御前会議で決まった内容をマキから聞いたゆかりは病床で頭を抱えた。とはいえ、一度命令されればやらなければならない。
それが軍人というものの宿命である。
ただ、ヘラクレス側に漏洩したことはさすがにまずいのでさっさと発射しないと何されるか分かったものではないので、どうにかしないといけない。
他の幹部達は知らないが、前世の知識があるゆかりは分かっていた。SEEDの面々がいることを‥‥
「あの面子は核兵器アレルギーがすごいですからね‥‥。それにいくら大義名分があるとはいえ、エナストリアとかから干渉があるかもしれません‥‥。五大湖周辺の軍工業地帯や、アラスカ‥‥いや、アメリカ西海岸もとい神聖ブリタニア帝国本土西海岸の軍港や軍要塞・大基地なんかがいいですかね?」
とゆかりは頭を捻っていた。
御前会議会議から数日後‥‥
日本民族解放戦線の極秘基地『要塞イントレランス』にてICBMの調整が行われていた。
「‥‥ほんとにいいんですかねぇ」(;´・ω・)
「言うな。なんでも大和解放軍の幹部が怒髪冠を衝く勢いで激怒しているせいで御前会議を押し切られたんだと」(-_-;)
日本民族解放戦線の将兵たちは気が進まなかった。
なんせあの結月ゆかりが可能な限り使用しないように厳命していた劇物級の兵器だ。そりゃ気が引ける。
実はこの世界では核兵器が実際に使われたのはフレイヤが初。
すなわち、この世界では攻める方も攻められる方も原爆被爆の恐ろしさを認識している者は異世界出身の一部の者か、異世界の核兵器系の書物を読んだ者、そしてゆかりとゆかり経由で知った者ぐらいである。
その為、現場の兵士は上が極力発射するなと言われていた兵器を報復で使っていいのかと不安であったのだ。
とはいえ、日本民族解放戦線の将兵として報復したいという思いはある。
その為、全面的に反対というわけではなかったので作業を継続していたのだ。
要塞イントレランス 指令室兼発射指揮室
『第一ミサイルから第五ミサイルへの燃料注入完了しました!』
「分かった!今すぐに退避しろ!!‥‥で、本当に私が発射してもいいのかよ霊夢?」
そう聞くのは霧雨魔理沙だ。
「ええ。日本民族解放戦線の幹部一同から『流石にちょっと…』って返答が来てね?腰が引けているみたいなのよ‥‥」
「かー!こんな肝心な時に腰が抜けたのかよ!!」
「なんでも結月元帥が、断固使用を認めなかった関係から使用したらまずいって思っているみたいなのよね‥‥」
※実際、核の威力を知っている我々からすれば当然であるが‥‥
「まったく‥‥。兵器ってのは使うためにあるんだぜ?兵器は使わなきゃ」
SEEDの某盟主みたいなセリフを言うが、実際その通りでもある。
それを聞くのは目線をそらす日本民族解放戦線の幹部一同であるが、ゆかりとしても流石に撃つのは気が引けたのだ。
敵兵のみが対象ならともかく、一般人が巻き込まれる可能性があるので転生者のゆかりも二の足を踏んだわけだ。
(とはいえ製造を命じたのは私ですからねぇ…やはり責任は私が取った方が…)
ゆかりは内心そんなことも考えていたが、別のことを忘れていた。
「あら?ちょっと結月元帥!キーが必要って警告が出てるんだけど!?」
(あ!?)
そう。いくら武器の引き金が軽い日本民族解放戦線でも流石にICBMの使用は厳格に管理していた関係で発射にはゆかりとマキ、あかりの三人がもっている発射キーが必要だったのだ。
「はぁ‥‥覚悟を決めますか。マキさん、あかりちゃん。キーを用意してください」
「‥‥りょーかい」「わ、分かりました!」
そう言って彼女たち三人は他の幹部達を部屋の外に出して発射点検中の司令室員以外は誰もいなくなった。
そうして彼女たちはキーをそれぞれの鍵穴に入れた。
「‥‥これはまさにパンドラの箱を開ける所業ですね」
「大丈夫だよゆかりん。私たちも地獄の底までお供するから」
「そうですよ!これは全員の責任でもあります!」
「はぁ‥‥。八百万の神々よ…、私たちを許したまえ‥‥。八百万の神々よ、我らを救うとともに日本に勝利を‥‥!!」
「「「発射!!!」」」
ガッチャン!!
ビィーーーーー!!!!
バッゴォォォォオオオオン!!!!!
こうしてイントレランスより、ICBM『回天』五発が発射された。
弾頭は一発が核弾頭であり、他は気化爆弾と通常弾が二発ずつであった。
※核弾頭を一発のみかつ単弾頭型にしたのは、ゆかりなりの温情でもあったが‥‥
発射された弾頭はプログラム通りに衛星軌道上で分離。
アロウズ艦隊から攻撃を受けるか否かが争点であったが、この時、アロウズ艦隊はさすがにシュナイゼルにフレイヤについて聞いたほうがいいと大気圏内に戻っていたのでまったく迎撃を受けなかった。
軌道上から一気に突入してきた弾道弾は核弾頭以外は多弾頭化されていたこともあって、各地のブリタニア帝国軍軍事施設や大規模基地、に着弾。
突然、基地や工場が業火に包まれたことにブリタニア人達はパニックになった。
しかし、もっとパニックに陥ったところがあった。
フレイヤ製造・研究拠点であるロスアラモスのフレイヤ研究所*1に核弾頭が直撃したのだ。
着弾したその瞬間、核弾頭内で核分裂が勢いよく進み、一瞬で核爆発が発生。
爆風と熱波が即座に発生し、放射線が放たれるが、予想外の事態が発生した。
研究所内で精錬し、兵器化が完了していたフレイヤ十数発がその熱波と爆風・爆圧によって誘爆したのだ。
これによってロスアラモスのフレイヤ研究所は渓谷ごと吹っ飛んでしまった。
この大戦果に三大レジスタンス連合は湧き上がった。
直ちに戦果を世界に公表するとともに、ブリタニアが講和や和平に同意しない限り、再発射も辞さないと明言したのだ。
とはいえ、再発射はさすがに日本民族解放戦線はもとより大和解放軍も恫喝目的で発射する気は無かったが、三大レジスタンス連合内の強硬派はブリタニア全土への核弾頭発射を主張し、要塞イントレランスを占拠。
その為、強硬派と激論が繰り広げられるとともに、鎮圧作戦が立案されたのは言うまでもない。
しかし、これをヘラクレスやエナストリアが見過ごすわけがなかった。
次回 イントレランス襲撃