った傷跡は増え続けている。…もはや私は生ける屍だ。ただ命あるだけの死んだも同然の輩。

 ……あぁ、仕事まで後一時間か、少し寝ようかな…。

 

 ピコンっ

 

 …久しく聞いていない対人アプリの通知音、誰だろうか、こんな私に今更絡む人なんていたかな…?

 私は結局誰にも今の状況を伝えていない。理由は単純明快、ただ辛いのだ。話すのも、聞くのも、見るのも、生きるのも、死ぬのも。

 せめて何の内容かだけは見よう。そう思って机に目を向ければ通知内容を目に入る。

 

 『モモンガさん:最後なので、よかったら来てみませんか?』

 

 一気に目が覚めた。緩慢な動きでノロノロと机への前まで移動し、メッセージを確認する。

 ………そうか、今日が最終日なのか。通知履歴を遡れば少し前にも一斉メールと思われるお誘いのメールが来ていた。

 

 「…」

 

 行かなきゃな。最後まで、悲しませるわけにはいかない。時間も無いし、早くプレゼントを、完成させないと…。

 ガタガタ震える体に鞭をいれ、引きずるように体を動かして機材の元へ行く。昔のように手に取れば、フワッとした感触が返ってくる。…長い間放置してたから分厚い埃を被っているみたいだ。…普通の人らは嫌がるのだろうね、私はそう思いながらも躊躇なく機材を装着し、ユグドラシルへログインした。

 

 

 久しぶりのその世界は、やはり現実世界とは比べ物にならないほど綺麗で、思わず呆けそうになったが慌てて最後の素材を取りに行った。

 

 

 …素材は集まった、プレゼントも完成した。よし、早くモモンガさんのとこへ行かないとっ。

 慌ただしく取り出した転移アイテムは、ポロッと手のひらから転げ落ちて、慌てて拾おうとするも時すでに遅く。

 

 私は、ナザリックヘ転移することもできず、プレゼントも渡せないまま異世界へ転移した。

 

 

◆◆◆

 

 

 …ここはどこだ。

 気がついた時、あたりはすでに見知らぬ森であった。

 まぁ十中八九転移したのだろうがね。困ったな…ほんとに未知だぞ、これは。

 

 少し不安を感じたけど、それもすぐに安らいだ。あたり一面の木々が、花草の香りが、小鳥たちのさえずりが、青々とした空が、温かな日差しが、私の心を浄化していく。

 そのうち私は、考えるのをやめた。モモンガさんは世界征服するだろうし、きっと私も見つけてくれるよね。

 投げやりな考えだとは思う、最低だとも。…でも、仕方ないよ。

 

 

 世界はこんなに、綺麗なんだから

 

 

 大楯を正面に構え、直立不動の姿勢で過ごすことに決めた。後ろに巨大な木もあってなんかそれっぽいしね。

 やがて月日が流れて幾星霜、たくさんの季節が過ぎ去って、私の鎧が苔で覆われた頃、私の元に訪れる人物がいた。

 いや、人ではないのか。

 

 広げられし雄大な羽は空の如く、一つ一つが熊のように巨大な鋭き爪は鋼の如く、原初の本能を刺激する牙はまさに捕食者の如く、聳えし巨体で悠々と空を飛ぶその姿、まさにドラゴンの如く。

 

 白銀の竜王ツァインドルクス=ヴァイシオン*6

 

 …なんでその姿のまま飛んでやって来るんですかねぇ…???あなた遠距離で無人の鎧操るタイプでは???

 

 

「おお…見たことない金属だ。やはり私の勘は間違っていなかったようだね!これだから財宝探しはやめられないんだ。きっとスルシャーナ*7たちも驚くだろう。

 …しかし妙に威圧感があるね、この金属鎧。やけに大きいのも気になるし……亜人にこれ程の金属を加工できる種族はいなかった気がするけど…。…だけどまぁまずは洗ってから考えようか《始原の魔法(ワイルド・マジック)──」

 

「あー!!待て待てちょっと待っt「何者だッ!!!」う、うるさいな……私はガーデア、メタルマンの亜種だよ」

 

「あ、ああ…急に大きな声を出して悪かったね、ガーデア。私はツァインドルクス=ヴァイシオン、見ての通りドラゴンさ」

 

「…ああうん、よろしくねヴァイシオンさん」

 

 

