不敗の魔術師と夜天の主   作:サーフ

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『』は無線や念話だと思ってください


魔術師のペテン

 

  その日、はやては慌ただしく家の中で何やら準備をしていた。

 

「えっと……これの在庫はあるし……えっと後は……」

 

「はやて」

 

 ヤンは少し呆れ気味にはやてに声をかけた。

 

「あっおじさん。着替えは部屋に準備してあるからね」

 

「今日から検査入院に行くのだろ? 私達の生活の準備より、自分の準備をしなさい」

 

「でも数日家を開けるんやから皆が心配で……」

 

「私達だって数日くらいなら生きていれるさ。安心しなさい」

 

「うーんでも……食事とかは大丈夫?」

 

「大丈夫さ。デリバリーでも取るようにするよ」

 

「シャマルが料理作れたらええんやけどなあ……一応多めにお金は財布に入れとるし、もしもの場合はキャッシュカードは私の部屋にあるからそれを……」

 

「はやて、大丈夫だから」

 

「うー……心配やわ……それとおじさん、お金が余ったからってお酒買っちゃアカンよ。この前買ったのがまだ残っとるんやから」

 

「わかっているさ。それよりそろそろ行く時間だろ」

 

「せやった。じゃあ私は準備するから、おじさんは外で待っとってね」

 

「あぁ。わかったよ」

 

 ヤンははやての部屋を後にすると玄関で待機する。

 

 数分後、シャマルが膝の上に紙袋を乗せたはやてを乗せた車椅子を押しながら玄関に現れた。

 その後ろからシグナムとヴィータ、狼状態のザフィーラも現れた。 

 

「はやてちゃん、忘れ物はない? 荷物コレだけで大丈夫?」

 

「大丈夫やで。着替えは基本病院着やし、必要なのは携帯と日用品くらいやからコレで十分よ」

 

「そう? じゃあはやてちゃん行ってらっしゃい」

 

「うん、皆行って来るで」

 

「ヤン。頼んだぞ」

 

「あぁ……」

 

 ヤンはそう言うとゆっくりと車椅子を押しながら病院へと向かった。

 

 

  病院についた二人は受付を済ませる。

 

 数分すると、いつもの女性医師が現れた。

 

「はやてちゃん。今日からよろしくね」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「お願いします」

 

 はやての一礼に続いてヤンも頭を下げる。

 

「さあ、行きましょうか」

 

 ヤンは女性医師に車椅子のハンドルを預ける。

 

「じゃあ……おじさん。行ってくるね」

 

「あぁ……行ってらっしゃい」

 

 不安そうなはやてをヤンは見送った。

 

「さて……っと」

 

 はやてを見送り病院を後にしたヤンはその足で市街地を進み大型のホームセンターにやってきた。

 

 入店し商品を物色し始める。

 

「マント変わりは……黒い布でいいか……こんなものまで売っているのか?」

 

 ヤンは大きな黒い布を数枚と、何のために売られていたのかわからないが、白塗りの仮面を数個、それとサングラスを1つカゴに入れレジへと向かった。

 

「いらっしゃいませーありがとうござまーす」

 

 レジにはやる気のなさそうなアルバイト店員が一人立っていた。

 

「まいったな……無人レジはないのか……いやこの時代だとまだ存在していないのか?」

 

 ヤンは仕方なく、有人レジに並んだ。

 

「いらっしゃい……ませ」

 

 店員はヤンの買物かごの中身を見て怪しんだが、流れ作業のように会計を済ませた。

 

「怪しまれてたな……まあ……仕方ないか……」

 

 買い物を済ませたヤンは買い物した商品を袋に詰めると自宅へと帰った。

 

「今帰ったよ」

 

「あぁ……帰ってきたか」

 

 ヤンがリビングに戻るとヴォルケンリッター全員が待機していた。

 

「なにか買った来たのか?」

 

「あぁ。今日の作戦で使う予定だ」

 

「黒い布は売っているのはわかるが……この変なマスクまで売っていたのかよ」

 

 袋の中を見たヴィータは苦笑いを浮かべた。

 

「それに関しては私も驚いたよ。シャマル試してみてくれ」

 

「えぇ」

 

 シャマルは袋から黒い布を取り出すとマントのように纏う。

 

「新月の夜にコレなら姿はあまりわからないだろう」

 

「気休め程度だろうがな」

 

「この変な仮面も被らないとだめですか?」

 

「シャマル。諦めろ」

 

「うう……」

 

 シャマルはがっくしと肩を落とした。

 

「さて、確認だ皆準備はいいかい」

 

「ああ。作戦の流れは頭に入っている」

 

