とある世界にある老舗の大型デパート松崎屋にて
上品な空間に見劣らぬようにと着飾った人々の中でも一際目立つ存在が立っていた。
バースセイバーのウィーゼである。
女性のような細い体と整った顔立ちであるが男性である。
『ウィーゼ様、お待たせしました。』
『お、来た来た。時間にはまだ早いよって、おぉ、すげぇ着飾ってきたなぁ』
待ち合わせに後から現れたのは太刀花藍。
そろそろ化粧を学ぶべきと考え、先日ウィーゼと約束を取り付け化粧品を購入しに来たのだが…
『や、やっぱりおかしいですよね。ごめんなさい。』
『いや、おかしいっていうか…逆にそれならどこでも失礼じゃないとは思うけどさ。』
藍は黒いスカートに白のレース素材のインナーに黒のスーツ。
言うなれば何か重要な式に参加するかのような服装で現れた。
『私はもっと動きやすいのが良かったんですがお兄様が松崎屋に行くならこれだって…』
『ははは、お兄さんはやりすぎだな。
とにかく良いもの着せりゃいいってもんじゃないのに。』
そんな風に笑うウィーゼを遠巻きから眺める3人。
藍の兄である鉄、旬、そして凜の式神ポーチ・ド・ドッグである。
3人はポーチによる透明化の魔術が掛けられていて他人からは姿が見えない。
『俺はセンス悪かったのか…』
整った容姿に知的な印象を与える眼鏡を掛けた男、旬が両手両膝をついて涙をこぼす。
『あんな美人さんが言うのだから間違いないのです』
『そうか?女なんて薄着なら薄着なほど良いじゃろ?』
ポーチに続いて角刈りの髪に岩のような四角い顔、大柄な筋肉質の体を持つ鉄が会話を繋げる。
発言から彼の見た目通りの大雑把さと女性とあらば必ず口説く好色っぷりが伺える。
『よし!じゃあまずは藍ちゃんの服から行こう!
俺が選んでプレゼントするよ!』
『いえそんな!悪いです!
お金ならありますから!』
慌てて両手を振る藍の手を掴んでウィーゼは有無を言わせないように進んでいく。
『なんで?俺が着せ替えして遊ぶんじゃん!さっ、行こうぜっ!』
ウィーゼがご機嫌で藍を連れ去っていく後ろ姿を3人は付けていく。
『うーむ、女性とは思えないくらいスパッとした方ですね。気持ちの良い男性のような性格ですね。』
『それにしても藍のやつめ。
デートなどと言うから見に来たがお相手は女性、それもとんでもないべっぴんさんではないか。』
『ふむむ、それにしては確かにお2人の近くから男性の匂いがするのですが…むむむ?』
ポーチは両手を頭に当てて首を傾げる。
コボルトである彼女は犬と同等の嗅覚を誇るはずだが今日は調子が悪いのだろうか。
『まっ、くだらない男ならば即座に切り捨てて海に捨てるつもりでしたが女性ならば安心ですね。
私は帰る事にしますよ。』
恐ろしい事を言いながら旬は透明化の術を解くと片手を挙げて帰って行った。
『ふぅむ、女同士で遊んでるだけみたいじゃしワシらも帰るかのう?』
『お待ちください!今日はここでアンパンメンのショーがあります!私はそれが観たいのです!』
ポーチが元気よく手を挙げて主張すると、鉄は吼える犬を抑えるように頭を撫でて元気よく答える。
2人は透明化の術を解いた。
『よぉし!ではワシらはアンパンメンに会いに行くぞぃ!
今日はワシの奢りじゃ!食いたいもんを食って飲みたいもん飲んでいいぞぃ!』
性格も雑なら気遣いも金銭感覚も雑な鉄にポチは尻尾を振りながら付いていく。
飼い主として正しいかはさておき、意外とこういう人の方がペットに好かれやすいのかもしれない。
一方、旬はというと帰宅するかと見せかけて藍達の尾行に戻っていた。
(お友達のお姉さんとショッピングを楽しむ妹の姿!
こんな撮影チャンスを逃すわけには行かん!)