 何とも微妙な出会いだが、このツァインドルクス=ヴァイシオン……愛称のツアーと呼ぼうか。このツアーとはこの先ずっと付き合う友になったのだ。

 私は度々やってくるツアーから愚痴や自慢話を聞かされ、時間があれば他愛もない雑談をしていた。そしてそこから得られた情報が一つ、今、だいたい原作の600年前っぽい……つら。

 これから『八欲王』*8がくるのか…お辛いね…。竜王種も亡くなり『六大神』の生き残りも隠れてしまって…ほんとに彼らは余計なことしかしないね。…もし彼らがここまできたなら、少し相手しようかな…。

 私は仮にもアインズ・ウール・ゴウン最強のたっち・みーさんに後一歩まで迫ったと自負してる金属人間だからね。しかもここ数十年自然の中で過ごしたおかげで心は癒されてるから…言うなれば常に絶好調ってところだよ。

 

 

◆◆◆

 

 

 そんなこんなで私がこの世界に来てから100年が過ぎた。今は原作の500年前だね。

 私はツアーと話す中で、()()()()()()()を食べられることが判明した。…これがまたなかなか味わい深いんだよね〜…。

 

 しかし結局最後まで私と同時期にきたと思われる六大神と会わなかったな…。いや、闇の神スルシャーナはまだギリ生きているのか。彼の死因は八欲王との戦いだからね。今はまだ現役で人類の守護者やってるはず…。

 彼が生きてたら原作時期の法国は変わるんだろうか………いや、もしかしたらスルシャーナも人間至上主義の影響で排斥されるのかなあ…。

 そんな考え事をしていると視界に白が降りてきた。

 ……ん?雪か。…もう、そんな季節なんだねぇ‥。時間が経つのは早いものだ…。

 不鮮明な未来のことはいったん置いておこう。今はただ、この白銀の結晶を眺めていたい。

 

      

 

 100周年から20年近く経った。今日は雨かな?と怪しい空模様を眺めていたら、だんだんと森が騒々しくなっていることに気づいた。

 何かあったのだろうか…?

 

 

「はぁっ!クソ!モンスターの分際で偉そうにしやがって!あのクソドラゴンども!!」

 

 …ああ、おおよそ察した。来たんだね、八欲王が。

 

「クソ、思い出しただけでムシャクシャしてきたぜぇ!!何が命だ、NPCの分際でふざけやがって!!プレイヤーに指図するんじゃねぇよクソが!!あれ作ったやつ無能すぎだろ!!」

 

 あ、こっち見た。

 

「…ハッ!意味ありげな広場に、これまた意味ありげな石かと思ったら何だテメェモンスターか?…ちょうどいい、サンドバックやれやカス」

 

 …うん、そう見えるよね。度々くるツアーが寝っ転がるからできた人工的な広場の端に、一際大きな巨樹と、その巨樹を守るように佇む『年季を感じさせる苔生した全身鎧(わたし)』。

 ……イベントボスの気配がするよぉ〜

 

 バカなこと考えてる間に、片手剣を振りかぶってきた男。

 キンッ、と甲高いパリィ音を鳴らしながら、私は久方ぶりの完全試合(パーフェクトゲーム)を始めようと意気込んだ。

 

 

 相手を正面から圧倒し、回り込まれそうになったら体捌きで妨害し、相手の隙を作って攻撃する。

 …こいつが近距離主体で助かった。正直私は近距離戦以外べらぼうに弱いからね…、その代わり近距離はだいぶ強い方なんだけど…‥。

 目の前の相手を見る。息も絶え絶えで、生傷が絶えず、心は折れかかってる。対する私はどうだ…?息は乱れず、鎧に傷はなく、心はヒヒイロカネ*9のように固まっている。…理由があるとすれば、そうだね……健康かな?…うん!やはり健康!健康こそ全てを解決する!!

 …冗談は置いといて…。彼、弱体化してるね。一回以上はデスペナルティでレベルが下がってるのは確定かな。……とすれば彼らの時代も終わりつつあるのかも…?ま、何にせよ今は目の前に集中しないとね。

 

 

「…勝負あったね」

 

「ハァ、ハァ…クソガァ…!これ調整ミスだろッ!!ふざけんなッ!!ようやく自由になったのにっ!楽しくなってきたのにっ!ふざけんじゃねぇ!!!…こんな、こんな理不尽酷すぎるだろおッ!!??」

 

「…君はやりすぎたんだよ。いったい幾つの命を気まぐれに終わらせてきたんだい…?千や二千じゃないだろう…?」

 

