研究所生活はホワイトだけど、外の世界の方はブラックだ。 作:フォールンフロア
「其処まで言うんなら、意地でも『理解』させてあげる‼︎ 私達、総出で‼︎」
納得では無く理解と言う辺り、目が据わっていた。然も1人に対して全員が掛かってくると言う悪夢。ココハジゴクカ?
「総出。全員で総攻撃してくるつもりか? 数は力とは良く言うが。多過ぎても邪魔になるぞ」
「そう言う意味じゃないよ‼︎ わざとズレた認識していない⁉︎」
フォールの捻くれた認知では、全員で毀ち殺す認識であった。話が通じない為にアルフェルグが腕を振り上げて怒る。
「……うわぁ、あのアルフェルグが苦戦してる。堅物のレグルスですら絆されたってのに」
「ん。博士が、凄く、難物って……言ってた」
「環境が変わったのだ。困惑するのも無理はあるまい……」
2人の諍いの騒ぎは庭園全体に波及していた為に遠目で見ていた娘達が集まって来ていた。
「あ、カウスちゃんにアルネブちゃん、カノープスちゃん‼︎ 助けて、フォールが分からず屋なの‼︎」
「……分からず屋と言うよりも現実を言っているだけなんだがな」
「現実、か。遠目から君の咆哮沁みた主張は耳にしていたが、実際にその通りなのだから反論の余地が無いのが痛いな」
「カノープスちゃんは何方の味方なの⁉︎」
長身で長い黒い衣を軍服の様に着熟しカノープスと呼ばれた銀髪の娘はフォールの主張は完璧な正論故に反論出来る要素が無い事を認めていた。
「その上での私が君に提示する反論は君自身が直に私達を見て確かめるが良い」
それらを踏まえてカノープスはフォールを本気で『理解』させる策の実行に移した。
「はぁ?」
「現実とは1つとは限らん。
世界の数だけ現実が存在している。政界、業界、芸能界、挙げれば幾らでも出よう。
この神座庭園も一種の〈世界〉だ。君はこの場所が君の言う『現実』と同じと考えている事だろう、それは無理も無い話だ。世界が移り変われば既存の認識は通じやしない」
「……詭弁だな」
「言葉では幾らでも取り繕える。ならば、証明して見せようか」
カノープスはフォールが幾ら言葉を並べて説得しても納得しない事は彼をこの神座庭園に連れて来たスタッフから聞いていた。
故に現時点では首を縦に振らず『理解』しない事も織り込み済み。故に次の一手を打つ。
「言葉が駄目ならば身体で証明するまでだ。君が本気で希死念慮を願っているのは重々承知だ。ならば此方も全力を持って応えよう」
「え、……? え⁉︎」
表現が何処か危ない匂いが漂っているのは気の所為か?
「フッ。何を考えたのか敢えて聞くまい。お互い初対面、君が我々を警戒するのも無理らしからぬ話。君は優しいな、自ら突破口を用意するとは、有り難く突かせて貰おう」
カノープスは清々しいドヤ顔をして見せる。やはりその手に関しては免疫が無い事が証明された。
「カノープス、やるじゃない‼︎」
「あの手の性格には感情論よりも理屈、言葉よりも物理で攻める方が効果的だ。最初にアルフェルグが抱き付いた時の反応から既に弱点は判明している」
「ん。ん。……ん‼︎」
「ふふーん、成程。じゃあ、その線で」
「本人の目の前で続きの作戦会議するんじゃなぇよ⁉︎ せめて本人が居ない所か、やる前に打ち合わせしとけよ⁉︎ と言うかこの下り、見覚えあるんだが⁉︎」
何処かで見た事のある展開を前にフォールは又しても、馬鹿なのか⁉︎ と言う感傷に浸される。
「だってぇ、君が想像以上に分からず屋だもん」
「分からず屋じゃねぇよ。現実を……ああ、話が通じねぇ……‼︎」
「アンタが1番、話が通じていないわよ」
小さな体躯で赤い髪を束ねた娘であるカウス・アウストラリスはジト目を向けつつそう溢した。
だが、洪水の様にゴリ押しで押し通せば彼は対応し切れないと言う点をアルフェルグは見逃さなかった。困ったらゴリ押し、即ち押しに弱い。恐らく本人も気付いていない弱点……孤独であったが故に余り人と対峙してこなかったからだろう。
「じゃあ、先ずは私とアルネブちゃんで施設内を案内するわね。ほら、アルネブちゃんもおいで」
「ん、んッ‼︎」
顔立ちは幼いがフォールよりも身長が高い上に豊満な北半球が露出している寝惚け眼の少女、アルネブが口数が少ないながらもフォールの左隣を陣取り腕を絡めて来た。絡めると言うよりも凭れかかり、その豊満な胸で腕を挟み込んで来ている。
同時にアルフェルグも右側を陣取り同じ様に腕を絡めて来る。身長の問題で上目遣いで顔を覗き込んで来た。
「……え?」
「腕が自由だと、目を離した隙に自殺するでしょ? 博士達から自殺させないでって言われてるから」
「……ええ?」
「ん……死んじゃ、ダメ……‼︎」
「他に手は無かったのか……‼︎」
両腕を封じられフォールは半ば困惑した。いや、待って? コレは現実なのか? 両手に花と言う単語は歴史の闇に葬り去られたのでは無かったのか⁉︎ そして、其の儘2人に連行される形で歩き出して行く。
「継続は力だ。先発は任せよう」
「そうね。他の娘にも声を掛けておかないとね」
3人を見送っているカウスとカノープスは悪い笑みを浮かべていた。暇を与えない。無理矢理にでも理解させる。