コハルちゃんに沢山オトモダチがいるお話   作:コハルママの人

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初めまして、大好きなワタシのオトモダチ


3巡目.七不思議
【下江コハルさんのオトモダチ】


昔々のお話です

まだこの学校のトリニティという名前だった頃

まだ子供たちが銃を持っていた頃

まだ神秘が宿っていた頃のお話です

 

赤い赤い空の下

生徒たちは力を合わせ戦っていました

何とって?

それは機械でした、それは偽物の亡霊でした、それは終わりから来た子供でした、それは託す先生でした

いつものようなじゃれあいではなく、生徒を本当に亡き者にするつもりの相手に生徒たちは戦いました

それは戦争でした

みんなみんな、抗いました

先生と呼ばれる大人とともに抗いました

学園の垣根を越えて抗いました

全てはハッピーエンド終わる、そのはずでした

 

あまねく奇跡の始発点

みんなで奇跡という車両に乗れるはずでした

けれでも、一人だけ乗れない生徒がいました

下江コハル

彼女は、たった一人で抗って、命を落としたのです

 

勘の鋭い女の子がいました

彼女は取り残されている人がいることに気が付くのに遅れました

障害物を破壊して一直線に駆け寄れる天使がいました

敵の猛攻を受け、通信機が壊された結果、あの子を危機に知らされませんでした

頼れる先輩と仲間がいました

敵の多さの障害となり行く手を阻まれあの子のそばにたどり着けませんでした

あの子は、助けが来ると信じて戦い続けました

彼女の持つセイなる手榴弾はなくなりました

それでもあきらめません

彼女の持つ銃の弾も切れました

それでもあきらめません

棒のように銃を振りました結果、愛銃が折れてしまいました

それでもあきらめません

身体は何度も攻撃を受けボロボロで

骨も何本も折れて、口の中は血だらけで

彼女一人ならとうに諦めてたでしょう、逃げ出していたでしょう

けれでも、護るべき市民と生徒がいるから、彼女抗い続けました

だから、なんとかたどり着けた天使と先輩と仲間が見たのは

命を奪われる彼女の姿でした

ある意味彼女は不運だったのでしょう

本来殆ど戦う予定になかった避難誘導で

怪我した市民のために足並みをそろえていたら敵に襲われはぐれてしまい

一人で市民や生徒を守らないといけなくなったのだから

幸いなのは、命を落とす間際に、先輩たちの姿を視認できたことでしょう

彼女は守りきれたと満足できたのだから

もちろん、彼女以外はそうはいきません

全てが終わった後、彼女の友人や知り合いは深く悲しみました

自分たちがそばにいれば、もっと早くわかっていれば、もっと早くたどり着いていれば

もっと人を投入して一人にしないようにすれば

後悔があとからあとからあふれ出ます

ハッピーエンドの見る影もありません

それも仕方ないのでしょう

彼女は知りませんでしたが、彼女を知る人からは好かれていたのですから

 

それでも時はとまりません

彼女の死から先に進むためにシスターフッドと呼ばれる生徒たちの主導でお葬式が行われました

彼女が望まないだろうから、知り合いだけであげる小さな葬式です

彼女の棺に様々なものが入れられます

ある人は彼女が好きな本を

ある人は寂しくないようにぬいぐるみを

ある人が天国でお金がなくて困らないように貴金属を

マリーと呼ばれる少女は、自らの髪を切り、それを編んで自分とよく似た人形を作り棺にいれました

自分はいけないけども、天国の案内人になれるようにと、祈りを込めて

泣いて、泣いて、慰められて、無力さを悔やんで

それでも一歩進める

はずでした

 

葬式がしばらくして

表面上はなんとかいつも通りを過ごせるようになったある日のこと

下江コハルの墓が荒らされました

犯人は同じ学生の生徒達でした

犯人たちは様々な理由で墓を荒らしました

お金に困っていたから、魔女の友人だから、なんとなく

…その中に、下江コハルがあの時守っていた生徒もいました

下江コハルがなくなったのは、生徒が足手まといだったから、なんて根も葉もないうわさに踊らされた生徒に彼女はいじめられてました

最初は我慢してた彼女もどんどん激しくなるいじめにとうとう我慢できず、いじめられるのは下江コハルがよわかったからだと逃避して抵抗できない下江コハルの墓を荒らしたそうです

