自称「平凡だけど、どこか神秘的で儚げな……ただの百鬼夜行の一生徒」の妹による曇らせツアー   作:藍終

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最初は例のモブちゃん視点です。

メインをはるモブとはこれいかに…。
試験の都合上どうしても更新はまちまちになります…。どうかご容赦を…。


待てっ!早まるんじゃない!

 

 後悔、虚無、自責……この感情をどんな言葉で表してくれようか。

 

 目が覚めたら、守るべき大切な妹的存在が姿を消していた時の私の気持ちは?

 

 すぐに、自らの浅はかな情が原因だと気がついた時の気持ちは?

 

 少しして、懐に差し込まれた一通の封筒に気づき、その中身を読んだ時に湧き上がった気持ちは?

 

 

 恐らく全部だろう。黒い負の感情が脳をかき回して、流れ出す涙は嫌にどろりとしていたのを覚えている。

 

 

 あの時、私はクユリちゃんのお願いを聞き入れるべきではなかったのだ。

 

 クユリちゃんに嫌われることも覚悟で、病室に閉じ込めておくべきだったのだ。

 

 彼女の安全を任された身でありながら何という体たらく。

 

 自分が嫌で仕方がなかった。

 

 

 しかしあの時の私は突如吹き荒れた感情の整理がつかず、半分の矛先はクユリちゃんの姉―御稜ナグサ先輩に向けられていた。

 

 そもそもクユリちゃんがあそこまで心を痛めてしまったのは、ナグサ先輩がクユリちゃんの手を取らず、あまつさえ其の場から逃げ去ってしまったせいなのだと。

 

 封されていた手紙を読んでもそれは明らか。

 

 だから、その手紙を直接渡しに行ったときは侮蔑の視線をしてしまったことだろう。

 

 自らの責任から逃げているだけの八つ当たりということなのはわかっているのに、どうしてもそれはやめられなかった。

 

 私たちがクユリちゃんの命を救う方法を見つけられないという事も原因のひとつなのだということを理解していても…。

 

 

 

 

 それでも、クユリちゃんは帰ってくるつもりであるというたった一つの事実が、私をすんでのところで繋ぎ止めていた。

 

 院長は事情を隠さず話すと――

 

『…確かに介護係としては失格かもしれない。でも、一人の人間としては合格だと思うよ』

 

 と言って励ましてくれた。

 

 キキョウさんも――

 

『…はぁ、もうわかったから。話を聞く限り、私であってもきっとあんたと同じ行動をしただろうし…あまり気に病まないで』

 

 滅多に見せないような柔らかな微笑を浮かべて慰めてくれた。

 

 その甲斐もあってか、あまりの自責の念に駆られて何度も命を絶とうとするたびに踏みとどまることができていた。

 

 たった数日、こんなことがなければ日々の学生生活に埋もれてあっという間に過ぎ去っていくはずの時間が恐ろしく長く感じられる。

 

 

 この苦しみはきっと私への罰なんだ。

 クユリちゃんの苦しみに比べたら砂漠の一粒の砂にも満たないけれど、ゴールだけがちらつく中で永遠にも思える数日、自分を責め続けること。

 

 

 

 だから…、帰ってきてくれたその時は、思い切り抱きしめて、謝って……そしてもう二度と私の目から離れない様にしてあげなくちゃ…。

 

 同じ過ちを繰り返すことのないよう、出来るなら監禁でも何でもして………。

 

 

 そう考えたりもしながら永い数日を過ごし、やがて百花繚乱の上層から一つの伝達が届いた。

 

 それは待ちに待ったクユリちゃんの帰還の報せだった。

 

 分厚い闇のカーテンが取り払われていくような錯覚に陥るほど、私は高揚した。

 

 やっと自責という虚しい罰ではなく、直接償いをすることができる。

 

 やっと私の側に戻ってきてくれる。

 

 あぁ、私はいつの間にか、クユリちゃんに依存しかかっていたのかもしれない。

 

