心の折れた魔法少女と、幼馴染の俺が誰もいない街で二人きり   作:イーナ

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私の大好きで大好きな大好きの幼馴染

 私、深空ユマには幼馴染がいます。

 高牧ミキトくん。

 どこにでもいる普通の……うん、普通の男の子。

 私の目には最高にかっこよく、クールで、知的で、落ち着いていて、かっこいい、そんな男の子に見えるけど。

 一般的には、平凡で地味な男の子、だと思います。

 

 彼と私は幼馴染で、部屋が隣同士だったの。

 親も仲が良くって、私の両親が忙しい時はよくミキトくんの部屋に遊びに行ってたんだ。

 そんなだから、私は生まれた時からミキトくんの横にいて、どこに行くのにもミキトくんと一緒だった。

 私はミキトくんに甘えっぱなしで、でもミキトくんはそんな私を受け入れてくれていて。

 あの頃は幸せだったな。

 パパとママも少し私のしつけに厳しいところはあったけれど、常識的な範疇で。

 少なくとも、私を愛してくれてることは解っていたし。

 何より、ミキトくんに甘えていられれば、私は他のことなんてほとんど気にならなかったんだから。

 

 でも、私が大きくなるにつれて、少しずつそれが壊れていった。

 パパとママは仕事が忙しくなって、それを埋めるかのように私に立派な娘であることを求めた。

 それはどこか愛情とは違うもので。

 娘が立派に育たないと、”困る”からそうしたんだと思う。

 世間体ってやつだね。

 

 まぁ、私にも問題はあったと思うよ?

 保育園に上がっても、私はミキトくんとずっと一緒だった。

 遊ぶ時も、お昼寝する時も、帰る時だって。

 周りの、ミキトくん以外の同い年の子が怖かったのもある。

 でも、ミキトくんがいてくれるから私は何もいらなかったから。

 ちょっと、端から見ていても甘えすぎ、だったとは思う。

 

 小学生に上がった頃から、両親は私に色んな習い事をさせて。

 ミキトくんと一緒じゃない習い事なんて、私は嫌だった。

 でも、嫌って言えばすごい声で怒られるし、私自身ちょっとだけミキトくんに甘えすぎだってことは気にしていた。

 小学生にもなれば、男の子と女の子が二人でいれば周りはからかってくるものだから。

 ミキトくんは気にしていなかったし、私も気にせず甘えちゃってたけど。

 あんまり一緒にいすぎるのはよくないって、解っちゃったもん。

 だからパパとママのことは嫌いになっていったけど。

 習い事を頑張ろうってつもりはあった。

 利害の一致ってやつだね。

 

 でも、限界ってものは何事にも存在していて。

 ある時、私はその限界を迎えてしまう。

 久しぶりに、パパとママとそれからミキトくんとその家族。

 全員で出かけた、夏祭りのことだったかな?

 普段は、パパもママもミキトくんとその家族に私のことを任せっきりなんだけど。

 その時だけはたまたま時間が空いていて。

 私はそこで迷子になったんだ。

 

 流石に自分から迷子になったわけじゃないけど。

 気がついたら周りには誰もいなくて。

 泣きそうになりながら人混みを歩いて。

 一人ぼっちだったんだ、その時の私は。

 人混みの中にいるはずなのに、私しか周りに人はいない。

 まるで、人と私の間に壁があるみたいで。

 違う時間が流れてるみたいだと思った。

 

 そして、そんな私を見つけてくれたのが――ミキトくんだったんだ。

 嬉しかった、すっごくすっごく嬉しかった。

 この壁のある世界に一人だけ、ミキトくんだけが入り込んできてくれて。

 私の手を取ってくれた。

 

 幸せな時間、もう私はミキトくんだけがいればいい。

 周りの喧騒なんて関係ない。

 どうだっっていい、ミキトくんだけが私を見つけてくれるから。

 そう感じてしまうくらいの、幸せが溢れてしまう瞬間。

 でも、それは終わりを告げる。

 

『迷子のお知らせをします。深空ユマちゃん――――』

 

 私の名前が、放送で呼ばれた。

 そうすればまた、嫌いなパパとママのところに戻らなきゃいけない。

 この幸せな時間を終わらせなきゃ行けない。

 幸福が、不幸にまるっとひっくり返る。

 私は、きっと。

 とても、つらそうな顔をしていたんだと思う。

 

 それを見たミキトくんの顔が、今でも忘れられない。

 困ったような、仕方ないなぁというような笑顔。

 それでいて、それを一切苦に思っていないような顔。

 

 そんな顔で、ミキトくんは言ったんだ。

 

 

『俺達は、今の放送が聞こえなかった場所にいた。ってことにしない?』

 

 

 こうして、私とミキトくんは少しの間だけ。

 外の世界から隔絶された。

 二人きりの世界で、時間を過ごし。

 パパとママは怒りを通り越して心配が勝り、戻った時には私を叱ったりはしなかった。

 多分、私がわざと戻らなかったことも解ってるんだと思う。

 だからこそ、少しだけ歩み寄ってくれた。

 ミキトくんのご両親が、その分しっかり叱ってくれたというのもあるだろうけれど。

 

 とにかく、私のパパとママが歩み寄ってくれたことで、私も少しだけ歩み寄ろうと思った。

 習い事にも積極的に参加して、周囲の人とも交流するようになった。

 だって、その方が都合がいいから。

 パパとママのことは、嫌いじゃないけど好きでもない。

 でも、一緒にいれば娘として育ててくれるし、私が立派に育てば二人も安心してくれる。

 周りの人だってそう、私が普通に接すれば、向こうも普通に接してくれる。

 

 世間体と、利害の一致ってやつだね。

 

 もちろん、私の一番はミキトくんだけど。

 少しだけ、あの夏祭りのお陰で私は前に進める気がしたんだ。

 

 

 そして私は、魔法少女になった。

 

 

 きゅーてんちょっか、どとーのてんかい。

 いやぁ自分でもびっくりだけど。

 世間を騒がせる悪魔獣に、唯一対抗できる存在になるなんて。

 それも魔法少女だよ?