 …口ではこんなこと言ってるけど、正直彼らの気持ちは痛いほどわかる。あのクソみたいな現実世界で生きてきて、何度空想の力を、世界を夢見たことか。

 そんな力が現実になったんだ、自由気ままに振るいたくなる気持ちはわかるよ。…でも、そのストレスの発散先はこの世界じゃないんだ。

 …いつか現実世界が、彼らが仲間たちと思う存分遊べる世界に変わることを、心の底から祈っているよ。

 

 ……さて、もうすぐ撃ってくるだろう彼の最後の足掻きに備えようか。 

 

「…こうなりゃイチかバチだ。どうせ死んでも生き返るしなァ!目ぇかっぴらいて見ろォ!!死んどけッ!!次元断切(ワールドブレイク)》ッッ!!!!!!

 

 ──ああ、それを待っていたよ。

 

 

 

()()──

烈気辛抱大撃攘(れっきしんぼうだいげきじょう)

 

 

 

 

 この100年で私が独自に開発した武技、その一つ。効果を簡単に言えば、くらったダメージを三倍にして返す、ただそれだけ。

 …まぁ実は当たらなければ無用の品物なんだけどね。でも、この距離なら絶対当たる。 

 

「お、らぁ!!!」

 

 命中と同時、バァンと上半身が吹き飛び、森に血飛沫が撒き散らされる。

 …死んだ。殺した。あまりにも、呆気なく。

 …初めて人を殺したけど、何も感じない…。種族の変更は精神にも影響あるって原作でも明言されてたけど…、人殺しがそれを実感するきっかけとはね。金属人は種族的な特徴として、命に冷たいのかもしれない。

 

 感傷的な気分に浸っていると、死んだはずの体が光始め、次第に小さな光となって空に溶けていった。

 …おそらくリスポーンしたのだろうね。次も来たら、今度こそ完全試合をやろう。

 

 光を見送って、元の場所へ戻る。曇りの空を見上げて、生温かい風に吹かれる。

 

 いつもは愛しく感じる風が、今日はなぜか少し気持ち悪く感じた。

 

 

◆◆◆

 

 

 この世界に来てから400年弱経った(原作開始200年強前)。そろそろ後ろの巨樹が死にそうで怖い。倒れてこないよね…?

 

 …それにしても私なんで生き残ってるんだろ…?前の転移してきたプレイヤーは常闇の竜王(ディープダークネス・ドラゴンロード)に完殺されてたし、もうすぐくるプレイヤーはこの世界で『十三英雄』*10のリーダーやった後ツアーに殺された疑惑でてたし(前世の知識)…ほんとになんで私生き残ってるんだろ???なんか不安に感じてきたね…。

 あっ、そうそう本体が引きこもって久しいツアーさん、この度無人遠距離操作鎧でユグドラシルのアイテム探しやるみたいだよ。その後十三英雄と合流することになるんだろうねぇ。

 この時期に『口だけの賢者』も来るはずだし…、混沌としそうだなぁ…。あもちろん私はここから一切動くつもりはないよ。今日もお日様が暖かい。 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 あ、木が倒れてきた。幹の中に埋まった。ぬくい。

 それにしても、そろそろ原作100年前になるんだねぇ。モモンガさんに会えるまで後100年、待ち遠しいなぁ…。 

 

 …この時期に起こることは確か胸糞だったよね。八欲王の実子であるエルフ王によって、法国の切り札の女が騙され王の子を宿らされ、かろうじて出産前に女を奪還するも、産まれた子は母親により虐待され歪んだ性格に育ってしまう。

 しかもこれがきっかけで法国が人間至上主義を掲げ始めるんだからやりきれないよねぇ…。ああ…そろそろ空が見たい。

 

 

◆◆◆

 

 

 ん?また何か上を通ったなぁ。…この音は…やけにでっかいハムスターだね?こんな子初めてだ…。

 そう初めて……でもなんかどこかで見たことある気がするんだよなぁ〜……蛇みたいに長い尻尾………?…ってハムスケじゃんッ!?