「さて。作戦開始は深夜だ。まだ時間はあるピザでも頼むかい?」

 

 ヤンはテーブルの上にはやてが用意しておいたデリバリーのチラシを手に取る。

 

「おっ、いいねぇ、わかってるじゃないかおっさん」

 

「少しは緊張感を持ったらどうだ」

 

 チラシを手に目を輝かせているヴィータとザフィーラをシグナムは首を振りながら見守った。

 

 

  深夜1時。予定通り新月の暗闇が夜を包む。

 

 ヤン達は町の郊外にある森林公園に集まっていた。

 

「良し。皆準備はいいかい?」

 

「あぁ!」

 

「それじゃあ、作戦開始だ」

 

「おう!」

 

 ヤンの掛け声に、ヴィータは勢いよく答えると空中に飛び上がる。

 

 その後に続くように、シグナムとザフィーラも飛び上がった。 

 

「では、私達も移動しよう」

 

「はい」

 

 ヤンとシャマルは公園から少し離れた人気のない空き地に移動した。

 

「ヤンさん。こちらを」

 

「コレは指輪かい?」

 

「はい。コレで皆と念話が出来ます。口に出さず思えば伝わるはずです」

 

「わかった」

 

 ヤンは左手の人差し指に指輪をはめる。

 

『チェックチェック、全員聞こえるかい?』

 

 ヤンは全員に念話をつなぐ。

 

『あぁ。問題なく聞こえる』

 

『こいつは便利だな。皆、持ち場には着いたかい?』

 

『大丈夫だ。これから魔力を出して時空管理局を呼び寄せる』

 

『了解。また状況に応じて適時指示を出す』

 

『わかったぞ』

 

 ヤンは念話を切る。

 

「こちらも準備を始めよう」

 

「そうですね」

 

 ヤンとシャマルは黒い布を取り出すとマントのように纏う。そして白塗りの仮面を手にする。

 

「少し失礼します」

 

 シャマルは軽く手を振る。すると一瞬だけ光が立つ。

 

「何をしたんだい?」

 

「仮面とマントに認識阻害の魔法を少し、コレで魔術的にも姿を隠すことが出来ます」

 

「魔法とは便利なものだな」

 

 ヤンは一言呟くと仮面を被る。

 

『奴らが来たぞ』

 

 シグナムから念話が入る。

 

『作戦を開始してくれ、こちらもこれから向かう』 

 

「よし、行こう」

 

「はい」

 

 シャマルは仮面を被ると軽く手を振る。するとヤンの身体が浮き上がる。

 

「うおおお!」

 

「あまり暴れないでください。行きますよ」

 

 ヤンは転ばないようにバランスを必死に取る。シャマルはそんなヤンを尻目に高速で夜の空を移動し始めた。

 

 

  街の光もあまり届かない暗闇の中でシグナム達は宙に浮かびながら待機していた。

 

「来たか」

 

 シグナムが呟くと街の方角から二人の魔導士が空を高速で飛びながらやってきた。

 

「あなた達! また現れたんですね!」

 

 ピンク色の光を振りまき、杖状のデバイス、レイジングハートを構えたなのはが叫ぶ。

 

「今日は逃さない」

 

 なのはに呼応するように金髪の少女、フェイトも自身のデバイス、バルディッシュを構える。

 

「こんのぉ!」

 

 2人を前にして、ヴィータは戦闘態勢を取ろうとする。

 

「待て! 落ち着け、作戦通りにしろ」

 

 そんなヴィータをシグナムが制する。

 

「攻撃してこない?」

 

「どういうことなの?」

 

 なのはとフェイトの二人は状況を飲み込めずに居るが、しかし警戒を緩めず警戒態勢を取る。

 

「おい! 時空管理局の二人」

 

 シグナムが声を上げ二人に声を掛ける。

 

「は、はい!」

 

 突然のことになのはは驚き声を上げる。

 

「お前達、時空管理局は……()()の仲間なのか?」

 

「奴ら?」

 

「奴らとは一体誰の事!?」

 

 なのはとフェイトの二人は声を荒らげる。

 

「奴らは……裏から世界を牛耳ろうとしている邪悪な存在だ」

 

 シグナムは話しながら念話を繋いだ。

 

『そろそろいいタイミングだぞ』

 

『了解したわ。備えてねヴィータちゃん』

 

『任せとけ』

 

「世界を……裏から?」

 

「そいつらは一体?」

 

「そいつらの名は……」

 

 シグナムはわざとらしく溜めの時間を作る。

 

 その時、なのは達目掛け光弾が急接近する。

 

「危ねえ!」

 

 ヴィータは飛び出すと光弾に当たりに行く。

 

