不敗の魔術師と夜天の主   作:サーフ

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ご都合主義は大目に見てください。


魔術師と天才

  新帝国暦2年10月7日

 後の世にウルヴァシー事件と呼ばれる皇帝ラインハルト襲撃事件が発生した。

 襲撃を受けたラインハルトは多数の犠牲を受けながら総旗艦ブリュンヒルトでウルヴァシーを脱出した。

 

「ふう」

 

 乗艦しているクルーの一人がため息を吐いたその時。

 

「前方に未確認のワープアウト反応を確認!」

 

 観測手の発言に艦内に緊張が走る。

 

「新手か!」

 

「わかりません!」

 

 艦内が騒然とする中、ブリュンヒルトの目前に1隻の見たこともない艦船が姿を表した。

 

 

 

 

 一方その頃、時空を跳躍したアースラは宇宙空間に出現した。

 

「跳躍終了。全体に異常ありません」

 

 オペレーターを努めているリインフォースの報告を聞いて、はやては安堵のため息を吐いた。

 

「座標も異常なし。目標次元に到着です」

 

「ふう。なんとか一安心やな。周辺の状況は?」

 

「周辺に異常なし……いえ、こちらのレーダーギリギリのラインに1隻の艦船の存在を確認しました」

 

「うーんえらい遠くやな……とりあえず、補足される前に逃げ」

 

 はやてが指示を出そうとした瞬間、アースラの真横を青白い光が駆け抜ける。

 

「うお!」

 

「なんや!」

 

「先程の艦からの砲撃のようです! 威力は未知数!」

 

「こちらのレーダーギリギリの距離やろ! なんでこちらは補足されてるんや! 射程おかしいやろ!」

 

「敵艦、高速でこちらに接近してきてます! 速度が早すぎます」

 

 モニターに映し出された赤い光点は高速でアースラに接近してきている。

 

「相手の姿は映し出せるかい?」

 

 ヤンが指示を出すと、リインフォースがコンソールを操作し、モニターに1隻の艦船が映し出される。

 その艦船は純白の塗装をされている。

 

「真っ白な艦やな……綺麗やな…ってそんな場合やない! 逃げなきゃ!」

 

「あれは……総旗艦ブリュンヒルト! 何故随伴艦も従わせず単艦で……」

 

 ヤンが驚愕し、指示を出す。

 

「何としてもあの艦と交信するんだ!」

 

 突然のヤンの指示に驚いたようだが、リインフォースは直ぐに行動を開始した。

 

「おじさん。あの艦を知っているの?」

 

「あぁ……私の予想が確かならあの艦に乗っているのは……」

 

 ヤンがモニターを睨みつけていると、黒い画面が映し出される。

 

「通信が繋がりました! 映像は駄目ですが、音声ならいけます!」

 

「よし」

 

 ヤンが無線機のマイクを手に取った瞬間、艦内に声が響く。

 

『再三の問いかけに応答せぬとはどう言うことか、これは最後通告である、応答無き場合は撃墜する』

 

 ヤンは急いで返答を行う。

 

『無線の状況が悪く応答できませんでした。こちらの攻撃の意思はない。攻撃をやめていただきたい』

 

 ヤンが返答をしてから数秒後、応答が入る。

 

『状況は理解した。貴艦の所属と艦名を答えよ』

 

 ヤンははやてに目線を送る。

 

「おじさん……どうする?」

 

「素直に答えても不審を買うだけだけだろうね」

 

「でもどうしよう……逃げるにも……」

 

「いや、逃げるのは無理だろうね。向こうのほうが速いし射程も長い」

 

「万事休すやな……なんで跳躍そうそう発見されるんや! 運がないやろ!」

 

 はやては頭を抱える。

 

「いや、まだ運はこちらに味方しているよ。少なくともあの艦に乗る資格がある人物なら話は通じるはずさ」

 

「え? どういう?」

 

『どうした! 応答せよ! 応答無き場合は撃墜する』

 

「あ──! もうどうしよう!」

 

 慌てているはやてを尻目にヤンは大きく息を吸い込んだ。

 

『私は、自由惑星同盟……いえ、イゼルローン軍所属ヤン・ウェンリーです。貴艦は帝国軍総旗艦ブリュンヒルトとお見受けします。皇帝陛下にお取次ぎ願う』

 

『……』

 

「おじさん……どうなるん」

 

「相手の出方次第だね」

 

 数分の沈黙の後、ブリュンヒルトからの応答が入った。

 

 