先程の発言は鉄とポーチを離すためのものだったらしい。
病的なまでに妹を愛する旬は再び透明化の術を最大限に利用して超至近距離で妹を撮影していた。
『よーしっ、今日はこんなのでどうだ!』
薄色のブラウスと色のついたロングスカート、上が地味にならないよう色の付いたストールを合わせる。
『動きやすい服も藍ちゃんらしいけど、そろそろこういうのもいいだろ?』
『ちょっと大人っぽいですね。駅にいる女子大生さんみたいです…』
いいですとも美人さん!
妹の新たな一面が見られました!
大きくなったな、藍。
『よし、じゃ次はこれ着てみてくれよ!』
ウィーゼが楽しそうに次々と服を持ってくる。
自分で着飾るのもいいが他人を着せ替えるのも好きらしい。
藍は着せ替えられるのが苦手だったが、こうも明るい笑顔を向けられると断れない。
それに色々と嬉しい感想もくれるので、藍も悪い気がしないまま着せ替えられていくのだった。
藍が更衣室から現れる度にシャッターを切りまくる旬だったが、ふと先程のポーチの言葉が引っかかる。
(それにしてもポチちゃんの言葉が気になるな。
彼女が匂いを誤るとは思えないが…どこにも男などいないではないか。)
周囲を見渡してみるがやはり自分以外に藍を付け回すような存在は見当たらない。
不思議に思っていた旬だが、ある一つの仮説を立ててもう一度気配を察知してみる事にした。
(もしや向こうも透明化の術を使っているのでは…?)
その頃、アンパンメンのショーが始まるのを待っていた鉄とポーチだったが鉄にも一抹の不安がよぎっていた。
(ポチちゃんが匂いを誤るとは思えん。もしやワシらと同じように透明化を使っている者がいたのでは?)
こうなると藍の身が気になって仕方がなくなる。
藍は日常的に様々な敵に狙われているが、それらの全てが藍を格下と侮って正面から来るとは限らない。
卑劣にも背中から襲い掛かる敵がいてもおかしくない。
別に杞憂であればそれはそれで構わないのだから確認すべきだろう。
『ポチちゃん。ワシはちょっと席を外すがここで大人しくしておるんじゃぞ。』
ポチに一言を伝えて鉄は藍の元へと走って行く。
こうして鉄と旬は互いに気付かぬままに合流したのだった。
(間違いない…!姿は見えないが大柄の男が藍の傍にいる!!)
(ぬぅ、やはり2人の超至近距離に男の気配を感じる!)
旬は帰宅し鉄はポチの面倒を見ている事になっている。
従ってここに2人はいないはずなのである。
2人は互いを謎の敵と認識する。
(おのれ!年端も行かぬ少女を付け回すとは男の風上にも置けぬやつ!)
(透明になって女子供を付け回すなど恥を知れ!!)
お互いに他人の事をとやかく言う資格はないが
ともかく妹の身を狙う刺客に対し2人は空気の刃を形成し身構える。
『化粧ならまずは下地からなんだけど、藍ちゃん肌めっちゃ綺麗じゃん。』
『ありがとうございます。あ、口紅ってこんな綺麗な色もあるんですね』
ショッピングを楽しむ平和な光景。
そのすぐ真後ろで兄弟同士が互いを認識できないまま本気で殺し合うような悲劇が繰り広げられているとは誰が思うだろうか。
歯を食いしばり目を血走らせ2人の男が本気の鍔競り合いをしている。
(強い!まるで鉄兄さんと戦っているかのようなパワーと圧を感じる!)
(デキる!まるで旬のような小賢しさで立ち回ってきおる!)
そんな真剣勝負に気付かぬまま藍とウィーゼはショッピングを楽しんでいく。
『わぁ、お米で作るクレープ生地ってこんなに美味しいんですね。』
『だろ?ここの店のクレープは全種オススメだぜ!
あ、藍ちゃんクリーム付いてるぜ。』
ウィーゼが藍の頬についたクリームを優しく拭き取ると藍は恥ずかしそうに顔を赤らめ下を向いた。
(しぶとい!とっとと落ちてしまえぇぇえええ!!)
(キメられて…たまるかぁあああ!)
