コハルちゃんに沢山オトモダチがいるお話   作:コハルママの人

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悲しい悲しいあの娘
卒業できなかったあの娘
これはあの娘とあの子たちのための卒業式
トリニティ学園、最後の卒業式
卒業生の皆さま、ご入場ください
これから旅立つあの娘をどうか見送ってください


【終わりの卒業式】

卒業式というのは大事なものです

次へ進むための儀式、高校ともなれば子供から大人へなる儀式ともいえるでしょう

その人は、巣立って生徒を一人一人見送りました

声をかけ、撫でて、抱きしめ、告白を断り、慰め、笑いあって

みんなみんな、大事な生徒なのですから、

そうして、最後の一人まで見送ってから、その人は寂し気に笑うのです

見送れなかったあの娘を思い出して

助けれなかったあの娘を思い出して

だからこれは、やり残したこと

ここはネバーランドではないのだから

いつかは子供は大人から巣立ってものなのですから

これは【最後の卒業式】

お別れのため、儀式

 

 

【終わりの卒業式】

 

 

ある日のアリウス学園

新任の先生がやってきました

その人は、生徒をよく見てました

走り回る生徒には注意して

悩む生徒にはアドバイスして

授業は面白おかしく、けれどもしっかりやって

学校の外で偶然あったらコンビニで肉まんをおごってくれて

生徒一人一人のためにがんばって、頑張りすぎて残業しすぎて怒られる人です

ロボットものが好きなのかたまにプラモ屋さんでみかけるとか

そんな先生は、すっかり学校の人気者になりました

付き合いづらい生徒もなんだかんだその先生の前では良い生徒になるのです

まるで漫画の主人公のようだ、とは誰かいったのか

そんな、今時珍しい、先生です

 

“下江さん、今から委員会?”

 

放課後、コハルさんは先生に呼びかけられました

 

「うん、今日はハスミ先輩とパトロールするの」

 

コハルさんも、素直に返事します

 

“そっか、無茶しないようにね”

 

「それ、学校で寝泊りしてるっていう噂のせんせぇが言うの?」

 

“いやいや、流石に滅多にしてないからね!?”

 

滅多にということはしてるんですか

 

「うわぁ…」

 

ほら、コハルさんも引いてるじゃないですか

 

“こほん、とにかく、何か困ったことがあればすぐに相談してね”

 

「わかった、せんせぇも困ったことがあったら風紀委員に相談してね」

 

“はは、そうだね、生徒のことで困ったことがあれば相談させてもらうよ”

 

それだけ話して二人は別れました。

私はそれをみてました

 

【いやぁ先生は人気者っすねぇ】

 

【そうですね、歩いていればどこかしらで噂を聞きます】

 

【コハルもなついてるようだな】

 

風紀委員の部室で先輩たちが先生に関して話しています

コハルさんは、ダレかのところへ言ってるので不在です

 

【…思い出すっすねぇ、シャーレの先生の事】

 

【ですね…結局我々は告白できなかったんですよね】

 

【コハルのこととかトリニティのこととかで全員手一杯だったからな】

 

でも、皆さん生前は先生がなくなるまで交流ありましたよね?

 

【そっすね、結局生徒のうちの一人と結婚したっすけど、なんだかんだ誰かしら生徒なり生徒の子供とかがいたっすよね】

 

【いごこちが良すぎたんですよ、元キヴォトス生の子供はほぼ全員幼馴染でしたよ、あれは】

 

【先生は先生で最後まで先生だったしなぁ】

 

【…もし、ここに先生がいたらどうなってたっすかねぇ】

 

【叱られてるでしょうね、きっと】

 

しんみりとした空気がながれましたが、時間になりみんなでパトロールを始めました

いつもと変わらない日、そのはずなのに、今日は違うことがおきました

 

“や、こんばんは”

 

夜に職員室に噂の先生が座ってました

もうすでに日は暮れて、他の教員も帰っているというのに…また、残業でしょうか

 

“…こんな時間まで委員会の作業かい?”

 

【そうっすよ、私らは夜のパトロールがメインなんで】

 

イチカ先輩が代表して答えます

 

“そっか、夜遅くまで大変だね”

 

【それを先生がいいますか?ミネ団長に怒られますよ?】

 

“はは、この前はサクラコにも怒られたよ”

 

ハスミ先輩のツッコミに先生が笑って言います

そんな先生の机の上にどこかで見たことあるような黒い筒のようなものが置かれています

 

“おっと、あまり見ないでほしいな”

 

先生はそういうと、黒い筒を隠します

…あれ?

