不敗の魔術師と夜天の主   作:サーフ

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今のところヤン提督は楽しそうに日々を満喫しています。


魔術師と因果

  ヤンがこちらの世界に来てしばらくの時が過ぎた。

 

「おじさーん、今日も図書館へ行く?」

 

「ん? 病院は今日だったか?」

 

「そうやで」

 

 ここ最近ヤンは、はやての病院に付き合った後図書館へ行くのがルーティンっとなっていた。

 

 はやて自身もこのルーティンを楽しみにしており、苦痛だった病院通いも少しはマシになったようだ。

 

 また、ヴォルケンリッター達も各々のルーティンを確立されており、家を空けることも増えた。

 

「わかった、そろそろ行こうか」

 

「うん、じゃあ着替えてくるね」

 

 はやてはそう言うと自室に向かっていった。

 

「おまたせー」

 

「あぁ、それでは行こうか」

 

 ヤンは家の鍵をかけはやてが乗った車椅子を押しながら住宅街を進む。

 

「ふーふふん♪」

 

 今日のはやては妙に上機嫌で鼻歌を歌っていた。

 

「今日はやけにご機嫌じゃないか」

 

「エヘヘ、昨日ね、すずかちゃんからメールが来たんよ」

 

「すずか……あぁ、図書館でよく話しているあの子か」

 

「うん! 今日ね図書館にすずかちゃんが友達を連れてきて紹介してくれるんだって!」

 

「そりゃ良かったね。人脈を増やすことはいいことだよ」

 

「エヘヘ、でも……私、友達になれるかな?」

 

「お前さんは私と違って社交的だし素直だからきっと大丈夫さ」

 

「アハハ! なにそれおじさん変なの! グッ……ゲホゲホ!」

 

 笑っていたはやてだったが突如咳き込み始めた。

 

「大丈夫かい! はやて」

 

「ゲホゲホ! だっ大丈夫、ハァ……ハァ……ちょっと胸が苦しくなっちゃって、ゲホ……」

 

 はやては息も絶え絶えな状況で深呼吸をしようと必死に呼吸を整える。

 

「大丈夫ならいいのだが……さて病院に着いたぞ」

 

 病院に着いた二人は受付を済ませる。

 

 数分後、はやてが呼ばれ診察室に向かった。

 

 はやてが診察を受けてから十数分後、先日の女性医師に車椅子を押されてはやてが待合室に戻ってきた。その腕には注射をしたのか、絆創膏が貼られていた。

 

「イテテ……おじさん、注射されてもうたよ」

 

「検査のための採血ですよ。ヤンさん少しいいですか?」

 

 女性医師はヤンを診察室に通した。

 

「早速ですが、ヤンさんは…はやてちゃんの病状をどこまで把握していますか?」

 

 女性医師は神妙は顔でヤンに問いかけた。

 

「詳しいことは全く……」

 

「そうですか、えっと、簡単に説明すると、はやてちゃんの下半身は今麻痺しています。ただ、その原因ははっきりしていないんです」

 

「そうなんですか?」

 

「はい、検査した限り、目ぼしい異常はないのですが……しかし実際麻痺しており、足は動かないんです」

 

「そうでしたか……」

 

「はい。今までは麻痺は下半身のみに抑えられていたのですが……ここ最近、少しずつですが麻痺の範囲が広がってきているようなんです」

 

「え? それはどういうことですか!」

 

 ヤンは珍しく声を荒らげた。

 

「詳しいことはわかりません。今回の採血も検査の為です」

 

「そんな……」

 

「私達ももっと詳しく検査してみないことには何とも……ですから今度、数日ほどの検査入院をお勧めします。伝えづらい様でしたら血液検査の結果が来週中には出るはずです。その時に私からはやてちゃんに伝えても……」

 

「そうですか……」

 

 ヤンは俯き呟いた。

 

「私達も全力を…全力を尽くしますので……」

 

「はい……よろしくお願いします」

 

 ヤンは呟きを診察室を後にした。

 

「おじさん? どうしたん?」

 

 病院を出たはやては車椅子を押すヤンに振り返る。

 

「いや……その……」

 

 検査入院の件を告げようかとも思ったが、はやてはこれから友人達と会うのだ。今伝えて気分を害するわけにもいかない。

 ヤンはそう考え言葉を飲み込んだ。

 

「おじさん?」

 

「いや……何でもないんだ。それより友達とは何時頃会う予定なんだい?」

 

「えっと……後数十分後くらいやね」

 

「そうか……」

 

 