 

 …そう浮かれていられたのは、続く情報が告げられるまでのことだった。

 

 

 例の症状の対策に光明が見えたかわりに、左腕と処女を失ったという。

 

 ヒダリウデトショジョヲウシナッタ…。

 

 意味を持たぬ言葉の羅列がひたすらに反芻し、脳の中で跳ね返り続ける。

 

 わかりたくない、判りたくない、解りたくない、理解りたくない。

 

 私の一時の判断が引き起こした代償は、心の目も耳も塞いだ私を容赦なく貫いていく。

 

 まだ何事かを話し続けているらしいが最早何も聞こえない。

 

 聞こえるとするなら、己の罪が私の魂を削っていく音だけ。

 

 呼吸もできず、酸素不足となった頭がキリキリと締め付けられる。

 

 伝達に来た同級生も隣の院長の姿もぐにゃりと歪み、五感が受け取る情報全てが私を責め立てているようで…。

 

 

 そんな状態でも脳は先の言葉の解析をやめようとはしない。

 罪状が明らかとなり、導き出された結論は一つ。

 

 閻魔の宣告は正しく私を断罪した。

 

 

 お前のせいだと。お前のせいで、取り返しのつかないものを失ったのだと。

 

 

 

 ブツリと、ヒューズが切れるように、私の全ての感覚がシャットアウトされた。

 

 

 

 

 

 

 そして今、私は診療所の空いている病室のベッドに寝かされている。

 

 柔らかな暖色系のカーテンから漏れる月光が、電気の落とされた部屋を淡く幻想的に照らしている。

 小さい子供は布団に入っているような時間帯。

 

 といっても今目が覚めたわけではなく、院長が言うには私が倒れてここに運び込まれてそう経たない内に一度目覚めている。

 

 意識が覚醒し、濁流の如く押し寄せてきた情報の数々を理解すると同時に、その時の私は何の躊躇いもなく近くに置かれていた愛銃にかじりつき、その銃口をこめかみに押し当てた。

 

 残念ながら、咄嗟には気が付かなかったが、ずっと見守ってくれていたらしい同級生がすんでのところで銃口を逸らしたおかげで、撃ち出された銃弾は病室の壁にめり込むにとどまった。

 

 取り上げられた銃を半狂乱になりながら取り返そうと暴れる私。

 

 騒ぎが大きくなったせいか、集まってきた数人がかりで抑え込まれ、同僚にも泣きながら懇願されて無理矢理頭を冷やされる。

 

 

『お願いだからそんな馬鹿な真似はやめてっ……!クユリちゃんだって悲しむだろうことくらいどうしてわからないの!』

 

 

 意味がわからない。

 

 私なんかが生きていていいはずがないのに…。

 確かに少し前までは愚かにも生きたまま償おうと考えてはいた。

 ただ、私という存在の罪深さはそんな程度では到底償いきれないような段階にまで引き上げられてしまっていた。

 

 より詳しく聞けば、吐き気のするような邪悪な大人につけこまれ、無理矢理に犯されてしまったという。

 

 もちろんその大人には地獄を見せてやりたい。

 

 が、悪を裁くのは完全な正義でなければならない。

 私のような汚れた罪人が、クユリちゃんを外の世界に解き放ってしまった愚か者が手を下す権利などない。

 

 ならば、罪人は罪人らしく、ふさわしい末路を辿るのが道理だと思う。

 

 正直、私ごときの命で清算されるとは思っていないけど…。

 

 なのに…、皆はそれを許さない、許してくれない。

 

 

 わかり合えない平行線のままの状態に、その方法しか頭にない私の脳は、恐ろしく冷静な判断を下した。

 

 

 ――改心したように見せかけて、人の目が離れたその瞬間に死のう。

 

 

『…ごめん……、私…どうかしてたかもね。こんな事をしても何にもならないってわかってはいるんだけど…。ありがとうね、止めてくれて』

 