『これよりカイザーラインハルトのお言葉を伝える。貴艦は所属を明かさず、あまつさえ故人であるヤン・ウェンリーの名を騙る暴挙は許容出来ない。改めて身分を明かし給え、さもなくば撃墜する』

 

「信じてくれへんやん……おじさん……どうしよう」

 

 ヤンは再びマイクを手に取った。

 

『疑う気持ちは分かりますが、私がヤン・ウェンリーである事は真実です。もし可能であるならばカイザーラインハルトとのお目通りを願いたい』

 

 ヤンの返答の数十秒、通信手が語気を強めて応答する。

 

『貴殿は懲りずに死者の名を騙るというのか、もし仮に貴殿がヤン・ウェンリー本人であると言うならばアスターテ会戦のおりカイザーがヤン・ウェンリーに送った電文とその返答を答えよ。違えた場合は問答無用で撃墜する』

 

「お、おじさん、覚えとる?」

 

 不安そうなはやてを尻目にヤンは口を開いた。

 

『残念ながらその質問に対して回答はできかねます』

 

「なんてことや……」

 

 はやては頭を抱え項垂れる。

 

「私の人生もこれまでか……短い人生やったな……」

 

『何故ならカイザーから頂いた、再戦の日まで壮健なれと言うお言葉に私は返信を致しませんでした。その折はとんだ失礼を』

 

「え?」

 

 ヤンガ返答してから、十数秒ほど沈黙が流れる。

 

『フハハハ!』

 

 無線から笑い声が響く。

 

『そうか! 卿は生きていたというのか! ヤン・ウェンリー!』

 

『えぇ。紆余曲折ありましたがなんとか生きていますよ。カイザー』

 

 無線からラインハルトの歓喜の声が響く。

 

『ふむ、卿には聞きたいことが多い。委細は会って話そうではないか。連絡艦を送る』

 

『お手数をおかけします』

 

 ヤンが応答すると無線が切れる。

 

「ふぅ~」

 

 ヤンは大きなため息を吐き椅子に座り込んだ。

 

「おじさん……なんとかなったん?」

 

「なんとかなるかどうかはこれからさ……はやて気合を入れるんだよ」

 

「え?」

 

「これから話をする相手は、この宇宙で一番の美男子であり一番偉い人物だからね」

 

「え、ええ〜!」

 

 はやては驚愕の声を響かせた。

 

 

 

 数分後、ブリュンヒルトがアースラに接近する。

 

 接近してようやくブリュンヒルトの装甲の所々に戦闘直後のような焦げ跡が見て取れる。

 

「はえ~大きな艦やな……倍くらいはあるんちゃう?」

 

「恐らくはね。そろそろ連絡艦が来る筈さ」

 

 同盟軍の軍服に着替えたヤンが呟く。

 

「なんか、おじさんが軍服姿は会った時以来見てないはずやのに……なんかすごくしっくりくるなぁ」

 

「私も久しぶりに袖を通したがそう思うよ」

 

 ヤンは改めてベレー帽を被った。

 

 その後、連絡艦が到着し、全員が移乗した。

 

 連絡艦がブリュンヒルトに帰還し、全員が乗艦する。

 

「こちらです」

 

 帝国兵に案内されヤン達はブリュンヒルトの内部を移動して行く。

 

「な、なぁおじさん」

 

「どうしたんだい?」

 

「これ、ホンマに艦の中なんよね? すごい豪華な内装なんやけど……」

 

「まぁ、仮にも帝国軍の総旗艦だからね」

 

「帝国……つまりこれから皇帝陛下に会う訳だよね」

 

「そうだよ。身なりは整えないとね」

 

「そんな皇帝が名前を聞いただけで会う気になるって……おじさんは何者なん?」

 

 はやてが疑問を投げかけたと同時に、応接室に到着した。

 

「カイザーが中でお待ちです」

 

「了解」

 

 帝国兵はヤンに対し敬礼し、ヤンは返礼で答え、それを見ていたはやて達も返礼を行う。

 

「ヤン・ウェンリーを名乗る人物をお連れしました」

 

 帝国兵が声を張り上げて大扉を開けると、応接室の中央に金髪の青年が座っていた。ラインハルト・フォン・ローエングラムその人である。

 

「ん? 卿は本当にヤン・ウェンリーか? 余が知っている人物よりずいぶんと老けているが……面影はあるな」

 

 ヤンは敬礼し、ワンテンポ置いてからはやて達も敬礼した。

 

