フォックスのFではないFさんという生徒がいました
Fさんはおまじないが大好き
色々なおまじないを行ってました
例えば、夜中にカミソリを咥えて水を張った洗面器を見たり(何も映らなかった)
例えば、好きな人の名前を書いた消しゴムを最後まで使ってみたり(しようとしたけど意中の相手がそもそもいなかった)
例えば、ミサンガをずっと装着したり(大抵無くすのだが)
まぁ、そんな感じでおまじないが好きな普通の女の子である
さて、そんな彼女なのだが最近、とあるおまじないを知った
フォックスさんというおまじないである
交霊術に近い類のおまじないは一人ではできないのが大抵だがこれは一人でもできるらしい
彼女は早速、フォックスさんをやってみることにした
食堂にあるティーテーブルの上にあらかじめ用意していた紙を置く
ロールケーキはでんでんむしにみえなくもないがなんとかなるだろう
『あ』~『ん』の文字も微妙に歪んでいるがまぁいけるだろう
5円硬貨がなかったので食堂で適当に紅茶のペットボトルを購入してそのお釣りを使う
ティーカップは用意できなかったのでペットボトルの紅茶がまるまる一本机の上にのっている
うん、完璧だとFさんは一人頷いた
一人でやるので全然完璧じゃないというツッコミは残念ながらなかった
「フォックスさんフォックスさん、ティーパーティーの時間です、席についてくださいまし」
Fさんは5円玉に指を乗せながらそう唱える
普通ならばこのおまじないは失敗だろう、しかし
ズズズと、5円硬貨はゆっくりと動き出した
動いたことに驚くFさん
硬貨は『はい』の位置を通り過ぎ、何か文字をなぞる
【いっぱいとはいってもぺっとぼとるはおおすぎじゃないかい?
(一杯とはいってもペットボトルは多すぎじゃないかい?)】
まさかの駄目だしだった
このフォックスさん、Fさんが想像してたよりもフレンドリーである
【みかがおおわらいしてるからいいとしてつぎからはせめててぃーかっぷにいれてくれるとうれしいね
(ミカが大笑いしてるからいいとして次からはせめてティーカップに入れてくれると嬉しいね)】
「あ、はい、申し訳ございませんわ」
思わず敬語であやまるFさん、次があるらしい
というかミカって誰だ、フォックスじゃないのか
【それでしつもんはなんだい?
(それで質問は何だい?)】
そうだ、質問、質問をしなければ…
………
「おまじないをやることが目的で特に考えていませんでしたわ~!!」
【きみはばかだろう
(君は馬鹿だろう)】
フォックスさんの言葉にぐうの音もでません
「そ、そうですわ、今度でるテストの内容を教えてくださいまし!」
【いいけどきみ、めもちょうはもってきてるんだろうね
(いいけどキミ、メモ帳は持ってきてるんだろうね)】
「…頑張って覚えますわ!」
【きみにはむりだよ
(君には無理だよ)】
残当である
【まぁおしえるけど、がんばっておぼえるんだよ
(まぁ教えるけど、頑張って覚えるんだよ)】
「はい、わかりましたわ!」
さて、全教科分のテストの内容を文字を起こしてもらったとして、それは数分で終わるだろうか
一つの教科でもおそらく時間がかかるであろうそれを、彼女は指定なく聞いてしまった
そうすると、どうなるかというと
「指がいたいですわ~!!!」
当然のように指を酷使することとなる
なぜか上級生が温かい目でみてるような気がするのは気のせいだろうか
普段なら閉まってるような時間でも食堂が開いてるのは気のせいだろうか
きっと気のせいだろう、うん
【そろそろげんかいだろうしやめておこうか
(そろそろ限界だろうし止めておこうか)】
「はい、また次の機会にお願い致しますわ」
フォックスさんの気づかいに、思わず頭を下げるFさんでした
さて、このおまじないの終わり方にはちゃんとしたルールがある
まず、用意した紅茶を飲み干さなければならない
ペットボトルの蓋を開け忘れたので開けるのに苦労していると見かねた上級生の人が蓋を開けてくれました
優しいですね、なんとなく小動物とかみてるような目つきだしたが気のせいでしょう
さぁ、あとは呑むだけ
Fさんを勢いよく飲み干そうとし
「ごふぅ」
勢いよくむせました
彼女が買ってきたのは無糖の紅茶、しかし彼女は無糖を飲めないのです。飲むのはもっぱらミルクティー
予想だにしていなかった苦みに、彼女はむせます
むせた際にこぼれた紅茶が紙を濡らします
それは、「紅茶を飲み干す」というルールをまもれなかったということで
【あーあ、やってしまったね】
どこからか声が聞こえました
Fさんはきょろきょろと周りをみますが、だれかしゃべった様子は有りません
ただ、何人かが「あちゃー」みたいな顔して手で顔を抑えてます
【ルールを守れなかった君には呪いを与えるしかないね】
「え?呪い!?」
怒らせたら死に至る呪いをかけられるとFさんは聞いてました
まさか自分は死んでしまうのでしょうか
思わずガタガタ震えるFさんに、声が聞こえます
【安心したまえ、ミカは爆笑してるし、ナギサも微笑ましげにみている、そうひどい呪いではないよ】
「ほ、本当ですの!?」
【三日ほどで解ける呪いだ、頑張れ】
「わかりましたわ、頑張りますわ!」
【では明日から頑張るように】
その声とともに、硬貨は勝手に動き出し、紙に書いてあったでんでんむしのようなロールケーキを消していきました
さて、次の日です
Fさんはいつものように朝ごはんを食べようとします
今日の朝ごはんはスクランブルエッグにベーコン、パンにサラダにヨーグルト、飲み物は甘いミルクティーです
Fさんは意気揚々をスクランブルエッグにかぶりつきました
「甘いですわ!?」
思わず叫び声でます
触感はスクランブルエッグなのに味は甘い
どこか覚えのあるこの味は…
「ロールケーキ…?」
そう、スクランブルエッグはロールケーキの味になっていたのです
フォックスさんの言葉を蘇ります
【呪いを与える】
まさかと思い、おそるおそるベーコンを食べます
いつものにくにくしい触感、しかし味はロールケーキ
しかもスクランブルエッグの時と全く同じ味です
「これが呪いですの…!?」
おそるおそる紅茶を飲みます
それは甘い甘いミルクティーではなく、しかしどこか高級感ある紅茶の味でした
しかし無糖だったため思わずFさんはダウンします
頭の中によぎる【三日ほどで解ける呪い】という言葉
つまり、三日間ずっとロールケーキの味と無糖の紅茶の味を味あわないといけないわけで
「ぅぅ…謝りますから許してくださいまし…フォックスさぁん」
どこからか【すまない、融通の利かないフォックスで済まない】という言葉が聞こえたような気がしました
・・・
・・
・
【んー、やっぱり休憩時間のティータイムはいいっすね】
「スコーンも美味しいです」
【そういえば昨日、フォックスさんをやってる生徒がいたんすよ】
「そうなんですか?」
【そーなんすよ、まぁ、色々ダメダメだったんでおもわず手を貸してしまったんすけど、最終的に紅茶を飲む段階でむせてしまったんすよねぇ】
「あー…」
【ま、怒らせたわけじゃないんでひどいことにはならないっすけど、しばらくは地獄っすねぇ】
「大丈夫でしょうか…?」
【三日ぐらいなら大丈夫っすよ、たぶん】
6.【フォックスさん】おまじないに失敗した結果呪われて他の味に『餓』えるようになる話