 思ってもいない言葉がつらつらと流れ出てくる。

 

 ただひたすらに、私への警戒の目を取り除くために。

 我ながら自然な微笑みまでも付け加えて、あたかも一時の感情の波から抜け出して、冷静になった私を演じる。

 

 

 

 

 その後、精神が不安定なことに変わりはないとして、私はこの病室で大人しく休養を取ることになった。

 

 もちろん変な気を起こさないようにと、なるべく一人きりにならない状態が保たれていたため、私は辛抱強く待つことにした。

 

 ある程度時間が経ち、日もだいぶ傾いてきた頃になると、先ほどの演技が功を奏したのか、だんだんと監視の目が少なくなってきた。

 

 それでもまだ足りない。

 大人しく寝ている振りに徹し、会話をするにしてもなるべくいつもの自分を演じる。

 

 

 そうして今、心地の良い夜闇が満ちるこの時間になったというわけだ。

 

 誰もいなくなる瞬間をひたすらに待ち続けていると、ふと、何事か外が騒がしくなってドタドタと足音が駆けていく。

 この時間帯に急患でも来たのだろうか…。

 

 本来なら私も駆けつけなければならないところなのかもしれないが、生憎と今の私はこの事態を都合のいいようにしか捉えていなかった。

 

 

「銃は……多分保管庫かな……」

 

 当然、愛銃は没収されてはいたものの、あまり大きくはないこの診療所で物を隠せる場所などそうそうない。

 

 ましてや銃などという危険物を保管するとなれば尚更…。

 

 そっとベッドから降り、気配を殺して廊下へと顔だけを覗かせる。

 

 やはり誰かが運び込まれてきたようで、廊下には電灯の光が満ちていた。

 一瞬、見覚えのある姿が目に入った気がしたがそれは些細なこと。幸いにも人の気配が集まっているのは保管庫とは反対側の処置室。

 

 絶好のタイミングだった。

 

 油断はせず、しかし急ぎ足で保管庫までの道のりを滑るように移動する。

 

 背後をちらりと振り返り誰もいない事を確かめ、分厚い木の扉を押し開ける。

 

 若干軋む音には妥協して、ゆっくりと扉を閉める。

 

 大分ガタがきているため鍵がかけられないのが不安だが、とりあえず無事に保管庫に侵入することができた。

 

 すぐさま周囲に目を光らせ目的の物を探し出す。

 

 

「……あ、あった……!」

 

 せめてもと私の身長よりも高い棚の上に置かれているソレを、多少手間取ったにせよ見つけられた。

 

 適当な箱を足場にして銃のグリップに指を引っ掛け、手繰り寄せる。

 

 すっぽりと手に収まった私の相棒。

 

 役割柄、あまり銃を撃たない私は最低限の護身としてハンドガンを持っていた。

 それでも、生活を共にしてきただけあって僅かな郷愁が胸に流れる。

 

 特に飾ってなどいない無骨な鈍色の銃身に反射して己の顔が映し出される。

 

「……酷い顔……」

 

 ストレスの過多により髪は乱れ、目も頬もやつれてしまっている。

 まるで何日も寝ていなかったかのようだ。

 

 仮にも医療に携わる者として、私なりの見解があった。

 

 普段は銃弾を受けても血を流さないほど頑丈な肉体。しかし、持ち主の精神状態によってその強度は大なり小なり変化するのではないかと。

 

 ここに運び込まれてきた重症の患者は、精神に何らかの揺らぎを抱えていることが多かった。

 

 

 ――だから、今なら、こんな銃でも死ねるはず。

 

 

 前とは違い、大きく開けた口の中に銃身を突きこむ。

 

 より確実に死ぬなら、頭蓋骨の丸みで銃弾が滑ってしまう可能性のない、脳髄をぶちまけるこの方法の方が良い。

 

 セーフティは外しておいたし、後はこの引き金を引き続けるだけだ。

 

 一発では無理かもしれないが、今の私ならマガジン一本分をぶち込めば十分だろう。

 