「おじさんどうしたんだろう?」

 

 車椅子に乗るはやては首を傾げた。

 

 

  二人が図書館に入館すると、そこにはすずかが待っていた。

 

「あっ! すずかちゃんや!」

 

「あっ! はやてちゃん」

 

 すずかとはやてはお互いを認識すると手を振りながら近寄る。

 

「こらこら、二人共図書館では静かにね」

 

「あっそうだった」

 

「ごめんなさい」

 

「ねぇ、すずかちゃん、他の友達は?」

 

「きっとお話して五月蝿くなっちゃうから三階の多目的室を借りたからそこで待ってるよ」

 

「そうなんやね……多目的室って借りれたんや……」

 

「ウフフ、さぁ行こうはやてちゃん」

 

 すずかがヤンの横に立ち、車椅子に手をかける。

 

「いいよすずかちゃん、自分で行けるよぉ」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

 二人はそう話しながらエントランスを抜けエレベーターの前までやってきた。

 

「それじゃあおじさん行ってくるね。終わるまで本読んで待っとってね」

 

「失礼します」

 

 そう言うと二人はエレベーターに乗りこんだ。

 

「ふぅ~本でも読むとするか」

 

 一人取り残されたヤンは少しさみしい気持ちを抱えながら本を探すため、本棚を物色し始めた。

 

 

 数時間程、ヤンは近代史の本を熟読していた。

 以前の世界では有った国や組織、団体、宗教法人が無かったり、ヤンが知っている歴史との差異を実感する。

 

「やはり、私の知る世界とは少し異なる様だ。ニュースなどを見る限りこの世界情勢では少なくとも今後数十年で大規模な戦争は起きるとは思えない……独裁者でも現れない限り」

 

 ヤンは椅子に座りながら背中を伸ばし後頭部に両手を持ってくる。

 

「まさかこんな形で私の希望であるこの先何十年かの平和が訪れるとは……」

 

 ヤンはこのまま少し思案する。

 確かに現在居る世界が大規模な戦争はなく平和であることは間違いない。あったとしても国同士の小競り合い程度だ。この程度の小競り合いが星一つが壊滅寸前ほどの戦争に変わるとは思えない。どうせなら元の世界で平和を享受したかった。

 

 そんなことを思っていると、閉館を告げる放送が流れた。

 

「もうこの時間か……はやて達はどこだろうか?」

 

 ヤンは椅子から立ち上がると、体を伸ばし凝り固まった身体を緩ませる。

 その後、エレベーターに乗るためエントランスに向かうとそこには出入口から遠ざかっていく少女達に手を振っているはやてが居た。

 

「はやて」

 

「おじさん」

 

 はやては器用に車椅子を半回転させヤンと向き合う。

 

「お友達は帰ったのかい?」

 

「ちょうど今ね」

 

「そうかい。楽しかったかい?」

 

「うん! こんなにいっぱいお話したのは久しぶりやわぁ」

 

 ハヤテはとても嬉しそうに笑っている。

 

「そりゃ良かった。さて、私達も家に帰ろうか」

 

「せやね。今日はシャマルが買い物してきてくれるから真っ直ぐ帰ろか」

 

 ヤンははやての後ろに回ると車椅子を押し始める。

 

「ンフフー♪」

 

「ご機嫌じゃないか」

 

「新しく友達ができたんやもん!」

 

 はやては嬉しそうに微笑むと携帯電話を取り出した。

 

「見て見て! 皆で記念撮影したんよ!」

 

 ヤンは車椅子を道の端に止めると、はやてから携帯電話を受け取る。そこにははやてを含めて5人の少女が笑顔で映っていた。自撮りゆえ手ブレがあったり、携帯端末の性能ゆえ画質が荒いが顔を判別するには十分だと内心で思ったがその事は口にしなかった。

 

「皆楽しそうじゃないか」

 

「そうやろ! 皆すずかちゃんの友達でなぁ。皆とも友達になれたんよ!」

 

 はやては嬉しそうにヤンから携帯電話を受け取ると液晶画面を指さした。

 

「この子がアリサちゃんで、この子がなのはちゃん、こっちにいるのがフェイトちゃんって言うんや」

 

 はやては嬉しさのあまりヤンに自慢げに紹介する。

 ヤンは受け答えしつつ車椅子を押し始める。

 

「今度なぁ、なのはちゃんのお家で皆でお茶会するんよ!」

 

「そうかい。家はどこなんだい? 送り迎えはどうする?」

 

「そこは大丈夫やで。すずかちゃんの家の人が車で送り迎えしてくれるんやって」

 