 そうかそうか、本当にもう直ぐなんだね。しかもここはトブの大森林なんだね。ああ、楽しみだ。

  

 

◆◆◆

 

 

 私を包んでいた木の幹がすっかり朽ち果て、樹皮を元に生えていた植物が新たに外殻を作り出した天然の洞窟、その中で今日も木漏れ日を浴びている。

 …この前久しぶりに浴びた日光は格別だったね。それまでジメジメしたきのこが中心的に生えていたのに、ここ最近また若緑に包まれるようになった。嬉しいね。

 

 

 足音が聞こえる。

 大型の四足獣、鎧の巨漢、軽装の子供、ローブの女性。

 

 

 感情が高まる。心臓が無くて良かった、もしあったら間違いなく破裂していた。

 

 

「ねえハムスケ、本当にすごい物あるの?たしかにここはまだ調べてなかったけどさ」

「ほんとでござるよ!殿の姿を見て思い出したのでござる!ここにはすっごく硬くて大きい鎧像が置いてあるのでござる!!」

「鎧像か…まあコレクトアイテムではあるか…」

「アインズ様、御身がわざわざ時間をお使いになられることでもないかと思います。必要ならば我ら僕が─」

「まぁ待てナーベラル、こういうのはだなぁ──」

 

 死ぬ。緊張で死ぬ。ああ待ってやばい死ぬ。お、落ち着け私、ここが勝負どころなんだからっ

 

「──ったかナーベラル?一度実物を見ておくべき理由が…───」

 

 …ぁ

 

「──…理由、が…」

 

 ─ああ

 

「ガーデア、さん…?」

 

「……ああ…嗚呼…!懐かしい…懐かしい声だ。……本当にっ、本当に久しぶりだね、モモンガさん」

 

 盾を横に避けながらゆっくりモモンガさんの方へ歩いて行く。

 モモンガさんの驚いた雰囲気が伝わる。…そうだ、私が元気に話してるのを見るのは初めてなんだ。元NPC組は驚いて声も出ない感じかな?ハムスケは私が動き出したことに驚いたけど、空気を読んで黙っておこうって思ってるね。

 …ああ、それにしても本当に久しぶりだ。私はモモンガさん、あなたに伝えたいことが、話したいことがたくさんあるんだ。

 私が金属人でよかった。そうじゃなかったら視界が涙で滲んで、喉が奏でる音は言葉にならなかっただろうから。

 

「…なん…で…」

 

「…ごめんなさい、モモンガさん。最終日のあの時、モモンガさんのところに行かなくて」

 

「…」

 

「私はどうしても、あなたに伝えたいことがあって…言葉だけじゃ足りないと思ったんだ」

 

「伝えたい、こと…?」

 

 息を目一杯吸う。この言葉を言いたかった、伝えたかった。ただ、それだけのために、私は600年の時を過ごしてきた。

 だから、モモンガさん──

 

 

 

「──ありがとう」

 

 

 

「っ…!」

 

「私を見つけてくれて、私を誘ってくれて、私を連れてってくれて。…あなたと、あなたたちと過ごした日々は、今でも私の大切な宝物だよ。

 話しかけてくれるのが嬉しかった、装備を考えてくれたことが嬉しかった、私を仲間と言ってくれたことが嬉しかった。

 だから私は、この気持ちを、どうしてもあなたに、あなたたちに伝えたくて、返したくて──」

 

 手のひらに抱えていた“プレゼント“を手渡す。

 

「これ、は…」

 

「アルバムだよ。思い出を残したくて、写真を撮って集めてたんだ。…勝手に撮ってごめんなさい」

 

「っ!いえいえ全然っ!むしろ嬉しいくらいですよ」

 

 そう言ってモモンガさんはじっくり、思い出を噛み締めるように写真を眺めていく。

 

「…ありがとうございます。こんな素敵な贈り物をいただいて」

 

「…本当にごめんなさい。こんなことじゃ許してくれないとおも─」

 

「ああストーップ!ストップですよガーデアさん!さっきから続いてるそれ!一旦それ禁止にしましょう!」

 

「え、で、でも」

 

「そうゆうのは()()でチャラにしましょう!!そもそもそれくらい気にする必要もないんですよ!!

 なんせ私たち──

 

 

仲間ですから!!
                              

