不敗の魔術師と夜天の主   作:サーフ

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このタイトルがやりたい為だけに魔術師の枕言葉を使っていました。


魔術師の帰還

  アッテンボローが率いる哨戒艦隊に連れられアースラを牽引したブリュンヒルトはイゼルローン回廊を進んでいった。

 

「そろそろ、イゼルローン要塞が見えてくる頃だろう」

 

 ゲストルームに備え付け等えているモニターを見ながらヤンが呟く。

 

「ほーん。どれがその要塞なん?」

 

 はやてはモニターに映し出されている大小さまざまな小惑星を見ながらイゼルローン要塞を探す。

 

「あれだね。正面にあるじゃないか」

 

 ヤンは立ち上がるとモニターに表示されているイゼルローン要塞を指差した。

 

「ん? え? あれが要塞? あれは惑星やないん!?」

 

 はやてはモニターに映し出された光景に唖然とする。

 それもそのはずだ。

 宇宙の要塞と聞いても想像していたのは小惑星に建設された小型の物だろうと思っていたが、その実、人工惑星であり、はやては驚愕のあまり息を飲んだ。

 

「言ってなかったかい? イゼルローン要塞は人工天体でね。直径約60kmの小さな天体だけどね。一応500万人程が住んでいるんじゃないかな?」

 

「それはもうは要塞や無いやろ! もう国と言うか星なんよ!」

 

 はやてが声を荒らげてヤンにツッコミを入れる。

 

「しかし……懐かしいな……私はまたこうしてイゼルローンに帰って来れたのか……」

 

「あーもう! 規模がおかしいやろぉ!」

 

 感慨深い表情のヤンとは対象的にはやては頭を抱えていた。

 

 イゼルローンに最接近した時、ゲストルームに帝国兵が迎えに来た。

 

「連絡艦の準備ができました」

 

「おっ、来たようだよ。それじゃあ行こうか」

 

 ヤンは椅子から立ち上がり背中を伸ばす。

 

「行くってどこへ?」

 

「このまま帝国艦じゃイゼルローンには入れないからね。連絡艦でイゼルローンに入港するのさ」

 

「そうなんや、アースラはどうするん?」

 

「ブリュンヒルトと一緒に小惑星群に隠しておくさ」

 

「そうなんやね……これからおじさんの家族に会うんやね」

 

「陛下にも家族に私が生きていることを伝える許可は貰っているからね。お前さん達の事も紹介するよ」

 

「うん」

 

 ヤン達は帝国兵に連れられ連絡艦に搭乗する。

 

「遅かったではないか」

 

「へ、陛下」

 

 連絡艦にはラインハルトと複数人の護衛と思われる帝国兵が既に乗り込んでいた。

 

「陛下もイゼルローンへ向かわれるのですか?」

 

「あぁ。本国に余が無事であることを知らせたいからな。オーベルシュタインあたりと連絡を取りたい。イゼルローンにある通信施設を使わせてもらうが構わないな」

 

「ええ、構いません」

 

「よし、それでは行くか」

 

 ヤン達は少し気まずそうになりながら、アッテンボローの艦に続いてイゼルローンに入港した。

 

 

 入港した後、感の窓から外を見たはやては驚愕した。

 

「はえ~すっごい広さやな……軍港って言うん? すごい規模やなぁ……」

 

「一応要塞だからね」

 

 ヤンは軽く答えるが、イゼルローンだけで艦の修理から補給まで全て賄える規模の軍港にはやては魅入っていた。

 

「この規模…時空管理局の比やないで…」

 

 はやて達は物珍しいものを見るように窓の外を見ている。

 

 しばらくすると連絡艦の扉が開く。

 

「お待たせしましました。リムジンとはいきませんが車を用意しましたよ」

 

 アッテンボローが敬礼しながら報告する。

 

「ご苦労さん。それでは陛下行きましょうか」

 

「うむ。そうだな」

 

 ヤン達はラインハルトを引き連れ、人気のない艦内を歩いていく。

 

「搭乗員達には箝口令を言い渡してありますし一部の人員以外は先輩が生きていることもカイザーがお忍びで来ていることも知りません」

 

「それはご苦労」

 

 ヤン達は用意された数台の車に分かれて乗り込んだ。

 

「取り敢えずこれから司令部の方に向かいますね。そこにユリアン達も居ますから」

 

「そうか……」

 

 アッテンボローはそう言うと車を発進させた。

 

 

 車が進んで行く最中、はやては車窓からの風景に目を奪われていた。

 

「コレが要塞? もう街やん」

 