 私の身体のことは私がよく知っている。

 

 

 初弾のみ重い引き金に力を込める。

 

 伝わる金属の冷たさが、私に抗議している気がする。

 

 

 ――ごめんね。

 

 

 何に対しての謝罪か――いや、銃にも先輩方にも、院長や同僚、後輩にも………。

 

 

 何よりも、クユリちゃんに対して――

 

 

 ――――――さようなら。

 

 

 生命の終わりを察知したのか、五感が情報の遮断を始める。

 

 何も見えない、聞こえない。残された感覚は引き金にかかった指先のみ。

 

 何もかもから逃げた。

 

 そんなだから――

 

 

 閉じられていた扉が開いたことにも、誰かが駆け寄ってきた足音にも……そして、

 

 

 口元から銃が引き抜かれ、温かい体温に包まれたことにさえ、しばらく気づくことができなかった。

 

 

 

✵✵✵✵✵ ✵✵✵✵✵

 

 

「――わかりました、後は私共にお任せください。すまない君たち!担架を持ってきてくれ!」

 

「「はい!」」

 

 

 運び込まれていくレンゲを見送ってようやく張り詰めていた息を吐き出す。

 

 気温の低くなるこの時間帯でも、背負っていた部分がじっとりと汗ばんでしまっている。

 

 固くなった肩を解しながら思わず天を仰ぐ。

 

 

 ――どうしてこうなった!?

 

 いや、マジで!あの薬を投与してから今に至るまでの経緯がさっぱりわからん!

 

 ユカリと同衾するわ、戻れば百花繚乱が大荒れしているわ、レンゲは負傷するわで何がなんやら……。

 

 紛争を調停する側が紛争を起こしてどうするよ!

 

 それに問題はお姉ちゃんのキレ方だ。

 

 経験上、ああまでキレるときは決まって私にナニカがあった時…、つまり私は知らぬ間にエッな目に遭ったということになる。

 

 

 

 ……ゑ、なにそれ知らん…、怖……。

 

 そう考えると今更ながらにやけに右耳が湿っている気がするし、下半身もなんかぬるぬるして………。

 

 で、調停室にはキキョウが失神していて、レンゲが必死に逃げると言うよりは止めようとしている様子。

 

 

 ――キキョウ………あっ、ふ〜ん…。

 

 

 あの湿度キャットがやりやがったのか。なるほど全て理解した。

 

 

 …あれ?ということは私がでっち上げた処女喪失設定は図らずとも、外見上は達成されたってコト?

 

 感謝すべきなのか、相手がまさかのキキョウだということに落ち込むべきか。

 出来ればお姉ちゃんか、心を許せる異性のパートナーが望ましかったけどなぁ…。

 

 

 とは言え、致してしまったのなら責任は取らなければなるまい。

 キキョウと正式にお付き合いする事になるとは微塵も思っていなかったけど、ここで投げ出すのは前世男の信念に反する。

 

 ――明日からどんな顔して会えばいいのかなぁ……。

 

 これはキキョウに限らず、大嫌いムーブという2番目に強い手札をきってしまったお姉ちゃんに対しても同様だ。

 

 思えばあの時のお姉ちゃんの様子は、例のラッキースケベ事件のそれとは格が違った気がする。

 

 いやまぁ、察するに目の前で私とキキョウの情事を目撃したのだろうから当然だとも言える。

 

 ただ…、明確に言葉では言い表せないけど、私の知る御稜ナグサではなかったような――

 

 

 

「……ん?」

 

 ふと、視界の端で何かが動いたように感じて思考を中断する。

 そちらを見やると、やや長い廊下の突き当たり――この診療所の保管庫の扉から漏れる光、そこに人影が踊っているのが見えた。

 

 ここについたときは時間が時間ということもあって大部分が消灯されていて、それは保管庫も例外ではなかった。

 レンゲの搬入に安堵していたからなのか、いつの間にか人が保管庫に入っていたらしい。

 

 

 ――保管庫といえば……黒服はちゃんと病人用の服を戻してくれたのかな?

