自称「平凡だけど、どこか神秘的で儚げな……ただの百鬼夜行の一生徒」の妹による曇らせツアー   作:藍終

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作者の推しは、見ての通りです。ハイ。
銀髪(白髪)ロングの儚げな氷属性の美少女なんてなんぼあってもいいですからね。


芽吹きの刻は花腐し 編
推しの妹に転生したなら、やるべきことはわかるよね?


「ここが…百鬼夜行連合学院……!」

 

 雄々しく聳え立つ荘厳な天守閣、その下に多種多様ながらも、どこか統一感のあるThe・和な木造住宅が連なっている様子は、城下町と言う他無いだろう。更に今の季節は春。春の代名詞というべき桜が新しい出会いを祝福すべく花弁を吹き散らしていることも相まって、誰もが日本といえば思い浮かべる景色が広がっている。展開している屋台や露店から香る香ばしい焼き鳥の匂いや、心地の良い喧騒はその場にいる人を浮足立たせる。

 

「クユリ?道の真ん中で立ち止まったら危ないよ。ほら、お姉ちゃんの手を掴んでてね」

 

 見る人の心の琴線を揺さぶるような風景に見惚れていると、雪のような肌の手に手を握られ、トリップした意識が引き戻される。

 自分より一回り大きい位置から発せられた声の方へ顔を上げると、同じく雪のような真白の長髪に氷の結晶ような髪留めをつけた――さながら雪女のような儚げな少女、御稜ナグサが苦笑を浮かべていた。

 

「あっ…ごめんね、お姉ちゃん」

 

 慌てて私(俺)は、差し出されたナグサの左手を取った。混雑した中で立ち止まってしまった謝罪として、後方に小さく頭を下げていると―

 

「ナグサは相変わらずシスコンだね〜。ちょ〜っと立ち止まっただけなのにねぇ、クユリちゃん?」

 

 ナグサとは反対側から手が伸び、やや荒っぽくも髪を傷めないように頭を撫でてくる。ナグサとは正反対の黒髪で、快活な笑顔を振りまいている彼女――七稜アヤメはナグサに握られていないもう片方の手を握り、幾分小さいこの体を軽く抱き寄せた。

 

「むっ……、私はただクユリが迷子にならないか心配で…」

 

「それは建前でしょ〜?手握った瞬間、顔紅くして愛おしそうに目ぇ細めちゃって…」

 

「そ、それを言うならアヤメは手を握るだけじゃなくて抱き寄せてる気が…」

 

「実の妹に欲情する過保護な姉から守ってあげてるだけでーす」

 

「なっ…!バカなこと言わないでよ…。大好きなのは間違ってないけど」

 

 アヤメが一度からかいだしたらそうは止まらないのはもう嫌というほど経験してきた。そして、急に話を振られた時の対応も染み付いている。

 

「だってさ、クユリ。お姉ちゃんは『恋愛的な意味で』大好きらしいけど?」

 

「…ごめんね、お姉ちゃんをそういう目では見れないかな。あ、でもお姉ちゃんの事が世界で一番大好きなのは変わらないよ!」

 

 そう精一杯の笑顔で返して見れば―

 

「……カヒュッ…」

 

 愛する我が姉は胸を抑え尊死した。少しばかりの失望の感情が混じっていたように見えるのは、きっと気のせいだ。

 

「おお〜、クユリちゃんは罪な女だね〜。じゃあ、私がいただきってことで、行こっか!クユリちゃん!」

 

 そう言うやいなや、繋いだ手を引っ張り走り出すアヤメ。

離れていくナグサに向かって手を振り叫ぶ。

 

「早く取り返しに来ないと置いていくよー!」

 

「ち、ちょっと!…もう、アヤメったら…」

 

 

 

 

✵✵✵✵✵ ✵✵✵✵✵ ✵✵✵✵✵✵✵

 

 

 

 やぁ皆の衆、はじめまして。気がついたらTS転生して、ブルーアーカイブの生徒になってしまった御稜クユリです。

 