「はは、軍人以外にもその家族達が住んだりしているからね。自ずとそうなっていくのさ」

 

「さっきも言うたが…この科学力は……管理局の比やないで……」

 

「まあ、そうだろうね」

 

 ヤンは小さくため息を吐いた。

 

 そんなヤンを尻目にはやては以前として車窓を眺めていた。

 

 暫く進むと、イゼルローンの中央司令部の裏口に到着した。

 

「さて、ご到着ですよ。降りてください」

 

「運転ご苦労」

 

 下車したヤン達は人気のない裏口から建物に入って行く。

 

「陛下、裏口からで失礼します」

 

「かまわん。余が正面から入れば混乱は避けられないからな」

 

 ラインハルトは小さく笑う。

 

 人気のない裏口から入った面々は、応接室に通された。

 

「さて、それじゃあちょっと上の人間を呼んできますから待っていてください」

 

 アッテンボローはそう言うと外へ出ていった。

 

 残されたヤンは少し不安げに室内を歩き回る。

 

「おじさん、大丈夫?」

 

「あ、あぁ……少し不安だが……」

 

「やっぱり家族に会うのは久しぶりだから緊張しとるん?」

 

「それもあるが……妻が私を見てどう思うか……年を取ってしまったし……」

 

「全く……幾度となく余に煮え湯を飲ませたあのヤン・ウェンリーともあろう者がその程度で狼狽えるとは」

 

 部屋の隅で椅子に深く腰掛けたラインハルトは吐き捨てるように呟く。

 

「しかし……」

 

「狼狽えるな。余は年を取った卿を見ても何も思わなかったぞ。それが奥方ともあれば喜びも大きかろう」

 

「陛下……」

 

 ヤンが大きくし呼吸をしていると扉が開かれる。

 

「え……」

 

 開かれた扉の向こうにはしたり顔のアッテンボローに連れられ、フレデリカとユリアン、そしてシェーンコップが立っていた。

 

「や、やぁ……その、えっと……あれだ。私が分かるかい……フレデ」

 

「ああ! あなた!」

 

 フレデリカは駆け出すとヤンに抱きついた。

 

「フレデリカ……」

 

「あなた! あなた!」

 

 ヤンの胸で泣き腫らすフレデリカを優しく抱きしめる。

 

「フレデリカ……せっかくの美人が台無しだ。お願いだ泣き止んでくれ」

 

「きっと私は夢を見ているんですわ……きっとコレは夢……疲れ果てて眠ってしまって見ている夢なのね……でも夢でも良い……貴方に会えるなら……どうか醒めないで……」

 

「夢なもんか。コレは現実だし。私はこうして生きているよ」

 

「生き返ってきたのね……自然の法則に反したって1度だけなら許してあげる。そうなったら今度は私が死ぬまでは死なせてあげないから」

 

「そいつは難しい注文だな。私は居なくなったときより10年も年を取ってしまった。こんなおじさんになってしまってすまないね」

 

「いいの、良いんです……たとえ貴方がどんなに年を取ろうとも、どんなにおじさんになろうとも生きて再び会いに来てくれたなら」

 

「寂しい思いをさせてすまなかったね」

 

「いいんです。私は貴方を喪った4ヶ月間は生きた心地がしない未亡人でした……せめて貴方の妻で居られる時間は未亡人でいる時間より長く居たいの」

 

 フレデリカは再びヤンを抱きしめた。

 

「提督……なのですね! 本当に生きて……生きていたんですね!」

 

 ユリアンは声を上げヤンにかけよる。

 

「あぁ……ユリアンか……とても久しぶりな気分だ」

 

 フレデリカが離れるとヤンはユリアンの手を取り握手をする。

 

「本当にすいません提督……僕は……僕は提督をお守りできませんでした……それがずっと心残りで……」

 

「良いんだよ。お前さんはそんな事を気にする必要はないんだ」

 

「でも、生きていていただいて本当に嬉しいです! 驚きましたよ! 最初見た時提督の面影がある男性が居たので少し警戒しましたが、お二人の話を聞いて提督だと確信できました」

 

「おかしなことを……アッテンボローから私が生きていると聞かされていなかったのか?」

 

「いえ、特別ゲストで会わせたい人がいるから来てくれとだけ言われて……」

 

「それはどういうことだ……」

 

 ヤンはアッテンボローを睨む。

 

「いやあぁ……サプライズのほうが良いかなぁって思いまして」

 

「全くお前は……」

 