一方、後方1mでは2人の男が全力で関節技を掛け合う。
旬がキメようとした関節技を鉄は激しく力技で外すと息苦しそうに顔を赤らめ下を向いた。
『わっ、見てください!
ウィーゼさん、これすっごく可愛いですよ!』
『おっ、可愛い顔してるなコイツ!
藍ちゃんはこういうのが好きなんだな。』
藍がマスコットキャラのインテリアを嬉しそうに指差し、ウィーゼも優しく微笑む。
(見よ、この奥義!
とっておきの一撃じゃぁあ!)
(おぉ!とてつもない気迫!!
この男、こういう技が得意なのか!!)
鉄が額に血管を浮かび上がらせて力を溜め、旬も精神を集中させて迎え撃つ!
『ウィーゼさんといると勉強になる事ばかりです。
もっともっと教えてください。』
『いいぜ!いくらでも教えてやるよ!』
藍に頼られるのが嬉しくてウィーゼは少年のような笑顔を見せる。
(…な、なんでコイツは帰らんのじゃ…。ワシはもう戦いたくないぞ…)
(俺には引けぬ理由があるがコイツは何故引かない…?正直もう限界が近い…)
互いが引かない事が理解できなくて2人は疲れ切った中年のようなげんなりとした顔を見せる。
かくしてここまで旬と鉄は物音を立てないよう気を使って戦ってきたが
常人ならばともかく実戦経験を積んでいるウィーゼをいつまでも誤魔化せるほどではない。
(んんん?なんか後ろで何かが動いて…?)
何かに気付いたウィーゼが周囲に意識を集中させると、自分達の背後で恐るべき2人の達人が死闘を繰り広げている事が理解できた。
(なっ!何でこんな所でこんな奴らが全力で殺し合ってるんだ!?)
とにかく巻き込まれたらまずい。
まして藍ちゃんに怪我でもさせたら大変だ!
ウィーゼはこの場を離れる事にした。
『ら、藍ちゃん!ちょっと店を出ようぜ!』
『え?どうしてですか?』
藍の返事は至極真っ当だが、ウィーゼには事情を説明できないし状況もわからない。
おまけに悠長に説明してる余裕はない。
ウィーゼはどうにか理由を付けてこの場を離れようとしたがなかなか理由が思いつかない。
そんな時、ウィーゼに救いの手を差し伸べるかのようにデパートの放送が入ってきたのだった。
『間もなく1Fの広場にてアンパンメンのショーが開催されます。』
これだっ!
『あ、アンパンメンのショーを観に行こうぜ!』
親指を立てて提案する。
『アンパンメンですか!?』
予想外の提案に藍が驚きの声を挙げる。
これじゃなかった!
ぜんっぜんこれじゃなかった!
だが今は自分の恥よりも彼女の身の安全が最優先である。
『お、俺さ、アンパンメン大好きなんだよ!さぁ行こうすぐ行こう!なっ!』
『えっ、はい!あっ、私も好きですよアンパンメン!』
気を使われてるのが余計に辛いが、ウィーゼは藍の手を引っ張って駆け出していく。
(いかん!敵がこの男だけとは限らない!2人についていかねば!)
(護衛対象から離れるのが一番まずい!追わねば!!)
ウィーゼ達が駆け出すと謎の死闘を繰り広げる男達が戦いながらも自分達の後を追いかけて来る。
(なんでだよ!?お前らだけで勝手に戦ってろよ!!)
ウィーゼからしたら意味がわからないが、とにかく追いつかれるわけにはいかない。
ウィーゼは次第に足を加速させていく。
(えぇい、走りながらではキツイ。一気に勝負を決めるべきか!)
旬と鉄の戦いも加速していく。
(ウィーゼさんそんなにもアンパンメンの事を…)
藍の勘違いも加速していく。
(こうなれば一気に決めたるわ!くらえぃ!)
鉄が大きく振りかぶって刀を振り回す。
旬は間一髪で屈んで躱すが、鉄の一撃は勢い余って後ろの壁を切り裂いてしまう。
亀裂の向こうには切断された配線のような物が見える。
鉄の一撃とほぼ同タイミングで、藍の手を引いて必死に走るウィーゼの横からポーチがいきなり飛び出して来た。
(やはり私の嗅覚に間違いは無かったのです。藍さんは透明人間に襲われてます!)