正義実行委員会は激怒しました

過剰ともいえる暴力をふるおうとした副委員長をなんとかみんなで止めて、怒りを抑えながら犯人を牢屋にいれました

ティーパーティーは悲しみました

自分のせいで荒らされたことに、生徒たちがそんなことをできてしまうことに

シスターフッドは嘆きました

死を冒とくされたことに、深く悲しみました。

補習授業部は失望しました

全員がこんなことしてるわけではないのだけども、下江コハルを理由になにかする生徒に深く失望しました

守る意味があったのかと、そう思うようになってしまったのです

下江コハルを知る人々の中に後悔ばかりが募りました

 

それから再び時が流れました

かつての1年生がもう卒業するころです

事件がおきました

テクスチャが剥がれ始めたのです

いいえ、それは違います

神秘がなくなり始めたのです

ヘイローがなくなりました、銃は危険物になりました

獣人やケモ耳、翼を生やした人々は普通の人になりました、ロボットは神秘判定を外されてそのままでした

理由はわかりませんでした、まるで神秘の時代は終わったのだという風に感じられました

人々は混乱しました

悪い大人たちは利用しようとしました

けれどもシャーレの先生の協力の下、なんとかそれを乗り越え、気が付けば外と同じようになっていきました

大人の教員が増えました。大人が土地を治めるようになりました

子供が無理して大人と同じように政治を行わなくてよくなりました

大人が治めた結果、権利や管理の問題で学校が合併されたり、あるいは別れたりしました

トリニティもその一つです

元々幾つもの学校が集まってできた学校でしたが、それが元の形にもどった形となりました

巨大な学校は解体され、かつての学校に分かれていきました

結果、トリニティという学園はなくなってしまいました

 

それから何十年たって、ある女性がかつてのトリニティのあった場所を購入しました

彼女はその土地に学校を建てました

かつてのトリニティのようにとはいきませんが、それでも学校は学校です

寮を作り、生徒達が住めるようにしました

トリニティのように青春が送れるように、でもかつてのトリニティように政治でどろどろしないように

生徒達が健やかに過ごせるように

そんな思いを込めて学園を作りました

かつての知り合いもその手伝いをしてくれました

その学校の名前はアリウス学園

たてた女性の名前を歌住サクラコといいます

アリウス学園は、経営の手腕が良かったのか、徐々に大きくなりました

経営破綻した学校の生徒も吸収するようになりました

きがつけば総合学園と呼ばれるまで大きくなっていきました

創立者のサクラコさんは学校が大きくなるたびに色々噂され「こんなはずでは…」と苦悶の表情を浮かべるようになったといいます

 

さて、そんなアリウス学園ですが、教員となったハナコは生徒達からある噂をききます

なんでも学校に幽霊がでるだとかなんとか

かつて建っていた学校にいた幽霊が、新しい学校が建ったことで現われるようになったとか

よくある根も葉もないうわさです

下江コハルの命日に集まったみんなにその話をします

みんなそれをほほえましくきいてました

 

「でも、もしその幽霊がコハルだとしたら?」

 

誰かが言いました

みんな、思わず黙り込みました

もし、そうなら会いたい、会って話したい

守れなくてごめんと謝りたい、よく頑張ったねって褒めてあげたい

 

「でも、ああいうのって生徒じゃないと会えないんですよね」

 

「そういう話をききますね…もし本当にコハルちゃんなら制服をきてでも会いにいくのに」

 

「お前ら、根も葉もないうわさだろ?本気にするな」

 

「わかってる、でも…」

 

みんな、後悔を胸にひめたまま、その日は解散となりました

その後は誰も幽霊の話をしません、だれかがあったという話もありませんでした

そうしてそれからしばらく時がたちました

彼女たちは寿命を全うしました

そのはずでした

 

「あれ…?」

 

きがつけば、ハナコは夜の学校にいました

知らないはずの知識が頭の中にありました

どうやら自分たちは学校のオバケになったようです

しかもハナコはトイレから移動できないようです

不便でしかたありません

さて、どうしたものかと頭を悩ましていると

コンコンコンと扉を三回ノックされました

それから、震える声で「遊びましょう」と声がかけられました

どこか、聞いたことある声でした

まさか、と思いました

人はまず声から記憶がなくなっていくと言います

だから、あの子の声なんて、記憶にはもうないはずなのに

震える声で「はぁい」と返事しながら、ノックした相手を確認します

その子はハナコと同じピンク色の髪の少女でした

その子は髪を二つくくりしていました

その子は小柄な生徒でした

その子を浦和ハナコは忘れるはずないのです

 