「それに考えてみてくださいよ。ポプランあたり相手なら笑えない冗談だって一蹴されますが、ユリアン相手に先輩が生きているなんて言ったら冗談じゃ済まされないでしょ。きっと夕飯のミンチボールにされますよ」

 

「まぁ……確かにそれもそうか」

 

 ヤンは小さくため息を吐いた。

 

「うぉっほん」

 

 後ろに控えていたシェーンコップがわざとらしい咳払いをする。

 

「やあ、シェーンコップ。久しぶりだな」

 

「ええ。流石はペテン師であり魔術師ミラクルヤン提督ですな。生きていらっしゃったとは。一体どんな魔法を?」

 

 シェーンコップは敬礼し、ヤンも返礼する。

 

「シェーンコップ……聞きたいのだが、レダⅡの生存者は私以外は……」

 

「スール以外は全員……」

 

「そうか……」

 

 ヤンは暗い表情を浮かべる。

 

「皆提督を守って死んでいったんだ。そして今提督はこうして生きている。それを誇ってやってください」

 

「あぁ……そうだな」

 

 ヤンは大きく頷いた。

 

「それにしても、提督殿も隅に置けませんな〜」

 

「え?」

 

「コレほどの美女達を侍らせての凱旋とは、小官よりもよっぽどの不良中年ですなぁ!」

 

 シェーンコップははやて達の方を見据える。

 

「しかし、これほどの美人とは、どうですかな? この後食事でも」

 

 シェーンコップははやてを見据える。

 

「え、えっとぉ」

 

「シェーンコップ……はやてはまだ20を迎えていないんだぞ」

 

「将来を見据えてですよ。後数年もすればきっと飛び切りの美人になるでしょうな」

 

「はやてを余りからかうんじゃない。それに彼女のボディーガードは手厳しいぞ」

 

 ヤンがそう言うとはやての後ろに待機していたシグナムがシェーンコップを睨みつける。

 

「主に手を出すのはやめていただこうか」

 

「おっと、美人に睨まれるとは」

 

「お前がシェーンコップ。ローゼンリッターの隊長か。ヤンから話は聞いている、腕が立つとな。今度手合わせ願おうか」

 

「美女からのお誘いとあれば断る道理は有りませんが、どうせなら手合わせより食事のお誘いのほうが嬉しいですな」

 

「貴官が私に勝てば付き合ってやらんでもない」

 

「それは、手を抜くわけには行きませんな」

 

 シェーンコップとシグナムは睨み合いながら笑う。

 

「二人ともその辺にしておくんだ……さて、改めて紹介しよう。彼女達は私の保護者のようなものさ」

 

 ヤンがはやてを見据える。

 

「えっと……私は時空管理局の八神はやて二等空佐です。軍で言うと中佐ですかね。後ろにいるのは私の部下というか、家族のようなものです……ええっと……おじさんコレ……どういう状況? それに」

 

 はやてとヴォルケンリッターの面々は状況が飲み込めず狼狽える。

 

「話すと長くなるがね。まぁ簡単に言うと私は襲撃された時に足を撃たれてね。出血多量で死の淵を彷徨っていた。そんな時偶然にも時空を超えてしまったようで彼女達に呼び出されたんだ」

 

「時空を……何とも不思議な話ですな」

 

 シェーンコップが顎に手を置き数回頷く。

 

「私も今でも半信半疑に思うことがあるよ。そしてその時に魔法で命を救ってもらってね。更に10年ほどお世話にもなっているのさ」

 

「魔法とはまた奇想天外な事を」

 

「私もそう思うが、事実なのだよ」

 

「あら、そうだったんですね」

 

 フレデリカはそう言うとはやてに一礼する。

 

「助けた上に面倒まで見ていただいて。どうもありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いか……」

 

 突然のことにはやては少し動揺する。

 

「いいえ、お礼だなんて……寧ろ私達のほうがおじさん……いえ、旦那さんにはお世話になっており……」

 

「きっとあの人の生活を支えてくれていのでしょうね」

 

「ま、まあ……それはありますが……」

 

 はやてはヤンに目線を送る。

 

「ね、ねえおじさんちょっと聞きたいんやけど」

 

「君! さっきから聞いていれば提督に対しておじさんおじさんって! 馴れ馴れし過ぎて失礼ではないか!」

 

 はやての言葉に被せるようにユリアンが声を荒らげる。

 

「よさないかユリアン」

 

「しかし……」

 

「はやては良いんだよこれで」

 

「あの……おじさんの階級って……今まで聞いてもはぐらかされとったけど……それに提督ってどういう……」

 

 はやてが恐る恐る聞くとユリアンが分かりやすくため息を吐く。

 

