不敗の魔術師と夜天の主   作:サーフ

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八神はやての考察

  ゲストルームに通されたはやてとヴォルケンリッターはソファに腰掛けて一息入れた。

 

「ブリュンヒルトのゲストルームは装飾が豪華だったが、こっちは機能的って感じだな」

 

 室内を見回しヴィータが呟く。

 

 そんなヴィータの呟きを余所にはやては大きく溜息を吐いた。

 

「どうしたのはやてちゃん? どこか体調悪いかしら?」

 

 シャマルが心配そうにはやての顔を覗き込む。

 

「なぁ……皆……あのおじさんが元帥やったって……信じられる?」

 

「あー……」

 

 はやての発言に全員顔を歪める。

 

「分かる訳ないやろ! 元帥なんて! まぁ……確かに頭切れる方やと思っとったよ! それにあのカイザーが名前を知っている上に名乗っただけで普通に会って話せるクラスって言うのもこっちに来てから分かったことやん!」

 

「ま、まぁ元帥という風体では無かったですから……」

 

 リインフォースが優しげな口調ではやてを宥める。

 

「はぁああ〜……これからおじさんとはどう接していけば良いんやろか……」

 

「今までどうりでよろしいのでは?」

 

「そうかやぁ……なんか急に元帥言われてもなぁ……元帥なんて時空管理局でも雲の上の存在やし名前も聞いたくらいで姿見た記憶無いわ……」

 

 はやては落ち着かないようにゲストルームを練り歩く。

 

「まさかそんな雲の上の様な人物とあのヤンが同じ階級とは……それは心強かった訳だ」

 

 シグナムが以前の戦いを思い出し何度も頷く。

 

「それに考えれば考える程……元帥ってなんやねん……イゼルローン要塞とその駐留艦隊の司令官って……もう一惑星の王様やん」

 

 語彙力が低下したはやてが半笑いで呟いた。

 

「しっかし、おじさんが家族と再会できてほんと良かった」

 

「はやてちゃん……そうは言っているけど……何処か浮かない表情をしてるわよ」

 

 何処か暗い表情のはやてをシャマルが気に掛ける。

 

「アハハ……駄目やなぁ私は……家族と再会したおじさんを見て……何処か遠くへ行ってしまうんやないかって不安になっちゃったんよ」

 

「はやてちゃん……」

 

 全員が心配そうにはやてを見据える。

 

「分かっとるよ……おじさんにとっては10年振りの家族との再会やから……」

 

「きっとヤンさんは家族に再会したって私達との関係は変わらないはずよ」

 

「まぁ……ヤン自身は今までどうりで構わないって言ってますから今までどうりで良いのでは?」

 

 リインフォースの言葉にはやては頷いた。

 

「うん……まぁそうやねんけどなぁ……そうなるとこれからの事も考えなあかんし」

 

「これからの事?」

 

「せや。これからこの時空を時空管理局がどうするかや。それによっては私達も身の振り方を考えなあかんしなぁ〜」

 

「身の振り方って……もしや時空管理局がこの時空と敵対すると?」

 

 シグナムが怪訝そうに疑問を投げ掛けるとはやては数回首を縦に振って答える。

 

「せや。魔法至上主義の時空管理局からすれば人工惑星を作り出せる科学力が有って、魔法より強力な質量兵器を保持する時空やからね……それでも魔法使いが居ない時空と聞けばこの技術力と宇宙を管理という名の支配下に置きたがる可能性はあるわけや……とは言え……下手に手を出せば時空管理局は大火傷じゃ済まないやろうから、あくまでも可能性の一つやけどな。まぁ限りなく低いやろうけど。うんそう信じたい」

 

「ですがもし仮に。時空管理局がこの時空と敵対したした際は……主はどうなさるおつもりで……」

 

 リインフォースの問いにヴォルケンリッター全員が息を飲む。

 

 そんな重い空気の中はやてが口を開いた。

 

「そうならない為にも私は真実を伝えるし、平和的に行くように努力はするが……せやなぁ……もしそうなったら私は時空管理局を抜けておじさんを頼ることになるなぁ……あぁ、そうなると貰えるはずやった年金がもったいないけどなぁ」

 

「時空管理局を見限ると?」

 

 シグナムの問いにはやては頷く。

 

「そりゃそうやろ。確かに時空管理局には、なのはちゃんやフェイトちゃんみたいに親しい人も居るが、私はそれと同じくらい皆を、家族を大切に思っとるんよ。皆を道連れに負け馬には乗れんよ……まぁ……そん時はアースラを手土産にすればこの科学力や。時空跳躍技術も再現できるんやないかな? それに帝国側の兵力がどんなもんかは分からんが……まぁ時空管理局を掌握するのは難しくないんやないかな?」