                                           」

 

 

 

 あぁ…完敗だね…。モモンガさん、あんたいい人すぎるぜ。

 いつも間にかヘルメットが外され露わになった骨の顔。筋肉が無いから表情は読み取れない、それでも私にはいい笑顔をした優しげな男の影が見えた気がした。

 

「…まったく…やっぱあなたはギルド長だよ、モモンガさん。いいの?私がアインズ・ウール・ゴウン名乗っても」

 

「ええもちろ…あっ、…それは、そのぅ…」

 

「…ぷっ、あはははは!」 

 

 ちょっとからかったら、すぐ百面相しちゃって…ぷぷっ骨なのに動きがコミカルしぎるんだよ、モモンガさんはっ。

 あ、やばい笑いが止まらないっ、ツ、ツボに、入って…ぷっ。

 そ、そんなジト目で見ないでよっ、ぷっ、ほ、骨がジト目っ…w

 

 

「…はぁ〜、まさかガーデアさんがこんな人だっとは」

 

「ぷぷっ…悪かったね、こんなんで…ぷっ」

 

「ハアァー…何はともあれ、ですよ

 

 

──おかえりなさい、ガーデアさん

 

 

  」

 

     

 

 

──ああ

 

 

 

 

 

 

ただいまっ!モモンガさんっ!!

  

 」

 

 

 

 

 

 

 

*1
モモンガはユグドラシル内、つまりはゲーム内の名前。鈴木悟は現実世界での名前

*2
アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバー、ウルベルト・アレイン・オードルが設計したNPC(ノンプレイヤーキャラクター)であり、残虐な性根を持ちつつ明晰な頭脳と並々外れた忠誠心でモモンガを振り回す男である。ナザリック地下大墳墓と共に転移してきた。

*3
ユグドラシルでは、異形種族を選んだプレイヤーを排斥する風潮があった

*4
ユグドラシルでギルド拠点を手に入れるには、ギルドダンジョンを発見し攻略する必要がある。ナザリック地下大墳墓など、ギルドダンジョンは総じてに難易度が高く、初見攻略は不可能とされていた。

*5
プレイヤーvsプレイヤーの略。1対1でも10対10でも、プレイヤー同士の対決ならばPvPと表される。

*6
原作時期では世界の調停者を名乗り、100年ごとに現れるプレイヤーのうち、強大な力を欲望のまま振り回すプレイヤーを消して回っている。また、原作200年以上前から遠隔操作できる鎧を操ってユグドラシル由来のアイテムを回収しているドラゴン。性格は温厚だが、必要とあれば容赦なく命を切り捨てられるタイプの強者。生まれた年の詳細は不明だが、この小説では初登場時生後数年である。

*7
ガーデアと同時期に転移してきたプレイヤーの一人。種族はモモンガと同じオーバーロードであり、亜人の脅威にさらされる人類の国、宗教国家スレイン法国で六大神として祀られることになる。なお六大神はスルシャーナ以外人間で、原作時期(600年後)で人間至上主義が掲げられる中、闇の神スルシャーナは意外と普通に信仰されている。

*8
この世界をゲームの延長と捉え、暴虐無尽な振る舞いを行い続けた八人のプレイヤー。その圧倒的な力で大陸を支配し、世界の法則を書き換えた。だが全方位に喧嘩を売った結果(人類種は優遇)、全方位に多大な被害を齎しつつもドラゴンたちにより繰り返し討伐され、だんだんとレベルが下がり弱体化した後、仲間割れを起こし破滅した。だが彼らが死してもなお世界に残した物は碌でもないものばかりで、後にそのうちの一つが原因となり、宗教国家スレイン法国は人間至上主義を掲げ、人間以外の人類種を含む他種族を完全に排斥する方向に舵を切ることになった。

*9
現実、異世界、そのどちらにも存在しない架空の金属。めちゃくちゃ硬い。元ネタとしては偽書『竹内文書』に出てくる金属とされるもの。また、オカルティストが「古史古伝における太古日本の伝説の金属または合金」と主張しているらしい。

*10
現地のお伽話で伝わっている名称。各地に現れた魔神を討伐するためにリーダー(正確な名前は不明。おそらく「リク」だろうと言われている)が集めた仲間たちのことを指し、実際には十三よりも数が多かったが、それを人間種を重要視する者たちに改変されたのだろうと作中で考察されている。また十三英雄の内原作で登場しているキャラは、イビルアイ、リグリット、ツアーの三人である。




もうこれで終わっていいんじゃねぇかな…
ということで更新の予定は無い、です

作者は書籍版1〜16巻の知識しかありません。それ以外はwikiです。ご留意ください。
ついでにナザリック攻略時のボス周りは色々オリです。参考にしてた二次創作作品、後書き見たらオリジナルって書いてあったんですけど、もう文章書いちゃってたので少し変えてごり押しました。

続けるかは別としてアンケートとります。よかったら投票して行ってください
ちなみにどっちになっても恋愛要素はないです。

主人公の性別(前世は男)

  • 現実世界 男
  • 現実世界 女
  • 異世界 男
  • 異世界 女

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