「はぁ~……君はそんな事も知らないのか。ヤン提督はイゼルローン要塞司令官であり、イゼルローン要塞駐留艦隊司令官を兼任されている元帥だぞ」

 

「え? 司令官……元帥……そんなん聞いとらんよ!」

 

「言わなかったからね。それに時空管理局に私が元帥だと知られたらどんな風に利用されるか……そもそも信じてはもらえないだろうがね」

 

 自慢げなユリアンとは対照的にはやては唖然とした表情でヤンを見据える。

 対するヤンは気まずそうに頭を掻く。

 

「こ、これはそっその! 今までの非礼を失礼しました!」

 

 鼓動は早鐘を打ち、冷や汗をかきながらはやては敬礼し、後ろに控えていたヴォルケンリッターも敬礼する。

 

「よしてくれ。お前さん達に畏まられると調子が狂ってしまう」

 

「え? ですが……しかし……」

 

「良いんだよ。だから今まで通りおじさんで構わないさ」

 

 はやては敬礼を解く。

 

「お、おじさんがそう言うなら……でも私達には元帥だって教えても良かったんやないの!?」

 

「言った所で私が元帥だと信じるかい?」

 

「まぁ……それはその……正直見た目から少尉、良くて少佐クラスかなって……」

 

 はやては苦笑いし頭を掻いた。

 その時、後ろに控えていたラインハルトが立ち上がる。

 

「全く……コレほどまでに余が相手されないということもなかなか無いぞ」

 

 全員の視線がラインハルトに集まる。

 

「へ、陛下……」

 

「感動の再会だと思い口を出さずに居たが……コレほどまでに居ないものとして扱われるとは思わなかったぞ」

 

 ラインハルトは不機嫌そうに呟く。

 

「いや、陛下……その、申し訳ないです」

 

 ヤンは頭を掻いて謝罪した。

 

「まぁ良い。それでは余の無事を帝国に伝えるべく通信施設を使わせてもらうぞ」

 

「あっはい」

 

「それと帰還の際は卿等も帝国側出口まで同乗せよ」

 

「わかっておりますよ陛下」

 

 ヤンは敬礼し、それに習い全員が敬礼する中ラインハルトは帝国兵を引き連れて部屋を後にした。

 

「ふぅーやっぱりカイザーに相対すると緊張するね」

 

 ヤンは少し肩を回し、背筋を伸ばす。

 

「それより、何故カイザーは提督達に同乗を求めたんでしょう?」

 

 ユリアンが疑問を呟く。

 

「背後から撃たれない為だね……要はカイザーがイゼルローンを抜けるまでの人質さ」

 

「なるほど……確かにそうですね」

 

 ヤンは近くの椅子に腰掛ける。

 

「ふぅ~少し疲れた……紅茶を貰いたいね」

 

「うん。今用意するでおじさん」

「はい。すぐ用意します提督」

 

 ユリアンとはやてが同時に答える。

 

「「……」」

 

 二人は無言で睨み合う。

 

「おじさんの紅茶は私が用意しますから結構ですよ。えーっと〜」

 

 はやてが目が笑っていない笑顔でユリアンを睨む。

 

「ユリアン・ミンツ中尉ですよ。八神中佐のお手を煩わせる事もないですよ」

 

 対するユリアンも笑ってない笑顔で答える。

 

「ミンツ中尉殿、おじさんに紅茶を淹れるのは私の仕事ですから〜それに階級は私のほうが上ですから、私の指示に従っていただきたいものですね」

 

「いえいえ、階級が上であるからこそ、この様な雑用はお任せ下さい。それにその階級はあくまでもそちらの時空でこちらでは計り知れないかと」

 

 一触即発の二人は笑顔で睨み合う。

 

「やめないか二人共」

 

「しかし……」

「でも……」

 

 ユリアンとはやては同時に声を上げる。

 

「はやて。すまないが今回はユリアンの紅茶をいただくよ。なんせ10年ぶりでね」

 

「ハイッ今用意します!」

 

 ユリアンは敬礼する。

 

「ふぅ~後でキャゼルヌ先輩にも無事を報告しなくてはな」

 

「でしたら今夜、お家にお邪魔しては? 僕が紅茶を用意するついでに約束を取り付けますよ」 

 

「そいつは良い……先輩とも久しぶりに話をしたいと思っていたんだ」

 

「それでは行ってまいります!」

 

 ユリアンは一礼し、部屋をあとにした。




次回からはタイトルに魔術師の枕言葉は付けないようにしようかと思います。
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