 いやぁ、転生ってホントにあるんだって思ったね。特に元いた世界で何かあったわけでもない。通り魔に刺されたわけでもなく、怪しい取引現場を見ていたら後ろから殴られたわけでもない。いつものように大学に通い、アルバイトで疲労した体で、就寝しただけなんだ。

 

 でも、そんなことはぶっちゃけどうでもいい。なぜなら、転生先があろう事かブルアカで一推しの御稜ナグサの妹だったからだ。

 

 そもそもブルアカ、もといブルーアーカイブとはなんぞやと思われるかもしれない。

 端的に言うなら、学園都市キヴォトスが舞台の、様々な学園や生徒達が平然と銃や兵器を扱いながら『先生』と共に、透き通るような青春を紡いでいくゲームである。

 

 様々な学園事にストーリーが展開されているのだが、その中には当然、百鬼夜行連合学院が主軸となる百花繚乱編がある。是非とも自らの目で確認してほしいため詳細は話さない――と言いたいところなのだが、話さないというより話せないのだ。

 

 何故なら、転生したその時点では、まだ百花繚乱編のストーリーは完結していないからだ…。しかも、転生した代償なのかは定かでないが、百鬼夜行連合学院に入学出来るようになるまでの期間で、だいぶ前世の記憶が消えてきているのである。本来、ブルーアーカイブには御稜クユリなどという生徒は存在しないためか、もしくは、世界の強制力というやつだろうか。正直、ブルーアーカイブに関係のない前世の記憶はほとんど残っていないのが現状だ。

 

 駄菓子菓子、私の個人的な趣味というか性癖というか迷うが、少なくともそれを達成するのには十分なのは幸いだった。それとは、まさに――

 

 

―――俗に言う、曇らせ である。

 

 

 この時点で相容れないと感じた人もいるかもしれない。確かに人は、特に女の子には笑顔で居てほしい、幸せを享受していてほしいとは思う。それ自体は正しい。

 

 しかし、人間とは発達した思考能力を持つゆえ、時として矛盾した考えを抱いてしまう。光があれば闇があり、表があれば裏がある。これらは、どちらかが欠けてはならない、互いに存在感を高め、確立しあっている。

 輝くような笑顔や幸せの価値が高まるほど、また、それが曇った時の波動は増す。

 

 その相反する概念が逆転した瞬間に生じるナニカ、これに前世の自分は魅せられてしまっていたのだ。

 

 

 そんな奴が、推しの世界に転生したならやることは一つ。

 

 

 できる限りの幸せを享受して、同時に幸せを分け与えて。

 

 

 生じた幸せよりも、ちょ〜っとだけ多めの曇らせを振りまいて。

 

 

 

 一人愉悦に浸ろうということだ。

 

 

 

 

 

 

✵✵✵✵✵ ✵✵✵✵✵ ✵✵✵✵✵✵✵

 

 

 

「あの〜、そろそろ勘弁してくれたり……。しないですよね、そうだよね」

 

「…焼き鳥奢ってくれるんじゃなかったの?」

 

「いや〜、調子に乗りすぎたのは自覚あるけど、まさかここまでお怒りとは想定してなかったといいますか…」

 

 あの後、無事に妹であるクユリの入学式を終え、新入生祝いとしてお祭り運営委員会によって所狭しと並ぶ屋台の一つに腰を下ろしていた。私ことナグサは、隣で冷や汗をかきながら示談交渉を持ちかけてくる幼馴染を尻目に、新しく焼き上がった葱鮪をかじる。

 

 腕のいい屋台主によって焼き上げられた葱鮪を串で持ち上げると、鶏もも肉の適度な脂が光沢を生み出す。鶏もも肉の間に挟まった葱と一緒に食べると、葱のシャキッとした食感がアクセントとなり、次いで溢れた水分が鶏もも肉の脂を流してくれる。

 こんなに美味しい組み合わせを誰が考えたのかと思っていまうが、実は葱鮪は読んで字のごとく葱と鮪の、串すら使わない焼き鳥ですらない鍋料理だったというから驚きだ。次第に串料理となり、やがて鮪の価格高騰から鶏肉を使うようになったようだ。

 

 そんなどうでもいい事を考えてしまうくらい、焼き鳥に夢中になっていると――

 

