不敗の魔術師と夜天の主   作:サーフ

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関西弁が変だったり、時代考証が変だったりは…

お許しください!何でもしますから!


魔術師の安寧

 ヤンが目を覚まして数日が経過した。

 シャマルの治癒魔法の効果もあり、その頃にはヤンの身体もすっかり回復し、歩けるようにまでなっていた。

 

「おはよう。ヤンおじさん。もう皆出かけちゃったでー」

 

 11時過ぎに目を覚ましたヤンはリビングのソファに座る。

 

「ああ、おはよう。はやて」

 

 はやては車椅子で器用にキッチンで家事をこなしながら答える。

 

 この数日でヤンもはやてもこの生活に慣れてきており、はやてのヤンに対する敬語も日を追うごとに消えていき、今では普通に会話している。

 

「はやては今日の予定はどうするんだい?」

 

「病院に行った後図書館に行こうかなって思っとるよ」

 

「図書館か……私も一緒にいいかい? 地球に……こちらの世界に来てからずっと家に引き籠もっていたから外が気になっているんだ」

 

「ええね。一緒に行こかあ。そういえば……」

 

 はやては家事の手を止めヤンに語りかける。

 

「おじさんの居た世界って今よりももっと先の未来で地球じゃなくて宇宙で生活していたって本当?」

 

「まだ実感はないが…ある種の並行世界と言うべきか。地球に住んでいる人は一握りで、後の人類は様々な惑星で生活していたよ」 

 

「そうなんや。おじさんはどんな仕事してたん?」

 

 はやてはコーヒーの入ったお盆を膝に置き、器用に車椅子でヤンに近寄り差し出す。

 

「ありがとう……コーヒーか……できれば紅茶が良かったのだが」

 

 ヤンは呟くとコーヒーを一口飲みソファの前にあるテーブルに置いた。

 

「紅茶はこの後の買い物で買おか」

 

「この世界の紅茶か。楽しみだ」

 

「高いのじゃなくてティーパックのやけどね。それで、おじさんはどんな仕事だったの? 同盟軍って言ってたから軍人さん?」

 

「まぁそうだね。皆は私を、無駄飯喰らいのヤンって呼んでたよ。それだけ軍人には向いていなかったんだ……それに本当は軍人なんかではなく、歴史研究をしたかったんだがね」

 

「そうなんや……」

 

「あぁ。だからこの世界の図書館というのにとても興味があるんだ」

 

「そうなんや。病院の後図書館行って買い物行くから帰りは夕方頃やね」

 

「ああ、わかったよ、その時買いたい物があるのだがいいかい?」

 

「紅茶以外に? うーん予算内ならええよ」

 

 はやての回答にヤンは微笑んだ。

 

 

 昼過ぎ頃。

 普段着から外出用の服に着替えたはやてを乗せた車椅子をYシャツを着たヤンが押しながら住宅街をはやての指示で進んで行く。

 

 ヤンはふと道路を見ると車が数台走り去っていった。

 

「はやて」

 

「ん? どうしたんおじさん」

 

「今の車は何で動いているんだい?」

 

「え? 多分やけどガソリンで動いとるんやないかな?」

 

「そうなのかい! だからあれだけの騒音で走っているのか!」

 

「おじさん……外であまりはしゃがんといて……」

 

 はやては恥ずかしそうに俯いた。

 

 数十分ほど住宅街を進むと目的地である病院が見えてきた。

 

「ここが目的の病院やで」

 

 はやての指示に従い、ヤンは車椅子を進め病院内へと入り、受付を済ませる。

 

 待合室は静かで、TVで垂れ流されているバラエティ番組の音声だけが流れていた。

 

 特にすることの無いヤンはTVへと目線を向ける。

 

「おじさんの居た世界ではどんな番組がやっていたの?」

 

「そうだな……」

 

 ヤンが思い起こすように記憶を思い起こす。

 

「私はあまり番組を見ていた記憶がないが、戦時中だったこともあってこのようにバラエティ番組はあまりやっていなかったな」

 

「そうなんや……戦時中って一体どんな……」

 

「100年以上続く愚かな戦争さ」

 

「100年以上って……」

 

 はやてが唖然としていると受診の順番が来たようで、はやての名前が呼ばれる。

 

「あっ、呼ばれたから行ってくるね」

 

 はやては自身で車椅子を動かしながら、診察室へと向かった。

 