「それなら安心だな」

 

「そうやね。それになのはちゃんの家はケーキ屋さんやっているらしいよ! 翠屋言うたかな? 楽しみやぁ」

 

 はやては嬉しそうに体を揺らしていた。

 こうしているうちに二人は家に到着した。

 

 

 その日の深夜。ヤンは一人リビングでブランデーを煽りながら考え事をしていた。

 

「ヤン。どうかしたのか?」

 

 ヤンが振り返るとそこにはシグナムが立っていた。

 

「少し眠れなくてね……君もかい?」

 

「私は水を飲みにな。それでどうしたんだ?」

 

「あぁ」

 

 ヤンはブランデーで唇を濡らす。

 

「今日病院へ行った時にはやての検査入院を勧められたんだ」

 

「え?」

 

 ヤンの言葉にシグナムは唖然としていた。

 

「どうやら医者の話では…はやての病状が進行しているようなんだ」

 

「そ、そうか……」

 

「検査入院の件をはやてに伝えるのが気が重くてね……今度友達の家に行くみたいなんだ……楽しみを邪魔するわけにもいかない。その後で伝えようかと思ってるよ」

 

「そうか」

 

「なぁ。こんな事を聞くのは変かもしれないが……」

 

「なんだ?」

 

「君達……はやての病気について何か心当たりはないかい?」

 

「なっ……何を言っている!」

 

 突然の言葉にシグナムは声を荒らげた。

 

「いやすまない、だが医者の話では、はやての病気の原因は分かっていないんだ。だから魔法的な観点で何か知っていることはないかと思ってね」

 

「そう……か。いや残念だが……」

 

「そっか」

 

 ヤンは立ち上がるとグラスに残っていたブランデーを一気に飲み干した。

 

「私は寝るとするよ。おやすみ」

 

 ヤンはそう一言言うとシグナムを残し自室に向かった。

 

「アイツ……グラスぐらい片付けたらどうだ」

 

 一人取り残されたシグナムはグラスをシンクに置いた。

 

 

  その日の空が夜と朝が混ざり合う時間。ヴォルケンリッター達は家主と居候を起こさないようにリビングに集まっていた。

 

「さっきの話……本当かよ」

 

「あぁ……ヤンが言うには主の病状は進んでいるようだ」

 

「クソッ」

 

 シグナムの話を聞いてヴィータは悔しそうに悪態をつく。

 

「やっぱり……闇の書がはやてちゃんの未熟なリンカーコアを蝕んでいて……それが原因だと思うわ」

 

「やはりか……」

 

 シャマルの説明を聞いてザフィーラも悔しそうに呟いた。

 

「やはり……やるしか……無いのか」

 

 シグナムは手にして居る闇の書を忌々しいものを見るように睨みつける。

 

「でも……はやては蒐集には反対しているはずだぞ」

 

「わかっている……だが蒐集して闇の書が完成すれば主のリンカーコアを蝕むことはなくなるはず……そうすればきっと」

 

「バレたらきっとはやてちゃんの事だから怒るわね」

 

「だが、我々が何を言われようと……どう思われようとも!」

 

「主には……生きていてもらいたい!」

 

 全員は目を合わせ、頷く。

 

「よっし! やるぞ!」

 

「あぁ、主の栄誉の為にも人の命を奪うコレだけはしないようにしよう」

 

「そうね」

 

 全員の意見が一致し、再び頷いた。

 

「ところでよぉ」

 

 ヴィータが口を開いた。

 

「おっさんはどうする?」

 

「ヤン……か……出来れば協力してもらいたいが……」

 

「軍人とは言っていたけど最前線で戦ってきたタイプじゃないわね」

 

「あのヒョロヒョロじゃぁな」

 

「だがヤツは妙にカンが鋭いところもある。ローゼンリッターとか言う部隊の隊長クラスの優秀な部下を持っていたという話も本当だろう。軍服を洗濯していた時に襟に階級章のようなものが有ったが……意外と指揮を取る立場だったのかもしれないぞ」

 

「そうなると……大隊長……いやヤツの年齢からすると中隊長クラスか? その知識は借りたいところだな。ヤツに隠し切れなくなったら協力してもらうのはどうだろう?」

 

「そうだな」

 

 ザフィーラの提案に皆が同意した。

 

「よし。それじゃあ明日の夜から作戦開始だ」

 

 再び全員が同時に頷いた。

 




私自身、アニメを見返したりして入るのですが…おかしな点などがあったら、目を瞑ってください。
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