「あの、お姉ちゃん…、流石にものの数分で12本はたべすぎじゃ……」

 

 アヤメとは反対側から、おずおずといった感じで制服をクイクイと引っ張りながらそう主張してくるクユリ。

 眦を下げて言外に、私もちょっと調子に乗りすぎたからと訴えてくるその様子が可愛らしくて、思わず頭を撫でてしまう。

 

「そうね、少しやりすぎたかも。でも、クユリは何も気にしなくていいからね」

 

「この対応の差は泣けてくる…」

 

 勝手に撃沈している幼馴染には悪いが自業自得だ。せっかくの入学式、姉として先輩として、いろんなところを案内して良いところを見せようと意気込んでいたのに、それを全部アヤメがやってしまった。しかも、なんだかんだ楽しそうに振り回されてるクユリを複雑な心境で眺めながら過ごさなくてはいけなかったのだから、これくらいの報いは受けて然るべきだ。

 

 「アヤメが、“何本でも”食べていいって言ったからこうなるの」

 

「言葉の綾というものがあってですね…」

 

 そうぼやきながらも、きちんと会計を済ませるアヤメを見ていると、多少の罪悪感はわく。手慰みにクユリの所々黒髪の混じった銀髪を梳くと、クユリはまるで小動物のように気持ちよさそうに目を細め、体をあずけてくる。

 

「私はアヤメみたいにはできない…」

 

 実際のところ、今に至るまでの行動でクユリが幸せそうだったのは確かだ。内気で、消極的かつ口数の少ない自分では、あの笑顔をみられなかったかもしれない。出来れば私がいつもクユリの側にいたいが、もしそれが、クユリの笑顔の機会を減じることになるのなら………。そんな気持ちがつい、口から漏れてしまっていたようで――

 

「アヤメさんにはアヤメさんの、お姉ちゃんにはお姉ちゃんの良さがあるの!私はどんなお姉ちゃんでも大好きッ…ダカラ……」

 

 後半に行くにつれ恥ずかしさが追いついてきたのか、キッとした表情が次第に赤く染まっていき、言葉もしりすぼみになっていく。そんな様子を見たらモヤモヤした気持ちなど吹き飛び、優しく、されどしっかりと妹を抱きしめた。

 

「私も大好きだよ〜、クユリ」

 

 なんだかんだで、私もアヤメとクユリがいる今の雰囲気が好きなんだろう。アヤメもクユリが好きだからああしてるのだろうし、クユリをアヤメに任せるのも、それはそれで悪くないのかもしれ――

 

「ホンッットに、シスコンだねナグサは。胸焼けしてくるよ。」

 

 やっぱりダメだ。私の側に居させないとクユリがアヤメに穢されてしまう。純粋なクユリは私が守ってあげなくちゃ。

 

「…アヤメ?焼き鳥追加してもいいの?」

 

「何でもありませんです!ハイッ!」

 

 おどけて、敬礼までするアヤメに私もクユリもクスリとしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな日常がこれから続いていくんだと、あの時の私は信じていた。

 

 案の定アヤメの明るさに振りまわされながらも、三人で笑い合ったり。

 

 アヤメと共に、百鬼夜行を支える一員として奔走したりしたが、それでもアヤメのお陰でなんとかなった。

 

 頼れる後輩もできた。ちょっと舌打ちが多くて怖いけれど、頭がキレて仲間思いの子。直球気味だけど素直で、まっすぐな子。良家の出なのに、それを傘にせずひたすらに天真爛漫な子。

 

 色々苦労することも増えてきたけど、私の周りには沢山の支えがある。後輩達に、何よりアヤメとクユリ。彼女たちのお陰で私は前を向き続ける事ができた。

 

 

 これからも、ずっとそうだと信じて疑わなかったのに…

 

 

 花鳥風月部に……黄昏にアヤメが飲み込まれ、右腕が動かなくなったあの日から、何もかもが変わってしまった。

 

 

 

 私も、百鬼夜行も、

 

 そして何より――――――

 

 

 

 クユリも、変わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 




推しパワーってすごいね…
妄想が膨らむ膨らむ(筆が進むとは言ってない)
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