コハルちゃんに沢山オトモダチがいるお話   作:コハルママの人

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4.【ファウストライダー】削

Dさんという生徒がいます

この生徒はまじめな人で、毎日ちゃんと授業をうけて予習、復習もしています

ただ、なぜかテストの点数はいまいちです、せいぜい赤点をとらないぐらいです

それが、Dさんはとても悔しくてしょうがありませんでした

その日のテストも、結果は芳しくありませんでした

落ち込んでいると、近くて下江さんが喜んでいるのが見えました

こっそりとのぞき見してみると、自分よりもはるかに良い点数を取っているのです

自分と同じ、できない組だと思っていた下江さんが良い点数をとっていることにショックを受けました

なんで自分は良い点数をとれないんだろう

 

そんな気分が続いたある日のこと

普段は早々にご飯を食べて予習をしているのですが、この日はそんな気分ではありませんでした

一人になりたかったDさんは人が来なさそうな場所に探し

ここならば人が来ないだろう、そう思い体育館の裏側にきました

そして一人ご飯を食べながらテストを眺めます

頭の中で復習をするのではなく、ただぼんやりと眺めていると、ふと人の視線を感じました

せっかく人が来ないと思った場所を選んだのに

そう思いながらDさんはそちらをみます

そこには紙袋を被った生徒が立ってました

 

「…え?」

 

思わずDさんは硬直します

人気のない場所を選んだら不審者に遭遇したのですからしょうがありません

 

「きゃ…」

 

【あぁ、待ってください、私は不審者じゃありません!】

 

「どこが!?」

 

不審者をセリフにDさんは突っ込みます

不審者は【あはは…そうですよね】と苦笑いしているようです

とりあえず襲ってくる様子はないのでDさんは一旦落ち着きました

 

「あんた何者なのよ?」

 

【えーと、お友達に会いにここにいるだけですよ?】

 

「紙袋被っている人の友達って…不審者?」

 

【そんなことはありませんよ!?まっとうな生徒です、ただ私たちが特殊なだけで…】

 

「私たちってまだいるの…?」

 

【あはは…】

 

笑ってごまかしているのをDさんは胡散臭そうに見ます

 

【と、ところで先ほどなにか見てましたけど、何を見てたんですか?】

 

ごまかすようにDさんに聞く不審者、どうみてもごまかし切れてませんね

Dさんは、なんかそれをみてどうでもよくなりました

というか仮に不審者だとしてもなにもできそうにないように見えたのです

 

「別に、あんたには関係ないでしょ」

 

【ここであったのも何かの縁です、なんなら愚痴でも聞きますよ】

 

「…はぁ、本当、どうしようもないことなのよ」

 

どういいながらDさんはテストを見せます

そこには、赤点ギリギリの点数が書かれてました

 

【これは…】

 

「テストでいい点とれないのよ、頑張って勉強しているのにいっつも赤点ギリギリ…この前なんて自分と同じくらいのクラスメイトがいい点とってたのに、私は全然だった」

 

そういいながら、Dさんは悔しそうに顔をゆがめます

本当に悔しいのでしょう

それをみて、不審者は少し思案するような顔をします

 

「何よ、笑いたいなら笑いなさいよ」

 

【いえ、そんなことはしません…あなたは良い点数が取りたいんですか?】

 

「そうよ!こんな点数よりももっといい点数とりたいの!」

 

【…良かったら勉強を見ましょうか?】

 

「え…?」

 

【こう見えて私、補習授業部の部長をやってたんです。人の勉強を教えるのは得意ですよ】

 

不審者の言葉にDさんは固まります

明らかに怪しい格好の相手に勉強を教えてもらうとかついさっきまで考えられないことです

でもDさんは、全然テストでいい点とれないことを気にしてて、藁にもすがりたくて

 

「…それじゃあ、お願いしようかしら」

 

半分やけっぱなちな気持ちでそれに頷きました

紙袋の奥でニッコリと不審者が笑ったような気がします

 

【それじゃあ放課後ここにきてください、勉強を見ますので】

 

「まって、ここでやるの!?」

 

【はい、あ、ちゃんと勉強できるように整えますので安心してください】

 

「そういう問題じゃなくない?」

 

【それじゃあ、私は準備しますのでまた放課後に】

 

そういって不審者は去っていきます

Dさんはあっけを取られましたが、昼休みの終わりのチャイムで我を取りもどします

そして慌ててご飯を食べると、教室に戻っていきました

放課後、体育館の裏側にいくと、なぜかティーテーブルが設置されてました

そこに不審者が座ってます

 

「うわ、本当に用意してる…」

 

【嘘だと思ったんですか!?】

 

紙袋の奥で大げさに驚いているのがわかります

 

「いやだって思うでしょ、普通に。というか私が人を連れてくるとか思わなかったの?」

 

【あはは…もしそうしてたら私はここにいませんので】

 

「なにそれ」

 

【なんでもありません、ささ、席に座ってください。ナギサ様がご厚意で用意してくれた椅子ですよ】

 

ナギサ様ってだれ?とDさんは思いましたがややこしくなりそうなので口にはだしませんでした

というかこれ以上不審者を増やしてほしくないのが本音です

 

【さて、これから勉強を始めるのですが、その前にご褒美を用意しました】

 

「ご褒美?」

 

【はい、貴女は良い点数をとるのが目的ですが、それ以外にもご褒美があった方が良いと思ったんです。そこでですね…】

 

不審者はそういってバッグから何かを取り出します

それは白い鳥のようですが、丸っこく、目がぎょろりとしており、舌をだしている、そんなぬいぐるみです

 