「ぐああー」

 

 光弾にあたったヴィータはその場から吹き飛び地面に倒れ込む。

 

「くっ大丈夫か!」

 

 シグナムが吹き飛んだヴィータに駆け寄る。

 

 その時シャマルから念話が入る。

 

『ヴィータちゃん大丈夫? 痛くない?』

 

『全然痛くねぇ……威力もないから仕方なく自分で自分を吹き飛ばしたけど……そっちのほうが痛え』

 

『というか吹き飛び方がワザとらしくなかったか? コレで良いのか?』

 

『うっさいぞザフィーラ』

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

「まさか……私達を庇って」

 

 なのはとフェイトの二人は心配そうにヴィータに視線を向ける。

 

『どーだーうまく行っただろ。そこまで言うなら次で見本でも見せろよ。ザフィーラ』

 

『お前達、作戦行動中だぞ』

 

 シグナムは念話で一喝する。

 

「大丈夫だ。気を失っているだけだ」

 

「それは良かった……」

 

 ヴィータの無事を知ってなのははほっと胸を撫で下ろす。

 

『大人しくしていろよ』

 

『わかってるよ』

 

「さっきの攻撃……一体どこから……あっ!」

 

 フェイトが急に空を指差す。そこには黒いマントに身を包み、白い仮面をつけた二人の人物が宙に浮いていた。

 

「誰!」

 

「お前達は一体何者だ!」

 

「オーホッホホホホ! 始めまして時空管理局の、フェイト・テスタロッサさん。高町なのはさん」

 

「どうして……私達の名前を……」

 

 仮面の人物のうちの一人が声高らかに笑うと二人は唖然としていた。

 

「ぐっ」

 

「ぶっ」

 

「げふん」

 

 一方、シグナム、ザフィーラ、気絶中であるはずのヴィータからくぐもった声が漏れる。

 

『おい! 気絶中なんだぞ! 笑わせるなよ!』

 

『かなりノリノリじゃないか』

 

『いや、真剣にやっているのは良いことだぞシャマル。だがっ』

 

『結構楽しくなっちゃって…つい』

 

 高笑いしていた女性、もといシャマルは少し恥ずかしそうにしている。

 

「答えろ! なぜ私達の事を知っている!」

 

「あなた達は誰なんですか!」

 

 なのはとフェイトは声を荒らげる。

 

「私達は地球教。地球教の信者は世界中にいるのよ。だからあなた達の事を知ることだって造作でもないわ」

 

「地球教……」

 

 なのはとフェイトは唖然とした表情で宙に浮く二人を見据える。

 

『そろそろ、奴らが動くかもしれん。その前に私が動く。予定道理に合わせろよ。ところで……ヤンの奴はどうしたんだ? さっきから一切話していないぞ』

 

『それが、バランスを取るのに必死で、ずっと直立不動なのよ。でも話は聞いているはずよ』

 

 シグナムはヤンの方を一瞥する。ヤンは空中に浮いて直立不動を保っていた。

 

『はあ……まぁいい。では行くぞ』

 

「はあ──!」

 

 シグナムは武器を上段に構えるとシャマル(仮面の女性)に襲いかかる。

 

「ふっ」

 

 シャマルは左手をかざすと正面に魔法陣が現れ、シグナムの刃を受け止める。

 

『大丈夫か? シャマル』

 

『えぇ。ほとんど力を入れてないでしょ?』

 

『作戦だからな。次はお前の番だぞ』

 

『えぇ。それじゃあ行くわよ』

 

 シャマルは右手をかざす円形の光が現れる。光に右手を入れると空間を飛び越えシグナムの首元に手が現れ、その手はシグナムの首を絞める。

 

「ぐっ」

 

『大丈夫? 苦しくない?』

 

『この程度問題ない。後は私を吹き飛ばせば』

 

『待て!』

 

 ザフィーラが念話に割り込む。

 

『あの二人が動き出そうとしている。この状態でヤンに攻撃されたらまずいぞ。ヤン聞こえるか?』

 

『大丈夫。聞こえているよ』

 

『今からお前に突っ込む、なにか迎撃できる手段はないか?』

 

『一応ブラスターなら持っているが……』

 

『良し。今からお前目掛け突っ込むからそれで迎撃しろ』

 

『迎撃って……撃っても私の場合当たるかどうか……それに威力だってあるだろうし』

 

『当たりに行くから安心しろ』

 

「うおお!」

 

 ザフィーラは拳を振り上げヤンに迫る。

 そんなザフィーラ目掛けヤンはブラスターの引き金を引いた。放たれたブラスターのエネルギーは迫りくるザフィーラの結界を打ち抜き、右腕を掠め血が流れる。

 