 自分で言うのもどうかと思うけど、魔法少女って。

 

 でも、しょうがない。

 なってしまったのだから。

 マスコットとかはいなかった。

 気付いたら十字架のステッキを手にしていて、気付いたら変身していた。

 変身のしかたも戦い方も、自分が魔法少女だということも。

 すべて変身した時点でなんとなく理解できていて。

 私は、悪魔獣を倒していた。

 

 正直、実感もわかなかったけれど。

 でもなってしまったものは仕方ない。

 だから私が最初にしたことは――

 

 ミキトくんに、私が魔法少女だと明かすことだった。

 

 他の人はありえない。

 パパとかママとか、絶対ない。

 ミキトくんだけ、ミキトくんしかありえない。

 だってミキトくんなら、解ってくれるから。

 私を受け入れてくれるから。

 私を助けてくれるから。

 そして――

 

『すごいじゃないか、()()()()、魔法少女』

 

 

 ()()()()()()()()()()()から。

 

 ――ねぇ、ミキトくん。

 私はミキトくんが思うほど、いい子じゃないよ?

 

 それから、私はミキトくんが言ってくれた通り。

 頑張って、頑張って、頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って――――

 

 ずっと、頑張った。

 

 悪魔獣がいつやってくるかわからないから、朝から夜まで1日中。

 学校のことだってある。

 私は世間体を守りたい。

 そもそも私が魔法少女であるということをバレるわけにはいかないから。

 できるだけ、普段の生活は守らなきゃいけないんだ。

 いくら魔法少女に正体がバレないようにする能力があったとしても。

 どこからバレるか、わからないんだから。

 

 でも、そのせいで私はボロボロ、ずっと眠くてずっと辛くて。

 ミキトくんにだって迷惑をかけた。

 私がボロボロになっちゃった言い訳は、ずっとミキトくんが考えてくれてたし。

 周りの心配も、ミキトくんが背負ってくれていた。

 ミキトくんには甘えっぱなしだけど、でもしょうがないよね?

 世界を守るためだもん。

 私しか戦えないんだもん。

 ミキトくんが頑張れって言ってくれたからだもん。

 

 ――私は、ミキトくんが思うほどいい子じゃないんだ。

 

 だって、ミキトくんは私が守れなかった人の事を気にしていた。

 世間は魔法少女に優しいけれど、同時に厳しくもある。

 感謝しながらも、恨んでいる。

 その事をわかってはいたけど。

 

 

 私は、全然気にしてなんかいなかったんだから。

 

 

 正直、どうでもよかった。

 だって彼らはミキトくんじゃない。

 ミキトくんじゃない人たちが悲しんでるのが、どうして辛いのかわからない。

 救われてる人は救われてるんだから、世界は守れているんだからそれでもいいよね?

 少なくとも、魔法少女ブームなんてものが到来して。

 ゲームとか創作とか、色んな物が魔法少女一色になるくらい、世間は日常を守れてるんだから。

 それで十分なはずだよね。

 

 ああでも、彼らのおかげで助かったこともある。

 私のモチベーションって意味で。

 だって私、戦闘中はずっとミキトくんを助けてるつもりで世界を守ってたから。

 瓦礫に押しつぶされそうなミキトくんを助けて。

 悪魔獣の攻撃からミキトくんをかばって。

 周りの人達を、ミキトくんだと思いながら戦うと頑張れる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、私なりの処世術だ。

 私の世界には、ミキトくんがいればそれでいい。

 だったら、私が接するすべての人をミキトくんと思えば、私はその人と普通にお話ができるんだ。

 まぁ、ミキトくん本人じゃないから、甘えたりはしないけど。

 それに、ミキトくんじゃない人に言い寄られるとか本当に無理だから、その時はすぐにやめるけど。

 

 とはいえ、そのせいで少しつらいこともあった。

 ()()()()()()()()ミキトくんだと思っちゃうから。

 その度に、私はこころが引き裂かれそうなくらい辛かった。

 辛くて、辛くて、辛くて――泣き叫んでしまいそうだった。

 

 でもそれを我慢して戦って、戦って、戦って。

 最後の悪魔獣――魔王獣も倒して。

 

 

 気がつけば、こうなっていた。

 

 

 何でだろう、どうしてこうなっちゃったんだろう。

 あんなに頑張ったのに、もうちょっとで日常に戻れると思ったのに。

 またミキトくんにいっぱい甘えられると思ったのに。

 

 こんなふうになっちゃって。

 でも、隣にはミキトくんがいてくれた。

 そう思ったら。

 

 私、頑張れなくなっちゃった。

 

 不思議だよね。

 確かにミキトくんが死んじゃったみたいでとても辛かったけど。

 でもそれは、ミキトくんが生きていれば頑張れたし。

 大丈夫って思えたのに。

 

 どうして私は、こんなにも辛いんだろう。

 どうして私は、こんなにも頑張れないんだろう。

 どうして、私は――心が折れちゃったんだろう。

 

 大好きで、大好きな、大好きの幼馴染が隣にいるのに。

 

 どうして、なんだろうね?




ユマ視点回です。
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