 

“さて、そろそろ私は作業に戻るからみんなは適当に切り上げてかえるんだよ”

 

【先生こそ、しっかり休んでくださいね】

 

先生はなにも答えませんでした

 

【…ツルギ】

 

【あぁ】

 

先生と別れたから、先輩が声を出します

二人の視線は、服のスキマにいる私に注がれています

 

【あの方、マシロが見えてましたね】

 

【そうだな】

 

【いわゆる霊感があるんすかねえ?鬼の手とか持ってたり?】

 

【それはフィクションだろうが】

 

【まぁ、コハルに害がなければ問題はありません】

 

そうですね、それが一番です

 

【さ、さっさとパトロール再開するっすよ】

 

【そうだな】

 

それから、しばらく何事も無い日々が続きました

先生とは何度かお会いしましたは、やはり私を認識しているようでした

それどころか、様々な怪異たちと出会ってるようです

トイレを隔てて、コハルさんと一緒にハナコさんとあった

教室で、アズサさんと話した

ヒフミさんに限定復刻版のぺロロ人形をあげた

コハルさんとフォックスさんをやった

ウイさん達に本をおススメしてもらった

ミネ団長に救護されかけた

シスターさんに出会った

気が付けば、怪異の皆さんも先生と仲良くなっているようでした

私も、先生を見かけたら声をかける程度には仲良くなっていました

 

そうして月日はながれ、このアリウス学園でも卒業式が行われました

残念ながら、私たちには関係ないのですが

コハルさんの学年は上がりません、私も当然一緒です

先輩たちも卒業しません、来期も先輩のままです

それがいつも通りなんです

だから

 

『これより、最期の卒業式を行います、トリニティ学園の卒業生の皆様は体育館へ集まってください』

 

真夜中のこの放送になにが起きたのかわけがわかりませんでした

 

それは先生の声でした

最期の卒業式とはなんでしょうか

いや、それよりもトリニティ学園の卒業生って

私たちは全員、トリニティ学園の卒業しています

このアリウス学園にトリニティ学園の生徒なんて、いるわけが…

いえ、一人だけいました

トリニティ学園に在籍していて、卒業できなかった生徒…コハルさんが

私はいま、風紀委員の部屋にいて、コハルさんのそばにはいませんでした

慌ててコハルさんの部屋に行きますが、コハルさんはいません

嫌な予感がした私は、体育館に向かいました

そこには、皆さんがいました

ハスミ先輩がいました、ツルギ先輩がいました、イチカ先輩がいました、モブさん達がいました

ミネ団長がいました、セリナさんがいました、ハナエさんがいました

ウイさんがいました、シミコさんがいました、ヒナタさんがいました

アズサさんがいました、ヒフミさんがいました、ハナコさんがいました

ミカ様がいました、セイア様がいました、ナギサ様がいました

全員が、パイプ椅子に座って、壇上をみています

私も、いつの間にか椅子に座って、壇上を見上げてました

壇上には先生とコハルさんがいました

 

【先生、これはいったい…】

 

ハナコさんが声をかけます

 

“卒業式だよ、ハナコ”

 

先生が優しく、答えました

 

“卒業できなかった、この娘のための卒業式”

 

その言葉に、私は、いえ、私たちは何が起こるかわかってしまったのです

これは、お別れの儀式だと

みな、次々にコハルさんの名前を呼んだり、先生をにらみつけます

こんな、急なお別れなんて、私たちは認めない

コハルさんもきっと嫌がる、そう思ってたのに

 

「…みんな、ごめんなさい」

 

コハルさんは、私たちに向かって、頭を下げた

 

「私のせいで、みんなをここに縛り付けて、ごめんなさい」

 

コハルさんは、私たちのことを怪異とは認識してなかったのに、今は認識してる

それどころか

 

「私が死んだせいで、みんなを悲しませて、ごめんなさい」

 

自分が死んだことも、思い出している

 

【違う!!コハルのせいじゃない!みんながこれを望んだんだ!!】

 

アズサさんが叫びました

そうです、皆さん望んだんです、アナタと一緒にいるのを

だから謝らないでください、お願いですから

 

「きっと、これは私の独善なの、望んでないかもしれない。でも私はみんなを解放したいの」

 

コハルさんは決心したのでしょう

私は泣きそうなその顔に、何も言えなくなりました

 

“トリニティ学園を卒業した生徒から、これから卒業する生徒へ言葉をお願いします…図書委員会”