 診察開始から数十分後、女性医師に車椅子を押されながらはやてが待合室へとやってきた。

 

「あら? はやてちゃん。この方は?」

 

「あっぇ……えっと……」

 

 はやてが戸惑うと同時にヤンが答える。

 

「私はヤン。この子の叔父です。いつもお世話になっています」

 

 ヤンが答えると、女性医師は納得したように頷く。

 

「そうでしたか。それじゃあはやてちゃん。また今度の診察でね」

 

 女性医師はそう言うと待合室を後にした。

 

 病院を後にした二人は、市街地へと向かう。

 

「もう……さっきは驚いたわあ」

 

「さっき?」

 

 はやては少し膨れつつ、車椅子を押すヤンに振り返る。

 

「さっき叔父だって言ったでしょ。関係を聞かれるなんて思わなかった……」

 

「ははっ……私はそう聞かれると思って叔父と答えるつもりだったよ」

 

「それならそうと言ってくれれば、私も事前に……」

 

 はやては膨れながら俯く。

 

「すまなかったねはやて。それで、図書館はこの先でいいのかい?」

 

「そうやね。あと少し行けば見えるはずやで。そういえば」

 

 はやてが再び振り返る。

 

「おじさんって日本語読めるの?」

 

「あーその事か。実はね私も気になっていたのだが、新聞などは不自由なく読めたし、一般的に使われている漢字なら書くこともできたんだ」

 

「そうなんやね」

 

「これは推測だが、召喚された時に読み書きができるようになったんじゃないかと思うんだ」

 

「そうなん?」

 

「魔法のことは全くわからないからあくまでも推測だけどね……さて、図書館についたようだ」

 

 雑談をしていた二人の前は図書館へと到着した。

 

「結構蔵書の量があるんだね」

 

「せやで。2階にはパソコンもあってインターネットにも接続できるらしいんよ」

 

「パソコンにインターネットか……後で見てみよう」

 

「そうなんだね」

 

「うん。あっおじさん。あっちの棚までお願い」

 

 はやてが指さした先の小中学生向けの小説の棚に二人は移動した。

 

「今日は……えっと……あれとって」

 

 はやては棚を見回し、自身では手がぎりぎり届かない位置にある本を選ぶ。

 

 指定された本をはやてに渡し共に閲覧ブースまで移動する。

 

「はやて、私も本を選んでくるよ」

 

「うん。わかったで」

 

 はやてが机に向かい本を読み始めるのを見届けてからヤンは歴史書の棚に移動し、近代史の本を手に取り2階のインターネットブースへと移動した。

 

 インターネットブースのパソコン端末を見てヤンは呟いた。

 

「これは……まるで化石だな」

 

 自身が知るインターネット端末とは違い面食らいながらパソコンの隣に書かれている初心者向けの説明書を読みながらパソコンを操作し始める。

 

 数分後、パソコンの動作の遅さに苛つきながらもインターネットの状況を確かめる。

 

「これは……インターネットの最初期レベルだな。SNSも普及したばかりか?」

 

 ヤンは小声で呟くとパソコンを元の状態へと戻しはやてが居る机へと移動した。

 

「おじさん……その本……難しそうやね……」

 

 はやてはヤンが手にしている分厚い歴史書に顔を引き攣らせる。

 

「言っただろ。私は歴史研究をしたかったんだって」

 

 ヤンはそう言うと、分厚い歴史書を開いた。

 

 十数分ほど歴史書を熟読したヤンは、現状を仮定付ける。

 

 それは、ヤンが居る今の世界は、元いた世界の数世紀以上前の地球であるという事だ。恐らくだが並行世界と言うやつだろうか。

 

 この歴史書にはヤンの知る数十世紀以上昔の出来事が、数百から数年前と記載されている。

 

 また、魔法についての記載はなく、ヴォルケンリッターがイレギュラーな存在であると推測する。

 

 「つまりこの世界も魔法は存在しない…いや…意図的に隠されているのか?」

 

 ヤンは事細かに書かれた歴史書を食い入るように読み進めていく。

 

「ねぇ、おじさ……」

 

 声をかけようとしたはやてだったが、ヤンが熱心に本を読み込んでいるので声をかけるのを躊躇い、自身で車椅子を動かし本を返却するべく棚へと向かった。

 

