研究所生活はホワイトだけど、外の世界の方はブラックだ。 作:フォールンフロア
フォールの拗れた態度の氷解。
その情報は瞬く間に研究所内に広まった。女尊男卑の風潮の都合上、理解出来ない訳では無かった為、普通に受け入れられた。
「……成程。それは何よりですね」
ベロニカはフォールの心境の氷解に至った事に安堵する。あの状態のままでは本当に餓死しかねないからだ。
「ですが、味覚障害と栄養失調の問題は未解決のままですので、其方の対応に移らせて頂きます」
「……なぁ、この研究所の面々は当事者の目の前で堂々と今後の予定を企てないと気が済まない病気にでも罹患しているのか?」
「……まぁまぁ、情報伝達のミスが無いから良いじゃない」
場所は食事場。
フォールと歳の近い娘達が総員、揃って円卓を囲んでいた。円卓には今日の夕食の料理が並べられていた。尚、フォールには亜鉛不足と言う事でアボカドが用意されていた。
そんな状況の中でフォールは半ば呆れ気味にそう言葉を溢した。何せ、もう既に何回も見た事のある本人の目の前で計画を企てる光景に対して、だ。
「……その企ての中に反応に困る内容が多々含まれている気がするのだが」
「別に良いじゃない。減るモノじゃ無いし。それよりもベロニカさんが亜鉛を沢山、含んでいるモノを用意してくれたからちゃんと食べる‼︎」
「分かったからそう急かすな……。とは言え元々、少食なんだよな。経済的理由で」
「あ……」
アルフェルグは思わぬ地雷を踏んでしまったと思わず口を噤んだ。女尊男卑の影響で経済的格差、困窮が深刻化の一途を辿っており日本国内でも東日本を中心にスラムになりかけている地域が広がりつつある。
「ゆっくりでも構いません。焦る必要はありませんので、しっかり摂って下さいますよう」
当然、フォールが1番最後に食事を終える事になった。夕食の後は風呂の時間との事。神座研究所の風呂は人数的問題で銭湯に近い構造との事。神座研究所はご存知山の中の秘境中の秘境。故にスタッフは住み込みに近い生活サイクル、それに男性職員と女性職員も居る為、男湯と女湯にちゃんと分かれている。
「風呂か。ちゃんと入ったのはいつ以来か……」
「以来……?」
「俺の住んでたボロアパートにはガスが無くてな。辛うじて電気と水は通っていたがな……それらも断線する事が多かった。辛うじてシャワーが使えたくらいだ」
「…………そうなんだ」
経済困窮は時間が経てば経つ程、波及して行く事だろう。当然、女尊男卑やIS主義に信奉している者共はその下々の国民に対して歯牙にも掛けずに居る事だろう。
『自業自得』だと、切り捨てている。
「……まぁ、慣れるまで時間が掛かるだろうな」
入らないとは言わなかった。無いとは思うが自分も一緒に入るとか言い出されるかも知れないからだ。
大浴場の近くにまで来た。男湯と女湯と書かれた暖簾が見えた。
「フォールの分の着替えは既に用意してあるって、ベロニカさんが言っていたわ」
「……マジか。手ぶらで来ちまったからどうしようと思っていたんだが。と言うか何時の間に用意していたんだ?」
食事場ではフォールがちゃんと食べているか確認していた、筈。……いや、自信が持てないが。
「ベロニカさんが言うにはメイドの基本は家事労働だって。他にも経営学や射撃術、尋問技術、暗殺技巧、拷問手法とか幾つかの素養も必要らしいわ」
後半に行く程に物騒な単語の羅列が聞こえて来た事に恐怖を覚えた。……聞かなかった事にしたいがあのベロニカの薄ら笑みを思い出す為に忘れると言う手段は無かった。
アルフェルグと大浴場の入り口前で別れて、男湯の暖簾を潜り更衣室へと入る。
「……おお、結構広いんだな」
大浴場の湯船は複数人が入っても余裕がある程の広さが設けられていた。湯船から湯気が立ち昇っており温度は充分のようだ。
シャワーで頭を軽く洗ってから、湯船に肩まで浸かる。
「……こんなにもゆっくり出来る日が来ようとはな」
外の〈世界〉は本当に醜い人間で溢れていた。ISの研究所は当初の予想では屑と外道と醜い悪臭の人間しか居ないと考えていた。
いいや、この神座研究所だけが特異的であり他のIS研究所は人の話を聞かないし、傲慢で、自分の都合しか理解しない女尊男卑やIS至上主義に塗れて人権侵害も厭わなくなった連中しかいないのかも知れない。
「……ん?」
その時、水音を伴う足音が聞こえて来た。考えられるのは男性スタッフだろうか。そう考えていた矢先、湯煙の奥から現れたのは銀色の髪を靡かせ身体にタオルを巻いたカノープスの姿が目に映った。
「んなっ⁉︎」
想定外の人物の登場にフォールは目を見開いた。流石にこの展開は予想はしていない。
「よもやカペラが君を理解させるとは想定外だったのものでな……。考えたのに未実行のまま不完全燃焼で終わる位ならば、いっそ使い切ってしまおうと思ってな‼︎」
「何を言っているのかさっぱり分からないんですが⁉︎」
カノープスは言葉通り『身体』で説得するつもりだったらしい。なんて娘だ‼︎
「安心したまえ。スタッフ一同にはこの時間帯には来ないように既に説得済みだ。皆、快く快諾してくれた」
「其処は止めろ‼︎ 此処の研究所の面々は落とした頭のネジを探してこいよ⁉︎」
カノープスは得意顔を浮かべながら湯船に足先から浸かり距離を詰めて来た。
「男女の仲を深めるにはやはり裸の付き合いが1番だ。そう、混浴が最も効率的だ」
何が効率的なのか、サッパリ分かりません。後、混浴が一般的では無い。そもそも男女の比率が大きく隔てているのだから混浴自体、廃れている筈だ。
「一体、何処でどんな知識を拾って来たんだ⁉︎ 正直、君が1番マトモだと思っていた俺が心底、馬鹿だったよ⁉︎」
「そうかな? 外の〈世界〉を見てきた君からすれば私も充分、狂っているだろう?」
「……む。……そうかも知れない、のか? って⁉︎」
カノープスの言葉に納得したその僅かな時間の間に距離を詰められ、フォールの隣に腰を降ろす。
「何、気にする必要は無い。今後も誰ぞ君に対して性的な意味でも突撃して来よう。女の裸に見慣れておく方が良い」
「……自分で何を言っているのか君は理解しているのか……? 俺にとっては目に毒なんだが」
「無論、理解しているとも。だが、君の為でもある。……ISの機体に登場した操縦者の姿は見た事はあるか?」
「いや……無いな」
「そうか。我々の場合は、構想自体の発想が異なるが故に一概に比較は出来んが……総じて身体のラインが丸分かりである事に変わりは無いからな」
「……其処から先の話は今は聞きたくないな」
その、言葉にはしたくない変化が生じかねないからだ。
「フフ、君は中々揶揄い甲斐があるな。まぁ、焦る必要は無いだろう。時間は沢山あるからな……ゆっくり行こうでは無いか」
その後、カノープスは一頻り風呂を堪能した後、一足先に湯船から出て去って行った。
「…………って、今一度思い返すと今後も似た様な状況が発生しかねないって事なのか⁉︎」
敢えて選ぶならば⁉︎
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巫女服
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メイド服
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魔女のローブ