 

「こちらの時空の人間は魔法は使えないと思いますが、それでも時空管理局が負けると?」

 

「そりゃ火を見るより明らかやろ。人数と言うか母数が大きすぎるんや。攻撃3倍の法則言うてな。攻め込む側は防衛側の3倍の戦力が無きゃアカンのよ。時空管理局とこの時空じゃ戦力差は3倍以上やろうなぁ。確かになのはちゃんやフェイトちゃんみたいに飛び抜けて強い人も居るけど……個人の質は時空管理局に分があるかもしれんが、それでもこの時空の武器を持った百人規模の兵隊には勝てんやろなぁ。科学力が違い過ぎる……きっと対魔導師用の兵装くらい作れるやろなぁ……それこそ私達がアースラを手土産にすればAMFみたいに魔法を阻害する技術なんてあっという間やろ? それに時空管理局は建前上非殺傷の魔法を使うはずや。きっとなのはちゃんやフェイトちゃんには人殺しは出来へんよ……そこが大きな差やね。それに艦隊の数も性能も大違いや。私が見たのはブリュンヒルトの威嚇射撃だけやけどアースラの索敵限界の距離から威嚇射撃でギリギリを狙える精密な射撃能力の艦がゴロゴロおるんやろ? きっと時空管理局が支配するために艦隊を送ったとしても跳躍後のワープアウト反応を検知されて狙い撃ちされるか……運良く時空を超えても補給線が確保できん……元の時空に補給のために戻るとしても、補給の度に時空を超えとったら戦いにならん……カイザーが本気を出したら時空管理局の艦隊は殲滅されるか、鹵獲されて時空を超える技術を模倣され逆に時空管理局に攻め入れば……攻め込んだ艦隊が帰ってこなければ防衛艦隊も薄ければ逆進撃されるやろな、そうなれば良くて1年……早ければ数カ月と保たずに時空管理局の本部は掌握されるやろなぁ……そうなったら後はミッドチルダを逃げ出して他の時空からのゲリラ戦……いやそんな泥沼になる前に降伏するやろな」

 

 はやては顎に手をやり考えを口に出す。

 

「それだけ帝国が強大だと?」

 

「そりゃそうやろ」

 

 はやてがキッパリと言い切る。

 

「もし仮にやで、時空管理局に勝ち目があるとすれば魔法の有無やな。帝国が気が付く前に魔法を使ってカイザーを暗殺か……いや、暗殺はアカン。カイザーが暗殺されたとあったら帝国は激昂して手が付けられないようになる。となると誘拐してしまうとか……もしくは魔法を使って催眠をかけて傀儡にさせてしまえば……もしくは帝国のNo.2の人物に極秘裏に接触して焚き付けてそいつに帝位を簒奪させる見返りに宇宙の半分を時空管理局が統治するとか? その作戦もNo.2が居て、その上帝位を簒奪する野心家である前提やけどな」

 

「そうすれば時空管理局がこの時空を管理できると?」

 

「おじさんから聞いた話じゃ、帝国は専制君主制やしな。頭であるカイザーさえ抑えてしまえばなんとか……それでも勝機は一瞬。1発勝負やね。もし少しでも暗殺の空気を気取られたらきっと厳戒態勢になるやろなぁ……それに……カイザーの洗脳が上手くいったとしても性格が急変すれば誰かしら気が付く人も居るはずや。おじさんから聞いとった話と実際会った感じであのカイザーは専制君主制の皇帝とは言え極悪非道で自己中心的な独裁者タイプやない事は分かった。寧ろ何処か紳士的で民衆に好かれる名君やろな。それこそ時空管理局が関わった直後に性格や言うとる事が急変すれば側近達に時空管理局が怪しまれてご破算や。やるなら何十年も掛けて気取られない様に徐々に帝国を蝕んで行くのがええが……そこまでする時間が掛かれば逆に帝国から時空管理局を支配してしまおうと言う勢力が出ないとも限らない……つまり時空管理局にとって一番良いのは、カイザーが名君のまま時空管理局と友好関係を築いて互いに不可侵の約束を取り付ける事やと私は考えとるけどな~」

 

「なるほど……ではカイザー以外から侵略するのはどうです? それこそ主要な軍事施設や政治の中枢に管理局員が魔法で侵入して制圧して外堀から埋めてしまえば」

 

 シグナムの質問を聞いてはやては首を振る。

 