 棚へと到着したはやてであったが、本の元々の位置に若干届かず、悪戦苦闘していると一人の少女が声をかけてきた。

 

「くっ後ちょっと…」

 

「あの……大丈夫?」

 

「へ?」

 

 声のする方へとはやてが視線を向けるとそこには紫髪の同年代の少女が心配そうに見つめていた。

 

「これが……届かなくて」

 

「これね」

 

 少女ははやてが持ていた本を手に取る。

 

「私もこのシリーズ好きでよく読んでいるの」

 

 少女は本を元の位置に戻した。

 

「ほんと?」

 

「うん。貴女よくこの図書館に来ているよね」

 

「え?」

 

「この前も見かけたから。私は月村すずか。貴女は?」

 

「私は八神はやて」

 

 はやての答えに、鈴鹿は微笑み、二人は小声で談笑を続けていった。

 

 数時間後、ヤンは椅子に座ったまま背中を伸ばす。

 

「ふう……あ……はやて?」

 

 読書に集中していたヤンは隣りにいるはずのはやてが居ないことに気が付き周囲を見回す。

 

 すると、図書館の一角にあるベンチに腰掛けた少女と楽しそうに談笑しているはやての姿を見つける。

 

 ヤンは読みかけの歴史書を小脇にはやてのもとへと向かった。 

 

「はやて」

 

「あっおじさん」

 

 声をかけたヤンにはやてともう一人の少女が顔を向ける。

 

「友達かい?」

 

「うん……さっき友達になったの。連絡先も交換したんだ」

 

 はやては携帯電話をヤンに自慢げに見せる。

 

「はやて、コレは何だい?」

 

 ヤンははやてが手にして居る携帯電話を不思議そうに見ていた。

 

「携帯だよ? これで電話やメールができるんだよ」

 

「へーこれがあの携帯電話と言うやつか……実物は初めて見たよ、もっと見てもいいかい?」

 

「ええよ。今どきは皆持っているし、この機種はカメラも付いてて写真だって撮れるんよ!」

 

 ヤンは自身が知る携帯端末と全く違う存在に内心興奮しつつはやての携帯を手に取った。

 

「なるほど……結構重いんだな……はやてはSNSはやってないのかい?」

 

「SNSって……何?」

 

「分からない」

 

 はやてとすずかは首を傾げる。

 

「自分の呟きをインターネットに呟くと言うか……写真をインターネットにアップしたり……何と説明すれば良いんだ」

 

「あっ! ブログのことじゃない?」

 

 すずかは思いついたように声を上げる。

 

「ブログかぁ~私はやってへんけど、すずかちゃんは?」

 

「私もやってないよ。友達にはやっているって言う子もいるよ」

 

「そうか……ブログと言うのか」

 

 ヤンはインターネットの最初期にそのような時代もあったなと歴史を思い出しながら頷いていた。

 

「おじさん、そろそろ返して」

 

「あぁそうだったね」

 

 

 ヤンから携帯電話を受け取ったはやてはそれをカバンに仕舞い込んだ。

 

 はやてとヤンのやりとりをすずかは微笑みながら見守っていた。

 

「あっもうこんな時間やん」

 

 はやては壁にかかっている時計に目線を向ける。

 

「そろそろ帰るの?」

 

「この後買い物があるからね。またね」

 

 はやてが少女に手を降ると、少女もはやてに手を振り返す。

 それを見届けてから、ヤンに車椅子を押されはやてと共に図書館のカウンターへ移動し、はやての図書カードで歴史書を借りてから退館した。

 

「おじさん。折角だから図書カード作ればよかったやん。すれば私がいなくても本借りれるで?」

 

「はやて、私の状況をよく考えてごらん」

 

「ん?」

 

「図書カードを作るには身分書が必要だろ? 今の私には身分を証明するものがない」

 

「あーそういうこと」

 

「そういうことだ…帰れればいいが…最悪の場合を考えるとどうにかしなくては…」

 

 ヤンははやてに聞こえないくらい小さな声で呟いた。

 

 図書館から出た二人は市街地を進み大型量販店へと到着した。

 

「ここがそうかい?」

 

「うん。今日はお肉が特売なんだ」

 

 はやてはチラシを手にヤンに微笑む。

 

 入店した二人は車椅子に買い物かごを乗せ、店内を見て回る。

 

「今日は何を作るつもりだい?」

 

「ハンバーグかな?」

 