ポーチも2人と同じ結論に至ったらしい。
ポーチが現れたと同時に鉄の一撃が配線を切断しデパート内は一時的に停電を起こし暗闇となる。
暗闇のせいでポーチの飛び出しに気付かなかった藍はポーチに引っかかりバランスを崩してしまう。
藍は勢い余ってそのまま吹き抜けの手すりを飛び越えて1階へと落下していった。
(やばい!藍ちゃんが落ちた!!)
(藍!)
(いかん!)
真っ先に気付いたウィーゼが手すりを飛び越えながら体を反転させる。
先程まで己がいた2階床の裏側を蹴飛ばして下へと加速し藍より先に階下へ着地する。
(…藍ちゃんは確かこの辺に…お、来た!)
ウィーゼは両手を前に差し出して落下してきた藍を優しく受け止めた。
着地もキャッチも完璧だったので思わず澄まし顔で口角が上がってしまう。
一方、同じように飛び降りた旬と鉄もそれぞれに行動を取っていた。
(藍はあのべっぴんさんが受け止める!ならばワシは着地を敵に狙われぬようあえて警戒じゃ!)
(藍はあの女性に任せるしかない!私は藍達が狙われぬよう警戒すべきだ!)
着地の衝撃で2人の透明化が解除される。
鉄は着地するとウィーゼを背にして向かって左側で構える。
そして旬も着地するとウィーゼを背にして向かって右側で構えた。
(はぅぁ!
皆さんが落ちてしまいました!
まずは状況を確認せねば!!)
4人の落下を確認したポーチは上の階から吹き抜けに向けて魔術で灯を照らす。
奇しくもそれは暗闇の中に差しこむ一筋のスポットライトとなった。
上空から光が差し込み足場を確認すると、ウィーゼは自分が落下したのは何かのステージだったと気付く。
そして周囲を見渡すと暗闇の中の人々が自分達を凝視しているのがわかった。
ステージ上にて少女を抱きかかえ澄まし顔で笑みを浮かべる美女。
その左側で鬼神のような顔つきで身構える大男。
右側には知的な印象を受ける男が真剣な面持ちで周囲を警戒している。
そして上から当てられる一筋のスポットライト。
暗闇から解放された周囲の人々の目にいきなり飛び込んできたのは
良くわからないがとにかく凄い何かだ。
人々は固唾を飲んでこちらを眺めている。
(何だよ。この空気どうすりゃいいんだよ。それと下の2人は誰なんだよ!)
(う、迂闊に身動きが取れん!)
(この後どうすればいい…!)
3人が固まる中、ウィーゼの腕に抱かれ天井を見上げる藍だけはポーチに目配せをして指示を送る。
(た・す・け・てー)
ポーチは心の中で『わかりました』と返事をして行動を起こす。
これはわかってない時のわかりましたである。
『みなさん!盛大な拍手をお願いします!!』
何を思ったかポーチが観衆に拍手を求める。
初めは戸惑っていた観衆だったが、ポーチが拍手を始めると周囲から少しずつ拍手が湧き上がっていった。
『いいぞー!』
『ステキー!』
キメたくもなかった謎の美しいポーズを讃えられる。
ウィーゼは恥ずかしさで震えつつ視線を下に向けると謎の男2人も肩を震わせて赤面していた。
アンタらのせいで謎の出し物がキマっちまったんだけど!?
『…ひっく…』
ふと斜め上に持ち上げている藍から嗚咽が聞こえる。
恐る恐る顔を確認すると、藍は顔を赤らめ目には涙を浮かべながらプルプル震えていた。
そりゃそうだよね、君が一番恥ずかしい。
『やばいやばいやばいやばい!藍ちゃんがやばい!』
どうしようもなく慌てていると大柄の男が突如走り出した。
『逃げるぞ!!』
状況はわからないがその案には賛成だ。
ウィーゼは藍を持ったまま鉄の後を追いかけていった。
停電が復旧し施設内が元の賑やかさを取り戻す中、4人は人気のないベンチに藍を座らせて必死に宥めていた。
『つまりワシらはお互いを敵と思っとったわけじゃな。』
『すまん!全て兄さんが悪かった!藍、機嫌を直してくれ!』
『全て私の不徳の致すところなのです。』
うやうやしく頭を下げるポチの頭を藍が優しく撫でる。
どうやら落ち着きを取り戻したらしい。
『お兄様、私よりもウィーゼ様に謝るべきですよ。』
お淑やかにハッキリと諭す藍の姿に2人はハッとなりウィーゼに向き直る。
『べっぴんさん!貴女にも大変な迷惑をお掛けした!』
『全ての責は我らにあります。
どうか妹の事を悪く思わないで欲しい!』
2人に綺麗な姿勢で頭を下げられウィーゼも困ってしまう。
『い、いや!気にすんなよ!