「ぐお!」

 

『ザフィーラ!』

 

『この程度大丈夫だ! 作戦を続けろ!』

 

 ブラスターが掠めたザフィーラは着地すると左手で右腕を抑える。

 

「ふん!」

 

 シャマル右手が光りだすと、シグナムを吹き飛ばす。

 

「ぐあっ!」

 

 吹き飛んだシグナムが片膝を着きながら地面に着地する。

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

 着地したシグナムになのはとフェイトが駆け寄る。

 

「後、5分程で増援が来ます! それまでは私達が相手します! 休んでいてください」

 

「待て!」

 

 戦闘態勢を取ろうとする二人をシグナムが制する。

 

 それと同時に、シグナムは念話を繋ぐ。

 

『どうやら後5分程で援軍が来るらしい』

 

『わかったわ。そろそろ引き上げどきね』

 

「うぉっほん」

 

 シャマルは一度わざとらしく咳払いをする。

 

「今日は挨拶程度だからコレくらいにするわ。また会いましょう時空管理局の皆さん」

 

 そう言うと、シャマルとヤンはまるで消えるように何処かへ転移した。

 

「あれが……」

 

「地球教……」

 

 なのはとフェイトは二人が去った場所を眺めていた。

 

「ぐっ」

 

「あっ大丈夫ですか!」

 

 なのはが心配そうにシャマルに声を掛ける。

 

「大丈夫だ。私達もコレで……」

 

 起き上がったヴィータと腕を抑えるザフィーラと合流したシグナムはこの場を去ろうとする。

 

「待って!」

 

「もう少しで私達の仲間が来ます。そこでさっきの人達の事……地球教について説明してください!」

 

 なのは達はシグナムたちを引き留めようとする。

 

「まだお前達を信用したわけではない。だが地球教の事を知りたいなら……」

 

 シグナムはポケットから一枚の紙を取り出す。

 

「ここに書かれている日時に、書かれている場所に上官を連れて来るんだ……そこで話をしよう」

 

 なのはに紙を手渡すとシグナム達はその場から消えるように飛び去った。

 

 

 

 

  一方その頃。予定の場所に転移したヤンとシャマルはマントと仮面を外す。

 

「ヤンさん大丈夫ですか?」

 

「大丈夫さ。だが空中浮遊はもうごめんだね。あれが転移の感覚か……」

 

「それで、この後はどうするんですか?」

 

 服装を整えたシャマルがヤンに質問する。

 

「後数回ほど転移を繰り返して、隣町へ行った後。隣町の駅で皆と合流した後、予約しておいたタクシーを使って家に帰るよ。終電があればよかったんだが……」

 

「なぜそんな面倒なことを?」

 

「念の為さ、相手がどんな魔法を使うかわからないから転移先を読まれる可能性があるからね」

 

「なるほど……」

 

 準備を済ませたヤンが顔を上げる。

 

「さて、それじゃあ転移を頼むよ」

 

「はい」

 

 二人は再び転移した後、隣町で合流を果たす。深夜ということもあり、人気は全く無かった。

 

「ヤン。無事に終わったんだな?」

 

駅前に既に待機していたシグナムたちと合流した。

 

「まずは第一歩だね。手紙は渡せたかい?」

 

「そこはぬかりなく」

 

「よし、それでは怪しまれる前に帰ろう」

 

「怪しまれるとは?」

 

「こんな時間だ。ヴィータが居るのは少しまずい」

 

「おい、どういうことだよ」

 

 ヴィータは少し不機嫌そうになる。

 

 そうしていると、2台のタクシーが現れ、それぞれに乗車した面々は自宅へと帰っていった。

 

  自宅に着いた面々は一様にホッと胸をなでおろした。

 

「何とか無事に終わったな」

 

「えぇ、最初この作戦を聞いたときは不安でしたが」

 

「意外となんとかなるもんだな」

 

「相手方にもいい印象を与えたと思う」

 

「まだ第一段階が終わったに過ぎないよ。大切なのはここからさ」

 

 ヤンは一息入れるとグラスにブランデーを少量注ぎ一気に飲み干した。

 

「それより、腕は大丈夫かザフィーラ?」

 

「掠めただけだからそれほどでもない。それより防御には自信があったのだがまさか破られるとは思わなかった」

 

「一応治療するわ」

 

 シャマルがザフィーラに治癒魔法をかけ始めた。

 

「そう言えばヤン。今回名乗った地球教というのは一体なんだ 」

 

「地球教か。あれは私が居た世界のカルト教団のようなものだ」

 