「あぅ…本当に返事が返ってきた…」

 

その子はおびえてるようでした

返事が返ってくるとは思わなかったのでしょう

おびえてるその子を、おびえさせたくなくて、今すぐ慰めてあげたくて

 

【べろべろばぁ♪】

 

「きゃぁ!!」

 

おどけるように扉を開けました

その子は、硬直しながら【ハナコさん】をみて

 

「エッチなのは駄目!」

 

と叫びました

ハナコさんの恰好は制服だったのに水着に変わっていたのです

顔を真っ赤にして怒るその子に、【ハナコさん】はほほを緩ませました

我慢しないと涙があふれ出てしまいそうです

本当は今すぐ抱きしめたい、あの時一人にしたことを謝りたい

でも、怪異となった【ハナコさん】はわかるのです

今ここにいる彼女は人間であると

いわゆる生まれ変わりというものだと

きっと自分のことはしらないだろう

だから、今はまだ駄目だと

 

【うふふ、ごめんなさい、つい意地悪したくて】

 

「意地悪するのに水着なのは関係ないわよね!?」

 

これから、ゆっくり話してまたお友達になろう

大丈夫、時間はたっぷりあるのだから

他のメンバーもいるのだし、会わせてあげないと

あぁ、でも今は

 

【水着でトイレにいるとなんだか興奮しません?】

 

「変態!変態!変態!」

 

二人っきりの会話を楽しませてください

それからしばらく、ハナコやそれ以外の怪異はコハルとの日々を過ごした

それがあまりにも楽しくて、気が付かなかったのです

コハルがいじめにあってるだなんて

 

それは急に起きました

ある冬の日

いつものように会いに来たはずのコハルの様子が変なのです

まるで、自分たちと同じような…

 

【コハルちゃん、なにか変なことはありませんでしたか?】

 

その言葉に、コハルは少し考えてからいいます

クラスメイトに遊びで、川に鞄を捨てられたから拾おうとして川に入った

夜でなかなか見当たらなくて、携帯の灯りをつけながら必死にさがしたけど見当たらなくて

気が付いたら寮で寝ていたと

ハナコはそれを聞いて、嫌な予感がしました

情報収集を行いたのですが、できません

悶々とした日々を過ごしていると、トイレで話し声が聞こえました

『下江という名前の1年生の生徒が川に足をすべらせて入って、凍死した』と

嘘だ、と思いました

私たちはまた、護れなかったのかと

トイレの個室の中で、ハナコは叫びました

誰にも聞こえない声で叫びました

しばらく叫んでから、気が付きました

では今いるコハルはなんなのだろうか

自分たちと同じ存在になってしまったのだろうか

それならばなにになってしまったのだろうか

そして、こうも思いました

同じ存在になったのならば、コハルが卒業することはない

つまりずっと一緒にいられると

それは、なんと甘美なことでしょうか

3年間というタイムリミットがなくなりずっと一緒にいられるのだから

ハナコはコハルの死の悲しみも忘れ、喜んでしまいました

ハナコだけではありません

アズサもヒフミもハスミも喜んでしまったのです

怪異になるということはそういうことなので

人の死は悲しいが、大切な子が仲間になるならうれしいのだと

理性よりも本能が勝ってしまうのです

 

それから、コハルがいたクラスには噂が立ちました

『クラスメイトが一人多い』と

配布物が1つ足りないことがおおくなりました

生徒数は偶数のはずなのにペアを組むと余ってしまいます

コハルは「一人多いクラスメイト」になってしまったようです

しかしそれにコハルは気づいてません

今日も授業を受けて、委員会に出席して、友達に会いに行きます

彼女たちの永い後日談の青春物語(ブルーアーカイブ)は今もなお続いているのです




0.【下江コハルさんのオトモダチ】あるいはプロローグ 完

7不思議が解放されました

【下江コハルさんのオトモダチ】あるいはプロローグ 済
【シラスアズサ】あるいはハロウィンに集まる彼女達のパーティー 済
【動く創立者の像】
【存在しない委員会】
【保健室の噂】
【図書館の司書さん達】
【終わりの卒業式】

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