お兄さん達は藍ちゃんを守ろうとしただけだろ?』
色々と恥ずかしい目には合ったが事情を聞けば悪い気はしない。
勘違いではあったがこの2人は藍と自分を守るために命懸けで戦っていたのだ。
『しかしそれでは我らの気が済まぬのです!』
『女性にあのような恥をかかせるとは!
太刀花旬、一生の不覚です!!』
ん?女性に?
頭上に『?』を浮かべるウィーゼに合わせるようにポーチが発言する。
『ふむむ、近づいてようやくわかりました。
このお姉さんは男性なのです。』
ウィーゼを指差すポチとウィーゼの顔を2人は何度も往復する。
『…えっと…本当に男なんですか?』
『おう!男だぜ!』
ウィーゼが元気よく答えたその瞬間、旬が腰の刀に手を掛けるのを藍が慌てて抑える。
『貴様…なんというややこしいマネを…!
そのような姿で妹を惑わしおって!たたっ斬ってくれるわぁ!』
『お兄様!
ウィーゼ様は悪くありません!謝ってください!』
ウィーゼが目の前で起きた事態についていけずうろたえていると
鉄が真剣な面持ちで立ちはだかりウィーゼの両手を静かに取った。
『一目見た時からどう口説き落とそうかと思っておりましたが…
いやぁ、まさか男だったとは…』
『お、おぉ…そうだよ?
俺は男だよ?』
意図が読めないのでなんとなく手を振りほどこうとするがなぜか手を放してくれない。
ウィーゼは嫌な予感が膨らんでいく。
『いや!何事も経験と言うしな!
べっぴんさん!男同士だが今晩どうであろうか!?
アンタなら十分に抱ける!!』
その瞬間、鉄の後頭部に藍が鞘で強烈な一撃を加える。
『藍!人の恋路を邪魔するでないわ!』
『ウィーゼさん逃げてください!
このお詫びは後日必ずさせていただきますので!!』
珍しく藍ちゃんも声を荒げている。
確かにこれはどうにもならなさそうだし自分も色々とキャパオーバーだ。
ウィーゼは藍に片手を挙げて挨拶だけ済ますと全力で駆けだしていった。
それから数日後、ウィーゼの所属する部隊【Liv og dod】に藍が訪ねてきた。
『先日は大変お見苦しい所をお見せいたしました。
こちらお詫びの品になります』
先日の謝罪だとわざわざお土産を持参して現れたのだが…
『いや、そんな気を使わなくても…って、わぁぃ…』
袋を受け取ったウィーゼは中身を取り出して気の抜けた声を挙げる。
袋の中から出てきたのはアンパンメンの限定グッズだった。
『おや、ウィーゼにそんな趣味があったんですね~』
何となく事情を察したジークシスがニヤニヤと笑みを浮かべている。
『趣味は人の自由だよね』
イノリに皮肉を言われる。
『そういうのはもう卒業した方がいいぞ』
デュガーに皮肉か本気かわからない言葉を浴びせられる。
『いえ、私はそうは思いません。
いつまでも童心を持ち続ける事は素晴らしい事です』
藍がフォローを入れてくれる。
もうやめて。
『それと先日のお出かけのやり直しという事で、今から映画を観に行きましょう。』
そう言って藍が差し出して来たのは【劇場版アンパンメン】のチケットだった。
仲間達の好機の視線に耐え、ウィーゼは顔を真っ赤にしながら先日の話を振り返りつつ誤解を解き始めるのだった。
決めポーズの所で仲間達に爆笑された。