「そうなのか?」

 

「あぁ。そんな存在だから今回の汚名くらい被ってもらったっていいだろう」

 

 ヤンは少し呆れたように鼻で笑った。

 

 

  翌日。

 夕方頃。市内某所にあるマンションの一室を借り上げた時空管理局の臨時司令部に学校帰りのなのはとフェイトが訪れた。

 

「お邪魔します」

 

「二人共いらっしゃい」

 

 扉を開けた二人を一人の女性が出迎えた。

 

「こんにちは、エイミィさん」

 

 出迎えた女性はエイミィ・リミエッタ。通信主任兼執務補佐官である。

 

 二人が室内に入ると一般家庭で使われているようなテーブルと椅子があり、コーヒーが用意されていた。

 

「二人共よく来たわね。座って頂戴」

 

 椅子には既に深緑色の髪の女性、リンディ・ハラオウンが座っており、二人に着席を促した。

 

「失礼します」

 

 二人は着席し、リンディを見据える。

 

「昨夜は夜も遅かったのに出撃させちゃって悪かったわね」

 

「いえ、任務ですから」

 

「それで、昨夜の出来事をできるだけ細かく報告してくれる」

 

 リンディ改めて二人と向かい合う。

 

「昨夜はですね、魔力の反応を検知して私達は発生地点に向かいました。そこには先日戦った魔導士の人達が居たんです。でも様子がどこかおかしくて」

 

「様子がおかしい?」

 

「敵意を余り感じなかったと言うか……そんな感じ」

 

「私達をみて、一人の女性が聞いてきたんです。お前達は()()の仲間なのか? っ……てその時、急に攻撃が飛んできたんです。その攻撃から私達を庇うように魔道士達の一人が飛び出して……攻撃が飛んできた方を見たら……そこに現れたんです……」

 

「そうなのね。現れたって誰が?」

 

 なのはの話を聞きながらリンディは相槌を打つ。

 

「暗くてよくわからなかったですが、黒いマントに仮面を被った二人組みでした。その二人のうち一人は女性でした。もう一人は分かりません……戦場なのに微動だにしていませんでした」

 

「とても不気味だった……」

 

 フェイトは思い出し、険しい顔をする。

 

「その女性は自分達を……地球教だと名乗っていました」

 

「地球教……聞いたことがないわね……」

 

「でもその女の人は時空管理局の事を知っていましたし……」

 

「私となのはの事も知っていた……」

 

「なんですって……」

 

「地球教の信者は世界中にいるらしくて私達のことは筒抜けみたいです」

 

「管理局ではその様な教団の存在は把握していないわ……一体何なの……」

 

「わかりません……私達がギリギリ相手できた魔道士達を……そんな相手をまるで子供を相手するように一方的な戦いでした……」

 

「私達の攻撃を防ぐほどの結界を貫通する武器も持っていた……」

 

「強力な魔法使いも居る上、結界を貫くほどの威力がある質量兵器を持った正体不明の教団……地球教……」

 

「でも地球教の人達は私達と戦わず撤退していきました」

 

「今回は挨拶程度だとも言っていた」

 

「エイミィ。地球教が撤退した後の行く先は追跡できたの?」

 

 リンディは背後でコンソールを操作するエイミィに声を掛ける。

 

「途中までは追跡できたのですが、市内を不規則に何回か転移した後、隣街へ行ったところまでは追跡できたのですが……それ以降は全く把握できませんでした」

 

「まるで隣町から長距離の転移をしたみたいね……まさか……隣町に支部の様なものがあると?」

 

 リンディは顎に手を置き思案する。

 

「なにか手がかりはないのかしら」

 

「あの、地球教と敵対している彼女達からこの紙を受け取りました」

 

 なのはがポケットから一枚の紙を取り出す。

 

「これは? 日時と場所が書かれているわね……携帯電話も用意するようにと書いてあるわね」

 

「地球教と敵対している人達は、話し合いをする気があるなら上官を連れてこい……とコレを渡してきました」

 

「唯一ある手がかりはコレね……私が行くしか無いわね」

 

「リンディさんが?」

 

「ええ。先方は上官を連れてくるように言ったのでしょ?」

 

「私達も行きます!」

 

「お願いするわ。向こうもあなた達の顔しか知らないでしょうし」

 

「もしも罠だった時は私達が護衛する」

 

「ありがとう。指定された日も休日だし学校は大丈夫そうね」

 

 内心穏やかでないリンディは二人に微笑んだ。

 

 




私はヤン提督のような頭脳はなくどっちかと言うと
アンドリュー・フォークの様な高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応することしかできないので、戦略とかは期待しないでください。
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