 

 考えてみればどうして百花繚乱の制服を来て帰ってきているのかと疑われてもおかしくはなかった。

 それとなく在庫を確認するくらいはしておいたほうが憂いも無くなるかもしれない。

 

 どうせ今日はもう家に帰るだけなのだし、最後にちょっと寄り道するくらいはいいよね?

 

 それにこれからの展開について考える時間も欲しいしね…。これ以上の想定外は起こらないでしょ。

 

 

 そんな軽い気持ちで廊下を進み、保管庫の扉を押し開ける。

 

 中で作業をしているであろう生徒に断りを入れて、大小様々な入れ物が押し並ぶ故に若干埃っぽい空間に足を踏み入れた私の視界に映ったのは――

 

 

「――ちょっ……!何してるのッ!」

 

 

 私を甲斐甲斐しく介抱してくれたあの子が、ライナーの如く口に銃を突っ込んでいるという光景だった。

 

 

 ――なんだよ!もおぉぉ!またかよぉぉぉッ!

 

 

 

 

✵✵✵✵✵ ✵✵✵✵✵

 

 

 

「――え……クユリちゃん…?」

 

 同じ二年生なのに、やや小柄なことから庇護欲をかき立てられる体躯。

 

 冷え切ってしまった体も心も溶かしていくような温かさ。

 

 所々くすんではいてもふわりと舞う姉譲りの儚げな銀髪。

 

 耳朶を震わせる愛しいこの声。

 

 …私が守ると誓い、結果私が危険にさらしてしまった罪の象徴。

 

 間違えるはずもなかった。

 

 

 どうしてここに?なんて疑問が口を突いて出そうになる。まずすべきなのは謝罪のはずなのに。

 

 

「どうして、なんて今は聞かない。お願いだから、そんな馬鹿な真似はやめてよっ……!」

 

 同僚からもかけられたような言葉。

 

 どうしてか、何者の言葉も受け付けなかっただろう私の心にすっと染み渡り、抵抗する気力が微塵も起きない。

 

 やがて、呆然自失の私の頭に華奢な腕が伸び、柔らかな胸に引き寄せられる。

 

 優しく、梳くような手つきで頭を滑る小さな手のひら。

 

 度重なる自傷により崩壊しかかっていた心が慰撫されていくようで、熱いものが雫となって流れ出す。

 

 小雨から大雨へ、やがて滝のようにとめどなく流れるそれを、私には止めることなどできるはずもなく。

 

 その全てを受け止めてくれる身体に、懺悔の嗚咽をひたすらに吸い込ませていった。

 

 

 

 

 

 

「……落ち着いた?」

 

「…うん、ありがとうクユリちゃん」

 

 胸の内の負の感情を吐ききった頃、私は体重を預けたままの姿勢で頷く。

 

 衝動的な感情の嵐が過ぎ去ったことで、いくらかクリアな思考を取り戻すことができた私はもう何度目ともしれない謝罪を伝えた。

 

「…ごめんねクユリちゃん。私が……私のせいで…」

 

 しかしそれは顎に手を添えられ、強引に目を合わせられたことで遮られてしまう。

 

 

「もう何度も言ってるけど、あなたのせいじゃない。あれは私が、私の意思でやったことなの。そもそも私のためを思ってのことだったんでしょ?感謝こそすれ、責めるなんてお門違いにもほどがあると思わない?」

 

「で、でも…!私が連れ出さなければ……クユリちゃんは…」

 

 

 なおも食い下がってしまう私。

 きっと私はクユリちゃんに罰してもらいたいだけなのかもしれない。それで贖罪をした気になろうとしている身勝手な自分に反吐が出る。

 

 すると埒が明かないと判断したのか、クユリちゃんは一つため息をつき、やや視線を鋭くして問いかけてきた。

 

 