「こうして会うのはお久しいぶりですね。失礼ですが今は宇宙暦何年の何月でしょうか?」

 

「異なことを聞くな。今日は宇宙暦800年の10月7日だ。卿が地球教の襲撃を受けてから約4カ月が経過しただけだがその年の取りようは一体どういう事か?」

 

「そうでしたか……信じがたい話に思われますが、私は別の時空に飛ばされそこで10年程生活してきました」

 

 ヤンの言葉を聞いて護衛の兵士達が一瞬ざわつく。

 

「荒唐無稽な話だが……卿が偽物とも思えぬ……かと言って嘘を付いているとも思えぬ。それが真実なのだろうな。しかし10年過ごしたと言うがこちらでは4ヶ月しか過ぎてはおらぬぞ」

 

「信じていただけたようで何よりです。どうやら時空が違えば時間の流れも違うようでして…詳しいことは分かりませんが」

 

 ヤンは一礼する。

 

「真実は小説より奇なりと言うからな。しかし魔術師とも言われた卿のことだ、何かのペテンかとも疑ったぞ」

 

 ラインハルトは小さく笑い、ヤンも苦笑いを浮かべる。

 

「残念ながら、私は魔法使いではありませんが、彼女達は本物の魔法使いでございますよ」

 

 ヤンはそう言いながらはやてに目線を送る。

 

「ほぉ……」

 

 ラインハルトは頬杖を付きながら興味深そうにはやてを見据える。

 

「ちょ、おじさん……」

 

「フロイライン。お名前は?」

 

「や、八神はやてです……時空管理局の二等空佐です」

 

「時空管理局? 聞いたことが無いな……階級を持っているということはこちらも礼を持って女史と呼ぼう」

 

「ありがとうございます陛下」

 

「して、八神女史よ。時空管理局とはどの様な組織か?」

 

「はい。時空管理局とは名の通り様々な時空を移動し、未発達な時空には支援などを行っています」

 

「その実支援とは名ばかりの支配ですがね」

 

「ちょ! 余計なこと言わないでおじさん!」

 

「良い。どの様な組織も少なからず腐敗はあるものだ」

 

 狼狽えるはやてとは対象的に、ヤンとラインハルトは微笑んでいる。

 

「一応支配ではなく、管理という名目なのは否定しませんが……」

 

「して、八神女史は魔法使いだという話だがそれは本当か?」

 

「はい、私達時空管理局には魔法使いが多く所属していますので」

 

「それは興味深い。魔法というものを少し見せてはくれないか」

 

「えっあっはい」

 

 はやてが手を前に出すと光り始める。

 その光が宙に浮くと周囲を飛び交いやがて消滅した。

 

「えっと……これでよろしいでしょうか?」

 

「ふむ……もっと棘々(おどろおどろ)しいものを思っていたのがな」

 

「そういったものは呪の類ですね。一応私がこの部屋の中で出来るのはコレくらいですね」

 

「部屋の外ならばもっとすごい魔法が出来るのか?」

 

「私は大規模な広範囲魔法が主なので」

 

「そうか。いずれ見せていただきたいものだな」

 

「はい。機会があれば」

 

 はやては一礼した。

 

「さて、ヤン・ウェンリーよ」

 

「はい」

 

「卿の現状は粗方把握した。それでは卿が死亡……いや失踪してからの出来事を話そう」

 

「ありがとうございます」

 

「イゼルローン軍の公式発表では、卿は失踪ではなく死亡したと発表された。こちらもミュラーを弔問に向かわせた。確かに死体を確認したという報告はなかったがな……」

 

「自分の弔問の礼を言うのも不思議な気分ですが。その節はありがとうございます」

 

「良い。元を辿れば、卿に迎えの艦隊でも寄越していればこんなことにはならなかったのだからな」

 

「それでは敵襲と勘違いしてしまうかもしれませんね」

 

 ヤンとラインハルトは小さく笑う。

 

「しかし問題がある。8月にイゼルローンで共和政府が樹立したのだ。フレデリカ・グリーンヒル・ヤンが政治的指導としてな」

 

「そうだったのですか……」

 

 ヤンはどこか複雑そうな表情を浮かべる。

 

「複雑な心境という顔だな」

 

「そう……ですね。私亡き後に妻にその様な重荷を背負わせてしまったことが心苦しくて」

 

「それは仕方なかろう。しかし問題が一つある」

 

「はい」

 

 ヤンとラインハルトは同時に頷いた。

 

「問題?」

 

 はやてが小さく呟いた。

 

