シュナイゼルの勝利後、日本は形式上、独立を取り戻したように見えていた。しかし、その独立は表面的なものに過ぎず、大統領として日本政府のトップに立つ扇は次第にその現実を痛感していった。かつてゼロと共に追い求めた理想の「自由で誇り高い日本」とはかけ離れた現実。
扇は一人、内閣府の執務室でシュナイゼルとの会談を思い出す。シュナイゼルは、独立を承認する代わりに対ルルーシュで連合することを条件とした。扇は日本のためだと信じ、独立を優先する決断をしたが、実際にはシュナイゼルの傀儡として機能するだけの大統領の椅子に座ることになってしまった。
扇は日本国民に対して、「新しい時代が訪れた」と繰り返し演説してきた。しかし、その言葉が虚しく響くことに気付くのは時間の問題だった。日本人はその名前を取り戻し、租界とゲットーの垣根を越えるハズだったが、ブリタニア人は立ち退きを拒否した。武力行使に制限のある新秩序ではブリタニア人を強制的に追い出すことができない。既得権益層のブリタニア人は依然として租界の中心を担い続け、薄い基盤しか持たない日本人はゲットーの再開発と教育機会の均等化や福祉政策の効果を待たなければいけないがその原資や省庁にはブリタニア人の影響力が色濃く残っている。歴史教科書の策定に当たっても記述には慎重を期して中立的な内容に努めるべきところをブリタニア寄りの歴史観を余儀なくされた。
親世代と子世代によるジェネレーションギャップが家庭教育に反動を与えた。
監視的な政策で拡散を禁止されている歴史映像や言説が市井で伝わっていき、偽善的な世界に対する憤りが吹き溜まる。警察活動で反シュナイゼルのレジスタンス活動が活発化しないように管理が強化される一方。ダモクレスの存在による威圧は日常の中に溶け込み、人々の意識に働きかけていく。
扇は、自らの信念と現実の狭間で、日々心をすり減らしていた「本当にこれが、俺達が目指した日本の未来なのか?」と自問しながら、答えの出ない問いに苦しむことが多くなった。彼の友人や黒の騎士団の中には、シュナイゼルに反発する者も現れ始め、秘密裏にレジスタンスの動きを進めるものさえいた。かつての仲間たちから「日本を裏切ったんですか?」と詰問される度に、彼の胸には重い罪悪感がのしかかった。
ある夜、扇は国家の運営方針に関する重要な決定でシュナイゼルに伺いを立てた時、この関係が日本の内的自決を抑制し、シュナイゼルの価値観を押し付けるものであることに気付いた。まさにその瞬間、扇は初めて、これが完全な独立などではなく、表向きだけの「偽りの独立」であると理解した。
扇の心にゼロと共に戦った日々の記憶がよみがえった。理想を求め、自由と平等を掲げて闘ったあの日々の情熱が、彼の中で静かに再燃していた。だが今の彼は、大統領としての責任とフレイヤの脅威の前に抵抗する術を持たない。彼が夢見た未来はシュナイゼルの計略の前にもろくも崩れ去った。
扇は、かつて共に戦った仲間たちに顔向けができないと感じるようになり、心の中でこうつぶやいた。「ゼロ、お前が正しかったのかもしれない……」 その言葉を最後に、扇はまた一つ、シュナイゼルの指示に従いながら、心を閉ざしていく。その背後で燻るブリタニア人と日本人が息を潜めながら力を蓄えている。
世界の実質的な最高権力者がブリタニア皇族で在り続けているという事実が日本人に新たな反抗心を芽生えさせ、租界の高層ビルが占拠される。