【じゃーん、ぺロロ様のぬいぐるみです。良い点数をとれればこれがあげちゃいます!これでもっと勉強に集中…】

 

「何それキモイ、いらない」

 

【即答!?】

 

「というかなにその変なの…」

 

【変なのじゃないですよ!モモフレンズのぺロロ様ですよ!知らないんですか!?】

 

「しらない…勉強しててそういうのまったく見てないし…」

 

【もったいないですよ!】

 

「どうでもいいかな、それよりもさっさと勉強教えてよ」

 

【そんなぁ】

 

「いっておくけど、全然だったらもう来ないから。今日はお試しできただけだから」

 

【もちろんわかってますよ…本当にいりません?】

 

「いらない」

 

それから、二人っきりの補習授業が始まります

まず、模擬テストからはじめて、間違った部分を復習する形です

 

【あなたはたぶん、うまくテスト中にうまく知識を引き出せないんだと思います、なので何かと結び付けて思い出せるようにしましょう】

 

そういって不審者はDさんにあった方法を一緒に考えてくれます

初めは疑心暗鬼だったDさんもしっかりと教えてくれる不審者に心を許しました

それからたまに休日を挟みながら放課後の補習授業を続けます

 

【ずっと勉強してたら脳がつかれちゃいますから、休みを挟んだ方がいいんですよ】

 

毎日勉強をしなくていいのか、というDさんの質問に対する不審者の言葉です

ちなみに不審者は名前を聞いても名乗らなかったので不審者のままです

深く追求しない代わりにDさんも名乗りませんでした

不審者の教え方は確かにうまく、Dさんが小テストで満点を取った時は二人して喜び合いました

そんな補習授業が続いていき、すっかり仲良くなった二人ですが、とうとうあの時期がきました

そう、定期テストの時期です

Dさんは定期テストに向けていつも以上に張り切ってますが、どうも空回りしてるようで、模擬テストの点数も落ちていっています

定期テストが前日に控えたその日も、模擬テストの点数はさんざん、補習授業が終わったあとも勉強しようとしています

それに不審者はまったをかけようとしますが、Dさんは止まる様子はありません

それならば、夜に寮を抜け出してここに来るように、不審者は提案しました

勉強を見てもらえると思ったDさんはそれに了承します

 

その日の夜

Dさんが寮を抜け出して体育館の裏側にいくと、そこにティーテーブルはなく

不審者がバイクに乗ってDさんを待ってました

 

「なにそれ、勉強するんじゃ…」

 

【最後の補習授業を始めます。乗ってください】

 

有無言わさぬ声色で不審者はいいます

Dさんはしぶしぶ、バイクに乗ることにしました

Dさんを乗せたバイクは、学校を飛び出てどんどんスピードを上げていきます

Dさんは落ちないようにぎゅっと不審者を抱きしめます

 

【上を見てください】

 

バイクを走らせながら、不審者がいいます

そこには、星空が広がっていました

今までに見たことのない、まるで吸い込まれるような綺麗は星空です

夜風を浴びながら見るそれは夜中に抜け出したみるという非日常的なことも加わって今まで見てきた何よりも綺麗で

今まで感じていた焦りが抜けていくようなきがしました

 

【このまま適当に走りますから、好きなだけ星空を、夜の光景をみてください】

 

不審者の言葉に、Dさんは何もいいません

ただただ、この光景を目に焼き付けていました

そうして、夜のツーリングは終わり、二人は学校に戻ってきました

【焦りは抜けましたか?】

 

不審者の言葉に、Dさんは頷きます

 

【なら今日はもう寝てください、そして明日のテストに挑みましょう…大丈夫、アナタならきっとうまくいきます】

 

「勉強は?」

 

【今までさんざんやってきたんです、今更詰め込んでもただただ脳が混乱するだけです

 だから焦りを取りました、これが最後の補習授業です】

 

いつものDさんなら反発するでしょう

しかしDさんは素直にうなずき、その日はもう寝ることにしたのです

 

そうしてテスト当日を迎えました

いつもならうまく回答を引き出せないのに、今日はすらすらと解答できます

自分でも驚くほど手ごたえを感じました

そうしてすべてのテストが終わって、今までにない手応えを報告しようと体育館の裏側に来ましたが、不審者はいませんでした

代わりに、ティーテーブルに置かれたいつぞやのぬいぐるみが一つ

それに添えられた手紙が一つ

 

【今までよく頑張りました、もうあなたは大丈夫ですよ。これからは自分を追い詰めないようにしながら周囲に目を向けながら青春を過ごしてください】

 

手紙にはそう書かれていて

もうあの不審者には会えないのだと、わかりました

Dさんは静かにぬいぐるみを抱きしめ、静かに「ありがとう、先生」と言いました

 

・・・

・・

 

【赤点は取ってませんが今回は点数が下がりましたね、コハル】

 

「あぅ…」

 

【いえ、怒ってるのではありません。赤点取らないだけで偉いですよコハル】

 

「そんなこと…次はDさんみたいにいい点数取ってみます!」

 

【Dさん?聞かない名前ですが…】

 

「私のクラスメイトで、普段は赤点ギリギリだったんですけど、今回は全教科90点以上だったんです」

 

【それはそれは、その方は頑張ったんですね】

 

「はい、私はDさんみたいに頑張らないと…」

 

【無理をしてはいけませんよ、コハル】

 

「わかりました」




4.【ファウストライダー】心身ともに『削』っている生徒を助ける話
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