 

【はい】

 

ウイさんが立ち上がります

一緒に、シミコさんとヒナタさんが立ち上がりました

 

【コハルさん、あの時は突然の別れで驚きました…また会えて、うれしかったです】

【私も、またお話しできて、本当にうれしかったです、どうかあなたが天国に行けることを祈ります】

【私は生前あまりお話したことがありませんでしたが、この身体になって仲良くなれてうれしかったです。もしまた会えたらまた一緒に本を探しましょうね】

 

「ウイ先輩、ヒナタ先輩、無人島で一緒にいた時はほとんど話せなくてごめんなさい、改めて仲良くなれてうれしかった

 シミコも、ありがとう。また会えたらその時はうん、お互いの好きな本で感想会しましょう」

 

コハルさんの言葉に、ウイ先輩は頷いて

それから、三人で外に歩いていきます

そしてそのまま、溶けるように消えていきました

 

“次は救護騎士団、お願いします”

 

【救護騎士団は代表して私が話しましょう

 コハルさん、どこかいたい場所はありませんか?】

 

「…いいえ、もう痛いところはありません。ミネ団長、私は貴女たちのおかげで元気です」

 

【そうですか、それは…本当に良かった】

 

ミネ団長は、優しく微笑みました

それから、セリナさんやハナエさんの三人と涙を流して、ウイさん達のように消えていきました

 

“次にティーパーティー”

 

【はい】

 

ミカ様が一番にたって、続くようにナギサ様とセイア様が立ち上がります

 

【正直、急ですっごく戸惑ってる。なんていえばいいかな…】

【ミカさん、素直に言えばいいんですよ】

【そうだぞミカ、ない頭で無理に考えなくていい】

【セイアちゃんは後でぶっとばすね☆ うん、そうだね…コハルちゃん、この身体になって、楽しかった?】

 

「はい!前と比べてお友達もいっぱいできました、いろんな人と話しました…ミカ様たちとティーパーティーができました!私は毎日が楽しかったです!」

 

【そっか、それはよかった…本当によかったよ】

【いつも美味しい紅茶、ありがとうございました。コハルさん】

【私も君とのティーパーティー、とても楽しかったよ】

 

泣き崩れるミカ様を支えるように二人がミカ様を抱えて、溶けるように消えました

 

“次に正義実現委員会”

 

よばれて、ツルギ先輩たちが立ち上がります

 

【コハル、すまなかった、あの時もっとしっかりと人員を配置すべきだった】

 

「ただでさえトリニティ学園は広いうえに、応援に行く必要があったんです、しかたないですよ」

 

【コハル、ずっと言えなかったことがあったっす。一人でよく頑張ったっすね、コハルは正義実行委員会のエリートだって、だれが何と言おうと私が認めるっす】【私も!】【私もだよ!】【おっと私を忘れてもらったらこまるね】【というかみんな認めるよね?】【コハルちゃんは真のエリート】【とっても頼れる私たちの同僚!】

 

「…ふふ、はじめてエリートって他の人にいわれた」

 

【コハル】

 

「はい、ハスミ先輩」

 

【私は、貴女に私の役職を引き継いでほしかった】

 

「・・・」

 

【あなたと一緒に、チームを組んで、一緒に任務をこなして、私の跡を継いで、それから私の卒業式で見送ってほしかった】

 

「ハスミ先輩…」

 

【ごめんなさい、あの時間に合わなくて、一人にして、亡くしてしまって】

 

泣き崩れるハスミ先輩に、コハルさんはまっすぐに目を向けています

 

「私は、私の正義を実現しました」

 

【コハル…】

 

「結果、今の状況があってみんなを縛り付けてしまったことに後悔はあっても、あの時の行動に後悔はありません

 ハスミ先輩、私は貴女の後輩に相応しかったですか?」

 

【えぇ、貴女が私の後輩で、私はとっても誇らしく思います】

 

先生の視線がこちらをみます。私は、何も言えなかった、言葉がみつからなかった

 

【先生、私たちはまだ残らせてくれ…最後まで見送らせてくれ】

 

ツルギ先輩がそういい、先生がうなずいたので私たちは全員、椅子に座りなおしました

 

“最後に補習授業部”

 

ガスマスクをつけてないアズサさんと、首がついているヒフミさんと、制服をきているハナコさんが立ち上がります

 

【コハル、ここで終わりで後悔はないのか?】

 