「共和政府が樹立してしまった以上。卿が蘇ってしまえば民主政治復活の象徴とされて再び戦火が広がらんとも限らん」

 

「理解しています」

 

「そうか。では卿には死んだままで居てもらいたいのだが良いな」

 

「くっ」

 

 ラインハルトの言葉を聞いてはやてが戦闘態勢を取り、それに習うようにヴォルケンリッターも身構える。

 

「待つんだ」

 

 そんな面々をヤンが手をかざし静止する。

 

「で、でもおじさん」

 

「カイザーは何も私再び死んでくれと言っている訳ではない。死んだままで居てくれと言っているのだ」

 

「それって?」

 

「つまりは、私が生きていたことを公にしないでくれということさ。そうですよね」

 

「その通りだ」

 

「でも……おじさんはそれでいいの? 自分が死んだままなんて」

 

「死ぬ前の私……10年前の私なら生を公言して居たかもしれないが、今ではお前さん達との生活してきて思うことがある。やはりどんな事があっても、戦乱のない平和な世の中というのは掛け替えのない物だと。その為ならば私は死んだままでも構わないとね」

 

「おじさんがそう言うなら……」

 

 ラインハルトは鋭い眼光ではやてを見据える。

 

「卿は良い部下を持っているな」

 

「ありがとうございます。部下ではなく向こうの時空での私の保護者ですが」

 

「ほぉそうか」

 

 ラインハルトは再びヤンと向き合う。

 

「私が蘇らない代わりと言ってはなんですが……イゼルローン共和政府との和平を考えていただけると助かります」

 

「元々卿とは講和をするの予定だったからな。それが形を変えたようなものだと思う事にしよう」

 

「ありがとうございます」

 

 ヤンは一礼し、それに習い全員が礼をする。

 

「陛下」

 

「どうした?」

 

「この後はどうなさるおつもりですか?」

 

「というと」

 

「失礼ですが、総旗艦であるブリュンヒルトが随伴艦も従わせずに単艦で居るのは変だと思いましてね。甲板に黒い戦闘の跡のようなものも確認しました。何か事件があったのではないでしょうか?」

 

「卿は鋭い観察眼を持っているようだな」

 

「恐縮です」

 

「実は先刻ウルヴァシーの迎賓館で襲撃を受けてな」

 

「そうですか」

 

「不審な賊が軍部に紛れ込んでいるのやもしれん。ここで手をこまねいていてはウルヴァシーから発艦した追手に追撃されるやもしれぬが、どうしたものかとな」

 

「陛下。もしかするとその賊は地球教の可能性もあります」

 

「ほぉ……してその理由は?」

 

「私達がこの時空にやってきたのは、彼女達の時空でサイオキシン麻薬が流通した事が発覚し、首謀者を問い詰めたところこの時空の座標と地球教との取引があることを突き止めました」

 

「すると、ウルヴァシーの軍関係者には地球教の信者が紛れ込んでいたの可能性があると」

 

「恐らくは」

 

「ふむ……そうか」

 

 ラインハルトは顎に手を置き少し考える。

 

「陛下。これからどちらに向かわれるおつもりですか?」

 

「フェザーン回廊に向かいつつ救援を待つ予定ではあるが……敵が先回りしている可能性もある。しかし後方からは敵の追手がいずれ来るであろう」

 

「はい。ですからどうでしょう……イゼルローンに向かわれては?」

 

「イゼルローンだと?」

 

「はい。イゼルローンを抜けて帰還されるのが敵の意表を突きつつ一番安全なルートかと思います」

 

「しかし、イゼルローン共和政府が素直に通すとも思えんが」

 

「その時は、私が交渉します。陛下が私を信じていただけるのでしたらの話ですがね」

 

「以前の卿ならばいざ知らず。年老いた卿を理解できる者がいるのか?」

 

「妻ならば……理解してくれると思います」

 

「実のところ卿は家族と再会したいだけではないのか?」

 

「実を言うとその理由もあります」

 

「だが、イゼルローンを抜けるルートが今の選択肢では一番安全であることは確かだ」

 

 ラインハルトは少し考え、決断する。

 

「よし、これより本艦はイゼルローン回廊を抜ける。それで異論はないな」

 

 ラインハルトは指示を出し、控えていた帝国兵が走り出した。

 

「ありがとうございます陛下」

 

「良い。いずれ卿との決着を決着を着けたいと思ってはいるがな」

 

「出来れば戦いではなく3次元チェスなどでお願いしたいものですね」

 

