不敗の魔術師と夜天の主   作:サーフ

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第一部で書きたいことは荒方書き上げましたので
第二部はオマケのようなものだと思ってください。


2章
魔術師と任務


  時空管理局にはやてが所属してから大きな戦争なども起きず平穏な時間が約10年ほど過ぎた。

 

 その頃にもなるとはやては成長し、中学校卒業を期にヤンを含めたヴォルケンリッター共々鳴海市を離れミッドチルダに引っ越していた。その後、時空管理局の中でも頭角を現しその才能をもって19歳という若さで二等空佐と言う地位にまで上り詰めた。

 そんなある日、はやての昇進を祝い、友人であるなのはとフェイトと共にミッドチルダにあるファミリーレストランでささやかな祝賀会を開いていた。

 

「はやてちゃん、おめでとう」

 

「おめでとう」

 

「アハハ、ありがとなぁ二人共」

 

 運ばれてきたジュースを片手に三人は乾杯した。

 

「はやてちゃん、昇進とはすごいね」

 

「いやいや、たまたま運よく試験に受かっただけだよ」

 

「だとしてもすごいよ。この調子なら自分の部隊を持てたりするんじゃないの?」

 

「うーん、自分の部隊かぁ。正直荷が重いなぁ」

 

「え? そうなの」

 

「てっきり自分の部隊が欲しいから頑張っているのかと思った」

 

 なのはとフェイトの二人は同時に頷いた。

 

「まぁ、私としては家族を養えればそれでええと思っとるんよ」

 

「確かに、はやてちゃんって任務にはそこまで全力を出さないよね」

 

「いや……全力を出さないわけやないんよ。ただなんと言うたら良いか……給料分の仕事はやるっていう感じかや?」

 

「えー」

 

「もう少しやる気出しても良いんじゃない?」

 

「まぁそうなんやけどね。おじさんが言うには、仕事なんて金を稼ぐための手段に過ぎない。それに理念や思想を持ち込んだらそれはもう労働ではなくなってしまうって言うてな」

 

「あーヤンさんなら言いそう」

 

「まぁ、おじさんも昔軍に所属していて規律の厳しい組織は嫌だって言うててなぁ」

 

「そうなんだね」

 

「でも任務なんだからちゃんとやらなきゃ」

 

「任務かぁ。私にとっては任務や仕事は下水処理場の様なもんやね」

 

「ん?」

 

「どう言う事?」

 

「無ければ困るが自分からは近付きたくはないなぁ」

 

「うまいこと言うね」

 

「まぁ、おじさんの受け売りやがね」

 

「そう言えばヤンさんって軍にいたって言うけど階級はどれくらいだったんだろう?」

 

「うーん、おじさんに聞いてもはぐらかされるんよなぁ。私としては目標がわからんのはちょっとって思うんやけどね」

 

「目標?」

 

「そう言えば管理局にはいったばっかりの時に目標があるって言ってたよね?」

 

「そうなんよ。私は時空管理局に入ったのには2つ目標があるんよ」

 

「ねぇ、教えてよ」

 

「うん、聞きたい」

 

「せやなぁ。恥ずかしいからおじさんには秘密よ」

 

 はやてはジュースで唇を少し濡らしてから口を開いた。

 

「まず1つ目はおじさんの故郷の時空を見つけることなんよ」

 

「そうなの」

 

「うん、だから次元航行部隊に配属してもらったし、今度お古やけどアースラを譲り受けたし、ヴォルケンリッターの皆で試験航行する許可もおりたんよ」

 

「それは頑張ったね」

 

「まぁ、これで目標に一歩近付いたわ。あとはパトロール中に運良く見つけられれば……何やけど、そう上手くはなぁ」

 

「でも大きな一歩だよ」

 

「はやてなら出来るよ」

 

「そう言ってもらえれば頑張れるわぁ」

 

 はやては小さく笑った。

 

「それで……もう一つの目標って?」

 

「ちょっと恥ずかしいんやけど……おじさんの階級を超えたいんよ」

 

「え?」

 

「ヤンさんを超える?」

 

「うん。おじさんに聞いても教えてくれへんけど、たまにおじさんが着ていた軍服を定期的に洗濯するとき、襟の階級章を何度か見たけどそれがヒントなんよ」

 

「え? どんな感じの?」

 

「うーんとな、一本線の上に五角形の刻印が一つあるんよ」

 

 はやてはテーブルに置かれている紙ナプキンに階級章の絵を描く。

 

「こんな感じ」

 

「うーん、この五角形は星みたいなのって考えればいいかな?」

 

「そうなると三尉か三佐かな?」

 

「軍だから少尉か少佐かな?」

 

「だとしたらはやてちゃんもう超えてるんじゃない?」

 

「えーそっかなぁ?」

 

 はやては少し照れくさそうに微笑んだ。

 

「それなら今日おじさんに会うからちょっと自慢したろかな」

 

「良いんじゃない」

 

「そしたらおじさんから敬礼されるかもなぁ。そしたら得意気に返礼したろ」

 

 はやては微笑み、それにつられなのはとフェイトも笑みをこぼす。

 

 そこから数時間ほど三人は他愛もない雑談を楽しんだ。

 

「はぁ~もうこんな時間やね」

 

 はやては腕時計を確認する。

 