「ないっていったらうそになるかもしれないけど。永い後日談はもう終わらせないといけないの。だから私は覚悟をきめた」

 

【そうか…なら私は何も言わない】

 

【コハルちゃん】

 

「うん」

 

【私はコハルちゃんを止めません。コハルちゃんの言う通り、青春のロスタイムはもうとうに過ぎ去っていますから。だからこれだけ、コハルちゃんとお友達になれて私はすごく楽しかったです】

 

「私も、ヒフミにぺロロのことに関してずっと振り回されたけど、みんなと映画にいったり、お出かけしたりして、楽しかった」

 

【あははは…】

 

【…私は】

 

「ハナコ」

 

【コハルちゃん、私は…またお別れをするのが嫌です】

 

「ねぇ、ハナコ、ずっと言いたいことがあったの」

 

【…なんですか?】

 

「この学校でトイレにいってあんたと出会ったでしょ?それまで私は友達なんていなかった、ハナコが初めての友達だったの」

 

【・・・コハルちゃん】

 

「ありがとう、私の友達になってくれて。私がこうしてるようにきっとまた会えるから、その時もまたお友達になってくれる?」

 

【また会えるかわかりませんよ?】

 

「会えるわよ、私たちなら」

 

【今度はきっとお互いの事おぼえてないですよ?】

 

「きっとあんたが変なことして私がそれを注意するから、大丈夫よ」

 

【なら頑張って露出しないといけませんね】

 

「過度な露出は駄目よ!?」

 

【ふふ、なら早く見つけてくださいね、コハルちゃん】

 

“それでは、卒業証書授与式を始めます”

 

先生とコハルさんが向かい合います

先生の手には、証書がありました

 

“下江コハルさん、貴女は青春を楽しみましたか?”

 

「はい、永い後日談でしたが楽しみました」

 

“ここから巣立つ決意はできましたか?”

 

「はい、成仏する覚悟はできてます」

 

“あなたの勇気と正義を先生は誇りに思っています。最後のトリニティ生下江コハルさん、貴女が正式にトリニティ学園を卒業することを認めます

 どうか来世でまた会いましょう”

 

「はい、先生」

 

コハルさんが卒業証書を受け取ります

それと同時に、空からシスターさんが…いえ、マリーさんがコハルさんのそばに現れました

 

【コハルさん、逝きましょう、案内役は任せてください】

 

「うん、おねがいね、マリー」

 

マリーさんの手にひかれるようにきえていくコハルさんに私は…

 

【コハルさん!!】

 

思いのたけを叫びます

 

【私も貴女の正義を誇りに思ってました!また会いましょう!それで一緒に正義を実現して、それから…】

 

「マシロ、またね」

 

【はい、また、来世で】

 

コハルさんが手を振って、私も手を振り返して

コハルさんが消えると同時に、みんなで泣いて

泣いて泣いて、泣き叫んで

それから、眠るように消えていきました

体育館に残ったのは、先生とあと一人

 

【お疲れ様でした、先生】

 

“サクラコさんはいかないの?”

 

【最後にこの学園を見回ってから逝きます。それよりも先にアナタにねぎらいの言葉を

 ありがとうございます。皆さんを成仏させてくれて】

 

“ひぃ爺さんがずっと後悔してたから私でなんとかできてよかったですよ”

 

【最後まで、私たちはシャーレの先生に頼りっぱなしでしたね】

 

“ひぃ爺さんは気にしてなかったから大丈夫だと思いますよ

 …っと、そろそろ片付けして帰らないと”

 

【お手伝いしますよ】

 

”…ありがとうございます”

 

そうして二人で片付けし先生は家に帰り、サクラコさんは元の石像に戻りました

最期の怪異がいなくなりました

そうです、もういないのです

存在しない委員会も、図書館のいないはずの司書さんも、夜の保健室の救護さんも、フォックスさんも、ファウストライダーも、シラスアズサも、トイレのハナコさんも

みんないなくなって彼女達の青春はこれにておしまい

どうかみんなが来世で幸せになれますように




これにて「コハルちゃんに沢山オトモダチがいるお話」の本編は終了となります
下江コハルとその周囲のお話はどうでしたでしょうか
何か感じるものがあれば幸いです


先生
シャーレの先生のひ孫、終わらせに来た人
ただの人間、大人のカードも所持してない、特殊なAIが入ったpadも持ってない
けれでもこの人もちゃんと先生で、生徒みんなとしっかり交流している

下江コハル
唯一卒業できなかった娘
正式に卒業した
来世では、幸せになれますように
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