研究所生活はホワイトだけど、外の世界の方はブラックだ。 作:フォールンフロア
「カペラちゃん‼︎ 居るわね⁉︎ 入るわよ‼︎」
イザルが走り抜けた先は研究所内にある少女達の部屋が並ぶ居住区。
その居住区の一角にある、とある一室へと連れ込まれた。
「……何だこりゃ?」
部屋の全貌を見てフォールは思わずそう呟いた。一言で言えば良く分からないモノが部屋中に転がっている……と言う印象であった。言うなれば散らかった部屋だ。
テレビも4台置いてあるのが大きな印象と言えた。
「あー、イザルさんじゃ無いっスか〜。何か……って、噂のフォーマルハウトさんもご一緒じゃ無いスか〜」
その部屋の主。カペラは水色髪に寝不足なのかエグイ付き方の隈が浮かんでいる娘であった。口調もダラけており、如何にも怠惰な印象を受ける。
「……早速で悪いけれど、ゲームしましょう‼︎」
「お、良いっスよ。丁度、暇してたんで。と言うか
「ええ。フォール君、多分だけど
「流石、イザルさん。その読みは当たっているっスよ。フォーマルハウトさんが住んでいた地域は急速に荒廃化が進んでいたっスからね。
治安が悪いってレベルじゃ無かった筈っス。吹き溜まりって……言うにはちょっと遠いっスけど、まぁギリって所スね。生きるのが精一杯、或いは死ねれば良しと考えるのもさもありなんス」
「
「今の世の中を自己責任論の暴力性を体現……いいや暴走させた結果、フォーマルハウトさんみたいな人が出て来るのは必然スよ。
ま、政府とか女尊男卑が蔓延してて常々に臭いモノに蓋をしてるんで、結果的に首を絞め続けているんスよね」
ゴチャゴチャと機械の群を弄りながらカペラはそう現状を言う。
「ま、取り敢えずはフォーマルハウトさんに必要なのは、識る事っスよ」
カペラはそう言い電子ゲームのコントローラーを手に取って見せる。
「電子ゲーム。した事無いっしょ? やり方を教えるんで取り敢えずは遊べんでみるっスよ」
「……電子ゲーム? 言葉では聞いた事はあるな。何十年も前に廃れたんじゃないのか?」
「…………。あ、こりゃフォーマルハウトさん、時代錯誤の知識ばかり集約されてるっスね。
西は兎も角、東の現状はカペラさんの予想よりも
カペラはフォーマルハウトの言葉を聞いて広い視野を俯瞰した上で彼自身の問題の他に更に広義的な意味で問題が浸透しつつある事を察した。
「……その話題は考えても無駄っス。カペラさん達にとって如何でも良い事っス。それじゃあ、早速やってみましょうっス」
カペラはその話題を切り捨てる。深みに嵌って不毛な会話よりも目下の目的を果たす方を優先した。
「それで何にするの?」
「対戦型のゲームよりも協力型のゲームの方がカペラさんは楽しいっスね。ゲームってのは
カペラが準備を終わらせる間、イザルはフォールと一緒に近くに座る。勿論、隙は見せない。
「やっぱ、狩りゲーが1番っスよね〜」
カペラはゲーム機を3台起動させ、コレまたソフトを3つ用意する。起動したゲームソフトはかつては一世を風靡した某有名ゲーム。巨大なモンスターと戦うと言う内容のアクションゲームであった。
しかしながら女尊男卑の蔓延からか『女性軽視のゲームなど認めるか‼︎』と言う強引な批判からの開発元の会社は文字通り爆破産に追い込まれた。
「……ぶっちゃけゲームの何が面白いんだ? 虚しいだけじゃないのか?」
電子ゲームの存在自体は知っているが、その存在意義が理解出来なかった。
「無知の知。その言葉を知っているっスか?」
「……ソクラテスか?」
「そうっス。識らないなら今、識れば良いんスよ。減るモノじゃ無いっスよ?」
そう言いカペラはコントローラーをフォールに手渡した。
「…………」