「そろそろ帰る?」

 

「せやね……今日は家で皆が祝賀会を開くって言うてたからな。そろそろ帰るで」

 

「わかったよ。私達はもう少し話をしたら帰るよ」

 

「うん、わかったで〜またなぁ」

 

 はやてはテーブルに現金を置いた後、席を後にした。

 

「はやてちゃんって、ヤンさんのことかなり好きだよねぇ」

 

「まぁ、父親みたいなものなんじゃないかな?」

 

「となるとファザコン?」

 

「かもね。敬愛はしてるんじゃない?」

 

 なのはとフェイトの二人は小さく笑い合った。

 

「そう言えばフェイトちゃん知ってる?」

 

「なにが?」

 

 フェイトはジュースを飲みながらなのはを見据える。

 

「このミッドチルダでね最近麻薬みたいなものが流行ってるんだよ」

 

「麻薬?」

 

「上の方でね問題になっているんだよ。なんでも依存性が強い新しい化学合成で作られた麻薬だとか」

 

「そんなものが、いったい出どころは?」

 

「それがわからないから上も困ってるみたいなの」

 

 なのははため息を吐きつつ首を左右に振った。

 

 

  同日の夜。

 はやてが自宅に帰るとエプロン姿のリインフォースとシグナムが出迎えた。

 

「おかえりなさいませ」

 

「おーただいまぁー」

 

 はやてが入室すると、そこにはテーブルに豪華な料理が用意されておりパーティーの準備が進められていた。

 

「おー豪華やなぁ」

 

「腕によりをかけました」

 

 リインフォースは自慢気に頷く。

 

「おや、はやてかい。帰ってきたんだね」

 

 ヤンは10年ほど時が過ぎ若干老けているが外見は30代後半に見られるくらいだろう。

 

 そんなヤンがリビングに置かれているソファに座りながら本を片手にはやてを見据える。

 

「今帰ったで〜おじさん。また本読んでるん?」

 

「あぁ無限書庫に興味深い歴史の本があったものでね、これは別の時空の芸術品の本だよ」

 

「へえーおじさん芸術に興味あるん?」

 

「まぁあるにはあるね。私の父親は交易を行っていてね。そこで多くの芸術品を目にしたものさ」

 

「それは初耳やね」

 

「そうだったかい?」

 

「うん。それで美術品に興味があると?」

 

「まぁね。と言っても私の父が残してくれた遺産の殆どが美術品だったのだがそのうちの1点以外すべて贋作だったのさ」

 

「うわ……」

 

「それで学費やら何やらが払えなくて私は仕方なく、士官学校に入るしかなく、最終的に軍に入らされた訳さ」

 

「そりゃ……災難やったね。でも1つは本物やったんやろ?」

 

「まぁね。それも結局は壊されてしまったがね」

 

 ヤンは小さく首を横に振った。

 

「主」

 

 そんな時、背後からシグナムが声を掛ける。

 

「準備はもう少しかかりますから、良ければ自室でお休みになられては?」

 

「いやええよ。私も手伝うで」

 

「いえ、主賓の手を煩わせる訳には……ヤン! 貴様は少し手伝ったらどうだ?」

 

「何度も言うが、私がこうして君達の手伝いをしないのは余計な仕事を増やさないという手伝いをしているのさ。それよりはやて、手が空いているなら紅茶を一杯頂きたいね。ブランデーをたっぷりで」

 

「全く……お前というやつは……」

 

「はーい、今淹れるで」

 

「主……あまりヤンを甘やかすのは……」

 

「私もそう思います。ヤンは少し働くべきです」

 

 シグナムに同意したリインフォースが食事の準備を進めつつ頷いた。

 

「ええんよ。それにおじさんに紅茶を淹れてあげるのは私の気分転換にもなるしなぁ」

 

 はやてはそう言うとキッチンへ向かい紅茶の準備を進めた。

 

 数分後、紅茶を淹れたはやてがティーカップをヤンの前に置いた。

 

「はい、おまたせ」

 

「どうも」

 

 ヤンは紅茶を受け取ると一口口に含む。

 

「うん。相変わらず良い腕をしているよ」

 

「えへへ、ありがとう」

 

 はやてはにこやかに笑うとヤンの対面に座った。

 

「ふう……そう言えばはやて」

 

「なんやぁ?」

 

「お前さんは今回昇進したようだが、階級はどうなったんだい」

 

「今回の昇進で二等空佐になったんよ。軍隊で言うと中佐かなあ」

 

「19歳で中佐か……かなりのスピード出世じゃないか」

 

「すごいやろ」

 

「私が19歳の時はまだ士官学校を卒業していなかったよ」

 

「えへへ」

 

 はやては自慢気に笑い、ヤンは小声で呟いた。

 

「この昇進速度……まるでカイザーラインハルト並だな」

 

「ん? なんか言ったん?」

 

「いいや、なんでもないさ」

 

 ヤンはそう言うと紅茶を飲み干す。

 

「さて、もう一杯おかわりをいただけるかな? 中佐殿」

 

「はーい」

 

 はやては今一度キッチンへ向かうと紅茶を淹れ直した。

 

「はい、おまたせしました」

 

「こりゃどうも。中佐殿」

 

 ヤンは敬礼し紅茶を受け取ると、はやては笑いながら返礼をした。

 

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