「それは、ヴィータが喜びそうだ。はやては料理が上手だよね」

 

「ある程度のことは一人でやってきたからなあ。おじさんは料理作らないの?」

 

「私かい? 私は生活無能力者と言われるくらいでね。家事はもっぱら息子に任せきりだったよ」

 

「おじさん結婚して子供が居たん?」

 

「結婚はしているよ。私には勿体ないくらい良い妻さ……あと息子と言っても義理だけどね。私が居た世界では戦時中だって言っただろ。それで親を喪った子供を軍の人間が引き取る制度があったんだよ」

 

「そうやったんや……」

 

「あぁ……私には勿体ないくらい良くできた子だよ……」

 

「そうなんや……きっとおじさんを心配しているよ」

 

「できるだけ早く帰りたいものだ……きっと妻も心配しているだろう……」

 

「うん。大丈夫だよ。きっと帰れるって」

 

「ああ……そうだな」

 

 ヤンははやてに微笑む。

 

 しばらく売り場を回り、買い物もほとんど終わった。

 

「これで必要なものは買えたかな」

 

「紅茶も買えたしね。はやて、欲しいものがあるのだが良いかい?」

 

「ん? 何がほしいん?」

 

 ヤンが押す車椅子は売り場の一角で止まった。

 

「これなのだが……」

 

 ヤンは少し気まずそうに棚から商品を取り出した。

 

「おじさん……これって……」

 

 ヤンの手にはブランデーの瓶が握られていた。

 

「お酒じゃん。コレはいらんやろ」

 

「いやいや。はやて、お前さんはまだ子供だからわからないかもしれないが、大人には酒が必要不可欠なんだよ」

 

「えー……それに結構高いよコレ」

 

「下手に安いのは美味しくないんだよ。それにブランデーが入った紅茶が私は好きでね」

 

「ほんまに必要なの?」

 

 はやては訝しむようにヤンを睨む。

 

「良いかいはやて。酒は人類の友だぞ。友人を見捨てられるか」

 

 あまりのヤンの必死さにはやてはため息を付く。

 

「はあ……しゃあないなあ。でもお酒の方はおじさんを友達と思っとるんかぁ?」

 

 出資者(はやて)の許可を得てヤンはブランデーを無事購入できた。

 

 

 

 買い物を終えた二人は住宅街を進み自宅へ到着する。

 

「ただいま〜」

 

「おかえりなさい」

 

 二人が帰る頃には全員が帰宅していた。

 

 その為、玄関でヴィータとシグナムが出迎えた。その後を追うように狼状態のザフィーラがやってきた。

 

「おかえりなさいませ」

 

 シグナムはそう言うとはやての膝に抱えられた荷物を受け取り、奥へと消えていった。

 

「おかえり! はやて!」

 

 ヴィータは勢いよくはやてに近寄るとヤンから車椅子を奪い取るように後ろに回ると、はやてと共に家の奥へと消えていった。

 

「まったく。元気がいいものだ」

 

 ヤンは小さくため息を付くとザフィーラに目をやる。

 

「何か用か?」

 

 狼状態のザフィーラが答える。

 

「いや……その状態というか……喋る動物が物珍しくてね」

 

「ふん……そうか」

 

 ザフィーラは一言そう言うと部屋の奥へと消えていった。

 

「……」

 

 一人残されたヤンも後を追うようにトボトボと家の中へと入っていった。

 

 リビングに入るとシャマルが洗濯物を畳みながら皆を出迎えた。

 

「さてっと」

 

 ソファに座ったヤンは早速借りてきた歴史書を開く。

 

「はやて、買ってきた紅茶を早速だが淹れてくれないか?」

 

「はーい」

 

 はやてはそう言うとキッチンへ移動した。

 

「おい、ヤン」

 

「ん?」

 

 鼻歌交じりのヤンが歴史書から目線を上げるとシグナムが訝しんだ様な表情をしていた。

 

「どうかしたかい?」

 

「お前は居候の身なのだから主に頼らず、紅茶ぐらい自分で淹れたらどうだ?」

 

「そうは言うがね、私は家事が全くだめでね。自分で淹れた紅茶など不味くて飲めたものじゃないのさ」

 

「はぁ〜……まったく……」

 

 ヤンの答えを聞いてシグナムは呆れ気味にため息を付いた。

 