コントローラーを受け取りマジマジと見つめる。ボタンが複数あり、持ち易い形状をしている。色々と意味が分からないが取り敢えず付き合ってやる事にした。
「データは4つともクリア済みっスよ。だからエンドコンテンツ遊び放題っス。まぁ、2つめ以降はRTAのノリだったスけど。だから、気兼ねなく皆と一緒に遊べるっスよ」
「凄まじい努力の方向音痴ね……」
「フォーマルハウトさんも方向音痴じゃないスか。努力の」
「俺が方向音痴だと……?」
「だってそうじゃないスか。死ぬ為に努力を惜しまない点とか、真面目に考えで方向音痴っスよ。普通、カフェイン錠剤を3桁単位で持ち歩くなんて真似、しないっスよ」
そう言われてフォールは暫し考え込んだ。
「それよりも、操作にはテレビの画面にガイドが出るっスからそれを見れば簡単には分かるっスよ」
「お、おう……?」
「フォーマルハウトさんは完全に初心者通り越して未体験みたいなもんスからね。クエストじゃなくてフリーの奴にしましょう」
そんなこんなでカペラに操作方法とかを教えて貰いながらゲームをプレイする事になった。
「槍がやっぱり使い易いわね」
「フォーマルハウトさんは双剣っスか?」
「いや、適当だ。何にも分からんからな」
「まぁ、それが1番馴染むって言うのもあるっスしね」
其々のテレビ画面を見つつ言葉を交わしながら画面が切り替わる。
「ソイツがターゲットっスよ‼︎」
「ッ⁉︎ 意外と動きが速いな⁉︎」
「焦って突っ込み過ぎると返り討ちよ‼︎」
そしていざスタートするや否や数分持たずにフォールが操作していたキャラが力尽きた。
「イザルさん、落とし穴‼︎ 落とし穴で動きを止めるっス」
「ええ、フォール君。今の内に頭の所を狙って‼︎」
「お、おお‼︎」
電子ゲームに不慣れなフォールを2人が援護する形で進めて行く。そして、遂に打ち倒す事に成功する。
「……まぁこのゲームの流れはこんな感じっスね。どうっスか? やってみた感想は?」
カペラはこの電子ゲームの一通りの流れを体験させたフォールに感想を求めた。
「……電子ゲームなぞ空虚かと思ったが、意外と興味が惹かれるな」
其処でフォールは何時もの様に皮肉か舌鋒な言葉が漏れ出すかと思いきや、意外にも前向きな言葉が出てきた。
「何事も『目的』があると人は動く『理由』になるんスよ。フォーマルハウトさんが足りなかったモノ、それは目標とか目的っス。
理想とも言うっスね。あ、俗に言う理想論とはまた別の解釈となるっスよ。理想と言うのはあるべき姿であり行動を起こす目的を与え、現実へと昇華させる概念っス」
「目的を、与える……」
「確かにフォーマルハウトさんは知識量はあるし思考力と思うっスよ? でも、生きる意義と目的、あと信念が無かった。理想と信念を失っている人を廃人、と呼ぶんス」
「廃人、か。言ってくれるな」
「貴方もボロクソに言い叩いていたじゃないスか。意趣返しっスよ、意趣返し」
カペラはそう笑う。やったらやり返される。当然の事だと。
「何も言わないわよ。そしてアルフェルグちゃん達も始めとして誰も気にしていないわ」
「……まだ、何も言っていないが」
イザルは片目を閉じながらそう言う。思考を先回りされて結論を言い出された。
「…………。」
「後、もう1つフォーマルハウトさんには足りないモノがあるっス。ぶっちゃけコレが1番、重要なんスよね。それは、ズバリ……欲望っス」
「……欲望、か。逆に聞くが君らの欲望ってのは何だ?」
「そりゃ勿論、ゲーム三昧の毎日と適度なバトル要素っスね」
「芸術の真髄を極める事、かな。例え努力が報われなくたって、後悔しないわ」
「………………。なぁ、1つ良いか?」
「何かしら?」
「……両断者。いや、ジャバウォックだったか……今、彼は何処に居るんだ?」