「それは愚策やと思うで。確かに魔法で強襲すれば制圧は出来るかもしれんが、時空管理局の戦力じゃこのバカでかい宇宙のうち占拠できても精々惑星単位で1つが限界やないか? 宇宙全体を統治している帝国から見れば1惑星なんて……それこそ惑星そのモノを破壊するだけの兵器とかありそうやん。まぁカイザーは余程のことがない限り惑星を破壊しようなんてしないはずやけどな。それにさっきも言うたが帝国の頭はカイザーや。政治の中枢を襲って政治家を人質に取ったとて、どんな要求をするかやな。宇宙の一角に時空管理局の自地区的な物の要求ならワンチャン通るかもしれんが、時空管理局に征服……管理されろなんて言うたら……きっとカイザーは怒り狂って全勢力を持って時空管理局を潰しに来るやろ? 見せしめに人質を殺害しようモノなら帝国は時空管理局を悪辣な侵略者として討滅する大義名分を与えてしまうやろなぁ……」

 

「では、軍事施設を占領してしまえばどうでしょう?」

 

 はやては少し唸り頭を捻る。

 

「ウ~ン……せやなぁ……仮に、もしやで、もしこのイゼルローン要塞と同じ様な宇宙要塞を時空管理局が占領出来たとしても維持し続けるだけの戦力が時空管理局には無いやろ? 要塞の外を守る為の艦隊も必要やが、艦隊戦で時空管理局に勝ち目は無いからなぁ……要塞に引き篭もったとて、帝国が本気を出せば要塞を破壊するのも出来るんや無いかな?」

 

「そうですか? しかしこのイゼルローン要塞は依然として帝国から破壊されていませんよ」

 

「ウ~ン……そこは政治的な問題やと思うんよ。確かに防衛能力は凄く高い要塞とは思うよ。でも防衛艦隊の無い要塞を破壊するだけなら簡単だと思うんよ。それこそ小惑星をたくさん用意してロケットエンジンでもくっつけてぶつけるとか? いくつかは迎撃されるやろうけど限界があるはずや。それかいっその事同じ様な質量の人工惑星を用意してぶつけりゃエエんよ。直径10km程の隕石でも恐竜が絶滅したんや。惑星規模の質量が衝突したら宇宙の塵や。まぁそれをやらないのはイゼルローン要塞クラスの人工惑星を作るのは莫大なコストがかかるのもあるし、再利用の価値もあるし、なにより住んでいる民間人もろとも破壊してしまえば人道に反するからやと思うで」

 

「ではもし仮に時空管理局がイゼルローンと同じ様な要塞を占領した場合は……」

 

「残念ながらカイザーやこの時空の人間からすれば要塞を占拠した時点で時空管理局は別次元からの異能を使う侵略者や……人の姿をしたエイリアンや。きっと民意は……手加減はないやろなぁ」

 

 はやては乾いた笑みを浮かべる。

 

「つまり帝国程の大勢力とは敵対するなって話や。現に帝国はこの宇宙を統べてるやろ? そしてこれは憶測やけど、おじさん達の会話でイゼルローン回廊の帝国側出口って言うとったんよ。つまり以前まではイゼルローン回廊を挟んで帝国の反対側におじさんが以前所属していた同盟ってのが有ったんだと思うのよ」

 

「なるほど……」

 

「うん。そして恐らくやけど宇宙の半分を統べていた同盟をイゼルローン要塞に追い込むほどの戦力が帝国に……カイザーには有るわけや」

 

「そんな戦力が」

 

「まぁ……いくらカイザーが有能でも同盟と帝国が同様の戦力ならおじさんと同じくらいの優秀な人材が居なかったとは思えへん。それこそイゼルローン要塞にまで追い込まれるとは考えにくいからなぁ……同盟の戦力が少なかったのか……それとも同盟の政治家がおかしかったのか……はたまたその両方……」

 

 はやては呟きながら思考を巡らせる。

 

「まさか、そこまでお考えだったとは」

 

「アハハ〜これでもおじさんと長い付き合いやからな~色々なことを考えてしまう悪癖がついちゃったんよ〜」

 

 はやてが笑顔で答える。

 

「まぁええ。つまり帝国と敵対するのは絶対にアカン。そんな事にならない為にも時空管理局には大人しくしてもらってカイザーにはなんとか敵対されんように頑張って……幸いな事に今のところカイザーは別次元に興味は無さそうやから、帝国側から時空管理局に侵攻はないはずや。少なくともそうならない様に別時空に興味を抱かれないようにせなあかんよなぁ……と言うか……こんな会話がカイザーだけやない、帝国兵の耳に入ろうもんなら私等全員、明日には首と胴体がオサラバや」

 

 はやては首を切るジェスチャーで苦い顔をする。

 

「さてさて……これからもやることはいっぱいや……まずはこの後おじさんの先輩の家にお呼ばれやったか?」

 

 はやては頭を掻きながら肩を落とす。

 




私なりに考えてみましたが
お手柔らかに
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