 ヤンの回答を聞いてラインハルトは笑みを浮かべて応接室を去ろうと歩き始めた、その時。

 

「くっ」

 

 ラインハルトは頭を押さえふらつき倒れそうになる。

 

「危ない!」

 

 はやては倒れそうなラインハルトに駆け寄った。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、助かったぞ八神女史」

 

 ラインハルトは立ち直るとはやてに向き合った。

 

「あの、今回のように目眩などは頻繁にありますか?」

 

「ここ最近は多いかもしれぬ。仕事が多忙だからだろう」

 

「発熱などは有りませんか?」

 

「確かに発熱もあるが……何か心当たりでもあるのか?」

 

「ちょっと失礼します」

 

 はやてがラインハルトに手をかざすと光が溢れる。

 

「不思議と暖かい光だな……」

 

「やっぱり……」

 

 はやてが小さく呟く。

 

「何か問題があったのか?」

 

「はい。陛下は一種の魔力過剰な状態になっています」

 

「魔力過剰?」

 

「はい。陛下にはリンカーコア……魔力の供給源となる器官は有りませんが魔力に良く似た力……言うならば覇気とでも言いましょうか……その覇気が体から溢れている状態です」

 

「覇気が……」

 

「はい。身体の許容量を超えた覇気が陛下の身体に悪影響を与えているのが原因かと」

 

「そうだったのか」

 

「はい。先程応急処置としてですが溢れている魔力を少し調整しました。これで少しの間は異常が出ることは無いと思います」

 

「そうか。それは助かる」

 

「ですが、今回のはあくまでも応急処置です。定期的に覇気を調節しなければならないかと思います」

 

「そうか……定期的にか。よしでは今後とも頼むぞ」

 

「え?」

 

 ラインハルトはそう言うと踵を返し退出していった。

 

「お手柄じゃないかはやて」

 

「おじさん?」

 

 はやては不思議そうな表情でヤンに振り返った。

 

「カイザーが退出なされました。貴官等には客室を用意してあります。貴官等が搭乗していた艦は牽引していこう」

 

「了解です、さぁ行こうか」

 

「え?」

 

 残されたヤン達も、帝国兵に連れられゲストルームへと案内された。

 

「はやて、改めて言うがお手柄だったぞ」

 

「うーん、何のことか良くわからんのやけど……」

 

「カイザーの体調不良を治しただろ。あれでカイザーに一目を置かれたな。これで管理局としての交渉がうまく勧められるだろうね」

 

「そ、そうなんかな?」

 

「カイザーの体調不良を治す代わりにって感じでね。魔法でしか治せないんなら大きな切り札さ。さて、私は自分の部屋に行くとするよ。君達もゆっくり休むといい」

 

 ヤンはそう言うと、用意された客室に入って行った。

 

「主……」

 

 残されたはやてにシグナムが心配そうに声をかけた。

 

「あ──! 何や良うわからん!」

 

 突如としてはやては頭を抱えた。

 

「なんで時空を跳躍した直後で皇帝陛下に会うんや! 運なさすぎやろ! それになんで皇帝陛下はおじさんの名前を聞いただけで謁見の許可が下りたん! それにおじさんは皇帝陛下とあんなに平然と話せるん! というかおじさんは何者なんやっー!」

 

 はやては一息に愚痴を吐ききった。

 

「ハァハァ!」

 

 はやては肩で息をしながら頭を抱える。

 

「あ、主」

 

「はやてちゃん落ち着いて」

 

「これが落ち着いてられるかぁ! さっきまで皇帝の前で取り乱さなかった自分を褒めたいくらいや……」

 

「た、確かに」

 

「今日一日で色々なことがありすぎましたから……」

 

「とにかく今日はもう寝よう……次はイゼルローンやったか? そこへ向かうんよな」

 

「はい。確かイゼルローンにはヤンの家族がいるものかと」

 

 リインフォースが思い起こすように報告する。

 

「そう言えば……イゼルローン共和政府の代表がおじさんの奥さんなんやろ……おじさんって……もしかしたらかなりの地位の人やったんか……」

 

「皇帝の話しぶりからするとその可能性はありますね……」

 

「おじさんっていう呼び方改めたほうがええんかな……もうわからん。混乱しとるわ。もう頭が働かん……寝る」

 

 はやてはそう言いながら用意された客室に消えていった。

 

 

 

 




ラインハルトがはやてを呼ぶ際
フロイラインにするか迷いましたが階級があるため女史でも良いんじゃないかと思いました。
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