「……わかった。今からちょっと酷なことを言うけど、いい?」

 

「…勿論だよ。どんな罵詈雑言だって……」

 

 どうしようもない、醜い私の自罰意識が頭をもたげる。

 

 しかし、紡がれた言葉は予想だにしないものだった。

 

 

「あなたは、私に死んでほしいの?」

 

「―――えっ?」

 

 いったい今の話の流れでどこからそんなことが言えるのだろうか。

 私がクユリちゃんに死んで欲しいなんて…そんなの――

 

「知ってるかもしれないけど…、私が百鬼夜行から出た先でね、この呪いを止める手掛かりが見つかったんだ。でも、もしあなたが私を外に連れ出す許可をくれなければ、今頃私は死んでたかもしれないんだよ」

 

「――――――う……そ…」

 

「残念だけど本当だよ。思っていたよりも進行がはやくて、あのまま座して待っていたら手遅れだったと思う。色々代償を払うことにはなったけど、それでも、私は今こうして生きてる。……もう、私の言いたいこと、わかるよね?」

 

 

 ――そんな、もうやめてほしい。これ以上私を許さないで。私に罰を与えて。でないと、本当に抑えられなくなってしまう。

 

 

「あなたの判断が私の延命につながった。あなたは私の命の恩人なんだよ…!だから……ありがとう…!」

 

 

「――ッ!クユリ……ちゃん……!」

 

 再び抱擁を交わし合う。

 胸の内に渦巻くこの感情は到底言葉にできやしない。

 私の顔と同じ、ぐちゃぐちゃで溢れるそばから混ざり合って、ただただみっともなく泣くことしかできない。

 

 さっきで枯れてしまったと思うほど流した涙は、無限のダムが決壊したように果てしなく流れる。

 

 あれほど執着していた自罰意識は跡形もなく消え去り、その穴を埋めるように新たな感情が芽生え始める。

 

 

 ――好き。大好き。

 

 ――私が、今度こそは私が守ってあげなきゃ。

 

 ――私が一生側にいてあげて、クユリちゃんの半身になって支えるの。

 

 ――必要なら監禁してでも、降りかかる脅威から守ってあげなきゃ。

 

 ――クユリちゃんが悪いんだからね、こんな私を赦しちゃうから…。

 

 ――こんな気持ちにさせた責任、取ってよね。

 

 

 五感に伝わるクユリちゃんの全てが、罰ではなく甘美な快感となって全身を駆け巡るようになるまで、お互いの熱を交換し続けた。

 

 

 

        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「…そういえば、クユリちゃんはどうして保管庫に?」

 

「え?いや……その、病人用の服の在庫が減ってたりしないかな〜って……」

 

「服?……ん〜…、何も問題ないよ。どうして?」

 

「いやいやいや…!何にもないよ!ホントに!」

 

「…?変なクユリちゃん…。そうだ…私からも聞きたいことがあるんだけど、その…やっぱりハジメテは……」

 

「あぁ…うん。仕方ないよ。ほら、それで命が助かったのなら儲けものでしょ?だから気にしないでね」

 

「…わかった。でも何か身体に異変が起こったらすぐに伝えてね。その…万が一のこともあるから…」

 

「うん!ありがとう」

 

「…ソウナラナイヨウニワタシデウワガキスル?イヤ、ソノマエニゲシュニンノ“ソレ”ヲキリトラナクチャ…フフフッ」

 

「…?何か言った?」

 

「…ううん!何でもないよ!」

 

 




次回、全方位脳破壊!黒猫参謀とデートするの巻! の予定です…。
 もうそろそろ失踪が近づいてきましたよ…。

 
 それはそれとして、4周年フェスPVはご覧になりましたか!?ナグサが2回も、2回も!スチルをもらっているんですよ!これは未実装枠で唯一の特徴なのです!シュロガキの姿もいることだし、ナグサの実装は近いと願いたい…!

 現地でナグサ監修の焼き鳥食べたかったなぁ…(血涙)

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