「シグナム、あんまおじさんを苛めちゃアカンよ」

 

 はやては車椅子でヤンの隣に移動し、シャマルがハヤテの淹れた紅茶が入ったティーカップをヤンの前のテーブルに置いた。

 

「いじめてなど……むしろヤンを甘やかしすぎです」

 

「そぉ、そぉかな?」

 

「はい。せめて家事の手伝い位はさせるべきです」

 

「確かに、シグナムの言うことも一理あるわね」

 

 シグナムの隣でシャマルが数度頷く。

 

「適材適所と言うやつさ。それに私が手伝えば余計に仕事を増やす事になるのは目に見えている。こうしてソファから動かないのはむしろ家事を手伝っているようなものさ」

 

 ヤンはそう言うとはやてが淹れた紅茶を一口飲み込んだ。

 

「うん、はやて。お前さんは紅茶を淹れる才能があるな」

 

「エヘヘ」

 

 ヤンに褒められハヤテは頬を緩ませる。

 

「おっと、そうだ」

 

 ヤンはそう言うと立ち上がり、先ほどの買い物袋を物色する。その手にはブランデーが握られていた。

 

「あー! おっさん! 買い物ついでにはやてに買ってもらったのか!」

 

 ヴィータはヤンを指差し声を上げる。

 

「貴様……酒まで主に買わせたのか……まったく」

 

 シグナムはワナワナと怒りをあらわにする。

 

「いやはや、コレは私にとっての燃料みたいなモノさ」

 

「はぁ……まったく……貴様は軍人だったのだろう。もっとしっかりしたらどうだ」

 

「一応軍人だったが、後輩や部下には、給料泥棒や、首から下は役立たずと言われたものさ」

 

 ヤンはそう言うとブランデーの栓を開け、ティーカップに注ぐと、喉を潤すように飲み込む。

 

「ふぅ、やはりブランデー入の紅茶は良い」

 

 ヤンはそう言うと水かさの減ったティーカップに再びブランデーを注ぐ。

 

「はぁ~まったく……口だけは達者と言うわけか」

 

「コレじゃあブランデー入りの紅茶じゃなくて、紅茶入りのブランデーね」

 

 シグナムとシャマルは呆れたようにため息をつき、その裏でヴィータははやてに今度の買い物で何か買ってもらうようにせがんでおり、狼状態のザフィーラは興味なさげに丸くなっていた。

 

 夕食を食べ終わった後、ヤンははやてに淹れて貰った食後の紅茶を勿論ブランデーを入れて楽しんでいた。

 

 シャマルはキッチンで食器を洗い、はやてとヴィータはTVで放送されているアクション映画を一緒に見ていた。

 

 呑気なヤンを一瞥したシグナムはTV番組を目をやった。

 

 TV内では主人公である特殊部隊隊員が単独で敵組織に潜入し組織員を一方的に倒していっていた。

 

「こいつすげぇな」

 

「特殊部隊の人って凄いんやなぁ……ねぇおじさん」

 

「どうしたんだい? はやて」

 

 ヤンはブランデーを飲みながらはやてに顔を向ける。

 

「軍人さんって皆この人みたいに強いん? おじさんも出来る?」

 

 ヤンはTV画面に顔を向ける。画面の中では主人公が既に一人で十数名の敵を倒していた。

 

「イヤイヤ……コレはフィクションだから」

 

「えーそうなんや」

 

 はやては少し残念そうな表情をしていた。

 

「主! 私なら出来ます!」

 

 シグナムは得意気な表情だった。

 

 ヤンの脳裏にふと部下の男の顔が浮かび、ほんの少し前のことなのになぜか懐かしい気持ちになった。

 

「まぁ、私にはこんな芸当は無理だが、部下のあの男ならきっと出来るだろう」

 

「ほぉ、骨のある奴が居るのだな。どんな奴だ?」

 

 シグナムは興味津々にヤンを問いただす。

 

「『薔薇の騎士(ローゼンリッター)』の隊長さ。私が知る限り白兵戦なら右に出るものは居ないだろう」

 

「ほぉ……それはぜひいつか手合わせしてみたいものだ」

 

「だが気を付けた方が良い、軍では不良中年と言われるほど女ったらしで素行不良な人物さ」

 

「はぁ~お前の所属していた部隊はまともなやつは居ないのか」

 

 シグナムは呆れ気味にため息を付いた。

 




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